Gotch、初のソロアルバムは独特の“なまり”でその名を刻む傑作

Gotch | 2014.04.18

 アジカンの後藤正文、Gotchが初のソロアルバム『Can’t Be Forever Young』をリリースする。先行シングル「Wonderland / 不思議の国」にもあったアコースティック・サウンドと、皮肉とユーモアが入り混じった独特の表現が全開。「ここを目指して行こう!」という安易な呼びかけではなく、「君たちは本当にここを目指していいの?」という問いかけでリスナーの覚醒を促す手法は、Gotchならではのメッセージとなっている。ギターはもちろん、シンセ、リズムの打ち込み、パーカッションなどを自身でプレイ。ミックスはUSインディーズの巨匠ジョン・マッケンタイアに任せた。常に問題意識をもって音楽を作るGotchの、鋭さと優しさにあふれた傑作アルバムだ。

EMTG:思い切りアジカンとは別のアプローチをしているのに、とってもGotchらしい。アジカンっていうバンドが、いいコンディションにあるのがわかるようなソロアルバムだね。ちょっとややこしい言い方だけど(笑)。
Gotch:あはは(笑)。そうですね。
EMTG:今回、リズムは全部、打ち込み?
Gotch:はい。生のドラムはまったく入ってないです。 自分のスタジオで打ち込んだものと、それにパーカッションを重ねたりしただけです。最近のサンプル音源ってすごくて、バンドものじゃないもののドラムってほとんどコンピュータですからね。
EMTG:そういう意味では自宅録音っていうふうに言っていいの?
Gotch:はい、プライベート・スタジオ録音です。広さはホントに、この部屋くらい。ホーンを録ったのは、ちゃんとした広いスタジオでしたけど。
EMTG:一方で、ギターとかグロッケンとか、アコースティック楽器が多く使われている。それはどういうことだったの?
Gotch:ドラム・トラックが打ち込み音源とかサンプリング音源なので、どうやってヒューマニティを出していくかって考えて、アコースティック楽器を使ったり、シンセもコンピュータを使わずに手で弾いたりしました。コンピュータのいいところと、生のいいところを融合させていくようにしてたんですよ。コンピュータがすごくきれいで流暢な標準語をしゃべってるとしたら、そこに俺が“人間のなまり”で参加してくことで作品に地域性が出てくるっていうか。「これは後藤さんが作った作品なんだ」っていう地域性、記名性を与えていくという作業でしたね。
EMTG:それで、ギターはアコギが多くなる。
Gotch:エレキでパワーコードをガーンって弾いちゃうとアジカンになっちゃうから、それは避けようと思って。和音を弾くんだったら、エレキでやるよりアコギでやったほうが音が面白かったりしたし、重ね甲斐もあった。そうやっていく途中で、自分の中でも、「なるべくアコギで引っぱってみよう」みたいな感じになっていったんです。
EMTG:エレキでやっちゃえばいいかなと思ったところも、アコギでやってみようと。
Gotch:そうです。若干フォーキーなほうが、今、自分としてやってみたいニュアンスに近かったんです。だから、アコギは大きなテーマのひとつでした。「Lost / 喪失」っていう曲でアコギが入ってないくらいで、あとは全部入ってる。
EMTG:さっき言った記名性や地域性をきっちり出すには、そうしたほうがいいかなっていう。
Gotch:俺としてのソロと、アジカンとの違いですよね。“Gotch性”というかね(笑)。そういうところを今回出しておかないと、ソロの意味が薄くなる。
EMTG:あとはコーラスワーク! アジカンでもメンバーに積極的に参加を呼びかけてはいるけど、今回は思いっきりやってるね。
Gotch:元々重ねるのが好きなんでいくらでもやれるんですけど、バンドでやるとだんだん「それやり過ぎじゃない?」みたいな空気になってくるんですよ。アジカンから遠ざかって行く感じになる。アジカンってストレートに、僕があんまり重ねないで、一人で大きい声でメインボーカルで叫んだほうがイメージに近い。だけどやっぱり個人的には、ハモリって楽しくて。ハモリとかユニゾンとか、いっぱい重ねるとカラフルになるっていうかね。テーマというよりは、遠慮なくやりました、みたいな感じです(笑)。
EMTG:ミックスをジョン・マッケンタイアに依頼したのは?
Gotch:外国人の耳を通したかったっていう。根本的に考え方が全然違う。聴いてるところも全然違う。僕らはピッチ(音程)をすごく気にして聴いてますけど、外国の人たちってリズムだったり、言葉をサウンドで聴く。そういう人たちに作ったものを一回預けて、バランス見てほしかったんですよね。
EMTG:その狙いは?
Gotch:職人技で、やってくれました!
EMTG:じゃ、曲について聞きますね。「The Long Goodbye / 長いお別れ」は?
Gotch:たとえばどっかの地方の議員さんが、自分で石碑建てちゃったりするじゃないですか。あんな感じで自分の曲の歌詞とかを石に刻んで、ボコって自分の家の庭とかに建てたとしても、100年残るかなっていう。物理的な意味じゃなくて、千年くらいたったら使ってる言葉って変わるでしょうし、今の俺たちが現代語として使ってる言葉も古文みたいになっちゃうかもしれない。もしかしたら言語ってそのぐらい危ういものかなって考えると、なんか寂しい。でも“また会おう”って言いたい気分もあるっていう歌です。
EMTG:「Stray Cats in the Rain」は? “迷子犬”の次は猫ですか(笑)。
Gotch:そうなんですよ。「Blackbird Sings at Night / 黒歌鳥は夜に鳴く」っていう曲も迷ってるから、俺の歌詞の中で動物はだいたい迷ってるんだよなっていう(笑)。
EMTG:動物が出てくるときは。
Gotch:迷わしてばっかりじゃないかみたいな(笑)。
EMTG:でも「Stray Cats in the Rain」こそ、アジカンにはない、ホントに柔らかなラブゾングっていう感じがした。
Gotch:これはすごくいいなと思う反面、気持ち悪いなっていう感じもしますけどね(笑)。 《癒えない傷も見せ合って》とか、いくらなんでも人間はそこまで共有できないだろうっていう気持ちもあって。書いちゃってはいるけど…。
EMTG:あははは、こそばゆいという気持ちがある (笑)。
Gotch:J-POPっぽいことも書いてみたいとか思って作ったんですよ。
EMTG:えー! これ、J-POPには聴こえないよ(笑)。
Gotch:でも同じこと歌ってるじゃないですか。これJ-POPなんですよ、俺の中でのテーマは(笑)。
EMTG:「Can’t Be Forever Young / いのちを燃やせ」は?
Gotch:《時計はいつか止まってしまう この恋もいつか終わってしまう》、だから“いのちを燃やせ、精一杯生きようぜ”みたいなことを言ってるわけですけど、このサビのあたりはアルバムのテーマに近いです。
EMTG:この英語タイトルと日本語タイトルの組み合わせは、すごくいい。
Gotch:ありがとうございます。自分で訳して日本語タイトルつけてるんで、なんて訳そうかと思ったんですよ。「Can’t Be Forever Young」、うーん、でも「若いままではいられない」ってタイトルはダサイと思って(笑)。なのでひっくり返して、 「いのちを燃やせ」ってなった。なんかこれがいちばん邦題っぽい。洋楽のシングルとか、向こうの映画の邦題みたい(笑)。アルバム・タイトルは性質が違うので、日本語は付けませんでした。
EMTG:古い街角で撮ったジャケットにも意味がありそうだね。
Gotch:僕が着ているのは、喪服です。「Can’t Be Forever Young / いのちを燃やせ」では、“若いままではいられない”って歌っているし、アルバム全体で生きることや死ぬことを歌ってるんで、これは葬式に行くっていうジャケットです。で、誰の葬式に行くかっていったら、自分自身の葬式に行く人みたいなイメージ。しかも“ヤング”っていう店で待ち合わせて葬式に行くっていう(笑)。
EMTG:すごくGotchらしいユーモアだね!
Gotch:今回、ジャケットも含めて、ちゃんと考えてやってるっていうのはあります。このアルバムが作れて、本当によかった。ツアーもやりますよ!

【取材・文:平山雄一】

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リリース情報

Can’t Be Forever Young [アナログ2枚組]

Can’t Be Forever Young [アナログ2枚組]

発売日: 2014年04月19日

価格: ¥ 3,600(本体)+税

レーベル: only in dreams

収録曲

[Side A]
1.Wonderland / 不思議の国
2.Humanoid Girl / 機械仕掛けのあの娘
3.The Long Goodbye / 長いお別れ

[Side B]
4.Stray Cats in the Rain / 野良猫たちは雨の中
5.Can’t Be Forever Young / いのちを燃やせ
6.Nervous Breakdown / 軽いノイローゼ

[Side C]
7.Aspirin / アスピリン
8.Great Escape from Reality / 偉大なる逃避行
9.Blackbird Sings at Night / 黒歌鳥は夜に鳴く

[Side D]
10.Sequel to the Story / 話の続き
11.A Girl in Love / 恋する乙女
12.Lost / 喪失

+同内容を収録したバックアップCD付き(歌詞 / 英訳付)

リリース情報

Can’t Be Forever Young

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Can’t Be Forever Young

発売日: 2014年04月19日

価格: ¥ 2,130(本体)+税

レーベル: only in dreams

収録曲

1.Wonderland / 不思議の国
2.Humanoid Girl / 機械仕掛けのあの娘
3.The Long Goodbye / 長いお別れ
4.Stray Cats in the Rain / 野良猫たちは雨の中
5.Can’t Be Forever Young / いのちを燃やせ
6.Nervous Breakdown / 軽いノイローゼ
7.Aspirin / アスピリン
8.Great Escape from Reality / 偉大なる逃避行
9.Blackbird Sings at Night / 黒歌鳥は夜に鳴く
10.Sequel to the Story / 話の続き
11.A Girl in Love / 恋する乙女
12.Lost / 喪失

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土佐豊
相撲取りですね。上位で活躍してたんですけど、ケガをしまして、番付からいなくなって久しいわけですよ。今回、大阪場所で幕下筆頭まであがってきたんです。今場所を勝ち越すと関取まで戻ってくる。で、ある人に「土佐豊ってベテランだよね?」って言われて、「あれ?まだ20代だよな」と思って調べたんですね。28歳だったんですけど。まー、28歳がベテランかどうかは難しいところです。


■ライブ情報

Gotch Tour 2014
「Can’t Be Forever Young」

2014/05/16(金)代官山UNIT
2014/05/21(水)梅田 CLUB QUATTRO
2014/05/22(木)広島 CLUB QUATTRO
2014/05/24(土)福岡 BEAT STATION
2014/05/29(木)札幌 PENNY LANE24
2014/06/03(火)金沢 EIGHT HALL
2014/06/04(水)名古屋 CLUB QUATTRO
2014/06/06(金)仙台 CLUB JUNK BOX
2014/06/11(水)渋谷 CLUB QUATTRO
2014/06/12(木)渋谷 CLUB QUATTRO

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents
NANO-MUGEN FES. 2014

2014/07/12(土)横浜アリーナ
2014/07/13(日)横浜アリーナ

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