大阪のライブハウスから全国へ――『出航日和』に注ぎ込んだ歌への愛情を語る。

林青空 | 2020.02.26

 キュートな笑顔、そして強い意志を宿した瞳の輝きが印象的なシンガーソングライター・林青空。地元である大阪のライブハウスで歌い始め、その名を確実に全国へと広げてきた彼女がいよいよメジャーデビューを果たす。アルバムのタイトルは『出航日和』。新しい旅の始まりを告げる作品を作り上げた彼女に、これまでの道のりや音楽に対する思いなども含めて話を聞いてみた。

林青空 1stアルバム「出航日和」Tesaer
EMTG:初のアルバム『出航日和』でいよいよメジャーデビュー。メジャーデビューというのは、青空さんにとってひとつの目標でもあったんですか?
林青空:周りの人たちがメジャーデビューしていくなかで、私自身はあまりよくわかってはいなかったんですが(笑)、面白そうだなっていう感じではいました。でも、いざこうして現実的になってくると、より新しいことにチャレンジできるし、知らなかった世界をたくさん見られるんだろうなっていう楽しみの気持ちがすごく大きくなってきました。
EMTG:以前レポートをさせていただいた東京初ワンマンから少し時間が経ちましたが、ライブも制作も、かなり充実した毎日のようですね。
(参考記事:林青空、東京での初ワンマン「LIVE TOUR FINAL~どこまでいける?~」)
林青空:すごく充実しているし、新鮮な毎日を過ごしています。今回のアルバムはここまで一歩ずつ進んできたなかで作ったひとつの節目のような作品。バン!と「メジャーデビュー!!」というよりは、ちゃんとひとつの線の上にあるなという感覚で作れたことは、すごく良かったなと思っています。
EMTG:では作品については後ほどじっくり伺うとして、まずは青空さん自身のこれまでを振り返ってみたいと思うのですが。
林青空:私は物心がつく前から歌うのが好きで、それが今もずっと続いているっていう自覚があるんですよ。両親から「常に歌っている子だった」って聞かされて、「やっぱり」みたいな(笑)。両親は楽器をやっているわけでもないし、どちらかというと歌も苦手。音楽は家でもよく流れていたけど、特別このアーティストが好きとかもなかったし、ライブに行くとかでもなかったんですよ。音楽に関しては放任でした(笑)。
EMTG:青空さんにとって、最初の音楽の記憶は?
林青空:それ、すごく覚えています。宇多田ヒカルさんの1stアルバム『First Love』が常に家で流れていたことと、車の中ではDREAMS COME TRUEさんの「LOVE LOVE LOVE」がよく流れていたので、私も好きでよく口ずさんでいたことは記憶にあります。
EMTG:放任とはいえ、ハイレベルな楽曲を口ずさんでいた子供だったんですね(笑)。それを聴いたご両親が喜ぶから、自分もうれしくなってさらに歌っていたとか?
林青空:いや、喜んでくれていた記憶は一切ないです(笑)。「いいね」とか「上手だね」とか言われたこと、1回もない(笑)。ただ自分が楽しくて歌っている、そんな感じでした。でも学校では歌のテストで褒められたり、遠足のバスのカラオケで「あの曲、歌って」って言われて歌うとみんな喜んでくれたりはしていましたね。中学では合唱部に入ったし、教室でも常に歌っていました。ちなみに当時、私の歌が好きって言ってくれていた女友達は(メジャーデビューが決まったことに対して)「ほらな」って(笑)。「歌っててよかったやろ」って、めっちゃ上から言われました(笑)。
EMTG:(笑)。歌は、1~2回聴いたら覚えられるような感じだったんですか?
林青空:いや、そんなことはないですね。歌いたい歌を何度も聴いて、この歌い方はどうやってやるんだろうとか、歌うことに関しては勉強型でした。ハモることが好きだったから、ケータイで自分の声を録音してハモリの練習をしたり。何か好きな曲ができた時にこの音が出ないのが悔しいとか、このシャクリはどうやるんだろうとか、自然とですが自分なりに考えながら練習していました。
EMTG:じゃあ、ほぼ独学で?
林青空:はい。「どうやって練習してるの?」って聞かれることも多いんですけど、もう“数”だなと(笑)。とにかく小さい頃から歌い続けているから、「特別なことはしてないけど、常に歌い続けていることかな」くらいしか言えることがないんです。でも1年くらい、体の使い方というか体幹については学ばせてもらいました。音域も広がったし、息の使い方とかも学べたので歌の幅も広がりましたね。
EMTG:ギターはいつからですか?
林青空:初めて触ったのは、小学校の5~6年生だったと思います。兄が友達からアコースティックギターをもらってきたんですけど、すぐに弾かなくなったから自分の部屋に持ってきて(笑)。ネットで弾き方を調べて、好きだったゆずさんの曲を楽譜見ながら練習していました。ギターを弾きながら歌いたかったから、そのための練習を。
EMTG:きっと上達するのも早かったんでしょうね。
林青空:いや、一度挫折しました(笑)。Fのバレーコードができなくて。
EMTG:それは仕方ないですよ(笑)。
林青空:だから挫折したというか、Fは諦めました(笑)。でもちゃんと歌いながら弾けるようになったのは、高校で軽音楽部に入ってから。エレキギターの柔らかい弦でまず弾けるようになって、アコギにはその後しばらくしてから戻ったんです。そこまではポロンポロンと、歌をちょっと助けるくらいにしかアコギは弾けませんでした。
EMTG:ピアノは小さい頃からですか?
林青空:3歳から高校3年生まで習っていたんですけど、全然上達せず、夢中になれずに終わりました(笑)。譜面のとおりにピアノで曲を弾くとか、譜面のとおりに合唱で歌うとか難しいですよね。「自由なほうが楽しいやん!」って思っちゃうから(笑)。
EMTG:自分の音楽とか、自分の表現したいものが気持ちとして溢れていたんでしょうね。
林青空:でも、ただ歌いたいっていうそれだけでした。最初は何か伝えたいとか全然なかったし、歌っていることが楽しいっていうだけですべてOKみたいな感じでしたから。
EMTG:なるほど。ちなみに以前はバンドも組んでいたんですよね。
林青空:はい。高校を出て大学でバンドを組んで、そこで初めて曲作りもしました。でも半年くらいでバンドがなくなり、「ひとりで歌ってみない?」というライブハウスの方の言葉もあって今のスタイルになるんですが、そう、その時にアコギを引っ張り出してきたんですよ(笑)。アコギを弾きながらステージに立つっていうのは、自分の中では全然想像していませんでした。
EMTG:転機が訪れたわけですね。
林青空:三国ヶ丘FUZZというライブハウスにいらっしゃったジャスミンさんという方だったんですが、本当に感謝をしています。「絶対に(ひとりで)歌ったほうがいい」ってずっと言い続けてくれていたので。
EMTG:音楽を趣味ではなく仕事にしていこうと思ったきっかけは何かあったんですか?
林青空:私は、大阪城ホールのステージに立ちたいという夢があって。最初は、仕事にしたいという感覚はなかったんです。でも、より多くの人に聴いてもらいたい、大きなステージに立ちたい……というふうに続けてきて、その中でこういう今のチームに出会い、結果的にお仕事として音楽をやっていくことになったというか。だけど今思うと、趣味でやっていくという選択肢は初めからなかったのかもしれないですね。人と関わっていくことで音楽の幅が広がるんだということがわかってからは特に、どんどん輪を広げていきたいなという気持ちでやってきましたし。お仕事にして、より面白い音楽生活をしていきたいなっていうふうに思うようになりました。
EMTG:曲を作るうえで大切にしていることや、こういう歌を歌っていきたいという軸になるような部分についてはどうですか?
林青空:私が聴いてきた音楽――ゆずさんとかもそうですけど、普通のことを歌っているから、普通に暮らしていてリンクしたりすることがあると思っていて。そういう音楽に影響を受けてきたので、私も日常の中で、ちょっとしたポイントでハッと思うとか、何か景色を見た時に思い出すとか、そういう音楽をやりたいなと思っているんです。普通のことを歌っていて、でも誰かにとってのあるタイミングで特別になるような歌を歌いたいなって。
EMTG:でも普通のことを歌うって、意外と難しい気がします。
林青空:私、「普通コンプレックスだね」って言われたことがあるんです(笑)。
EMTG:普通コンプレックス!?
林青空:特別な経験をしたことがないんです。反抗期もなかったし、兄弟喧嘩もしたことないし、人生においてのアクシデントもない。人にはない経験とかをしたことがないから、バーンと爆発的な経験を共感してもらえるような楽曲は書けない。それがコンプレックスだと思っていたんです。でも、私のように普通にというか、当たり前に過ぎていく日々を暮らしている私のような人に響く曲が書ければうれしいなって、そういう曲を書きたいなって思うようになったんですよ。自分は普通だと思っているから、自分の歌を歌えば普通の歌になる……普通じゃないんかもしれんけど(笑)。
EMTG:青空って名前が付けられた時点で、普通じゃない人生が始まっているような気もしますが(笑)。
林青空:(笑)。自分の名前、小さい時から大好きなんです。音楽を始めてからは何より覚えてもらいやすいから、いい名前つけてくれてありがとうって思っています(笑)。
EMTG:音楽性とも合ってますしね。
林青空:たしかに。本名で活動しているから(プライベートとの)区別が難しいなと思うこともあったけど、今はアーティストとしても個人としてもひとつの「林青空」に近づきつつあるなって思っています。活動を始めた頃よりも楽に、そしてありのままでいられているなって思いますね。
EMTG:そういう状態でメジャーデビューという新たな一歩を踏み出せるのは、すごく健康的ですよね。
林青空:そう! 健康的という言葉はすごくしっくりきます。本当に今でよかったってすごく思うし、このタイミングで、一緒に育ってきた曲たちも新たに音源として出せるのはすごく意味のあることだなって思います。私のいろんな一面を出せる曲たちが揃ったし、自己紹介にもなる1枚が出来上がりました。
EMTG:アルバムのタイトルは『出航日和』。表題曲の内容もそうですが、海を舞台にしたのは何か特別な思いがあったんですか?
林青空:「出航日和」という曲を書こうと思ったのが、事務所が決まってデビューが決まったタイミングだったんです。私はメジャーデビューというものをどう捉えているんだろうと考えた時に、初めてではなく、新たなスタートだと思ったんですね。私はいろんなものを見て、いろんな人に出会ってここまで一歩ずつ進んできましたけど、まさに健康的な状態の今、今しかないんだっていうことを伝えたい――そう思った時に、この「出航日和」という言葉が浮かんだんです。この日を待っていたという感覚がすごくあったので、自分の気持ちも楽曲たちもちゃんと準備をして、整った状態で「さぁ、今だ。旅に出るんだ」ということを海や船といったもので表現してみました。海が身近にあったわけではないんですけど、小さい時から青が好きだったので、空とか海とかが好きで。青空っていう名前もそうですし、自分にマッチするなというのもあって関連づけたかったというのもありますね。
EMTG:では改めて、1曲目の「出航日和」について聞かせてください。
林青空「出航日和」Music Video
林青空:自分がどういう思いで歌を歌ってきたか、これからどういう景色を見たいかっていうのを考えて、箇条書きにしたものを歌詞に落とし込んでいきました。弾き語りのデモの段階でもすごくひらける感じの曲になったと思っていて、アレンジがついてバンドの音になったことで、より青い海と青い空が浮かぶ曲になった。出来上がった時はめちゃくちゃテンション上がりました(笑)。
EMTG:MVやジャケット写真はグアムで撮影されたそうですね。
林青空:そうなんです。「せっかくだからいい青を撮りたいね」ってスタッフさんが言ってくださって、行かせてもらいました。ヒッチハイクで海まで向かうんですけど、決して自分の力だけではこの船出の場所までたどり着けなかった。いろんな人に出会って助けられてきたこれまでが、ちゃんと表現された内容になっています。
EMTG:2曲目の「光」は、ライブでもずっと大切に歌ってこられた曲ですね。
林青空:ライブ会場限定盤としてたくさんの方に届けてきた曲でもあるんですが、今回はより力強さや疾走感が増したバージョンでレコーディングしました。今の林青空にぴったりなサウンドです。常に、ずっと走り続けるという気持ちを持っていたいと思って歌い続けてきたので、どの場面でも私の背中を押してくれた曲。これからはより多くの人の応援ソングになってくれたらいいなと思っています。「出航日和」と「光」は決意表明のような曲で、私はいつもこの2曲に支えてもらっています。
EMTG:「スパイスマジック」や「ファイティン」は、ライブの盛り上がりが目に浮かぶようなサウンドですね。
林青空:パッとテンションが上がる感じ! 「スパイスマジック」もそうだし、「アイス」とかもずっとライブで歌ってきた曲なんですね。これまではライブで楽曲を育てて会場限定盤として音源にしてきたんですが、今回はまずアルバムに収録されたうえでツアーに行く――順番が逆なのも新しいチャレンジだなと思うし、ツアーがますます楽しみになりました。
EMTG:その「アイス」や「マイフレンド」、「ねぇ」なんかは女の子の共感率が高そうです。
林青空:女の子にもたくさん聴いてもらいたいし、聴いて元気になってもらいたいなという気持ちもあるので、そう言ってもらえるとすごくうれしいです。どの曲もそうなんですが、ストーリーや登場するシーンは自分の想像したものだったりするけど、気持ちとか感情の面では、必ず自分が感じたことを入れるようにしています。
林青空 「マイフレンド」 Music Video
EMTG:青空さんの作る曲は、聴き手である自分が実際に経験したことのないシチュエーションや出来事だったとしても、ちゃんと曲の中に居場所を作ってくれているというか。
林青空:想像する部分と自分が実際に感じた気持ちのバランスが、そういうスペースを生んでいるのかもしれないです。そんなふうに感じてもらえているとしたら、あぁ、間違ってなかったんだなって、今すごくうれしいです。ありがとうございます。
EMTG:ひとりきりで呟いていたかと思えば、次のシーンでは隣にいる大切な人に向けて歌っている。遠くの誰かを思ったり、まだ見ぬ人に向かって叫んだり、歌声ひとつでいろんな距離感を表現されるのも、青空さんの魅力だなと感じています。
林青空:歌に関しては、どう歌おうかってすごく考えます。曲ができた段階で、こういう声で、こういう“間”で歌おうとか。その“間”という点では、バンドでも演奏するようになってからできるようになったことかもしれないです。バンドでも演奏できる私だから、弾き語りでより見せられる、感じてもらえる歌い方ってどういうものだろうっていうのを考えるようになったんですよ。バンドだったらいろんな音で情景とかを表現できるけど、弾き語りは歌とギターと空間だけ。それを最大限に活かす方法は、バンドでの演奏もやるようになってからわかってきた気がしますね。そうやって、より自由に曲を表現できるようになってきました。
EMTG:ひとつの曲の中で、その両方の良さがミックスしているのが今回の11曲だなと感じました。特に後半の楽曲は聴き応えがありましたが、「BLUISH WHITE」や「猫背」に関してはいかがですか?
林青空:「BLUISH WHITE」は、上京してきた日に書きました。不安もありつつ、でもここでやっていくんだっていう気持ちが入り混じっていて、これは今しか書けない気持ちだから曲にしておこうと思って。あとは、地方から出てきた人の気持ちをやっと知ることができたっていう喜びもあったので、歌にしたいなと思ったんですよね。あとで聴き返した時、こんなこともあったから頑張ろうって自分の中で思えるような曲になったらいいなっていう思いもあります。「猫背」は自分にとっても新しいステージの曲で、ライブではエレキギターを持ったりするし、サウンド自体ゴリゴリの激しい感じになっています。
EMTG:最後のカットアウトも潔いですよね(笑)。
林青空:もう本当に、衝動でバッと書いたんで(笑)。こんなふうにぶつけるような書き方をしたことはなかったので、新鮮でしたね。「こんな林青空もいいじゃん!」って自分で思えました。今後の林青空にも期待してもらえるような、そして新しい面はまだまだあるよって思わせられるような楽曲になったんじゃないかなと思います。
EMTG:胸を張れる1枚ができましたね! では最後に、今後についても聞かせてください。
林青空:ずっと持っている目標は、大阪城ホールの舞台に立つこと。メジャーデビューをして今までとは全然違う形で出会ってくれる人もたくさんいると思うけど、これからもチャレンジを続けながら、嘘をつかず、自分らしく、楽しく歌っていきたいです。そしてこれまでどおり自分に素直に曲を書いて、歌い続けたいなと思っています。

【取材・文:山田邦子】

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リリース情報

出航日和

出航日和

2020年02月26日

ユニバーサルミュージック

1. 出航日和
2. 光
3. マイフレンド 
4. 散歩歌
5. g’night
6. スパイスマジック
7. ファイティン
8. アイス
9. ねぇ
10. BLUISH WHITE
11. 猫背

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

林青空ワンマンツアー 2020「THE TIME HAS COME!」
04/02(木)北海道 札幌COLONY
04/04(土)東京 渋谷WWW
04/12(日)大阪 心斎橋JANUS
HAPPY JACK 2020
03/14(土)、15(日)熊本 B.9 V1・V2 / Django / ぺいあのPLUS’
※3/14(土)に出演

TENJIN ONTAQ 2020
03/14(土)、15(日)福岡 ライブハウス8会場
※03/15(日)に出演

SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020
03/22(日)香川 7会場

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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