a flood of circleの“本能”から生み出されたニューシングル『花』

a flood of circle | 2015.11.05

 バンドを続けることは、花が太陽に向かうのと同じ“本能”だと言う。11月4日にa flood of circleがリリースしたニューシングル『花』は、そんな佐々木亮介(Vo・G)の信念が刻まれた作品だ。その歌詞を「自伝」と呼び、結成10周年を前に、バンドの新たな代表曲を生み出す気概で挑んだ今作。インタビューでは、先日久しぶりに開催されたフラッドのインディーズ時代から続く自主企画ライブ「What’s Going On」の話から訊いたが、そこに込められた「いま、何が起きてるのか?」という問いかけは、実は、今作にも受け継がれていた。この時代、この場所で、佐々木が見出した、a flood of circleの闘い方とは?

EMTG:6~7月の自主企画ライブ「What’s Going On」ツアーでは、7月3日の(渋谷)クアトロでやったGLIM SPANKYとのファイナルを見させてただきました。
佐々木:グリムの(松尾)レミちゃんは大学の後輩なんですよ。今回は、いままで対バンをしたことのないバンドを呼ぶっていうのがテーマにあって。それで大阪と名古屋はtricot、4日の東京ではthe band apartを呼んだんです。あとは、Duranが脱退した流れのなかで、原点回帰的なイベントをやりたいって気持ちもあって。3人体制に戻って、ここからリスタートをするための企画って感じでした。
EMTG:改めて訊いてみたいんですけど、「What’s Going On」っていうのは、マーヴィン・ゲイの名曲からとったタイトルですけど、どんな想いを込めたんですか?
佐々木:その当時20歳ぐらいで、すごく好きな曲だったんです。日本語にすると、「何が起こってるか?」っていう意味なので、「これがいま起こってるロックのいちばん新しいものだぞ」っていう偉そうな意味を込めてつけましたね(笑)。
EMTG:今回グリムと一緒に「What’s Going On」に日本語詞をつけたバージョンを歌ったじゃないですか。それが本来の歌とは、少し違うニュアンスの歌詞になってて。
佐々木:もとはベトナム戦争のことを歌ってますからね。それよりも、いま身の回りで起こってることを意識して生きていけるかどうか、みたいなことを書きました。これは今回の「花」っていう曲にも繋がってくるんですけど。いま、すごく情報が速くて、いろんなものが移り変わっていく。それに対して、結局、この場所で自分がどういう生き方をして、どういう仕事をするのかっていうことが大事なんですよね。俺たちで言うと、自分の態度とか音楽がはっきりしてないと流されちゃう。だから、どういう時代であれ、a flood of circleは、ロックンロールっていう自分で呼んでる価値観をずっと提示し続けたいと思ったんです。やっぱりまだ、ロックンロールをメインストリームに持っていくっていう、自分の理想には全然届いてないし。「咲けてない」っていう想いがすごく強いので。
EMTG:それが「花」に象徴されて、《届いてくれ》っていう歌詞にも表れてる、と。
佐々木:そうですね。
EMTG:「花」では、バンドの「これから」も歌ってるし、佐々木くん自身の半生を綴った内容にもなっています。なぜ、そういうことを書こうと思ったんですか?
佐々木:来年(2016年)10周年という節目がデカいですね。バンド10年、人生30年(歳)が来年なので。ここまでメンバーも変わって、事務所も変わって、いろんなものが変わっていくなかで、このメンバーが3人いれば無敵なんだってことを確認しておきたかったんです。自分たちの核になる曲を作りたかったんですね。これから先、さらに10年、20年やっていくときに、バンドの新しい代表曲、新しい柱がないとダメだと思ったし。
EMTG:つまり代表曲を作ること、イコール、自分自身を曝け出していくような、強い曲になっていくっていう流れだったと。
佐々木:そういう曲を作ろうと思うと、アレンジとか歌詞に外部にあるものを取り入れて歌うんじゃなくて、自分のなかにあるものをちゃんと出す曲じゃないとダメだなと思ったんです。いま持ってるもので、あえてもう1回自分のなかで成熟させて勝負するっていう。そのために、生まれてこの方を全部書いちゃおうっていう。自分では「自伝」って呼んでるんですけど、そう決めるまでには時間がかかりました。最初は、「遺書」でいこうと思ったり。でも、そこで出てきたのが、メンバーが変わろうが、何が変わろうが、バンドを続けられちゃうっていうスーパーポジティブ野郎の俺だった。死ねなくなっちゃったんです。それで結局、これまでの人生を全て書くっていうのと、これから先の未来がどこに向かっていくか、まで書けた。いまフラッドが書くべき代表曲を書けた手応えがありますね。
EMTG:自分の半生であり、バンドの未来でありを書いたときに、出てきたワードが「花」だったのはなぜでしょう?
佐々木:まず、土に咲くものだっていうこと。自分たちの泥臭さとリンクしてるものですよね。あとは、こんなにいろいろあっても、なんで自分がバンドを辞められないのか、上を目指していくのかを考えたときに、いくら欲しいからとかじゃないわけですよ。本能だなと思って。どれだけ故郷がなくて転々としても、音楽が好きで、伝えたいことがある、これは本能でしかないと。そう思ったときに、「花」はどれだけダメなところに咲いても、陽のあたるところに向かっていくのが本能じゃないですか。だから、自分が……まあ、そんなに美しくもないですけど(笑)、みんなに見せられる花が美しければいいなと思うんです。
EMTG:そこからサウンド的にも、自分たちがいま持っているものを、より強くしていくような流れになっていく?
佐々木:そう。なんでこのタイミングで、この歌詞を書くのかっていうことをメンバーがすごく理解してくれてたんです。遺書とか、自伝っていうテーマを見つけていくときも、姐さん(HISAYO / B)は「絶対にそれは正しいと思う」って言ってくれて。これはフラッドのひとつの武器だなと思ってるんですけど、自分のなかにはもともとのルーツとして、ビートルズとか、そこから始まる洋楽のブルースロックがある。本当にいろいろな音楽を聴いてきたつもりなんですけど、やっぱりスピッツが好きっていうのがあるんですよね。そういう日本語のロックって、Aメロ、Bメロがあって、サビがちゃんとあるんですよ。この仕組みが俺のなかにすごく入ってる。だから、a flood of circleの代表曲を作ろうと思ったときに、”サビが超良くないとダメだ“と思ったんです。ここで、洋楽を意識しちゃうと、どんどんサビをかっこつけていっちゃうんですけど。今回はサビだけ転調して、超ぐっとくる仕組み作ったりしてます。
EMTG:ある意味J-POP的なベタな王道感はあるんだけど、それをちゃんとa flood of circleのオリジナルにしたことに意味があるシングルになったと思います。
佐々木:このまま無頓着にフラッド節みたいな曲はいくらでも作れると思うんですけどね。でも、ちゃんとここでアップデートしたって確信を持てることが大事だと思ったから。もっと伝えたい、お祭り騒ぎで終わらない曲を作ろうと思ったときに、それはある意味、子供でも、おじいちゃん、おばあちゃんでもわかるものを歌うことだと思ったんです。
EMTG:なるほど。それがいちばん最初に言ってたことに繋がるわけですね。ロックンロールをメインストリームに持っていきたいって。
佐々木:そうですね。そのときに、サービス精神に寄っていきたくないっていうのはありますけどね。「みんなこれがほしいでしょ?」「これがわかりやすいでしょ?」「こうやって踊るんだよ」じゃなくて。「これがかっこいいんだよ」っていうものをちゃんと自分たちが見せつけて、あとは「どう思う?」でいいんです。
EMTG:では、2曲目「鬼殺し」の話も。「花」で《強く生きていたい》と歌ったのあとに、《キルミー キルミー》と歌う。これがいいですね!
佐々木:なんかすみません(笑)。でも、そこに自分のなかのユーモアがあって。たとえば「花」の歌詞のなかに、《こんな世界は嫌だ さてどんな》っていう大喜利が出てくるんです。
EMTG:《答えのない大喜利の答えがニュースの一面》という部分。
佐々木:それって、すごいシビアじゃないですか。毎日が重く感じることなんですけど、それをちゃんと感じ取る。さっき言った「What’s Going On」(いま何が起きてるのか)を、ちょっと笑って言える感覚って大事なんです。だから、「花」をすごく集中して作ったあとの、ノリ一発で作った「鬼殺し」っていうのは、自分のなかのバランス感覚が働いてますね。
EMTG:この曲は、3人のグルーヴがめちゃくちゃかっこいいです。
佐々木:このレコーディングが意味があったなと思ったのは、この3人のグルーヴが固まってきたのをすごく感じたんです。(録るときに)クリックを聴いてないので。ノリで作った楽しさもあったけど、レコーディングのやり方を考えると、しみじみするんです。ひとつのリフでずっと持っていく曲なので、ダンスミュージックと一緒で、どんどんトランスして気持ちよくなる。そういうものを3人で表現できるようになってきたんです。
EMTG:で、3曲目の「Dreamers Song」はとてもポップな優しいナンバー。
佐々木:ふつうのバンドだったら、これをシングルにしてると思います(笑)。
EMTG:「花」が人生そのものだとしたら、こちらは人生のワンシーンを切り取っているような、さりげない曲ですね。
佐々木:基本的に歌詞って、その出来事を全部書くんじゃなくて、たった5分間ぐらいの出来事をギュっと書いてあるほうが強いと思ってるんです。そこに、その主人公の過去とか未来を想像できることがかっこいと思ってて。「花」はむしろ逆転してて、全部書いちゃうものだったんですけど、「Dreamer Song」はその歌詞の美学みたいなのは入ってますね。このふたりの関係をいろいろ想像できるように。
EMTG:《ハッピーバースデー》っていう言葉が出てくるから、バースデーソングっぽいけど、そうではなく。毎日生まれ変わる自分、というような曲?
佐々木:そうですね。毎日生まれ変わるはずなんですよ。これはいつもよく言うたとえなんですけど。油絵やりたいとか、ピアノやりたいなとか、それを15年ぐらい思ってるんですよね。たぶん、やらずに死ぬなと思ってて。だから、本当にやりたいことは、その場でできることで、実はもうやってることかもしれない。結局自分が何かを捨てて、何かを選択してきたのが、自分の現在地だと思ってるので。だから何かをやろうと思う決断ってすごく尊くて、それは誕生日ぐらい意味があることだっていうことですね。だからもうハッピーバースデーって言っちゃいました。
EMTG:この曲みたいに、フラッドの作品には毎回、いわゆる革ジャン、渋い歌声、ロックンロール、みたいなバンドのイメージとはちょっと違う曲を入れてきますね。
佐々木:それが難しい時代だからやりたいっていうのはあるんです。これだけシングルCDを出すのが難しい時代に、それでも出すっていうアティチュードですよね。出したからにはちゃんと売りたいし。だから、初回盤のDVDに何を入れるか、今回は歌詞カードに花の香りをつけてみたり。でも、これだけシングルCDにこだわっても、YouTubeで終わる人もいるだろうし、配信で聴く人もいるだろうし。それが悪いわけじゃなくて、時代のかたちだと思ってるけど。その1個ポンと聴いたものの奥行きに面白さが詰まってると思うんです。それはロックンロールと同じですよ。ロックンロールには100年の歴史があるっていう面白さがあるから。たとえば、アーティスト写真ひとつにしても、そこにはいろんなものを乗り越えてきた3人にしかできない写真の映り方が出てる。そういう物語の奥行きが、俺はステキなことだと思うんです。他のバンドを見てても、それを感じたいタイプだから。届いたらいいなと思いますね。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 シングル 男性ボーカル a flood of circle

リリース情報

La France

La France

発売日: 2019年11月06日

価格: ¥ 1,400(本体)+税

レーベル: Japan Music System

収録曲

01.La France
02.Hi Ho
03.Milky Way
04.Forever Summer

ビデオコメント

リリース情報

花(初回限定盤)[CD+DVD]

花(初回限定盤)[CD+DVD]

2015年11月04日

Imperial Records

[CD]
1. 花
2. 鬼殺し
3. Dreamers Song
4. Trash Blues -Band ver.-

[DVD]
収録内容:
(1) AFOC presents What’s Going On Tour 2015 "BRAND-NEW RIDERS"
7月に渋谷クアトロで行なわれた自主企画イベント「What’s Going On」の中から厳選された6曲を収録。さらに、AFOCでは初となるツアーリハーサル映像もたっぷり収録。
(2)「ベストライド」Music Video
(3)「ベストライド」MVオフショット&「ア・フラッド・オブ・サークル賞」ドキュメント映像

お知らせ

■ライブ情報

AFOC presents VS tour “BATTLE ROYAL 2015”
2015/11/20(金) なんばHatch
w/グッドモーニングアメリカ
2015/11/22(日) 名古屋ダイアモンドホール
w/HEY-SMITH
2015/11/27(金) Zepp DiverCity TOKYO
w/9mm Parabellum Bullet

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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