話題の不倫ドラマでヒット中、謎めいた4人組ロックバンド 神様、僕は気づいてしまった

神様、僕は気づいてしまった | 2017.05.29

 まったくのプロフィール不明にも関わらず、昨年末に初投稿したミュージック・ビデオ「だから僕は不幸に縋っていました」が、YouTube動画再生回数180万回を突破している要注目の4人組ロックバンド“神様、僕は気づいてしまった”。そんな、謎めいた名前のロック・バンドが、波瑠や東出昌大らが出演する話題の不倫ドラマTBS系 火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』の主題歌に異例の大抜擢。ソリッドでスリリングな心の叫びを歌うロックチューン「CQCQ」は、先行配信段階からヒットの兆しをうかがわせるクオリティ高いナンバー。そんな、“神様、僕は気づいてしまった”、通称“神僕”が5月31日、初CD作品『CQCQ』でついにデビュー。そこで、作詞作曲を手がける中心メンバーであるギタリスト“東野へいと”と、テクニカルなベーシスト“和泉りゅーしん”の二人に“神僕”とは何なのかを聞いてきました。

EMTG:ミュージックビデオで仮面をかぶっていた正体不明感が満載のバンドなので、まさかお会いできるとは思いませんでした。
東野(G):そんなひた隠しにする感じではないんですよ。
EMTG:えっ、そうなんですね。では、バンド結成の経緯から教えてください。
東野:まず、最初はギターの僕とヴォーカル&ギターの“どこのだれか”の二人で集まってはじまりました。で、もともとバンドをやるんだったらベースは“和泉りゅーしん”と ドラムは“蓮”に頼みたいなってずっと思ってたんです。
EMTG:“東野へいと”さんが、“神僕”のコンセプトというかバンドのイメージを作られた感じ何ですか?
東野:そうですね、僕が割とバンドの基盤を作って、メンバーが枝を生やしてくれる感じですね。
EMTG:インパクトが強すぎるバンド名だと思うんですけど、なぜ?
東野:音楽をやる上で僕たちが大事にしたいのが、特に若い子たちに聞いて欲しいなって思っていて。10代って人生の中で、すごく長く時間を感じる時期じゃないですか? ゆえに思い悩むことが多いと思うんです。自由度もなく、抑圧されている時期でもありますよね。
EMTG:自分の可能性がまだ見えないフワっとした時代ですもんね。
東野:悩みを言葉にしようとしても人それぞれ違うがゆえに共有することも難しい。そんな不安定な気持ちを持ったティーンエイジャーに対して大人が、たとえばメンヘラや中二病とか、形にできない感情を無理やり形にして押し込んでしまっていることってあるじゃないですか? 押し込んで片付けようとする行為って浅薄だなって。だからこそ、“神様”って表現を使っているんですよ。ギリギリの表現になるんですけど、人間って思い悩んでしまった末に縋るのって偶像しかないって思うんですね。
EMTG:おおお、かなり深い考え方ですね。
東野:すごく有能な科学者でさえも、自分の思惑通りにいかない現象が起きてしまった時、神頼みになってしまう瞬間ってあると思うんです。そんなきっかけでマッド・サイエンティストなオカルトの科学に走りはじめるとか。割と晩年の科学者の歴史を遡るとなりがちで、天才発明家ニコラ・テスラもそうだったんですね。人間って中二病とかメンヘラとか、正体のわからないものに対して偶像を作り上げてそこに押し込んでしまう癖があると思っていて。たとえば神様が存在するものだとするじゃないですか? 神様が存在するとして人間が縋ってしまったら、神様はすごくご満悦というか、ドヤ顔だと思うんですよ。“人間まんまと騙されている。俺に縋ってる!”みたいな。だからこそ“そもそも僕たちはお前(偶像)の存在に気付いてるし、それはどうなの?”みたいなことを音楽を通して伝えたかったんです。バンド名に文章で“気づいてしまった”という表現をしているのも、そんな理由です。
EMTG:なるほどね。そっちの気づきなんだね。そして、“神僕”のすごいところとして、TBS系 火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』の主題歌タイアップの成果によって、リリース前からすでにヒットしていることですよね。
和泉:歌詞はドラマの影響も受けているんです。とはいえ、ドラマを全く知らない人がこの曲を聞いても“神様、僕は気づいてしまった”の曲として、ちゃんと成り立つように両立させることを大事にしました。
EMTG:それこそタイトルにもある“CQCQ”という言葉は、旧来の無線のコミュニケーションにおいて不特定多数にメッセージを投げかけるワードですよね。
東野:ドラマでは、人間のわがままな部分だったり行き詰まるというテーマが恋愛で描かれているのですが、その人生の先が見えない感じを、航海をしている人たちが恐れる遭難に置き換えて「CQCQ」で歌にしてみました。
和泉:純粋にメロディがいいんです。道筋は見えていたんで自分なりの演奏で、東野には出来ないけど自分には出来るやり方でベースを表現してみました。こだわったポイントは歌を邪魔しないこと。
東野:それってバンドで大事なことなんです。
和泉:たまにダメだしされますけど(苦笑)。“神僕”は、声が特徴的なバンドなので、それを邪魔してはいけないと思いつつ、でも替えが効く演奏であってはいけないので、そこは自分にしかできないことをやろうと。
EMTG:楽曲を聴いてトータルで完成度が高いと思うんですけど、ヴォーカルの“どこのだれか”による軽やかで気持ちいい快楽ポイントをちゃんと突いてくるヴォーカルのすごさ。普通の人じゃ歌えないような動き方をしてますよね。
東野:僕が書く曲は相当難しい方だと思うんですけど、ちゃんと歌いこなしてくれるんです。それを引き立て、完成させてくれるベーシストとドラムがいて、それぞれが足を引っ張らずに100パーセントの曲を200パーセントや400パーセントにまで高めあえるのがバンドの魅力なんですよね。これまで一人で音楽をやってることが多かったんですが、バンドやって良かったなって感じています。
EMTG:ちなみにヴォーカルの“どこのだれか”はどんな感じの方なんですか?
和泉:音楽的にめちゃくちゃストイック。たぶん4人の中で一番生活を音楽に注ぎ込んでいますね。エネルギーをほぼほぼ音楽に費やしてる印象がある。
東野:そうだね。彼は、音楽がないと生きていけないタイプ。音楽やるために生まれてきているんだろうなと言わざるを得ない。僕は音楽やらない時はゲームとか好きなんですけど、そんな話をしていると割って入ってきて“そんなことやってると音楽できなくない?”みたいに言ってくるぐらいで。音楽やるか死ぬかみたいな。生きるイコール音楽な人なんです。
EMTG:バンド名のインパクトに負けない、素晴らしいメンバーが“神様、僕は気づいてしまった”というバンドには集まっているということですね。
東野:みんなちゃんと、それぞれが役割をわかっているというか。替えが効かない4人ですね。
EMTG:ドラマーの“蓮”さんはどんな人なんですか?
和泉:一番個性が強いかな。
東野:実はこのバンドの、他とは違った特殊なバンドらしさの部分はドラムの彼が支えているかなと。
和泉:音楽のバックボーンが全然違うんです。ヴォーカルと僕ら二人は聴いてきた音楽というか育ってきた音楽が近いんです。ドラマーの“蓮”は、文脈が全然違う所にあるので、そこが音楽的に面白いです。
EMTG:ちなみに、“神僕”はイラストであったり、ミュージックビデオでインパクト強い仮面姿であったり、バンド名からして偶像的なイメージを発信されていますが、インスピレーションを受けたものなどあるのでしょうか?
東野:ディズニーの話をしていいですか?
やりたいことは漠然とあって、バンドで体現したいこともいっぱいあるんです。ディズニーランドってエンターテイメントの最大級表現じゃないですか? 各アトラクションも人気で3時間くらい行列で待たされるんですけど、3時間待ってても別の列ではアトラクションが始まってるので、それを見ていたら3時間が一瞬で全然飽きなくて。バンドで僕がやりたいのはコレなんですよ。誤解を恐れずに言えば、ライブハウス叩き上げみたいなライブバンドは尊敬すべきなんですけど、自分がやりたいのはそういうことじゃなくて、ライブをやるにしても騒ぐための音楽じゃなくて、その世界に入り込んでオーディエンスも登場人物の一員として、没入感のある物語に入り込めるような音楽をやりたいんですね。それがすべてですね。

【取材・文:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)】

tag一覧 シングル 神様、僕は気づいてしまった

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リリース情報

CQCQ

CQCQ

2017年05月31日

ワーナーミュージック・ジャパン

01.CQCQ
02.オストリッチ厭離穢土
03.週刊アンソロポロジー

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