踊Foot Works ファーストフルアルバム『odd foot works』をドロップ

踊Foot Works | 2018.04.24

 昨年、初の音源をリリースし、着々とその存在が知られるようになっている踊Foot Works(オドフットワークス)。Pecori(Rap)、Tondenhey(Guitar)、SunBalkan(Bass)、fanamo’(Chorus)という編成が示している通り、彼らをわかりやすく紹介するならば“バンド”ということになるのだろう。しかし、“バンドスタイルのヒップホップ”と言い切れるものでもなく、“ラップを採り入れたロック=ミクスチャー”というわけでもない点に注目させられる。彼らの音楽は、ソウル、ファンク、ジャズ、R&B、ヒップホップなど、ブラックミュージック的なエッセンスを基調としつつ、ロックやポップスに対しても開かれている。ジャンルを問わず、刺激的なものを無邪気に吸収してきた4人による表現が「踊Foot Works」ということなのだと思う。1stフルアルバム『odd foot works』について語ってもらいながら、彼らの独自性の背景を探ってみた。

EMTG:fanamo’さんが働いていたスタジオにお客さんとして来ていたのがPecoriさんとTondenheyさんだったんですよね?
fanamo’:そうです。2人は、それぞれ別で来ていて、僕と意気投合したんですよ。
EMTG:どんな音楽を一緒にやろうと思っていました?
Pecori:全員が共通して好きだったのはR&Bとかヒップホップ、ブラックミュージックだったので、“THE ROOTSとか、バンドサウンドにラップがのっかるようなことをやってこうか?”っていうのは、なんとなくありました。でも、はっきりとした方向性みたいなのは決めてなかったですね。
EMTG:みなさんの世代が音楽を聴くようになった頃って、ヒップホップとかブラックミュージックは、もはやマニアックなジャンルでなくなっていたはずですし、ロックとかも含めて幅広く聴いて育ってきましたよね?
fanamo’:はい。だから、そういうのが自然とやってる音楽に出てると思います。
Pecori:“ここにギタリスト(Tondenhey)がいたから、そういう編成でラップしよう”っていう感じでもあったので、明確なビジョンみたいなのはなかったんですよ。
SunBalkan:僕が踊Foot Worksに誘われたのも、“ライブをすることになったから”っていう理由でしたし。
Tondenhey:声をかけたのは、去年の3月末くらいだっけ?
SunBalkan:多分そうだと思う。最初の音源(フリー配信された1st EP『ODD FOOT WORKS』)が出た直後だから。
fanamo’:ライブをやることになったから、“どういう編成にする?”っていう話になったんですよね。僕はもともとベースを弾いてたんですけど、DJをすることにしたので、“このままだとベースがいないぞ”と(笑)。
EMTG:(笑)特定のリスナー層をイメージして音楽をやっているわけでもなさそうですね。
fanamo’:はい。お客さんも、まちまちですし、お父さん世代もいますから。
Pecori:そこを強みとして捉えてます。SANABAGUN.やSuchmosとかを聴きつつ踊Foot Worksを知った人もいれば、PSGとかを通じて知った人もいるんですよ。
Pecori:NEWSの加藤シゲアキさんがラジオで取り上げてくれたことがあるんですけど、“シゲが言ってたから聴く”っていう感じで聴き始めた人もいたみたいです。
SunBalkan:今ってジャンルの壁みたいなのって、あんまないですからね。
EMTG:そういえば、Pecoriさんってモノノフなんですっけ?
Pecori:はい。ももクロが僕を育ててくれました(笑)。
SunBalkan:そういうメンバーたちのグループでもあるので、やってる音楽はどんどん変わってきました。これからも変わっていくんだと思います。
Pecori:曲を制作する過程では“こういう感じ”っていうのがあるんですけど、例えばアルバム全体を通してとかでの決まった方向性はないんです。
EMTG:みなさんの音楽にある一貫したものを敢えて挙げるとすれば、アンニュイな空気感みたいなことではないでしょうか。
SunBalkan:たしかに、そういうのはありますね。
Pecori:はっきりと口にしていたわけではないんですけど、1st EPの「夜の学校」(夜の学校 Feat. もののあわい)のMVをアップした頃から、“多幸感とその裏にある悲しさ”というか“悲しい笑顔”みたいな曲を作りたいっていうのはありました。メロディにも、そういうものは出てると思います。
Tondenhey:“泣きながら笑ってる”みたいな感じだよね?
Pecori:うん。まさにそういう感じ。
EMTG:“都市生活者の悲哀”みたいなニュアンスを僕は感じているんですけど。
Tondenhey:東京ではありますけど、都内ではなくて西の方なんだと思います。
fanamo’:多摩地区の公団の感じ?
Tondenhey:そうだね。
Pecori:“東京っぽい”っていうのは、よく思われるところなんですけど、田舎から東京に来た若者の感じですね。
EMTG:1st EPに入っていた曲名であると同時に、みなさんがやっているイベント名でもある“TOKYO INVADER”に表れている疎外感みたいなことでは?
Pecori:そうですね。東京生まれだったら、全く違った感覚を抱くんでしょうけど。
EMTG:六本木がホームの人っていう感じじゃないですもんね。
SunBalkan:六本木、行きたくないです(笑)。
fanamo’:世田谷生まれの人とかにジェラシーは感じますけど(笑)。
Tondenhey:東京の西の方ってベッドタウンですし、そこで育った人も、中央の都内で暮らしてる人とは何かが違うんです。酸性雨が団地を溶かす匂いが、僕は好きなんですけど、そういう感じなんですかね。
EMTG:団地の広場にある意味不明なブロンズのオブジェが酸性雨を浴びて徐々に朽ち果てていく感じとかも、みなさんの音から浮かぶイメージです。
Tondenhey:その感じもあるかもしれないですね(笑)。
EMTG:ものすごく簡潔にみなさんの音楽を言い表すならば、「非パリピ」では?
SunBalkan:おっしゃる通り! パリピになれないんです。
fanamo’:なりたいんだろうけど(笑)。
Pecori“パリピにきれないし、なりたいんだけど、なりたくねえよ”っていう感じなんだと思います。
EMTG:サウンドにも独特な風味を感じます。“生サウンドです!”と言い切れる感じではないですから。
SunBalkan:ドラムがトラックであることが音の独特な雰囲気に影響してるのかもしれないです。だから“生バンドのヒップホップ”っていう感じでもなくて、“トラックと生のベースとギターとラップ”っていう感じなんですよね。生楽器を入れるんだったら、ドラムは生でやる人の方が多いですから。つまり、生じゃなくても表現しやすいものを生にして、より良いものを作っていきたい気持ちがあるということです。
EMTG:リリックに関しては、言葉遊びを豊富に盛り込むスタイルなのに、意外となんとなく意味っぽいものが浮かび上がってくるところが面白いです。
Pecori:断片的な文字を散りばめて、どこかしらが聴いてくれる人の何かに当たってくれればいいなと思って書いてます。投げた文字が破片として飛んで、聴いてくれる人それぞれが持ってる景色とかとリンクしたらいいなと。“ここ!”っていうのが全員違う感じにしたいんですよね。
EMTG:例えば「Bebop Kagefumi」の《明日の影を跳び越えろ 未来の影は透明だから》とか、商品のコピーになりそうなくらいキャッチーですね。
Pecori:ありがとうございます。意味というよりも、ワードとしてのパンチの強さを考えてることが多いです。自分の中での想いとかは一応あるんですけど、そういうのを上手く隠してます。聴いてくれた人が自由に解釈してくれたら嬉しいんですよ。深読みとか大歓迎です。
EMTG:妄想が膨らむタイプのリリックでもありますね。例えば「milk」は、空虚さを描いているニュアンスを感じつつ、スケベな方向で解釈する人もいるんじゃないですかね。
Pecori:なるほど(笑)。
Tondenhey:エロい妄想ができる曲っていいですよね。いろんなヒット曲でも、そういうのがありますから。
EMTG:リリックを読んで妄想するのは、リスナーにオススメしたい楽しみ方です。「正論」の《ベッピンlikeaハルクホーガンのお通りだな》とか、女の子に実際に言ったらブン殴られるでしょうけど。
Pecori:そうでしょうね(笑)。
EMTG:「nightcrawler」の《ボブマーリーに憧れてる角刈り 勘違い体操座りそれはマーヴィン》も、パンチが利いていますね。これは酩酊感みたいなのが音から漂ってくる曲でもあります。みなさんの音楽はお酒好きな雰囲気も出ている気がするんですけど。
Pecori:たしかに、酒は好きですね。
Tondenhey:録りながら飲んでることもありますから。
EMTG:踊Foot Worksの曲は、“聴いてるとお酒を飲みたくなる音楽”と言うこともできると思います。
fanamo’:そういうものとして聴いてもらえても嬉しいです。
SunBalkan:俺らも、今度、スタジオで爆音で聴きながら飲むか?
Tondenhey:そうだね。自画自賛飲み(笑)。
EMTG:(笑)聴きながら、いい時間を過ごせますね。
Pecori:リスナーにも部屋とかで聴いてもらいたいです。特にリリックは日常に潜む何かに焦点を当ててますから。日常に寄り添ったものでありたいなというのは思ってます。
EMTG:「大家族」は、ゴスペルっぽい雰囲気もありつつ、すごく日本の日常の空気感ですよね。“団地ゴスペル”っていうニュアンスで僕は捉えているんですけど。
SunBalkan:“団地ゴスペル”って、めっちゃいいですね(笑)。
EMTG:こういう曲に代表されるように、日常に自然に溶け込む音楽の集合体が、今作ということでは?
Pecori:そうですね。映画じゃないですけど、1曲目の「時をBABEL」が月が出てる空の下でイヤホンで音楽を聴きながら歩いてるプロローグで、終盤の「19Kids Heartbreak」で1回幕を閉じるイメージです。そして、最後の「逆さまの接吻」が、カーテンコールみたいな感じかも。
EMTG:構えずに楽しめるテレビ番組的な構成ですね。
Pecori:はい。ドリフのような。
EMTG:つまり「逆さまの接吻」は、ドリフの番組のエンディングに流れる「いい湯だな(ビバノン・ロック)」の《ババンババンバンバン》っていう感じ?
Pecori:そうです!
EMTG:言い切ると誤解を生みそうな気もしますが(笑)。
Tondenhey:まあとにかく、いろんな曲を聴いてもらって、音の楽しさみたいなものが伝わったらいいなと思ってます。
Pecori:ライトな感覚で聴いてもらえたら嬉しいです。
fanamo’:いろんな受け止め方を自由にしてほしいんですよね。
SunBalkan:音楽をマニアックに聴いている人に反応してもらえるものにもなってると思います。
EMTG:では、そろそろインタビューを終了しますが、最後に何かおっしゃっておきたいことは?
Pecori: OFWあいうえお作文をやっていいですか?
EMTG:お願いします(笑)。
Pecori:OFWのO。“おつかいが”。
Tondenhey:F。“不器用な僕たちは”。
fanamo’:“不器用”ってBだよ。
Tondenhey:そうか(笑)。
Pecori:じゃあ、俺の最初も変える。“思い出は”。
Tondenhey:F。“踏み出す度に”。
fanamo’:W……えーと、“轍になるんじゃないかな”。
EMTG:EMTG作文も行っておきますか?
SunBalkan:EMTGのE。“円満な”。
fanamo’:M。“モグラたちが”。
Tondenhey:T。“飛んでく前に”。
Pecori:G……“ガンギマリ”?
EMTG:最低じゃないですか!
fanamo’:どういう意味の作文なんだよ(笑)。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

odd foot works

odd foot works

2018年04月25日

ビクターエンタテインメント

01.時をBABEL
02.Bebop Kagefumi
03.NDW
04.正論
05.nightcrawler
06.milk
07.大家族
08.19Kids Heartbreak
09.逆さまの接吻

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■マイ検索ワード

「2018 メンズヘア」
ということで、各メンバーが今後やってみたい髪型を発表したいと思います。

Pecori
パンチパーマ

Tondenhey
ボウズ

fanamo’
「スラムダンク」のフクちゃんみたいな2ブロック

SunBalkan
白髪アフロ



■ライブ情報

TOKYO INV.SPECIAL-1 year after that-
05/03(木)下北沢GARAGE

YOUNG POP CLUB vol.2
05/10(木)梅田シャングリラ

next.tube
05/21(月)池下CLUB UPSET

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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