「そこに鳴る」初の全国流通盤、ロックをコテコテに再現する面白さを詰め込んだ1枚

そこに鳴る | 2015.04.08

 関西を拠点に活動する男女混成3ピース”そこに鳴る”。まだ無名だが十分な伸びしろを秘めたロックバンドだ。メンバーは鈴木重厚(G・Vo)、藤原美咲(B・Vo)、たけむらともひろ(Dr)。あのKEYTALKを輩出したKOGA RECORDSから初の全国流通盤『I’m NOT a pirolian』を4月8日にリリースする。鈴木と藤原のWタッピング&ツインボーカル、和のテイストを感じるキャッチーなメロディが持ち味のこのバンド。かっこいいギターロックバンドかと思いきや、彼らが目指すのは「最強のコミックバンド」……?

EMTG :ふたりとも凛として時雨が好きだそうですね。
藤原:そうなんです。凛として時雨のコピーバンドをやってました。
鈴木:バンド名は“凛としてくれ”(笑)。
EMTG:その影響がサウンドにも出てますが、時雨以外に好きなアーティストは?
鈴木:TK from 凛として時雨です。
EMTG:同じじゃん(笑)。
藤原:わたしはBUMP OF CHICKENですね。「スノースマイル」を聴いて、そこからCDを集めました。それが楽器を始めたきっかけでもあるんです。中学校の友だちとコピバンをやって、先生をボーカルに入れて。「天体観測」を文化祭でやったりしてました。その後、チャットモンチーとかも聴くなかで、たまたまニコニコ動画で凛として時雨を見て。これはヤバいなと。ベースの女の人(345)がかっこいいと思ったんです。
鈴木:そういうのでいくと、僕はELT(Every Little Thing)ですね。中学生のときに10周年の武道館ライブを見に行きました。もともと音楽は好きじゃなかったんですけど、音楽番組とかで昔のカントダウンがチラッと流れるやつあるじゃないですか。あれで毎回、ELTが流れるときだけ、「お、このメロディ良いな」と思って。当時、小学校1、2年なんで、エブリ…リ?って、名前は覚えられなかったんですけどね(笑)。
EMTG:ふたりはどうやって出会ったの?
鈴木:大学に入ってオリジナルをやるようになるんですけど、その頃にmixiで出会ったんです。ドラム(たけむらともひろ )とは同じ高校でしたね。
EMTG:いまは大学4回生だから、ちょうど大学生活の期間とバンド歴が同じくらい。そんななかリリースする初の全国流通盤が『I’m NOT a pirolian』ですね。
藤原:だから大学時代の集大成みたいな感じなんです。
鈴木:最後のあがきというか。実はリリースのために録った作品ではないんです。バンドを続けられるかどうかを判断する最終手段の音源として作ったというか。
藤原:音楽を続けるか、就職をするか。
鈴木:できたものをいろんな事務所に送って、何もなかったら就職、何かあれば続けようっていう。それでめっちゃ良いスタジオでレコーディングをして。その1曲で古閑さん(KOGA RECORDS社長)が反応してくれて、リリースすることになったんです。
EMTG:古閑さんを振り向かせたのはどの曲?
鈴木:5曲目の「さらば浮世写し絵の如く」です。
EMTG:すでに無料配布もしてる曲ですね。和っぽいメロディが印象的でした。
鈴木:そうですね。キャッチーなメロディを考えたときに……あ、ちょっと長くなっていいですか(笑)? たとえばライブの打ち上げで対バンのバンドと曲づくりの話とかするんですよ。そしたら、みんな「良いメロディが」「キャッチーなメロディが」って言いはるんですね。でも自分が作ってるメロディは相手から良いと思われてないし、自分も対バンみんなの曲を全部良いとは思えてない事実があって。それが当たり前なんですけど。っていうことは自分の主観で作っても、それは良いものじゃない。良いっていう客観的な基準がいるなと思って。それが自分のなかでアニソンだったんです。だからアニソンっぽいあざとさの和メロを主軸にしようと思ったんです。
EMTG:あざといって言うと誤解を与えるかもしれないけど、良い意味でたくさんの人を惹きつけるテクニックが込められている曲というか。
鈴木:やっぱり世の固定給をもらって作曲してる方には敵わないですから。実は僕、就活でゲーム会社の説明会に行ったんですよ。そこはもう次元が違い過ぎて。各々が曲を作ってきて、実際に一線で活躍している方に感想を言ってもらうコーナーがあったんですよ。もう周りの就活生なんかほんまに「ファイナルファンタジー」で使えるやん、みたいなレベルの音源を作ってきてたんです。僕は明らかに負けてるって思っちゃったんですよ。バンドマンが作る曲って一辺倒で、手癖とかも多いし。それに比べて、植松(伸夫)さんとか桜庭(統)さんとかのジャンルの広さ、見のも深さはスゴいと思いました。
EMTG:それでも重厚くんはいまバンドを選んでるわけじゃない?それはなんで?
鈴木:これしかできないから……。こっちの世界で“超絶テクニカル3ピースなんたら”って言われるほうが、まだ芽があるなと思ったんですよ。
EMTG:と言うよりも、何かバンドでしかできないものがあると感じてるんじゃない?
鈴木:うーん……。それはあるにはあるけど。バイクの話をしていいかな。
藤原:うん、いいと思う。
鈴木:こないだ中学のときの友だちと飲みに行ったんです。そいつがめちゃくちゃバイクが好きで。その子が言うには、昔はバイクの前についてる丸いライト…わかります?
EMTG:ハーレーとかについてるやつ。
鈴木:そうです。昔はそれが好きだった。でも何年も乗り続けたら、横についてるライトのほうがかっこよくなってきたって言うんですよ。で、それが音楽にも当てはまると思ったんです。初めはみんなJ-POPから入るじゃないですか。それがいつの間にかマニアックなほうに走っていく。それを認めたくないんですよ。一番最初に丸いライトが好きだったその気持ちを忘れてほしくないんです。僕だったらELTとか時雨ですよね。そこからザ・フォール・オブ・トロイ(アメリカのハードコアバンド)とか意味わからんほうにも走っていくんですけど。だから僕らは横のライトを好きになる前の、丸いライトでありたい。きっかけのポジションにもなりたいと思ってるんです。
EMTG:それを自分がバンドでできることだと思ったんだね。
鈴木:そうなんです。
EMTG:ちなみにタイトルの『I’m NOT a pirolian』っていうのは?
藤原:ピロリアンは造語なんです。ピロピロする人みたいな。
鈴木:ギターでピロピロするのがバンドの代名詞だと思っていて。本職のメタラーの方々に比べたら全然。教則本の1ページ目ぐらいのことしかやってないんですけど。でも、これぐらいでテクニカルとか言われて、全然そんなことないねんけどなっていう、そういう意味でこのタイトルをつけました。
EMTG:ギターを弾かない人にはけっこう難しいことをやってるように見えるけど。
鈴木:でもコピーしてみたら案外簡単にできちゃうと思います。
藤原:ベースのフレーズとかは全部入門編みたいな感じです。
EMTG:ピロピロは「pirorhythm stabilizer ~only your world~」っていう曲のイントロもそうで。ミュージックビデオで見えるとふたりが背中合わせで弾いてますね。
藤原:それを見た人に笑ってほしいスタンスなんです。
鈴木:そう笑ってほしい!
EMTG:笑ってほしい?でもアー写の佇まいとかはクールだし、かっこいいものとして聴いちゃうから笑っていいのかなって感じだけど。
鈴木:うーん、どうやって喩えたら良いのかな。チョコレートを通常の糖度50倍ぐらいで作るみたいな。とにかく曲のなかでアホなことをたくさんしてるんです。
EMTG:いわゆるギターロックのかっこいいフォーマットをコテコテに再現する面白さ。
藤原:そう。最近はライブでもそういうのを取り入れてるんです。同じタイミングでギターのヘッドを上げるとか、柵にふたりで足をかけるとか。その遊び心をわかってほしい。
鈴木:まだ0.5割ぐらいだな……わかってくれる人。
EMTG:じゃあ最後にこういうバンドになりたいというの目標を。
鈴木:最強のコミックバンド、ということで(笑)。
EMTG:わかりました(笑)。ちょっと真面目に聴きすぎたね、ごめん!
ふたり:あはははは!

【取材・文:秦理絵】

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ビデオコメント

リリース情報

I’m NOT a pirolian

I’m NOT a pirolian

2015年04月08日

KOGA RECORDS

1. pirorhythm stabilizer ~only your world~
2. 夏の落とし物
3. ARAGAE!!
4. 真実の花
5. さらば浮世写し絵の如く(do-do gigantic evolution ver)

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お知らせ

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●鈴木重厚(G・Vo)
もこう

とりあえずひらがなで もこう と検索してください。神の言葉が聴けるのではないでしょうか。

●藤原美咲(B・Vo)
御茶ノ水 ATM

さっき御茶ノ水から下北沢にくるとき、お財布を見たら、300円しか入っていなくて、電車乗られへん…と思って検索しました(笑)。


■ライブ情報

「I’m NOT a pirolian」Release Tour 2015
2015/05/26(火)渋谷Milkyway
2015/05/27(水)仙台 enn2nd
2015/05/28(木)熊谷HEAVEN’S ROCK
2015/06/03(水)新潟CLUB RIVERST
w/Bentham・午前四時、朝焼けにツキ
2015/06/04(木)松本ALECX
w/Bentham・午前四時、朝焼けにツキ
2015/06/19(金)京都MOJO
2015/06/20(土)大阪2nd Line
2015/06/21(日)岡山CRAZY MAMA 2nd room
2015/06/23(火)神戸Star Club
w/Bentham・NECOKICKS

2015/07/05(日)下北沢SHELTER *tour final東京編
2015/07/10(金)名古屋CLUB UPSET *tour final名古屋編
2015/07/17(金)大阪心斎橋FAN J *tour final大阪編
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