POPCORN Olympic 2020 出演BANDスペシャル対談 第三弾
POPCORN Olympic 2020 | 2020.07.21
CAFFEINE BOMB RECORDSの社畜椎橋健一主宰のイベント「POPCORN Olympic 2020」に向けた対談企画も、今回で3回目!当イベントは、本来ならば7月28日から7月31日までの4日間に渡り、F.A.D YOKOHAMAとZepp Yokohama KTの二ヵ所で行われる予定だったが、現在の情勢を踏まえて延期が発表された。しかし、あくまで「延期」ということで、本企画も変わらずに続行!第3弾となる今回は、椎橋とUNLIMITSの大月義隆(Gt)、HOTSQUALLのチフネシンゴ(Gt/Vo)による3者対談。3人の出会いや互いのバンドに対する印象、そして「バンド/イベンターにとって自主企画とは?」について赤裸々に語ってもらった。
- UNLIMITSとHOTSQUALLのツーマンをイベントのトリに選んだのはどうしてだったんですか?
椎橋
最初、UNLIMITSに出てほしかったんです。その上で大月さんとブッキングについて話をしていく中で、今までPOPCORNに出てくれたバンドを複数挙げていくうちに「HOTSQUALL、いいっすね」ってなったんです。大月さんもホスコとはライブハウスでしばらくやってなかったと言っていたし、そこで意見が合致しました。それですぐにちー君にテレビ電話したんです。チフネ
真昼間にかかってきたんですよ(笑)。そんな時間にテレビ電話をしてくる奴なんていないからね(笑)。話をもらった時はコロナの渦中で、これからライブ自体できるのか?っていう時期だったんです。そんな状況の中でライブの誘いをもらったってことで、めちゃくちゃテンション上がっちゃったんですよね。椎橋のPOPCORNというイベントのこともUNLIMITSのこともよく知っていたし、多くを説明される前に「うん、分かりました」と返事しました。メンバーも同じような反応で、面白そうじゃん!よしやろう!っていうことですぐにOKしました。椎橋
日割りへのこだわりっていうのはそんなになくて、たまたま最終日になったという感じですね。自分が好きなバンドしか呼ばないという縛りの中でパズルを組み合わせていった結果このツーマンになった訳ですけど、UNLIMITSもHOTSQUALLもメロディがすごくいいバンドだと思っているので、個人的にはすごく良い対バンになったんじゃないかなと思ってます。- UNLIMITSとHOTSQUALLがツーマンをしたことはあったんですか?
チフネ
ギリ初めてじゃない、ってくらいだよね?大月
2011年にUNLIMITSが『トランキライザー』っていうアルバムを出して、そのツアー初日を横浜F.A.Dでやって、その時が確かツーマンだったと思うんだよね。椎橋
俺の記憶だとツーマンっすね。大月
そうだよね。震災の1週間前くらいだったな。HOTSQUALLのツアーに出させてもらったこともあるし、それももちろんライブハウスでじっくりやるタイプの対バンなんだけど、やっぱりどっちかが冠だとそのバンドのツアーっていう感覚が強いというか。だから、こういう風にイベントを組んでもらってツーマンをやるっていう方が、ホストとゲストという関係性がないからこそ“ツーマン”だと言えると思うし、そういう意味では初めてだね。- お互い名前を聞き合っただけで即ゴーサインを出しあえるということは、お三方の付き合いは相当長そうですね。
チフネ
古い仲ですねー。椎橋
僕は元々、UNLIMITSとHOTSQUALLのお客さんでしたね。大月
それはちょっと良く言ってるよね?椎橋
いやいやいやいや(笑)。HOTSQUALLは『YURIAH』を出す前から知ってるんすよ。八王子RIPSにライブを観に行ったら飛び入りで出てきた時から知ってますし。HOTSQUALLって皆さん童顔じゃないですか?リリースしたCDも1枚目だったし、年下だと思ってました。チフネ
クソガキだと思ってたんだろ!(笑)ちょっと年上だったね。大月
UNLIMITSの前にやってたバンドで『YURIAH』のツアー初日に出させてもらったりしてたんで、長いですね。チフネ
そうだね。大月くんとはその頃からだから、UNLIMITSとの付き合いよりも長いね。椎橋
UNLIMITSは、大月さんが入る前から知ってたなぁ。その後に共通の知人の集まりで、大月さんと初めて話したんだと思うな。大月
椎橋とちゃんと話すようになったのは、椎橋がNUBOのスタッフになってからだね。- UNLIMITSとHOTSQUALLは、当時はお互いにどういうイメージを持っていたんですか?
大月
UNLIMITSに入ってから何度もHOTSQUALLをツアーに誘っていたんだけど、当時はHOTSQUALLが頭一個突き抜けてた感じだったんだよね。だから、どうにかして追いつけるように、頑張ってツアーに誘って一緒にやってたっていうのは覚えてます。チフネ
えー?そんなに俺たちスカしてたっけ?(笑)大月
いや!スカしてはなかったよ(笑)チフネ
UNLIMITSと初めてやったのは、『クローバー』のリリースツアーファイナルの新宿LOFTだったよね?あの日はすごく印象深いなぁ。大月くんとは元々知り合っていたけど、対バンという形でUNLIMITSのライブをちゃんと観たのはその時が初めてだったんですよね。歌も上手いしコーラスも綺麗で、曲がすげぇ良いって思いました。打ち上げもがっつりやるじゃん!って思いましたし。大月
僕はメロディックが昔から好きで、その中でやっていきたいという気持ちがあったんです。で、そのド真ん中にいるのがHOTSQUALLだと思うんですよね。曲も活動も一歩前にいっている人って、やっぱり興味が湧くじゃないですか?だからこそ、追いつきたいなって思ってました。- いいですね。椎橋さん的には、昔からファンだったバンドのツーマンを自分のイベントで出来るっていうのは感慨深いものがあるんじゃないですか?
椎橋
ありますね。出てくれる先輩系のバンドは全部そうなんですけど、昔から好きだったバンドがほとんどなんですよ。だから、どのバンドにも感慨の深さは感じますね。ひとバンドで2時間はお酒飲めるっす。- 今回は横浜F.A.Dでのライブということですが、バンドにとっても想い入れがある場所ですか?
チフネ
俺らは千葉のバンドなんですけど、やっぱりありますね。横浜って確立したバンドのシーンが確実にあるんですよね。俺らが一緒にやってもらってる先輩から同年代、後輩まで、横浜勢の雰囲気があるし、なにより「爆裂FxAxD」っていうイベントがありますからね。その影響はめちゃくちゃ受けているし、ライブハウス自体もやっていて気持ちがいいのと同時に、やりに行く緊張感はありますね。俺らのイベントにも「炸裂千葉LOOK」っていうのがあって、名前を付けたのはSTOMPIN’BIRDのTOMさんなんです。危うく「猛烈千葉LOOK」になるところでしたけど(笑)。そのイベントも今では後輩が受け継いでくれていますし、横浜のバンドには、ライバルであり、兄弟でもあるっていう想いがありますね。大月
僕は地元が横浜なので、横浜F.A.Dはシンプルに地元のライブハウスですね。延期になっちゃったんですけど、4月にUNLIMITSでのイベントがF.A.Dで決まっていたんです。それもあったから、今回のイベントも日程含めてなんとなく近いなぁという気持ちはあったんです。でも、椎橋からの話だし、ましてやF.A.Dだからアリだったのかなとは思ってます。- チフネさんが「横浜には確立したシーンがある」と仰っていましたが、今回の対談企画の中で色々なバンドの方に話を訊いても、同じような印象を受けている人が多いんですよね。それって、横浜バンドのどういう関係性から感じるものなんでしょうか?
チフネ
なるほど……横浜を代表する先輩の背中を見狂ってるっていう感じですかね。そういうイズムが言葉にせずとも継承されていて、バンドが別々に活動していても、どこかで一枚岩になっているんですよ。あれがすごい羨ましいから、千葉としてもやりたいんですけどね。メロディックを背負うバンドが千葉を含めた地方ではなかなか出てこないとか、若い子がすぐやめちゃうとかっていう話も聞きますけど、横浜にはそういうイズムがあるから次々と良いバンドが生まれていくんだと思いますし、横浜のソウルは熱いなと思います。簡単な言い方をすると、強いバンドが多いなと思います。大月
多分、周りの人が思うほどタテ関係がないんですよ。先輩からあーしろこーしろと言われることもほとんどないし、横浜だからってしょっちゅうつるんでいる訳でもない。自立しているバンドが多いのかなとは思いますね。そうじゃないと埋もれちゃうと思うし。チフネ
確かに寄り添っている感じはあんまりないよね。大月
うんうん。普段から「横浜だから」っていう意識をしていることはないですね。椎橋
そういうことはよく言われますね。年末にやっている「爆裂FxAxD」のイメージが強いんでしょうね。僕はバンドマンじゃないので深い理由は分からないですけど、確かに僕も藤沢に住んでいた時は「横浜F.A.Dに集まっているバンドはカッコイイ」ってずっと思ってました。- 意図せずに周知されている確立された横浜イズム、カッコイイですね。以前の対談の中で、今回のイベントを行う意義について、椎橋さんが「個人イベンターを増やしたい」と仰っていました。HOTSQUALLは「ONION ROCK FESTIVAL」、UNLIMITSは「夢幻の宴」という企画を自ら行っているバンドとして、「自分たちでイベントを企画する」ということの良さってなんでしょう?
大月
自主企画だと、対バン・ライブハウス・スタッフ・イベンター・媒体など、全てを自分たちの意志で選んでいくからこそ、一日の純度が高くなるように思います。そういう気持ちが自然とライブにも出るんだろうし、無意識のうちにお客さんにも伝わっていると思うんですよね。自分たちの企画が一番だという意味ではもちろんなくて、例えば今回のUNLIMITSとHOTSQUALLのツーマンだったとしても、椎橋が企画してくれたという要素があるからこそ、自分たちの企画とはまた雰囲気が変わって、良いものになると思うんです。そういう気持ちの反映の仕方が、イベントの面白いところだなと思いますね。チフネ
俺たちが千葉でやっているONION ROCK FESTIVALは、規模の大小に関わらず、「地元でイベントをやる」っていう結成時からの夢だったんです。でもそれはすぐに実現しえるものではなかったから、CDを作ってツアーで全国を回って、自主企画をやりながら夢を叶えていくという感じだったんですよ。だから、普段の自主企画というと、人のふんどしばっかり借りてもいられないし「自分たちでやらなきゃな」という意識が強いですね。ONION ROCK FESTIVALもですし、去年に新木場STUDIO COASTでイベントをやった時も、すごいプレッシャーを感じていました。自分たちでやった割には、なんでやっちゃったんだろう?と思ったりもして(笑)。でも、そのプレッシャーを感じながら色々と考えて、出てくれるバンドとその日を作り上げていくというのは、言葉に出来ないくらいの感動と達成感が得られますね。だからこそ自主企画をする仲間たちの気持ちが分かりますし、自分たちでイベントをやるっていうのは大事なことだなと思います。大月
俺は、自分のイベントの方が緊張しないかも。チフネ
マジ?でもさ、すごいプレッシャー感じない?大月
なんかね、人様のイベントに出させてもらう方が色々考えちゃうかな。チフネ
それはライブに対してってこと?大月
ライブに対してもそうだし、どれくらいお客さんが来てくれるか?って考えたりすることに対しても、自分たちのイベントの方が気が楽かもしれない(笑)チフネ
あ、ほんと?当日になれば楽しくてしょうがなくなっちゃうんだけど、前日までは来てくれる人をどうやって楽しませようか?ってことをめちゃくちゃ考えてプレッシャーを感じちゃうなー。大月
自分のイベントだったら、もちろん責任感はあるけど、人に迷惑をかけないというか。人様のイベントでコケちゃったら申し訳ないなとか思っちゃうけど、自分のイベントだと「自分のイベントだからいいじゃないか!」と思っちゃうなぁ。チフネ
あぁ、なるほどね。- 先程、椎橋さんは、元々HOTSQUALLとUNLIMITSのファンだったということも話していましたが、自分が好きなバンドをこうして自分の企画に呼べるということも含めて、「個人イベンターをしていることの醍醐味」って何ですか?
椎橋
自分が出ない状態で、好きなバンドを呼べるんですよ。もちろん、出てもらえれる/出てもらえないっていう過程はあるんですけど。僕がDizzy Sunfistのマネージャーをやっている中でも、お客さんに「あのバンドと一緒にやってほしい!」と言われることが多いんですよ。でも、だったらイベントをやればいいじゃんって僕は思うし、それを実現できちゃうのが個人イベンターの醍醐味だと思っています。でも、実際にイベントを実現するまでには、人との繋がりを作る必要があるんですよね。それを大変だとか苦労だとかは思っていないけど、そうした行動が実を結んで、好きなバンドに出てもらって、当日にライブを観ている中で「ああ、やって良かったな」と思えますし、共感して集まってくれたお客さんが喜んでくれている姿を見て幸せな気持ちになりますね……っていう感じで綺麗にまとめてみましたけど、大月さんどうっすか?大月
いや、いいんじゃないかな?……って、なんで俺に聞くんだよ!(笑)- 椎橋さんが思う、個人イベンターにとって大事なことって何ですか?
椎橋
妥協をしない、じゃないっすかね。仲が良いっていうだけで出てくれる人も多分いるんですよ。そのことに有難さを感じながら出てもらうだけじゃなくて、ちょっと背伸びをしてでも好きなバンドを呼ぶ、っていうことかなぁ。- 椎橋さんのそういった気持ちを知っているからこそ、HOTSQUALLもUNLIMITSも今回の出演を快諾したんだと思うんですけど、バンドとして個人イベントの出る/出ないの判断基準があるとしたら、どういうところにありますか?
大月
これは書いてもらっていいんですけど、ぶっちゃけ俺は、個人イベンターが好きじゃなんですよね。椎橋
(笑)大月
でも、今の椎橋の話を聞きながら、決め手は「責任感」なんだろうなって思いました。俺らだったら「バンド」という背負うものがあって、そういった降ろせないものがある緊張感が大前提にあるんですよね。だから、イベンター側からもそういう部分を感じられないと、気持ちよく出られないな。椎橋からイベントへの出演依頼が来た時も、椎橋がどういうことをやってきて、音楽に対してどういう想いを持っているかを知っていたからこそOKを出したっていうのは大きいですね。- じゃあ、これは意地悪かつ極論な例えなんですけど、信頼する方が組んだ「ん?」と思うイベントと、ほとんど繋がりのない方が組んだ興味をそそるイベントへの誘いがブッキングしたら、どっちに出演OKを出します?
大月
あー。あるある、どっちもある!(笑)俺なら後者かな……!椎橋
(笑)チフネ
俺なら信頼しているからこそ、その人に「もうちょっと面白くしようぜ!」って言うな(笑)大月
そうだね(笑)。こういう話になると矛盾が生じちゃうかもしれないけど、バンドとしては外に向いてないといけないと思うしなぁ。これは性格もあると思うんですけど、やっぱり仲良しこよし感がありすぎても面白くなくなっちゃうと思うので。チフネ
俺は大月さんのようにはっきり苦手とは言わないですけど(笑)。昔は今よりもっとたくさん個人イベンターさんがいたんですよね。で、俺らなんて大きな事務所に入っている訳でもなかったから、呼びやすかったと思うんですよ。それで実際にイベントに出て、結構痛い目を見てきたというか(笑)。楽しさだけを求めてやっている人の情熱と、バンドが持っている熱量とのズレが生じる瞬間が必ず出てくるんですよ。だから、そこの覚悟の差ですかね。大月くんは責任感という言い方でしたけど、覚悟を感じられる個人イベンターなら、僕らは一緒にやれるし、ツレっぽくなっていけると思うんです。その上で、さっきの二択のようなことがあれば、微妙なイベントに対してもちゃんと意見を言えるような仲でいたいですね。繋がりのない人にめちゃくちゃ良いイベントに誘われたとしても、俺たちは内容の良さだけで決めるようなことはしないと思います。大月
あのさ、今話していて思ったんだけど、微妙な対バンっていう選択肢を持ってきたことが一番毒あったよな……俺たち、微妙だなんて思わないもんなぁ……。- いや、例えですよ!(笑)でも今のお話で、おふたりは椎橋さんのことをイベンターとしてとても信頼しているということが分かりました。
椎橋
ありがとうございます!チフネ
それはそうだよね。大月
下手なことも絶対にしないし、第一線にいるからこその安心感があるよね。チフネ
椎橋は人をよく知っているからね!椎橋
始めた頃は、僕もおふたりが苦手とするイベンターだったと思いますよ、多分。でも、10年以上やってきた中で怒られたことも沢山ありましたからね。チフネ
それはバンドマンも一緒だからね。最初はチャラチャラやっててさ、先輩に怒られて、懲りて、反省して、色んな事を分かってくるじゃん?カッコ悪い立ち振る舞いが分かってきたりしてさ。- そういう苦い経験もしてきた者同士だからこそ、強い信頼関係の中で、自分たちが望むイベントを気持ちよくやることができているんですもんね。椎橋さんとしては、個人イベンターが増えたらいいなと思ってるということですよね?
椎橋
若い子は、やってみたらいいのにと思いますね。結局、若い子たちって大人になるとライブハウスから離れていっちゃうじゃないですか?だから、大学生や20代の子が若い頃にイベントを企画してみて、色んな人たちと知り合って、少しでも長くライブハウスに居てほしいんですよね。そういうことを自分が10年近くやってきて、若いお客さんに「自分もイベントをやってみたい」と言ってもらえたら一番嬉しいですし、さらにはそれをきっかけに音楽業界に入ったりバンドを始めてくれたりする人がひとりでも増えてくれたら、もっと楽しくなるだろうなと思います。
【取材・文:峯岸利恵】