奥華子、2015年最初のシングルは、思春期の記憶が蘇る青春ソング

奥華子 | 2015.03.16

 奥華子の2015年最初のシングル「君がくれた夏」は、映画『あしたになれば。』の主題歌として書き下ろした青春ソング。不器用だけど真っ直ぐだった思春期が蘇ってくるこの曲からは、彼女のソングライティングが深まっていることが伝わってくる。C/Wには春にぴったりの応援ソング「大切なもの」、インディーズ時代の未発表曲をレコーディングした「本当の世界」を収録。デビュー10周年を目前にした奥華子はいま、シンガーソングライターとしてさらに充実した時期を迎えつつあるようだ。

EMTG:ニューシングル「君がくれた夏」は映画『あしたになれば。』の主題歌。制作はどんなふうに進められたんですか?
奥華子:オファーをいただいたときはラフ映像が出来ていたので、それを見ながら作った感じですね。この映画は伝えたいメッセージがすごく明確なんですよ。監督さんもおっしゃってたんですが、「こういうのが青春だよね」というシーンがいくつも描かれていて。
EMTG:まさにど真ん中の青春映画ですよね。
奥:そうなんですよ。劇的なストーリーがあるわけではなくて、高校生たちの何気ない日常を切り取った映画だから、私自身もすごく感情移入できたんですよね。「自分にもこういうことがあったな」とか「こんなことしてみたかったな」って。楽曲に関しては、かなり映画に寄りそいながら作らせてもらいました。エンドロールのシーンを何回も見て、「ここでどういうイントロが流れたらいいだろう?」というところから考えて。「あしたになれば。」のもうひとつのポイントは、地方の町おこしの話だということだと思うんです。場所の設定が明確というか…。
EMTG:大阪・南河内の高校生たちがグルメコンテストに出場することになり、葛藤や悩みを抱えながら成長していくというストーリーですからね。
奥:私自身も「育った場所ってすごく大事なんだな」って改めて思ったんですよね。誰でも生まれ育ったところで最初の人間関係が生まれて、それが大人になっても続いたりするわけじゃないですか。そこで感じたことは歌詞にも出てると思います。
EMTG:「何でもない場所が 特別になるって」という歌詞は特にそうですね。
奥:地元にいるときは「ここは田舎でイヤだな」って思っていても、東京でひとり暮らしを始めると「いいところだったのかもしれない」って気づいたり、「じつは自由にやらせてもらってたんだな」って親のありがたみがわかったりしますからね。何とも思っていなかった場所や日常が、じつはすごく特別だったっていう…。大人になってからこそ気づけることもあるなって思いながら書いてましたね、この歌詞は。
EMTG:10代のリスナーはもちろん、大人といわれる年齢になった人たちも共感できる歌だと思います。ちなみに学生時代の奥華子さんはどんな感じだったんですか?
奥:えーと、出しゃばるタイプでした(笑)。合唱祭のときも「男子もちゃんとやりなよ!」って仕切ろうとしたり。いるでしょ、そういう人(笑)。
EMTG:(笑)。ドラマティックなストリングスを取り入れたアレンジも印象的でした。これはやはり、映画の主題歌ということを意識したから?
奥:そうですね。この歌も映画の一部というか、映画を観た人にもしっかり最後まで聴いてほしいなって。主題歌を作らせてもらうときは、その作品にしっかり寄り添いたいですしね。「こういう曲を作りたい」という目標がはっきりしているぶん、作りやすいところもあるし。自分の曲を作るときはぜんぜん違いますね、そこは。
EMTG:2曲目の「大切なもの」は“自分を信じて進めば、きっと光が見える”というメッセージが伝わってくるポジティブなナンバー。
奥:ここまではっきりとした応援ソングは、あんまりなかったような気がしますね。この曲に関しては、最初から“応援歌を作ろう”という目標があったんですよ。リリースも3月だし、新社会人をイメージしたところもありますね。といっても、就職したことがないからよくわからないんですけど…。
EMTG:そこは想像力で補って。
奥:そうですね(笑)。ただ、どこかに所属することって大事だと思うんですよね。私、バイトもしてなくて、事務所にも所属してない時期があったんですけど「もし明日死んでも、誰も探してくれないだろうな」って思ってたんですよね(笑)。恋愛でも仕事でも、自分の居場所を見つけることの大切さは同じじゃないかなって。
EMTG:アーティストとしての自分の居場所を探していた時期もあった?
奥:ありましたよ。いちばんそれを感じていたのは、路上ライブを始める前かな。なかなかデビューできない焦りもあったし、若いとき特有の「周りはわかってくれない!」っていう気持ちもあって。要するに認めてもらいたいという思いが先に来ちゃってたんですけど、路上ライブを始めてからは「大事なのはそこじゃない」って気づいたんですよ。「大切なもの」にも「目の前の一人を 笑顔にできたなら」という歌詞があるんですけど、目の前の人に歌を届けて、とにかく足を止めてもらうということだけを考えるようになったら、少しずつ上手く行き始めたんですよね。歌を聴いてもらえるようになって、人が集まってきて…。
EMTG:現実を受け入れて、そのときにやれることを全力でやるのが大事。
奥:そうそう。遠回りのようだけど、じつはそれがいちばん目標に近づけるんじゃないかなって。
EMTG:そして3曲目の「本当の世界」はインディーズ時代の楽曲。これ、素晴らしいですね?
奥:え、ホントに? 暗くないですか?
EMTG:(笑)いや、すごく本質的なことを歌っている曲だなと。
奥:あ、ありがとうございます。この曲を出したいと思ったのは「私が考えていることって、根本は変わってないんだな」って感じたからなんですよ。「本当の幸せって何だろう?」っていう。当時はいまよりも暇だったから(笑)、ずっとそういうことばっかり考えてた気がするんです。いまの自分には絶対に作れない曲だと思うし――あまりにもストレートなので――私自身も新鮮に聴けたんですよね。この曲を書いた頃は周りの人たちにめちゃくちゃダメ出しされてたんですけどね。バイト先のお客さんや家族に「華ちゃんの曲は暗いんだよ」って(笑)。
EMTG:こうやってリリース出来たんだから、その経験もムダではなかったのかも。「君がくれた夏」は2015年最初のシングルとなるわけですが、この後の展望について教えてもらえますか?
奥:今年の7月でデビューから丸10年になるんですよ。いままでは目の前のことを一生懸命やってきたんですけど、この先、どんな道を選ぶかによって自分の状況も変わってくるんだろうなって。アルバムも出したいし、ツアーも出来たらいいなって思ってるんですけど、「ここからが勝負だな」という気持ちが強いですね。

【取材・文:森 朋之】

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リリース情報

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発売日: 2017年04月11日

価格: ¥ 250(本体)+税

レーベル: avex trax

収録曲

01.Take me Take out

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君がくれた夏

君がくれた夏

2015年03月18日

ポニーキャニオン

1. 君がくれた夏
2. 大切なもの
3. 本当の世界
4. 君がくれた夏(Instrumental)
5. 大切なもの(Instrumental)
6. 本当の世界(Instrumental)

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悶絶
「悶絶」って、最近やたらと使うじゃないですか。ラジオのリスナーの方からも「こんなことがあって、悶絶しました」みたいなメールがけっこう多くて。ホントはどういう意味なんだろうと思って調べてみたんですが、「苦しみ悶えて気絶すること」だったんですよ。みんなすぐに“悶絶”って言うけど、絶対に気絶はしてないですよね(笑)。


■ライブ情報

「君がくれた夏」発売記念イベント
2015/03/18(水)名古屋・アスナル金山 明日なる!広場
2015/03/19(木)大阪・あべのマーケットパーク キューズモール 3F
2015/03/20(金)福岡・大丸福岡天神エルガーラ・パサージュ広場
2015/03/21(土)東京・サンストリート亀戸 マーケット広場

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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