決意と挑戦の1stフルアルバムに滲む人生観――フロントマン・堀越颯太が語る!

KAKASHI | 2020.06.17

 実体験や自分自身の心境をもとに生きることについて歌い続け、じわじわと支持を広げてきた群馬県出身のロックバンド・KAKASHIが1stフルアルバム『Life is beautiful』をリリース。全12曲という曲数は、さらなる飛躍を目指すバンドには作り甲斐があったようで、緩急自在に曲調の幅をぐっと広げた今回の曲作りは、無骨で不器用なバンドというこちらの勝手な思い込みのイメージを改めながら、一皮剥けたバンドの姿をアピールしている。バンドを代表してインタビューに応えてくれたフロントマン・堀越颯太(Vo/Gt)も「今まででいちばん自信がある」と胸を張る。もちろん、それは根拠のない自信でも、ましてや新譜のプロモーションにつきものの耳当たりの良い言葉などでもなく、この1年半の間、新たに壁にぶつかるたび、それを乗り越えようとメンバーそれぞれに自らを高めるなかで掴んだ手応えだということが、堀越の言葉を聞けばわかるだろう。ライブに置いた軸足はこれからも変わらないと思う。しかし、今回印象づけた曲の良さは今後、KAKASHIにとって大きなアドバンテージになるはずだ。

――KAKASHIというバンドのポテンシャルを存分に見せつけるという意味で、『Life is beautiful』、とても聴きごたえがありました。まずは結成から約8年。満を持して1stフルアルバムをリリースする意気込みを聞かせていいただけますか?
堀越:おっしゃっていただいたように満を持しての1stフルアルバムなんですけど、新型コロナウイルスの影響でリリースとツアーが延びてしまったので、ついでにセールスも伸びたらいいなぁと思ってます(笑)。内容に関しては、今まででいちばん自信があるんですよ。できるだけ多くの人に手に取ってほしいですね。
――前作の『PASSPORT』(2018年12月リリースの2ndミニアルバム)と、その後のリリースツアー――特にKAKASHIにとって最大キャパの渋谷TSUTAYA O-WESTに挑んだツアーファイナルを通して、バンドに取り組む気持ちも変わったんじゃないかと思うのですが。

堀越:そうですね。正直、自信はあったんですよ。O-WESTをソールドアウトにして、次のステップに進むぞっていう……けど、ソールドアウトできずに、自分が思っていたほどバンドは高い場所に行けていなかったことを思い知らされて、自信をへし折られたというか。そこで1回気持ちを入れ直して、次こそO-WESTをソールドアウトできるくらいに自分たちを持っていけるようなCDを作らなきゃって。それからずっと曲を作り続けてました。だから、今回アルバムを作るにあたって、曲を選べたんです。これまでは出来上がった曲を「いいね」とぶちこんでリリースしてたんですけど、今回は2、30曲ぐらい作った中から「これとこれを入れよう」って――そういう作り方がやっとできたので、納得のいく曲しか入れてないです。これまでももちろんそうだったんですけど、今まで以上に納得できる1枚になりました。
――曲を作るにあたって、どんなふうに作っていったんですか? 出来る曲をただただ形にしていったのか、それとも自分たちにはこういう曲も必要だということを考えながら作っていったのか。
堀越:そういう意味では、ライブに必要な曲というのは考えました。例えば、O-WESTのときは1時間の尺だったんですけど、その中でピークポイントをもっと高く持っていきたいとか、真ん中でもうちょっと落とせる曲が欲しいとか、ライブにまつわるイメージから作った曲がすごく多かったです。曲作りに関しては、これまで自分が見てた世界よりももっと大きな世界を見なきゃいけないという感覚が大きかったので、自分たちの世界をちゃんと広げられるような曲が必要だと考えながら作ってましたね。
――大きな世界を見なきゃいけないっていうのは、どんな理由からそう考えたのですか?
堀越:やっぱり、O-WESTをソールドアウトできると思ってた自信が打ち砕かれちゃったので、ここでつまずいてちゃダメだというか、もっと速くステップアップしていきたいと思ったんです。今年27歳になるんですけど、30歳を目前にして焦りも多少は出てきたなかで、自分たちに残された時間の少なさを実感してきたので、もう一段加速したいという感覚はありました。
――今回、全部で12曲も収録されているので作り甲斐があったと思うし、リスナーも聴きごたえがあると思うのですが、KAKASHIって実はいろいろな曲ができるバンドなんだなってことを、今回の12曲を聴いて改めて思いました。そんな曲の幅というのは、さっきおっしゃったようにライブの流れを意識するなかで広がってきたのでしょうか?
堀越:1曲目の「目を覚ませ」から4曲目の「初志」までは、結構ライブを意識したという感覚が強いんですけど、再録の「流星の中で」と「灯京」を挟んでからいくつか並んでるミドルテンポの曲に関しては、音源を彩りたいという感覚がありました。やっぱりフルアルバムなので、一辺倒に強い曲、強い曲ばかりではダメだと思って、色づけできるような曲という意味で入れました。
――音源を色づけるうえで、新たな試みや取り組みはありましたか?
堀越:曲順がそうですかね。6曲目が「灯京」で、7曲目が「東京タワー」なんですけど。
――あ、その2曲の並びは何か意図があるんだなと思いました。
堀越:そうですね。「灯京」は3年前にリリースした『薄明、灯る日々へ』というデモCDに入ってる曲の再録で。
――『薄明、灯る日々へ』は、ラストデモと謳った作品でしたね。
堀越:そうです。ライブでもずっとやってるんですけど、「灯京」を作ったのは僕が都内に住み始めたタイミングだったんです。その後、半年ぐらい前にもともとの地元である埼玉に戻ってきたんですけど、「東京タワー」は地元に戻ることが決まってから、東京への感謝というか、お別れの曲という気持ちで作った曲なんです。そんなふうに時間の流れを意識しながら曲を並べるっていうのは、今までやったことがなかったですね。そこから進んで、アコースティック・ギターの弾き語りから始まる10曲目の「それでもこの平凡に嘘はない」も東京の曲で。僕が地元に帰るタイミングで仲のいいバンドマンが送別会をやってくれたんですよ。
――ああ、《行きつけって言うほど行ってない居酒屋で》という設定は、そういうことだったんですね。
堀越:それも含めて、タイトルで謳ってる『Life is beautiful』というか、「あ、いい人生だと思えたな」っていう感じ――これまでの人生全部を1枚にしたような感覚ですね。
――「灯京」を今回再録するにあたって、アレンジは変えているんですか?
堀越:いや、変えてないですね。
――ということは、こういうベースが跳ねるようなリズムの面白い曲も昔からやっていたわけですね。
堀越:そうですね。ライブの中盤で雰囲気を変える役目でしたね。
――「灯京」の1曲前の「流星の中で」も同じデモ盤に入っていた曲の再録ですが、これもアレンジはそのまま?
堀越:アレンジはそんなに変えてないんですけど、入れてる楽器は増やしてますね。イントロとサビで強めの音を出したかったので、ボトムアップさせるために7弦ギターを使ってます。
――その2曲を今回再録したのはなぜですか? 2、30曲作ったとおっしゃっていたので、曲には余裕があったわけじゃないですか。そのなかであえてこの2曲を入れたのは?
堀越:理由はいくつかあって……僕個人は全曲新曲で挑みたかったんです。ただ、メンバーから再録も入れたほうがいいんじゃないかという意見が出てきて――というのも、ライブでよくやる2曲なんですよ。それがデモ盤だけにしか入ってなくて、全国流通盤に入ってないっていうのは、今後広い世界を目指すうえでどうなの?って。お客さんからしたら、CDを全部持ってるのにライブに来てみたら知らない曲があるってなっちゃうわけじゃないですか。だったら、フルアルバムのタイミングで入れるべきだろうって。それに、その時期に聴いてくれてた人も、再録バージョンが入ってたら手に取るきっかけになるかもしれない。あとはやっぱり色づけ的な意味もありますね。
――曲作りは前作の『PASSPORT』から、堀越さんがDTMでアレンジをほぼ作ってから3人に聴かせるやり方になったそうですが、今回もそういう作り方だったのですか?
堀越:大体はそうです。ただ、曲によってはメンバーから出たアイディアでイントロが全然違うものに変わったものもあります。そういう意味では、メンバーの手がこれまでよりも加わってる印象はありますね。
――そのへんはメンバーも意識が変わってきた、と?
堀越:そうかもしれないです。前作では僕の提案をまず尊重してもらってたんですけど、その先に行くには、やっぱりプレイヤーとして個人の色も出さないと、という話をみんなでしたので、その中からいろいろなアイディアをもらいました。
――メンバーのアイディアで曲の印象ががらっと変わったというのは、例えば?
堀越:4曲目の「初志」はそうですね。イントロが2段構成になってて、最初のイントロが入って、歌い出しのサビ、そこからもう1回イントロが入るんです。もともとの僕の案では2回目に入ってくるイントロがド頭で、4カウントでそのイントロが入って、歌い出すっていう流れだったんですけど、マサ(齊藤雅弘/Gt)が「今こういう洋楽っぽいフレーズにハマってる」ってなんとなく弾いたのが、最初に鳴ってるイントロなんです。「それを入れてみようぜ」って話になったんですけど、最初はイヤだったんですよ。僕としては自分が作ったイントロを気に入ってたので。でも、試しにやってみたら思いの外良くて(笑)。だったら、自分の意見を押し通すよりはメンバーの意見を含めたものを作りたいと思って、マサのアイディアを採用しました。
――「初志」はサビをたたみかけるような構成が面白いアップテンポなロック・ナンバーですが、齊藤さんのギターが荒れ狂っているところも聴きどころですね。
堀越:嫌いじゃないです(笑)。
――たしかに、洋楽のポスト・ハードコアとかメタリックの印象もありますね。
堀越:そうですね。「グッドバイ」のイントロもマサが持ってきたんですよ。それももともとイントロが全然違って、もっとあっさりした始まりだったんですけど、「こういうのやりたい」ってマサがリフを持ってきて。すでに「初志」があったからすんなり受け入れられましたね。

――じゃあ、曲の幅が広がったのは、メンバーのアイディアを加えたことも理由の1つとしてあるかもしれない、と?
堀越:大きいと思います。
――1曲目の「目を覚ませ」は、ちょっとアイルランド民謡っぽい雰囲気を感じましたが。
堀越:ああ、リズム感ですかね。僕は民族音楽ってあんまり通ってなくて、もともとメロディック・パンクのバンドが好きなんですけど、速い曲が連続する中に、たまにこういう跳ね系の曲を差し込んでくるじゃないですか。インスピレーションはそこからでした。
――合唱コーラスが民謡っぽさに繋がると思うのですが。
堀越:なるほど。言われてみれば、たしかに。
――2曲目の「さらば愛しき青春」、3曲目の「ライフイズビューティフル」も合唱コーラスが入っているじゃないですか。これは意識的なものですか?
堀越:そうですね。その3曲はどれもライブを意識しながら作ってたなかで、もっと一体感を作れるものにしたいねってことで。
――こういうコーラスって今までもやっていましたっけ?
堀越:たぶん、やってないですね。
――なるほど、それも新たな試みだったと。ほかにも印象に残った曲があるのですが、「東京タワー」はイントロで歌うようなメロディアスなリード・ギターのリフが鳴るじゃないですか。
堀越:それもマサなんですよ。
――これも新しいですね。
堀越:そうですね。音色もこれまで以上に気を遣ってたみたいです。そこに向かう姿勢を間近で見てるからこそ、すごくいいなって思いました。今回マサの変化は結構大きいと思います。技術的にも、人間的にも今まで以上に頼もしいと思いましたね。
――9曲目の「生きていたい」は、その前の「グッドバイ」から一転、テンポを落としたバンドの演奏も聴きどころだと思うのですが、じっくりと聴かせる歌メロからはメロディメイカーとして一皮剥けたものが感じられますね。
堀越:うれしいです。この曲はほとんど僕が作りました(笑)。イントロも、ドラムのパターンも僕なんですけど、2サビの終わりに入るギター・ソロというか、ハモりの部分はircleの良さん(仲道良/Gt)にアドバイスしてもらいました。その部分はもともとそんなに尺を取る予定ではなくて、そのハモリも一瞬だけ入ってたんですけど、「良さんがここに手を加えるとしたら、どうしますか?」って相談したら、「もうちょっと長くしたらいいんじゃないかな」って。本当はレコ-ディングにも立ち会ってほしかったんですけど、スケジュールが合わずに招待できずじまいで。それでSpecial thanksとクレジットさせてもらいました。
――「生きていたい」は、ベースのフレーズも堀越さんの歌メロを引き立てるものになっていますが、イントロで鳴っているアンビっぽい音、あれは何で鳴らしているんですか? シンセなのかなとも思ったんですけど。
堀越:いや、シンセは使ってないですね。
――じゃあ、ギターなのかな。
堀越:マサがそういう空間系の音を味つけで使ったりするんですよ。もしかしたらそれかもしれないです。
――「灯京」のイントロにもアンビっぽい音が入っていますが、じゃあそれもギターなんですね、きっと。
堀越:だと思います。
――そんなところが印象的でした、と齊藤さんに伝えてください(笑)。
堀越:言っておきます(笑)。
――ところで、今回歌詞を書くにあたってはいかがでしたか?
堀越:普段から歌詞は悩まないんですけど、実は「ライフイズビューティフル」はマサが持ってきたんですよ。持ってきたっていうか、すでに歌詞がついてるこの曲を弾き語りしたものを突然送ってきたんです。
――そうだったんですか。
堀越:で、「これをやりたい」と言われたんですけど、僕以外が作った曲をやることってこれまでほとんどなかったから、最初はかなり抵抗があって、ほぼスルーしてたんです(笑)。でも、さすがにそれも申し訳ないと思って、改めて聴いてみたら良かったので、僕がコード進行、歌メロ、歌詞を少しいじってってところで、初めてマサと共作した曲になりました。歌詞はマサが書いたものを生かしつつ文面を整えたんですけど、歌録りのタイミングで、この曲だけマサもブースにいて。そのとき終盤の《ただすぎる日々じゃ居られない》ってところは、《このままじゃ居られない》ってなってたんですけど、1回歌を入れてみたあと、「もっといい歌詞がありそうじゃない?」ってマサが言い出して、初めて歌詞を一緒に考えました。歌詞って、これまでは踏み入られたくない領域ではあったんですけど、初めて入って来られて、僕もそれを許したんですよ。今回、歌詞で言えば、それがいちばん印象に残っていますね。
――そんなことがあったんですね。
堀越:そういうところでもちょっとずつ進歩してる気はします。
――いいものであるなら、メンバーのアイディアを取り入れていこうと思えるようになったのは、堀越さんにとっても大きかったのでは?
堀越:そうですね。もう抵抗はなくなりましたね。
――どうしますか? 次からメンバーが歌詞と曲を次々に持ってきたら(笑)。
堀越:うーん……とりあえず1回聴きます(笑)。
――でもまぁ、堀越さんもそれに負けない曲を作らなきゃっていう励みにはなりますよね。
堀越:それはそれでケツを蹴られますね。
――以前、歌詞は実体験や自分の心境をもとに書いていて、みんなに聴いてほしいと思う一方で、誰にもわかられてたまるかって気持ちもある、歌詞を書くときにはそういうせめぎあいがあるとおっしゃっていましたが、今回はいかがでしたか?
堀越:頭の4曲は思ったとおりに書いちゃおうという感覚だったんですけど、11曲目の「花火」のAメロ、Bメロはもう隠し隠しでした(笑)。「生きていたい」もそうですけど、考えないとわからないように書いたところはあります。だから、言葉をそのまま聴いただけでは、何のことかなって考えるんじゃないかな。ただ、そこは遊んでる感覚なんです。「花火」は僕が祖父と花火を一緒に見た思い出を忘れないようにって歌ってる曲なんですけど、「花火」というタイトルや歌詞から、きっとラブソングというか、失恋ソングみたいに聴こえると思うんですよ。
――そういう曲だと思いました。
堀越:そういうふうに聴こえるように書いたんです。だから、そういうふうに聴いてもらって全然かまわなくて。あと「生きていたい」は、根本でネガティブなことを歌ってるんですよね、僕の中では。ただ、ネガティブな気持ちをネガティブな言葉として吐き出すってことに結構違和感を抱き始めてて。それをなるべくネガティブに聴こえないようにするには隠すというか、マスキングするというか、そういう感覚を試してみたいと思いながら書きました。サビはわりと韻を踏んでるんですけど、韻を踏むという制限の中でどれだけ伝えられるかというところも含め、言葉遊びの面白さをもうちょっと突き詰めたいという気持ちがありました。
――ネガティブな気持ちをネガティブな言葉として吐き出すことに違和感を抱いてはいるけれど、それをポジティブな方向に持っていくことはしたくないわけですか?
堀越:そうするとウソになってしまうと思うんですよ。もうちょっと成長したら、それがうまくできるのかもしれないですけど、現状はウソだと感じちゃうのでやりたくないですね。
――そんなふうに、歌詞の書き方も毎回磨き上げているわけですね。
堀越:はい、少しずつ。
――12曲目の「愛していたい」は、歌詞も含めて楽曲が壮大で、アルバムの締めくくりにふさわしい曲になりました。その中で、《あと少し僕らに優しさがあったら こんなに世界は汚れていなかった》と歌っていますが、堀越さんはどんなとき、世界が汚れていると感じるのでしょうか?
堀越:これ、小さい頃からずっと思ってたんですけど、例えば、すれ違いざまにぶつかったときにちょっと舌打ちするとか、電車で降りる人を待たずに先に乗っちゃうとか、エスカレーターで左側を空けないとか、そういう小さいことを平気で無視する人って世の中にたくさんいるじゃないですか。そういうことを、東京で暮らしてるときに実感することが多くて。そんなときに、歌詞に書いたとおりもうちょっと優しさがみんなにあったら、こんなことにはならなかったのにって思うんです。もちろん僕のほうにも、もうちょっとそれを受け入れるというか、目くじら立てずにいられる度量があれば、そんなに汚れて見えないんじゃないかって、自分の中でも疑問に思ってたことをそのまま問いかけたっていう感覚です。汚れてるって言うと言い過ぎかもしれないですけど、そういう小さいことを大事にできない人が目についたことがあって、そういうことをひっくるめて“汚れた世界”って言ってるんですけど、ちょっと大きく出ちゃったかもしれないですね(笑)。
――昔から思っていたことを、今回歌詞にしてみようと思ったのは、どんなきっかけからだったのですか?
堀越:30曲作ったなかで、もちろん全曲スラスラ書けたわけじゃなくて、いわゆるネタ切れのタイミングが来たときに、新たに体験したことばかり書かないで、昔から思ってたこの気持ちを書いてみようっていう――いっぱい作ったからこそ、奥底から出てきたっていう感じでした。
――そして、そんな世界でKAKASHIはこれからどんなふうに活動していこうと?
堀越:今回のコロナウイルスの一件で、多くの人たちにとって音楽は必ずしも必要なものではないんだということを痛感しました。ライブハウスっていう場所も、一般的にはそんなに重要視されてるわけではないってことも感じました。でも、僕自身はそういうところにいつづけたいという気持ちが強くて。だから、ライブハウスに全然馴染みがない人たちでも来やすいようにしたいと思ってて、最近はそこを繋げるバンドになりたいと思ってます。友達とか親戚とかにもCDを聴いてもらえる機会が多いんですけど、お母さん世代、お父さん世代が僕らのCDを気に入ってくれることが多いような気がしてて。変な話、若い子たちよりも30代40代の人たちに届くような気がしてるんですけど(笑)、だったらなおさらそういう世代の人たちをライブハウスに連れてこられるんじゃないかなっていう感じが今はあります。若い子たちももちろんなんですけど、ライブハウスと世の中を橋渡しできるようなバンドになりたいと思ってます。
――以前の歌詞も決して後ろ向きではなかったし、前向きなことも歌っていましたが、どこか、いつか終わるものだという気持ちが根底にあるように感じました。それが今回は、いつか終わるかもしれないけど、でも生き続けたい、やり続けたいというさらに前向きな気持ちが感じられました。
堀越:前々作の『ONE BY ONE』(2018年1月リリースの1stミニアルバム)や前作の『PASSPORT』のときは、「いつか終わっちゃうんだろうな」と思ってたんですけど、今回は「どうせいつか終わるからね」というところまできたというか、そこから「だったらさ」って上がってきたという感覚ですね。決して「どうせ終わるんだからもういいよ」という投げやりなものではなくて、「どうせ終わるなら、そのときに後悔しないようにしたい」――ネガティブな部分がやっと自分の一部になったというか、自分でコントロールできるようになったという感覚ですね。
――なるほど。前作同様、奈良のMORG STUDIOで合宿レコーディングを行っていますが。
堀越:はい。5日間ずつ2回に分けてレコーディングしました。
――合宿はいかがでしたか?
堀越:和気あいあいとしながらも、今まででいちばん集中できましたね。やっぱり寝起きを共にすると盛り上がるんですよ、修学旅行みたいに(笑)。夜遅くまで、みんなでゲームするみたいなことが前回はあったんですけど、今回は誰もそんなことせずに、自分のパートが終わってもやれることをやってましたね。そのタイミングでレコーディングしてるほうも気持ち良くやれるじゃないですか。前回は僕が歌を入れてる間、ほかの3人はパワプロ(『実況パワフルプロ野球』)をやってましたからね(笑)。だから「終わったよ」って呼んでたんですけど、今回はそれがなかったです。
――そんなところにも意識の変化が表れているわけですね。
堀越:ちょっとずつ出てるんだと思います。
――『Life is beautiful』をひっさげた「エターナルフォースブリザードツアー」の延期日程がすでに発表されていますが、9月3日の初日が渋谷TSUTAYA O-WESTというのは……。
堀越:もちろん、前回ソールドアウトできなかったリベンジです。
――先のことはまだわかりませんが、9月3日から無事スタートできることを祈っています。
堀越:コロナウイルス以降、各地のライブハウスでやり方に差が出てくると思うんですよ。アクリル板の有無とか、キャパの制限がどれくらいかとか、配信ライブしかやらないとか、行った先々でいろいろなスタイルになると思うんですけど、出されたものは出されたものとして、その中で自分たちがちゃんとかっこよくやれる方法を、ケースバイケースで模索していきたいと思ってます。今までどおりってことは、ほぼ無理なんじゃないかな。与えられた条件でやらざるを得ないと流されるのではなくて、その中でやりたいことをやっていこうという話がメンバーとできたので、自分たちらしく回れるツアーにしたいと思ってます。
――バンドの実力が試されるツアーになりそうですね。
堀越:ほんとそうだと思います。
――そういう状況ではあるけれど、不安は感じていない?
堀越:はい。僕を含めたメンバー自身のスタンスには全然不安を感じてないです。もちろん先行き不安ではありますけど、それを考えてもしかたないので。その時々でやれることをやっていきましょうって感覚でいますね。

【取材・文:山口智男】

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リリース情報

Life is beautiful

Life is beautiful

2020年06月17日

UNCROWN RECORDS

01.目を覚ませ
02.さらば愛しき青春
03.ライフイズビューティフル
04.初志
05.流星の中で
06.灯京
07.東京タワー
08.グッドバイ
09.生きていたい
10.それでもこの平凡に嘘はない
11.花火
12.愛していたい

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

エターナルフォースブリザードツアー
※全公演ゲストあり
09/03(木)東京 渋谷TSUTAYA O-WEST
09/06(日)埼玉 HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
09/28(月)石川 金沢vanvanV4
10/11(日)福島 郡山PEAK ACTION
10/12(月)宮城 仙台enn 3rd
10/15(木)茨城 水戸LIGHT HOUSE
10/16(金)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 2/3 VJ-4
11/05(木)兵庫 神戸太陽と虎
11/06(金)香川 高松DIME
11/08(日)京都 GROWLY
11/09(月)福岡 Queblick
11/15(日)長野 松本Sound Hall aC
11/23(月 祝)山梨 甲府KAZOO HALL
11/24(火)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
11/27(金)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
11/28(土)千葉 志津Sound Stream sakura
12/04(金)愛知 名古屋R.A.D
12/05(土)大阪 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
12/13(日)群馬 高崎club FLEEZ

※その他のライブ情報 詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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