豪華ダブルタイアップ・両A面シングル『アイオライト/蒼い炎』でイトヲカシが届けたい“メッセージ”とは。

イトヲカシ | 2017.11.01

 3rdシングル『アイオライト/蒼い炎』に収録されている2つのタイトル曲は、深いメッセージをリスナーに届けるだろう。映画『氷菓』の主題歌「アイオライト」とテレビアニメ『ブラッククローバー』のエンディングテーマ「蒼い炎」――この2曲で描かれているのは、端的に言い表すならば「どのように自分の人生を歩むか?」ということだ。リスナーそれぞれが自分自身を重ねて受け止めるのだと思う。イトヲカシは、どのような想いをこめて今作を生み出したのか? 伊東歌詞太郎(Vo)と宮田“レフティ”リョウ (Ba・Gt・Key)に語ってもらった。

EMTG:「アイオライト」は、映画『氷菓』をイメージして書き下ろしたんですか?
伊東:そうです。映画を観させて頂いてから書きました。「青春感」を楽曲に色濃く反映することができたと思っています。
宮田:『氷菓』の劇中に出てくる奉太郎くんは省エネ主義で、きらびやかな青春とは無縁な生活を送っていたんですけど、ヒロインの女の子と出会って変わっていくんですよね。だからきらびやかなものを作品に添えられたらなと思っていました。
EMTG:奉太郎くんは省エネ主義ですけど、お2人はどうなんでしょう?
伊東:僕がエネルギーをどんどん使うのは、音楽だけな気がします。音楽以外のところは奉太郎くんみたいな感じなんですかね? いや。音楽があるからこそ、他のことにもエネルギーを使えるっていうことなのかもしれないです。音楽がなかったら全然喋らなくて、どこにも行かなくて、つまんない人間になっている気がします。
宮田:僕らのレコーディングをしてくださるエンジニアさんは100kmマラソンに出たりしますし、料理が好きな知り合いは「新しい包丁を買ったんだ」って、いきいきとした表情で言うんですよね。そういうのを見ると、自分との違いを感じます。僕らは音楽以外に打ち込めるものがないんです。つまり音楽に対しては、燃費が悪いということ?
伊東:悪いだろうね(笑)。『氷菓』の奉太郎くんは、この映画の物語を通して「省エネじゃない自分、ちょっと好きかも……」って思い始めるんです。僕らも「音楽」というものが見つかって、省エネではなくなったのかもしれないです。
EMTG:ときめくものがあるとエネルギーを使うから、省エネ主義に心の平穏を感じていた奉太郎くんの気持ちもわかりますけどね。「アイオライト」の中に出てくる《あぁ 灰色の世界はそれなりに平和で》は、そういうフレーズとして受け止めました。
伊東:省エネ主義が平和だというのも確かなんだと思います。我々に関しても「音楽に振り回されている」っていう言い方が、ある意味合っていますから。
宮田:幸せの定義って人それぞれですけど、振り回されるものがない灰色の世界が幸せって考える人もいるでしょうね。
EMTG:でも、心の奥底ではドキドキできることを求めていたりするんじゃないでしょうか?
伊東:はい。相反する感情を持っていて、矛盾したところもあるのが人間なんだと思います。
宮田:どういう主義かは別として、燃料を搭載しているというのは、みんな同じなのかもしれないですね。
EMTG:エネルギーを注げる音楽を見つけていなかったら、歌詞太郎さんとレフティさんの人生はどうなっていたと思います?
伊東:こんなに感情豊かに生きていなかったかもしれません。あるいは、別のことにエネルギーを使っていたかも。
宮田:僕もそうだと思います。でも、少なくとも、こうして音楽と出会って、音楽によって振り回されていることに関して、後悔はしていないんです。
伊東:「楽しい」っていう気持ちがなくなった時に終わりだと思うんです。その気持ちをなくすことは、この先もイメージできないですね。
EMTG:「楽しい」と感じられて、エネルギーを注げるものを見つけたいというのは、多くの人が向き合う課題ですね。社会に出る前の子供たちは、特に悩むんじゃないでしょうか。
伊東:そうですね。でも、「夢中になるものを探そう」って躍起にならなくてもいいんじゃないでしょうか。
宮田:躍起になって無理に選んだり、「これをやってたらかっこいいんじゃないか?」って考えて何かを選ぶのはやめた方がいいです。焦らない方がいいと思うんです。そういうのは、何かの拍子に見つかったりもするんでしょうし。
伊東:伊能忠敬なんて、日本各地で測量を始めたのは50歳過ぎてからなんですよ。
宮田:そうなんだ?
伊東:うん。
宮田:つまり、俺らも、この先、何か別のものに打ち込む可能性があるっていうことですよね。来年、突然、そばを打つ楽しさに目覚めている可能性だってありえる?
伊東:ありえるねえ(笑)。
EMTG:(笑)「アイオライト」は、みずみずしいサウンドも気持ちいいですね。
宮田:ありがとうございます。きらびやかなものをサウンドでも表現したいと思っていました。
伊東:「ここはこうしていった方がいい」とか「歌詞がこうだから、こういう音を入れたい」というようなことを話しながら作るのが楽しかったです。
EMTG:イトヲカシはクレジットを「作詞/作曲:イトヲカシ」にしていますし、2人のいろいろな要素が融合して曲が生まれているんですよね?
伊東:はい。「2人の内のどっちが作った」とかではなく、「どっちがどう作ってもイトヲカシ」っていうか。
宮田:僕らは一緒にコライトすることが多いので、編曲も作詞作曲も線引きが曖昧なんです。だから「イトヲカシの曲」として聴いてもらう方が、お客さんとしても楽しんで頂けるのかなと思っています。いろいろ能書きがあればあるほど本質がぼやけていくので、「とりあえずまず聴いてください」みたいな気持ちでいます。
伊東:「イトヲカシとそれぞれの活動、どっちがメインでどっちがサブなのか?」ということも全然考えていませんしね。そういうのがあると、「“お互いのいいところが集まってイトヲカシ”というものにしたいよね」というところからかけ離れてしまうんですよ。イトヲカシはお互いの作るものを尊敬し合っていますし、こういう形でありたいと思っています。
EMTG:なるほど。あと、もう1つのタイトル曲「蒼い炎」は、テレビアニメ『ブラッククローバー』のエンディングテーマですが、これは「アイオライト」と通ずるテーマを感じました。「周りの人たちが確かな何かを見つけて進み始めているのに、自分は出遅れている」という不安に焦点を当てた曲ですよね?
伊東:まさにそうです。夢を見つけていない人の方がマジョリティーだと思うんですよ。だけど、夢を見つけた人を見ていると、自分がマジョリティーであることを忘れてしまって、へこんでしまったりしがちなんですよね。不安を抱えているのも、「何かになりたい」と思っているのもみんな一緒。そういうことをこの曲で伝えたいと思っていました。
宮田:こういうことで特に悩むのがティーンエイジャーなんでしょうね。そういうリスナーに聴いてもらえたら嬉しいです。僕に関しても、こういうことを考える場面がよくありますよ。何もしなかった休日とか、「俺が立ち止まっている間に3歩進んでるやつがいるんじゃないか?」とか考えたり(笑)。「それが人間なんだぜ」って思っています。
伊東:焦ったとしても、それでいいんだよね。自然なことなんだから。
宮田:うん。みんなそうなんだと思います。
EMTG:この曲は《教室を抜け出そう》というフレーズが印象に残ります。教室内の価値観がすべてではないってことですよね?
伊東:はい。おっしゃる通り教室がすべてではないんですよ。教室で輝きを放てないからって、それで終わりではないんですから。
宮田:学生の時は教室がすべてになりがちですけど、そんなことは全然ないんですよね。
EMTG:大人は会社が嫌だったらやめますけど、子供にとって学校をやめるって、なかなか実行できないことじゃないですか。だからこそ大人以上に子供は苦しむことがあるんじゃないでしょうか?
宮田:ほんとそうなんですよね。子供にとって「学校をやめる」っていうことは、なかなか選択肢の中に入ってこないでしょうから。
伊東:だから学校内で何かつまずくと、世界が終わったような感覚になっちゃうんです。でも、「そんなことはないんだよ」っていうことを伝えられたらいいなと思います。僕自身も教室で輝くタイプではなかったので、「外にも世界はあるよ」っていうことを伝えたいです。
EMTG:真剣に人生と向き合って音楽を作っているイトヲカシの姿が伝わってくるのが、今回のシングルですね。この作品をリリースした後は、どんな活動をしていきたいとイメージしていますか?
伊東:アクセルを無理に踏んで「行くぞ!」っていうような気持ちはないんです。地に足をつけて、「お客さんを愛している人間が作る音楽を、お客さんが愛してくれる」っていう、大事にしなきゃいけないものを大事にしていく活動をしたいです。それが結果的に前に進むことになったらいいなと思っています。
宮田:改めて大切なことに立ち還りたいです。自分たち自身に嘘をつきたくないし、気持ちに正直でいたいし、常にワクワクしていたいです。そういう環境でいられるように話し合いもしながら、1つ1つのことを大事にして活動をしていきたいです。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

アイオライト/蒼い炎

アイオライト/蒼い炎

2017年11月03日

avex trax

01 アイオライト
02 蒼い炎
03 アイオライト(Instrumental)
04 蒼い炎(Instrumental)

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