長澤知之の部屋でリラックスして聴こう

長澤知之 | 2014.12.11

 企画シリーズ・アルバムの第3弾だ。今回は自主企画ライブ「長澤知之LIVE”IN MY ROOM”」でつかんだ手応えを基に制作され、長澤の部屋に遊びに行って彼の歌を聴いたり、長澤が部屋でリラックスして歌っているのをこっそり聴く感覚を録音しようという内容。ヘッドホンを使用することで、長澤が目の前で歌っているような臨場感あふれる 録音方法=バイノーラルレコーディングを使ったテイクも収録されている。

 参加ミュージシャンはこのところライブやレコーディングを共にしているメンバーのsyrup16gのキタダマキ(b)やタナカジュン(Dr)などで、あくまで長澤の“ホーム”の雰囲 気を大切にした制作が行なわれた。一人一人に向かって歌うニュアンスが全開の、長澤らしいアルバムになっている。

 パーソナルな部分を大事に作られた『長澤知之III』について聞いてみた。

EMTG: 何をいちばん重点に置いて作ったアルバムですか?
長 澤:自分がいかにリラックスできるか、です。
EMTG: あはは、長澤くんらしいな。気分よく歌うってこと?
長 澤:ざっくり言えば、そうです。自分の部屋に友達を呼んで、お互い好きな歌を歌いあっている状況。お酒でも飲みながら、気楽にフリーに 歌ってるときが、自分でもいいなと思うので、それをレコーディングしたいというか。
EMTG: 本当にお酒飲んだの?
長 澤:はい。
EMTG: あはは、いいなあ(笑)。
長 澤:人前でライブをするのが怖くなった時期があって、自分が落ち着く環境に戻りたいなっていうのがあったんですよ。それが”IN MY ROOM”っていう企画ライブで実現した。だから、分かりやすく言うと、レ コーディングも”IN MY ROOM”でやれたらなっていうことです。僕は小心者なので、なかなかリラックスできなくて(笑)。
EMTG:”IN MY ROOM”っていうコンセプトでリラックスすると、どんないいことがあるん だろう?
長 澤:妄想ですかね(笑)。 お客さんの前で、スーパーいいギターを弾いて、スーパーいい歌を歌うっていう妄想。そこからクリエイティブな事を考えられたらいいなあっ て。
EMTG: 収録曲は、この企画に向かって書き下ろしたの?
長 澤:書き下ろしもあるし、昔の曲もあります。たとえば「犬の瞳」は、デビュー前にリリースしたアルバム『長澤知之』に入ってた曲で、博多のライブハウス“照和”で歌って、ムカついてたときの歌です。
EMTG:♪ ラヴソングを書かないと 奴らには分からない♪って、ずいぶん痛烈な歌詞だね。
長 澤:何のフィルターも通さずに、その時ストレートに言いたかった怒りの歌ですね。でも今回、再録するにあたって、今は自分がその怒りを俯 瞰して見れるようになったと感じた。怒りそのものは変わってないんですけど、少し大人になったかな。
EMTG: この曲はバイノーラルでレコーディングされている。ヘッドホンで聴くと、長澤くんのセルフ・コーラスにウワッと取り囲まれて、その迫力に 驚かされる。
長 澤:2005年に録ったテイクも同じアレンジなんだけど、それと聴き比べると、今回のバイノーラルの意味がよく分かるかなと思います。
EMTG: 昔のテイクは不特定多数にムカついてる感じだったけど、今回は特定の誰かに歌ってるように感じる。それを表わすために、バイノーラルにし たの?
長 澤:そうかもしれないです(笑)。
EMTG: 僕が面白いなと思ったのは、「享楽列車」。電車のホームから、フラッと線路に落ちちゃいそうな、アブナイ人の歌だよね。
長 澤:これは今回書いた曲。リアルタイムの自分の歌です。親がプロテスタントなので、子供の頃は天国と地獄の二元論で育ったんですけど、10代になるにつれて「怪しいな?」と思い始めた。「自分はどこへ行くんだろう?」って考 えたんですね。
EMTG:♪ どうせ避けられないんだから♪って死のことを歌う歌なんて、滅多にないよ(笑)。
長 澤:人生の完了は死ですから。だからそれまでどう生きるかが大事。悔いなく、楽しく。まあ、「悔いなく」はあり得ないけど(笑)。
EMTG: 死のことを歌いながら、生について歌ってるわけだ。
長 澤:そうです。だからタイトルは「享楽列車」なんです。
EMTG: あはは、面白い! 「宛のない手紙たち」も古い歌だね。
長 澤:10年前の曲です。死生観は、今とそんなには変わってないですね。
EMTG: 書いた曲を、宛のない手紙に例えてる。その一方で、照和でライブをやってる人の様子を辛辣な目で見ているね。
長 澤:そうですか? 対人関係はよりよくしようと思ってますけど(笑)。
EMTG: これもバイノーラル録音だね。
長 澤:これは実際に僕の部屋で録りました。もっと言うと、地元の福岡にいた頃の僕の部屋で歌ってる感覚で録りたかった。
EMTG: そういう“リアル”の追求の仕方があるんだね。
長 澤:フォークソングっぽくて、そんなに激しい曲でもないから、これを部屋で歌いたいって思って、バイノーラルで録ることにした。バイノーラルって、自分の部屋に招いた感覚におちいれるんですよ。聴いている人も、歌ってる人がまるで目の前にいるように感じられるし。
EMTG: 今回、バイノーラル録音は3曲あるけど、もう1曲の「いつものとこで待ってるわ」は?
長 澤:ライブでしか歌っていなかったから、そのイメージをキープするのも良いなと思って、ライブ会場でバイノーラル・レコーディングをしました。意固地にならずに、素敵にしたかったんです。
EMTG: それはいいアイデアだね。
長 澤:世に言う“セルフカバー”って嫌いなんですよ。どうせ自分の曲をやるなら、今歌いたい形で自由にやりたい。
EMTG: アルバムでいちばん楽しかったのは「そこぬけ」だった。
長 澤:実は僕、お酒の飲み方がよくない(笑)。 この曲の前は「そこ」っていう曲なんですけど、そこから「落ちるもんか」って思う気持ちをこめて書いたのが、この「そこぬけ」です。
EMTG: がははは。これをリリースして、さて来年は?
長 澤:今はまだ言えないですが、やってみたいライブのスタイルがあるので、それを実現するために、今、プランを立ててる最中です。
EMTG: また何かやってくれるんだ。楽しみしてます。ありがとう。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:杉田 真(ライブ写真)】





<長澤知之“IN MY ROOM”TOUR 2014”@東京キネマ倶楽部>


享楽列車MV


只今散歩道MV


「長澤知之III」
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/zhang-ze-zhi-zhiiii/id940321765
Augusta Family Club: http://www.augfc.net/category/NT_CD/ITKAUATS055.html

tag一覧 アルバム 男性ボーカル 長澤知之

リリース情報

best[and/drop](初回限定盤)

best[and/drop](初回限定盤)

発売日: 2016年07月27日

価格: ¥ 3,300(本体)+税

レーベル: WMJ

収録曲

disc1: and
01 Roots
02 Colorful
03 Glider
04 MirrorDance
05 Puppet
06 Bright Siren
07 Noah
08 World.Words.Lights.
09 Boohoo
10 Voice:日本テレビ系ドラマ「Woman」主題歌(2013)
11 UtaUtai no Karasu
12 Melody Line
13 Yeah! Yeah! Yeah! :三ツ矢サイダーTVCMソング(2015)
14 Astra Nova(CD初収録曲)スクウェア・エニックス「スターオーシャン5」テーマソング(2016)
15 Hana(未発表曲) 

disc2: drop
01 Tonbi
02 Image Word
03 Nam(a)e
04 Basho
05 Clover
06 March
07 Bell
08 End roll
09 Rainbows:映画「鈴木先生」主題歌(2013)
10 Missing:映画「ルームメイト」主題歌(2013)
11 One
12 Shout:TBS系ドラマ「家族狩り」主題歌(2014)
13 Run:J-WAVE FOOTBALL FEVER 2014 キャンペーンソング(2014)
14 Kokoro(CD初収録曲):NHKドラマ10「わたしをみつけて」主題歌(2015)
15 Sayonara(未発表曲)
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ビデオコメント

リリース情報

長澤知之III

長澤知之III

2014年11月25日

ATSUGUA RECORDS

1.只今散歩道
2.享楽列車
3.バニラ
4.犬の瞳 ※Binaural Recording
5.シャウト
6.そこ
7.宛のない手紙たち ※Binaural Recording at 506号室
8.そこぬけ
9.いつものとこで待ってるわ ※Binaural Live Recording at 月見ル君想フ 2014.7.29

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お知らせ

■ライブ情報

Nabowa 10th Anniversary New Album「4」&「Nabowa Meets Carlos Ni?o & Friends」Release Tour“ナボワ10周年イタル8周年”
2014/12/13(土)福岡 ROOMS
2014/12/21(日)東京 LIQUIDROOM

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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