フェスやイベントで多くのファンをかっさらってきたTHE ORAL CIGARETTES。ワンマンのキャパもジワジワと拡大し、今年は昨年以上の活躍が期待される中、待望のニューシングル「エイミー」をリリースする。彼らとしては珍しいメロディアスなラブソングだ。アッパーでライブ映えするレパートリーが多い彼らにとって、楽曲の優しさを前面に出したシングルというのは意外かもしれない。だが、幅広い層に響きそうなメッセージを持った歌にこそ、そんな彼らの本質が色濃く出ている気がする。しかもこの曲は、バンドが何年もあたためてきたというほど思い入れのある作品だ。今回、その「エイミー」をシングルとして世に出すことになった決意や心境の変化を、じっくりきいてみた。

EMTG：「エイミー」という楽曲そのものは、かなり前からあったそうですね。

山中拓也（Vo/G）：最初、詞を書いた時は、曲にするつもりじゃなかったんです。歌詞も当時は違っていて、単純にその時の感情をなぐり書きにした感じでした。今、思っていることを、とりあえず書いておこうと。それが震災を経て何年か経った時に、改めて大切な人と離れる辛さとか、大切な人とつながっていられる素晴らしさって、すごく共感できるなと思ったんです。そんな思いを伝えることができたら、この時の感情を書きとめていた意味があるんじゃないかと。それで、もう一度、自分の中で整理して曲にしました。

あきらかにあきら（B/Cho）：テーマがすごくハッキリしてたんでサウンドの土台はすぐに出来ましたね。アレンジに関しては、いいとことは残しつつ、粗いところは整えていく感じでした。

中西雅哉（Dr）：「エイミー」は、僕がORALに入る前からあった曲だったんです。でも、ライブでやる曲ではなく、移動中に車の中で聴くぐらいの感じでした。ただ、メッチャええ曲やし、好きな曲だったんですよ。ポジティヴでパワーのある曲やなと。だから、“なんでライブでやらないのかな”と思ってたんですよね。それがメンバーと話をするうちに、“すごく大切な時に演奏したい曲だから”ってことがわかってきて。

EMTG：このタイミングで「エイミー」が浮上したキッカケは何だったったんでしょう？

あきら：4月って僕らが上京してから1周年なんですよ。そのプレミアムライブ（＝4月25日の“THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマン 2015 SPRING~上京１周年記念、地元関西でなんばハッチゃけるぜの巻~”＠なんばHatch）を地元でやろうっていう話が最初に出て、そのタイミングでリリースできたら美しいねと。ちょうど今回のライブの意味と、僕らが「エイミー」をライブで演奏する意味が、すごくマッチしていたんですよね。

EMTG：なるほど。「エイミー」を4月22日にリリースして、25日にはライブで演奏するという――。確かに完璧なタイミングですね！　それにしても、まだ上京して1年しか経っていないのかと（笑）。この1年ってかなり濃いものだったんじゃないですか？

山中：メッチャ濃かった。

EMTG：もしかしたら、なんばHatchでは涙腺が崩壊するんじゃ……。

山中：どうですかね（笑）。ただ、僕は毎回、大阪ではなんかウルッときてるんですよ。だからこそ、今回のなんばHatchはビシッといこうっていうテンションでいきます！

EMTG：一方では、本来のTHE ORAL CIGARETTESらしい曲も収録されておりまして。2曲目の「GET BACK」は、完全にライブで盛り上がるタイプですよね。

中西：これはもうライブのための曲です！　僕らも欲してたんですよ、こういう曲を。ライブでやっていても楽しいし、勢いもあるし、やっぱり ORALらしいですよね。

山中：もちろん、ライブで盛り上がりたいっていう思いもあったんですけど、実は原曲は弾き語りの状態でみんなに聴いてもらっていて。それをバンドアレンジにしたんです。結果、僕自身も予想外なくらいガリッとした仕上がりになって。“あ、これはライブで使えそうな曲になったな”って思いましたね。たぶん、シゲ（＝鈴木重伸）のリフが強かったのもあったかもしれないけど、まさかここまでゴリゴリになるとは（笑）。

EMTG：ライブでの盛り上がりが想像できますねぇ。

山中：この歌詞を書いている時、あきらが隣の部屋なんで（メンバーは現在共同生活中）、気をつかって様子を見に来てくれたんですよ。ちょうど歌詞が全然書けなくて、部屋中に紙が散乱してたんですね。それを見てあきらは“えっ……”って引いてましたけど（笑）。

中西：マンガに出てくる紙くずだらけの部屋みたいになってたらしいですよ（笑）。

あきら：“なんか歌詞が進まへんわ”って言うので、“明日までとかじゃないから、のんびり書けば？”って言いました（笑）。

山中：声かけてもらってメッチャ落ち着きました。

EMTG：メンバー愛ですね！

鈴木重伸（G）：実は、僕だけ住んでる階が違うんで、なかなか部屋に行かせてもらえないんですよ（苦笑）。

中西：でも、気づいたら僕の部屋に入って、背後に立ってた時があったもんな。

あきら：怖い（笑）。

鈴木：借りたいものがあったから、行っただけです（苦笑）。まさやん（＝中西）もヘッドホンしてパソコンに向かっていたんで、ノックしても気づかなくて。

EMTG：ホラーですねぇ。このホラーつながりでいきますと、3曲目の「踊り狂う人形」という曲……かなりホラーというか、謎の曲ですよね。

山中：謎ですよね。

EMTG：歌詞の表現するところをいろいろ考えたんですが、どうにも不思議で（笑）。これは逆に意味を持たせないほうがいいのかなと思ったみたり。

山中：そうですよね！　僕も謎なんです、その曲（苦笑）。

EMTG：ええっ？

山中：最初のイントロのリフをシゲと僕の家で一緒に作っていたんですけど、そこから先が全然出来なくて。イントロのリフだけ残ってたんです。で、たまたま僕が地元・奈良の南の方……山ばっかりなんですけど、そこにひとりで行く機会があって、そこから家に帰る道中でサビのメロディーと歌詞が出てきて。そのあとすぐスタジオに入ってみんなで固めました。歌詞もその時、勝手にメロディーについてきたんですよ。当時は僕、あまり歌詞にこだわるタイプじゃなかったんです。ホントに「エイミー」くらいだったんです、考えて作詞したのは。で、今回も「踊り狂う人形」の歌詞を書き換えようと思ったんですけど、こういう感じの歌詞って今はもう書けないから、これはこれで残した方がORALの歴史が感じられていいのかなって。

EMTG：奈良の山と言えば生駒山ですか……。どうも神秘的な場所らしいですね。

鈴木：それって、もしかしたら僕らが何かに踊り狂わされてたかもしれないですね（笑）。

山中：そうか！　実は知らんうちに踊らされてたと（笑）。

EMTG：真偽はともかく、本能的な歌詞だったんでしょうね（笑）。さて、6月後半からは、エリア拡大と称して、ワンマン・ツアーも予定されております！　東京ではZepp Diver City TOKYOに初登場と、会場のキャパも上げてきましたね！

中西：僕ら、Diver Cityはまだ行ったことがないんですよ。

山中：こうなったら自分達が行くまで行かないでおこうかなと（笑）。

EMTG：地方ワンマンの本数も増えましたが、いかがですか？

鈴木：こういう規模のワンマンを最近やっていなかったので、それがすごく楽しみです。東名阪で会場の規模が拡大しているのはすごく嬉しいんですけど、お客さんと近い距離感のライブってすごく楽しいんですよ。なかなか地方でワンマンが出来なかったので、各地でしっかりバンドを見てもらえるのはありがたいと思います。

山中：最近、ワンマンがカッコいいバンドになりたいっていう考え方に変わってきたんですよね。ただ盛り上がればよし、みたいな全体を共有する感覚から、もう1回ステージそのものにフォーカスしてみようっていう考えに変化してきたんです。イベントでも、そういうテンションにシフトしているんですけど、やっぱりワンマンでは自分達を一番よく見せられるんで、そこはぜひ見て欲しいです。

中西：あと、ご当地系の何か……をやってみたいですね。

山中：それは僕も楽しみにしとくわ（笑）。

EMTG：ハードル上がりましたね（笑）。期待してます（笑）。

【取材・文：海江敦士】