ゆびィンタビュー vol.11 Maison book girl
ゆびィンタビュー | 2019.04.03
作品のリリースとライブを重ねる毎に着々とファンを増やしているMaison book girl。最新シングル「SOUP」も、彼女たちの前進をさらに後押しすることになるだろう。現代音楽に通ずる前衛的な要素を核に持ちつつ、独自のポップミュージックを開花させてきたのが、これまでのブクガの軌跡だ。今作にもそういう姿が反映されているのだが、より広い世界へと踏み出そうとする意思を一層深くこめている印象が強い。このような変化の背景にあるものとは? 矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミに語ってもらった。
PROFILE
Maison Book Girl
2014年に結成した矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミの4人によるニューエイジ・ポップ・ユニット、Maison book girl(メゾンブックガール)、通称「ブクガ」。ライブを重ねるごとに実力をつけ、アイドルシーンに新たな波紋を広げていくであろう同グループは、音楽家・サクライケンタによるプロデュース。変拍子でありながらも一聴するとクセになるサウンドと歌唱力やダンス、コンセプチュアルな演出は業界関係者からの定評も高く、多くのリスナーを虜にし、今後さらなる活躍が期待される。
- 「鯨工場」は、ブクガのことを歌っていますよね?
-
コショージメグミ(以下、コショージ)
そうですね。井上 唯(以下、井上)
サクライさん(音楽家・サクライケンタ。Maison book girlのトータルプロデュースを手掛けている)からも「ある意味、ブクガのことを歌ってんだよね」っていう話は、されていました。でも、その点をもっと突っ込んで訊こうと思ったらボヤかされました(笑)。- (笑)例えば歌詞の中に出てくる《本の家の少女たち》って、Maison book girlの和訳じゃないですか。こういうわかりやすさは、今までにあまりなかった気がします。
和田 輪(以下、和田)
私もなんとなく変化は感じてます。こういう私たち目線で歌える歌詞っていうのは、「気持ち出していいよ」ってことなのかなと思いました。矢川 葵(以下、矢川)
前作の『yume』を経て初心に還る感じもあるのかなと。アーティスト写真も、私たちの最初の写真がコラージュされてたりしますので。「原点に還って頑張るぞ」っていう気持ちが入ってる曲なのかなと感じてます。- アーティスト写真に関しては、左右にいるコショージさんと唯さんの表情が怒っているように見えるんですが、何か意味があるんですか?
-
井上
この撮影の時、雨が降ってたんですよ。土砂降りとまではいかないんですけど。私の頭上だけ木がなくて。だから私は怒ってるんです(笑)。コショージ
私は集合写真の前に個人写真を撮ってたんですけど、その時に雨にさらされて怒ってます(笑)。- (笑)曲の話に戻りましょう。「鯨工場」は、ここからさらにブクガの表現を届けようとする姿も、すごく伝わってきます。
井上
今回もいい曲ですからね。もっと広まってほしいと思ってます。- 着実にファンは増えているじゃないですか。
井上
みなさんが「広がってるよね」って言ってくれるんですけど、あんまり実感がないんですよ。「鯨工場」で歌ってるみたいに《僕らの唄はどこに届いているんだろう。》っていう感じなんです(笑)。和田
この曲でそういうことを直接投げかけたので、そこに対するレスポンスがあればいいなっていうことも思ってます。- こういう曲を今回生み出したサクライさんの変化は、何か感じるものはあります? 引っ越したという話は聞いているんですけど。
矢川
「どこに引っ越したんだろうね?」ってみんなで言ってます。コショージ
誰にもどこに引っ越したのか言ってないらしいです。事務所のスタッフとかも知らないらしいんですよ。井上
誰も知らない。和田
怖い話。矢川
突然どこかに逃亡しないでほしい(笑)。- (笑)これは僕の勝手な解釈ですけど、「鯨工場」はサクライさんの姿も入っているような印象がしたんですよね。《何も知らないで音符を置いてる。小さな部屋の中で何かを造ってた。》とか、曲を作っているサクライさんの姿が自ずと浮かんだので。
コショージ
なるほど。サクライさんは、「Maison book girlが、外の世界に気づき始めた」みたいなことも言ってました。- 気になるキーワードが、すごくわかりやすく散りばめられている曲ですよね。《体だけ無い鳥》と《首だけの鳥》って、「レインコートと首の無い鳥」との繋がりを感じさせますし、《ベランダ》や《青いカーテン》とかも過去の曲とリンクする要素ですから。
コショージ
そうなんですよね。- いつにも増してリスナーに謎解きを委ねている感じがするんですけど。
コショージ
毎回そうなんですけど、サクライさんとしては「謎解きをしてください」っていうより「えっ? わかるでしょ?」みたいな感じなんだと思います。- 「こういう意味かな?」という妄想のしがいがあります。
和田
ぜひ、どんどん妄想してください。矢川
そういうところも楽しんでいただけると嬉しいですね。私は、メンバーそれぞれがブクガとして表現できる部分がどんどん出てきてる気もしていて、歌として楽しんで聴けるものにもどんどんなってると思います。和田
4人それぞれ歌が上手くなってると思います。最近、4人でユニゾンで歌った時の相性がすごくいいってことを強く感じるようになりました。コショージ
この4人の歌声は、「飾りっけがないからこそ真実味がある」みたいなところがあるのかなと私は感じています。- いい意味でエモーショナルになり過ぎないところがありますよね?
コショージ
そうなんです。だからスッと言葉が入ってくるのかなと思ってます。- リスナーの立場から言うと、そういうトーンの歌だから、おとぎ話のような非現実感があるのが魅力なんです。妖精を見ているような感覚になりますからね……とか言いつつ、みなさんのラジオのトークとかを聴くと、妖精感は全然ないんですけど(笑)。
和田
そうなんでしょうね(笑)。井上
でも、ステージでは妖精のように見られているんだったら、何をしてもそういうフィルターがかかるから得かも(笑)。- (笑)「鯨工場」のみなさんの歌も、とても心地よい幻想性があります。サウンド面に関しては、王道のポップス的な要素が盛り込まれているのも新鮮でした。変拍子ではないですし、《夢の中のあの話》のブロックとか、PPPH(読み:ぱんぱぱんひゅー/ヲタ芸の一種)ができそうじゃないですか。
コショージ
たしかにできますね。- 昔の曲から挙げるならば「cloudy irony」もPPPHできる要素が入っている曲ですけど、しているお客さんっていましたっけ?
和田
する人はいるけど推奨もしてないという感じですね(笑)。コショージ
今回の曲も「PPPHをしてほしい」っていうサクライさんからのメッセージは含まれてはいないと思います。もし、初期からこういう曲をリリースしてたら、PPPHが起こるグループになってたんですかね?矢川
どうだろう?- ブクガの曲は全体的に意表を突く展開の方が、発揮されることが多いですよね。
井上
そうですね。今回のツアー(Maison book girl tour 2019 spring)の初日の福岡で「鯨工場」と「長い夜が明けて」もやったんです。「長い夜が明けて」は、途中で音が止まるところがあるから、曲が終わったと思われて、お客さんが拍手をしたんですよ。でも、再開された瞬間「どや!」って感じになりました(笑)。- (笑)振付は今回もミキティー本物さん(二丁目の魁カミングアウトのメンバー)ですね。
井上
はい。この前、二丁目の魁カミングアウトとの2マンライブがあったんですけど、「あんたたち、すごく踊れるようになって、歌えるようになってる」ってミキティーが言ってくれたんです。その後の振り入れだったので、気合は入ってたんだと思います。矢川
私たちもスムーズに振り入れができました。- ライブの時のインスト曲の「int」もそうですけど、ブクガのダンスパフォーマンスって演劇的なところもありますよね。ああいう振付を発明したミキティーさんは、すごいですよ。
和田
私たちはジャンルが謎のダンスをなんとかしてやってるので、他にはないものになってるのかなとは思います。矢川
まだ試行錯誤の段階みたいな感じもあります。知り合いでダンスをやってる人がいて、教えてもらおうとしてダンスレッスンに行ってたんですけど……。コショージ
ええっ! いつ? そういうとこ、やっぱトド松みたい。和田
ほんとだね(笑)。- 今、判明した事実のようですね(笑)。葵さんは、『おそ松さん』のトド松っぽい行動がよくあるんですか?
コショージ
はい。葵って、そういうことが多いんですよ。「最近、実はジム行ってる」みたいなことがよくあるので。矢川
だって、みんなのレベルに合わせないといけないから。和田
だから人知れず?矢川
うん。頑張らなきゃって。和田
ダンスレッスンに行ってたの、今知った……。井上
そうだったんだ……。コショージ
気づかなかった……。- 秘密レッスンを受けた先生は、ブクガについて何かおっしゃっていました?
矢川
私が習った先生は、コンテンポラリーをやってる人なんですけど、ブクガの動画を見せたら、「何をどう教えたらいいかわからない」って言ってました(笑)。レッスンでは基礎的なターンの仕方とかを教えてもらったんですけど、ブクガのダンスに関しては「お手本とかがないから、自分で踊りこむしかないよね」っていう話になりました。和田
ダンスのプロにとってもそうなんだね。矢川
うん。10分くらいある「int」に関しても、「よくやったね。これ、どこでカウントとってるの?」って言われました。- そういうダンスをステージで表現しているみなさんが素晴らしいのはもちろんですけど、振付を考えているミキティーさんも偉大ですよ。ミキティーさんに優しくしています?
井上
はい。大事にしてます(笑)。矢川
最近、二丁目の魁カミングアウトさんのメンバーに先にブクガの振付をなんとなく教えて、4人が踊ってくれたのを私たちが見て練習したりもしているんです。グループ全体で私たちの力になってくれていて、感謝してます。- 2曲目の「長い夜が明けて」も、ライブで観るのを楽しみにしているお客さんがたくさんいると思います。「鯨工場」と繋がりがある曲ですよね?
矢川
そうですね。「鯨工場」のレコーディングを先にしたんですけど、あの曲の中で《僕らの朝は次の唄で明けてゆくの。》と歌ってるので、「長い夜が明けて」と繋がってるって、私もすぐにわかりました。- 3曲目の「まんげつのよるに」も、引き込まれる世界があります。満月になるくらげの物語のポエトリーリーディングですけど、詩を書いたのはコショージさんですね。
コショージ
はい。ブクガが始まってすぐくらいの頃に自主制作の詩集を出したことがあったんです。その中に「きのこから生まれたくらげ」っていう詩があって、出てくるくらげがマッシュなんですよね。それがこの「まんげつのよるに」に、また出てきました。今回のポエトリーリーディングに関しては「海がテーマ」って言われたので、「海といえばくらげかなあ?」と。「月に願い事をする」みたいなことがあるじゃないですか。それとは逆に月が何かを願ってたら面白いかもしれないなと思いながら書いたのが、この詩です。井上
この詩、いい話なんですよね。サクライさんの歌詞とはまた別の世界観を、こうして毎回のポエトリーリーディングでできてるのは、とても良い積み重ねだと思ってます。和田
最初の頃はポエトリーリーディングになじみがなくて、どう読んだらいいのかわからなかったんですけど、歌のためにボイトレを受けたり、ラジオをやったりもする内に、自分の声を聴くのに抵抗がなくなってきて、どんどん面白さを感じるようになってます。矢川
毎回のCDにポエトリーリーディングが入ることによって、より特色のあるものにできていると思います。- 歌、ダンスパフォーマンス、ポエトリーリーディングとか、いろんな面で独創的なものを着々と確立できていますよね。
井上
これがブクガを4年間、続けた結果です(笑)。でも、まだまだなので、さらにいいものを届けられるように頑張ります。
【取材・文:田中大】
ゆびィンタビュー
シングル
女性ボーカル
Maison book girl

リリース情報

SOUP
2019年04月03日
ポニーキャニオン
1. 鯨工場
2. 長い夜が明けて
3. まんげつのよるに
4. 鯨工場(instrumental)
5. 長い夜が明けて(instrumental)
6. まんげつのよるに(instrumental)
2. 長い夜が明けて
3. まんげつのよるに
4. 鯨工場(instrumental)
5. 長い夜が明けて(instrumental)
6. まんげつのよるに(instrumental)

お知らせ
■コメント動画
■ライブ情報
SYNCHRONICITY’19
04/06(土)渋谷エリアライブハウス
Maison book girl new single「SOUP」リリースイベント
04/06(土)タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
04/07(日)タワーレコード渋谷店B1 CUTUP STUDIO
Tour final [ Solitude HOTEL 7F ]
04/14(日)昭和女子大学 人見記念講堂
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
■ライブ情報
SYNCHRONICITY’19
04/06(土)渋谷エリアライブハウス
Maison book girl new single「SOUP」リリースイベント
04/06(土)タワーレコード新宿店7Fイベントスペース
04/07(日)タワーレコード渋谷店B1 CUTUP STUDIO
Tour final [ Solitude HOTEL 7F ]
04/14(日)昭和女子大学 人見記念講堂
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
