赤い公園が1年2ヶ月ぶりのシングル「KOIKI」で歌う”小粋”な心
赤い公園 | 2015.11.18
- EMTG:「KOIKI」ってタイトルが小粋ですね。このタイトルが曲を生んだのかと思いたくなります。
- 津野米咲:同時進行でしたね。字面も迷うことなく気づいたらローマ字になってました。
- EMTG:赤い公園のサイトに津野さんのこの曲についてのコメント(http://akaiko-en.com/news/598.html)が公開されていますね。この曲が伝えるのは、今のような時代に音楽をやることについての思いでしょうか。
- 津野:思ってることを言葉にしたらそういうことだった、という感じなんですけど、赤い公園がいつも、こういうライヴしたいとか、こういう人でありたいとか、4人で選択肢を選んでる時って、要は小粋になりたいってことだなって説明がついたんですね。そしたら、1回宣誓しておこうかなと思って、書きました。
- EMTG:小粋という言葉の定義はひとそれぞれかと思いますが津野さんが思う小粋とは?
- 津野:全てが備わっていた上に、成り立つ部分もあると思うんですけど、実際あってもなくてもいい部分で。ほんとにプラスアルファというか。逆に言うと、全てが備わってない人間にも、持ちえるものだと思うんです。歌詞にもありますけど、自分たちはいっぱいいっぱいなんだけれども、それはみんなそうで、自分が参ってる時にこそ、クッと少しだけ優しさを振り絞って、誰かのことを思えるような。それに伴って出てくる行動は全て小粋だと思います。いっぱいいっぱいの時ほど、人を認知するというか、自分の周りに。あなたの周りにも人がいる…。”ひと賛歌”ですかね。前回が”音楽賛歌”だとしたら。
- EMTG:最近は天変地異も多くて、音楽をやることへの遠慮もあったりしますよね。
- 津野:そうなるのもわかるじゃないですか。空気的に嫌な気分になるのもわかるし。でもそういう時に、バカじゃないふりしたいんですよね。どうしてもみんな。自分も一緒になって考えたい。というふうに空気を読んでいて。でも、自分が自分の中で生まれた悲しみではないですよね。外から刺激されて生まれた悲しみで。それよりも誰かの中に生まれた喜びは、そういうものによってなくしてはいけないし、喜んじゃいけない瞬間ってないはずだし。と思ったんですよ。そうでありたいなっていう。大切なひとに対しては特に。ああなんか、天変地異起きてる、世界やばい、でも私今日子供産まれました、ごめんなさい。結婚式延期しました、なんで?って。おめでとうって私たちだけでも言えたらいいと思いますね。
- EMTG:それは伝わりますね。この歌詞は、それをどう書いたら息に伝わるか苦労したのでは?
- 津野:そういう考え方が、考える時間みたいになることもあるし、ふと感覚的に感じることもあるし。私こないだ久しぶりに大阪のおばあちゃんちに行ったのに、おばあちゃんに気の利いたことの一つも言えなかったなとか。そういうちょっとしたこともあるんですよね。だから重たいことを重たい顔して書いてもなって。当たり前のことみたいに書きたかったというのはあります。音楽は、聴くひとがどう取ってくれるか、私たちはわからないけれども、やりたくてやってないと成り立たないものじゃないですか、自分が自分のためにやらないと。だからこの曲も、結構わがままだと思うんですけど、それが一番素直かなと思いましたね。
- EMTG:曲が完成するまでは大変でしたか?
- 津野:いや、バアーッと書いて、書いてみたら意外とまとまって。デモがもう少しゆっくり目だったんです。で、みんなに送って、いいじゃんやろうよってなってツアーに組み込んで。やっていくうちにみんなでアレンジを詰めていく。北海道から東京まで、1回も同じアレンジじゃなかった。2個連続で来た人とかがハッてなってた(笑)。骨組みはそんなに苦労して書いたものではないですね。そこから、みんなと、ライヴに来てくれたお客さんたちと、スタッフと、育てていったみたいなのって、滅多にない体験だったかもしれない。録音する前にライヴでやったの。初日の北海道は、いっぱい間違えた(笑)。
- 歌川菜穂:やっベー!とかなってた(笑)。
- 佐藤千秋:ギターソロとか毎回違ったよね。
- 津野:そう、途中で1回いいなって思ったのが出てきたんだけど、真ん中あたりで。でもそこまで毎日違うのやってたから、こないだと同じだねって言われるのが嫌で(笑)ベスト出たのに変えちゃった(笑)。
- 佐藤:挑戦するなーって思ってた。昨日のめっちゃ良かったのに~って。まだ上に行くんだ~って(笑)。
- EMTG:そのプロセスも記録してたら面白そうですね。
- 津野:やりながら、ここもう少し乗りやすくできたんじゃないかなとか、(お客さんの)反応を見て。この曲ダメだねってことにはならなくて、みんなで、ここもう少しこうやったらいけそう、って。もう、肌で感じて実践してというのをずっと繰り返して。
- EMTG:レコーディングしたものは、イントロがカッコいいドラムからですよね。
- 歌川:ああいう感じは初めてなんで、あんなに緊張することないです(笑)。ほんとに、マッチョになってやってます。外国人ドラマーになった気分で(笑)。
- EMTG:ドラムがマッチョになるとベースも?
- 藤本ひかり:ファンの人からめちゃかっこいいって褒められました(笑)。
- EMTG:こういう歌詞はどうですか?
- 佐藤:意外なのが、楽な気持ちで歌える。素直な曲だなと思うので、まっすぐに歌いやすいというか。歌詞もグッとくるので、歌いながらひたすらグッときてます(笑)。
- EMTG:初期の作品みたいなアグレッシヴさで伸び伸び演奏してる感じもします。
- 津野:バンドで演奏してるんだっていう気持ちが、意識せずともありましたね。前作で、ポップなものに挑戦していこうと思って、やってみて、自分たちがちょっと”お邪魔します”という感じで挑戦したものが、前作発売してからのツアーをやり終えて、そこからこの1年ちょっとの間に”お邪魔します”から、ちゃんと血肉になってきてる感じがして。そうすると自然と、楽しい演奏になってくるんだなっていうのを、自分たちの出来上がったのを聞いて思いましたね。ポップなものを地続きで追いかけてるんだけれども、それがまた4人バンドでちゃんと追いかけてる感じがして。階段を一つあがれたような気がしました。
- EMTG:ハッピーな「KOIKI」と対照的な「出鱈目」がカップリングで。
- 津野:これは、音楽的にやってみたいことを全部盛り込んだ、って感じですかね。5年前ぐらいに作った曲なんです。もともとバンド・サウンドではないアレンジだったんですが、打ち込みの魔神「蔦谷さん」に頼んで、ちょっとホントに、海を渡りたい、みたいな感じで、思い切って。
- EMTG:歌詞も抽象的だけど印象的。
- 津野:それこそ初期の、絵画的というか、そういうときのものですね。
- EMTG:いろいろ想像させてくれるのでジブリのような。
- 津野:それ嬉しいですね、私の中でも「森」感。
- 佐藤:そうだね、ちょっと湿ってる森。
- 津野:霧がかかってそう。こういうのも、今もなおやらしてもらえるのがありたがくて。気持ちを共有することが、「小粋」で出来るようになったとすれば、昔の曲だとかこの「出鱈目」だとか、みんなで一生懸命、景色を探そうとするんですよね。そういう作業ってバンドにとってもいいんじゃないかと思う。
- EMTG:最後は久保田利伸さんの「LA・LA・LA LOVE SONG」。皆さんが生まれた頃の曲かと思いますけど。
- 津野:ギリギリ生まれてます。でもこの曲自体ロングヒット、ロングセラーだから、みんなが知ってる曲という認識です。
- EMTG:歌っててどうですか?
- 佐藤:リズムがあるのが楽しいモードだったので、すごく楽しくできました。ちっちゃいつをいっぱい入れる、みたいな。ちょっともたって歌うとか、そういうのが楽しいなと思うモードだったので、とっておきの曲でした。
- EMTG:オリジナルにコーラスで入っているナオミ・キャンベル役は?
- 津野:藤本と佐藤です。”wanna make love”選手権したんです。一人ずつ歌って。私と歌川は笑っちゃってダメだった(笑)。
- EMTG:こんなファンキーな曲を赤い公園がやるとは意外でした。
- 津野「みんな好きなんですけど、演奏力が必要じゃないですか。そうなってきて、自分たちはやんないのかなと思ってたんですけど、今回やりたいなって思って、いざやってみたら、なんかちょっと意外といい感じにまとまって。この数年頑張ってきたんだな、私たちって。
セカンド・アルバム『猛烈リトミック』から1年2ヶ月、久々の新シングル「KOIKI」がリリースされる。素敵なテーマを持ったこの曲が生まれた経緯や4人の取り組み、そして対照的なカップリング曲「出鱈目」に久保田利伸のカヴァー曲が伝える赤い公園の現在形を楽しく語ってもらった。
【取材・文:今井智子】
リリース情報
Stay With Me
発売日: 2019年12月11日
価格: ¥ 1,364(本体)+税
レーベル: ソニー・ミュージックレーベルズ
収録曲
01.Stay With Me
02.MELTING SALTY ICE CREAM
03.アゼリア
04.No looking back
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