「世界でやるなら、歌を捨てギターに集中しよう」世界進出を決断した布袋寅泰に迫る。

布袋寅泰 | 2015.10.16

 インターナショナル・アルバム『Strangers』が、UK&ヨー ロッパ、日本で同時発売になる。渡英してから3年。着々と準備を進めてきたHOTEIは、 ついにこの日を迎えた。
 デビュー30周年、COMPLEX の再結成、50才のアニバーサリーを大成功させたからこそ、長年の 夢だった世界進出を決断。「世界でやるなら、歌を捨てギターに集中しよう」と“ギタリストHOTEI” に回帰した。
 『Strangers』は、昨年、日本でリリースされたアルバム『New Beginnings』を土台にして、徹底的にUKにアジャス トする音作りが図られている。この作業にかかった1年半を、HOTEIは「貴重な 時間だった」と振り返る。
 日本ですでにレジェンドとなったカリスマは、システムもマーケットも異なる“新天地”に踏み出した。なんという勇気。アルバム・リリース直前に“来日”したギタリストは、「わくわくしてるよ」と微笑んだのだった。

EMTG:UKのレーベルとはいつ頃、契約したの?
HOTEI:今年に入ってからだね。世界にいつか出たいと思って以前からアプローチしていたけど、いくら日本で実績があるからっていっても、そのまま向 こうのマーケットで通用するものとは限らない。向こうのレーベルの対応が冷ややかだったわけじゃないけれども、時間がかかった。
EMTG:どんな話し合いをしていたの?
HOTEI:UKで活動するとしたら、どんな音楽を作るのかっていうところから話が始まった。僕が何をやりたいのか、 向こうのレーベルが僕にどんな音楽を作って欲しいのか。まずはそれを確認しながら、音で納得させるしかない。僕がこれでいいかなと思う と、物足りないっていう人もいるし。向こうのレーベルの人がいいっていうものが、僕にとっては物足りなかったり。それをアジャストするまでに長い時間がかかった。話でわかっても、体でわからないというか。「なんでもっとこうやらないの?」って、すぐ日本のルールに置き換えて語りたくなっちゃう自分がいたりして。でも向こうにいる限りは、向こうのルールでやらなければならないからね。だから、とってもフェアなスタートだったと思う。
EMTG:ヘヴィーな日々だったんだね。
HOTEI:ところが、この夏の7月7日にショーケースギグをやったら、周りの反応が一変したんだ。キャパ300人の小さなライブハウスに、100人 ほどの一般のお客さんと、200人ぐらいの業界の人を招いて、僕の生のギタープレイを聴いてもらった。僕が目の前でギターを弾いてる姿を見たら、僕以上に特徴的な人はいないと思う。片足上げながら弾くギタリストなんて、向こうにはいない(笑)。スタッフにもマスコミにも、すごく評判がよかったよ。やっぱり自分にとっての 最大の武器は、ギターを弾いてるパフォーマンスなんだなって痛感した。悶々と悩み、苦しみながら、やっとスタート地点に辿り着いて、初めて自信を持てたね。それで思い出したのが、30年前にBOØWYが初の海外レコーディングから帰ってきて、レコード会社のロビーで初めてやったコンベンション・ライブのことだった。あの日から、周囲の人たちが「BOØWYって面白いね」ってことになったわけじゃない。でもあんなバンドになるなんて、誰も予想しなかったかもしれないけど。あの心境とほとんど一緒だよね。だって向こうでは僕のことを誰も知らないんだから(笑)。
EMTG:そして自分の音楽をUKにアジャストする作業が本格化した。
HOTEI:そう。ただ“アジャスト”とか“ローカライズ”っていうと言葉が軽いけど、やっぱり向こうの雨に毎日打たれて、わからないながらも向こうのやり方に自分がどっぷりつかって、『Strangers』の 完成間際になって、「あ、なるほど、そういうことか」っていう感じで、やっとガテンがいった。言葉では伝えづらい部分なんだけど。僕は来年35周年を迎える。35年間で、ありとあらゆることをやってきた。その中で、いろんな人に貢献もしてきたと思う。誰のために何をするかっていう目的がはっきりしてるほうが、僕は自分の力を出せるタイプ。ただ、なかなか自分に貢献する機会がなかった。今回、世界っていうマーケットに出て行くにあたって、日本人だっていうことを売りにするわけでもなく、自分の中から出てくる何をアピールするかっていうことを自分で考えるのは難しかったね。ずっとセルフプロデュースをしてきたけど、初めて向こうのプロデューサーに自分を委ねて作ったのが『Strangers』だね。
EMTG:完成した『Strangers』はどんなアルバム?
HOTEI:結果的に、個性的なボーカリストとのコラボレーションが半分、僕のギタリストとして、サウンドクリエイターとしてのインス トゥルメンタルが半分というバランスに落ち着いた。
EMTG:どんなコラボが実現したの?
HOTEI:ミックス作業中に、隣のスタジオでミックスをしていた同じレーベルのハードロックバンドBullet for My ValentineのボーカリストMatt Tuckと意気投合して、「タランティーノが監督したジェームス・ボンド映画のテーマソングのイメージでやろう」と話し合って、すぐに作ったのが新曲の「Kill to Love You」だった。こういう異色のコラボができるのが、ギタリストの特権。Mattやイギー・ポップと一緒にやれるのは、僕がギタリストだからなんだよね。このときミックスしていたBullet for My Valentineの 最新アルバム『VENOM』は、この8月に全英チャート3位になった。
EMTG:すごい出会いだったね。
HOTEI:日本のファンの皆さんの中には『Strangers』は“焼き直し じゃないの?”って思われる方もいるかもしれない。実際『New Beginnings』 収録のままの曲もある。それはインストゥルメンタルとして完成されているから、そのままにしただけ。当初から僕を含めたチーム全員が、インストゥルメンタルとコラボレーションのバランスのとれたアルバムにするべきだという点で意見が一致していた。それが、ギタリストHOTEIのあるべき姿だから。日本の皆さんがこの『Strangers』 をどうやって聴くのか反応も楽しみだ。この曲がこうなるのか、と楽曲の変化を楽しんでもらうのもいいし、逆にまったく新しい作品として、 世界の中のStrangersのひとりとして、このアルバムを聴いてもらうと、また違う音楽に聞こえると思う。それぞれの楽しみ方をして欲しいなと思う。「世界でやるなら、歌を捨てギターに集中しよう」って思ってこのプロジェクトを始めたわけだから、これから僕が伝えるべき相手っていうのは、まずはギターミュージックに興味がある人だね。
EMTG:相手は“世界のギターミュージック・ファン”だね。
HOTEI:うん。UKをじっくり攻めて、ひょっとしたらジャーマニーで火がつくかもしれない。そしたらまたジャーマニーじっくり攻めて。スウェーデンかもしれない。ヨーロッパをまわって、 アメリカにもアプローチしたい。アメリカを回るのは大変そうだけど、わくわくしてるよ。
EMTG:いいなあ、わくわく(笑)。 日本のファンにメッセージをお願いします。
HOTEI:前回の『New Beginnings』ツアーで、いつもとまったく違うインスト中 心のライブをやったとき、ファンのみんなが戸惑うかなと思いきや、彼らは長年僕を支えてきてくれただけあって、すごくウエルカムしてくれ た。僕が今回、世界に再アプローチするときに、すごく背中を押してくれたのも、ファンのみんなだと思う。その感謝もこめて、来年、35周年をしっかり迎えたいと思ってる。
EMTG:ありがとうございました。

【取材・文:平山雄一】

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リリース情報

全裸

全裸

発売日: 2019年09月04日

価格: ¥ 3,200(本体)+税

レーベル: JIJI INC.

収録曲

01.メリーさん
02.O・P・P・A・I
03.Japanese-Pop-Music
04.D.B
05.A-Han!!
06.拝啓、いつかの君へ
07.会心劇未来
08.加速エモーション
09.ワンナイト・ラヴゲーム
10.等身大アンバランス
11.疑問疑答
12.A BANANA
13.ハルカミライ
14.さよなら人色
15.一瞬も一生もすべて私なんだ
16.ありあまるフェイク

リリース情報

HOTEI「Strangers -Japan Edition-」[CD+DVD]

HOTEI「Strangers -Japan Edition-」[CD+DVD]

2015年10月16日

ユニバーサル ミュージック

[CD]
1.Strangers
2.Kill or Kiss (featuring Shea Seger)
3.Move It (featuring Richard Z. Kruspe)
4.How The Cookie Crumbles (featuring Iggy Pop)
5.Medusa
6.Kill to Love You (featuring Matt Tuck)
7.Battle Without Honor or Humanity
8.Texas Groove (featuring Shea Seger)
9.Barrel of My Own Gun (featuring Noko)
10.Walking Through the Night (featuring Iggy Pop)
11.Black Ships (Japan Edition Bonus Track)
12.Into the Light
13.Departure

[DVD]
「How The Cookie Crumbles (featuring Iggy Pop)」リリックビデオ
「Texas Groove (featuring Shea Seger)」リリックビデオ

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