『hope』に続く新曲「溶けない」に込められた青春の景色――はっとりに問う!

マカロニえんぴつ | 2020.07.24

 「刹那の中の永遠」――若さゆえの焦燥や悠長、儚さや尊さを昨今のマカロニえんぴつの楽曲群からは多分に感じる。それらは層や裾野を広げ、現状との回顧や追憶、ときには後悔とのリンクをみせ、まるで自身のことを歌われているかのような気持ちを重ねる聴き手を今日も多く生み出している。
 今回の新曲「溶けない」(セブンティーンアイスWebCM書き下ろし曲)はまさにそんな彼らの真骨頂的な逸曲。サウンドや楽曲展開も含め、彼らならではのストロングポイントが満載だ。聴き進めるうちに、記憶や想い出、友情や永遠性……それらを「溶けない=解けない、説けない、融けない」と、聴き手の置かれている状況や環境によって違った感受が得られるレトリック性たっぷりの同曲。そんな「溶けない」に込められた想いや気持ちという名の“幾つかの謎”を、はっとり(Vo/Gt)が「解く」。

――2ndフルアルバム『hope』を出して早4ヵ月近くですが、今振り返ると、自分たちにとってどのような一枚だったと顧みていますか?

はっとり:ある種、マカロニえんぴつのやりたいこととやれることを自分たちで客観的に見極めて、コントラストや差し引きも含めて、メンバーと(サポートドラムの)高浦(充孝)と一緒に調節できた作品だったなと。自己プロデュース的にも、バンドとしてしっかりと形にできたと思います。
――近年のバンドにとっての集大成であり、メンバーそれぞれのセンスや作曲力もうまくブレンドされた一枚でしたもんね。
はっとり:その前の『season』でもある程度はできてたんですけど、今回はフルアルバムとしての幅をより出せて、さらにセルフプロデュース感が増した感じはしますね。

――であれば、なおさらバンドとしても「ここから行くぞ!!」的な気概もあったでしょうから、このコロナ禍でのライブやツアーの延期、中止にはがっかりされたのでは?
はっとり:不完全燃焼っていう感じですかね。アルバムに対する客観的な反応を知れなかったのが残念ではありました。いいものを作った自負はありますけど、いわゆるオーディエンスからの直接の反応が得られないぶん、それが自己満足の域を超えられていたのかが不安でもあり。これまでは、ライブで得たリアクションや意外な反応を体感することで作品の本質を実感していたので。
――では、リリース後の自身の糧にし切れるまでにはまだ至っていないと?
はっとり:ですね。なかでも自分たちの場合、その“意外性”がこれまでレコ発ツアーを終えたあとの糧としては大きかったので。お客さんの間を曲が縫っていって、走っていって、それらが自分たちに返ってきたときに、逆に「この曲って実はこんな曲だったんだ」と気づかせてもらうことが多くて。特に「ヤングアダルト」のときは如実にありました。それに値する曲でいえば、今作の中だったら「hope」。この曲に関しては、どのような泳ぎ方をして、成長していくのかが楽しみでした。それが今のところはSNSでのリアクションやYouTubeでのコメントでしか得られてなくて。その成長度が体感的に、肌感的に見えづらいところではありましたね。

――その反面、これまではライブの予習的な楽曲の聴き方が主だったものが、このステイホーム期間は楽曲をより聴き込んでもらえたり、楽曲により向き合って聴いてもらえるチャンスに至ったとも考えられます。
はっとり:たしかに自粛の時期は、皆さん家にいる時間が長かったぶん、じっくり聴いてもらえて、「こんなアレンジをしていたんだ」とかいろいろな発見をくれていたようです。皆さんが曲を聴き込む行為をこれまで以上にやってくれてたのかなと。
――がゆえに、響き方が変わった方々もいたのではないかと。私自身「ヤングアダルト」は、コロナ禍前は傷のなめ合いを経た「でも行かなくちゃ」的な歌の感受でしたが、今ではそのような挫折や敗北感を経たからこそ自分たちは強くなれるしたくましくなれる――そんな明るさや前向きな曲へと変わりました。

はっとり:先日ライブで久々に歌いましたけど、歌の気持ちの込め方が自分でも変わったとは感じました。いつもより優しく歌ってるんだと自分で感じながら歌ってたというか。そういった面では、「hope」も『THE FIRST TAKE』で歌ったのが最後ですけど、まさに緊急事態宣言が施行されるかどうかの時期だったこともあり、当時の不安な気持ちや空気感のなかで、それをなんとか払拭したいという気持ちで歌ったんです。でも今となっては、たぶんまた違った気持ちの込め方で歌うんでしょうね。

――でもその感受や響き方が、TPOや状況、シチュエーションや心境/心証によって変化するというのは、ここ最近のマカロニえんぴつの楽曲のいい意味での特色のように感じます。まさに今回の「溶けない」は、その辺りを非常に感じました。ちなみにこの曲の制作は自粛前?
はっとり:自粛以前の部分と、それ以降の部分が合わさってます。1番、いわゆるCMとして流れてる部分は、『hope』の制作の流れで自粛前にすべて録り終えてました。自粛以降新たに変化したのは主に歌詞ですね。2番以降の流れや、特に最後の歌詞は、まさにあの自粛を経たからこそです。アレンジに関しても、特にラストのサビの1音上がる転調とかね。これまで半音上がる転調はありましたけど、ここまでグワッとさせたのは初めてで。そこの気持ちの機微の青春ならではのドラマチックさ、あとはこの事態になって卒業式とかで友達とちゃんとお別れができなかった方々に対する、今かけられる僕たちなりのメッセージにもなっていきました。
――この曲は、今のマカロニえんぴつのストロングポイントやスイートスポットを自覚したうえで作られた楽曲だという印象を非常に強く受けました。
はっとり:サウンド面ではまさにそうでしょうね。自分たちはシングルで勝負するバンドではないとずっと思ってて、ひとつの楽曲だけではこのバンドを本当の意味でわかってもらえない――そう自覚してやってるので。でも今回は、1曲だけど1個の味で終わらせてはもったいないなと。セブンティーンアイスの曲でもあったし(笑)。

――セブンティーンアイス自体、いろいろな味が選べて楽しめますもんね(笑)。
はっとり:そうそう(笑)。それもあってCMで流れる1番はわかりやすい曲展開にして、そこからは……。
――CM部分以降の曲展開にはかなり驚きました。「これの続きがこれかよ!?」って(笑)。
はっとり:(笑)。その辺りは前作アルバムの「Mr.ウォーター」でやってみて、そこで掴んだものをあえて踏襲してみました。ヘンテコな演出でもしっかりとアレンジやストーリーがあれば、逆にドラマティックな演出に捉えてもらえる、そんな確信があったので。実はこの部分は『hope』を作ってるときからあったんですけど、今振り返ると明らかに余計なことをしてるなって(笑)。でも、もう作っちゃったししょうがない……とはいえ、ラジオで流したときに好評だったので、そういった意味では独特なマカロニえんぴつらしさを表せたかなと。
――あの急展開も、そのあとに現れる感動的な転調を経て、また元のモチーフに戻る辺りで不思議な安堵感を伴って、どこか大団円に響きました。
はっとり:このバンドはひとつ、“循環性”みたいなものを意識してるのもかもしれません。それは人間の感情に近い温度感で曲を作りたいという想いからきてるのかも。はたから見てとっ散らかった想いでも、どこか自分の中で物語として成立していれば納得できるし。最後の歌詞で<何度も戻りに帰るよ>ってフレーズがあるんですけど、曲もちゃんと戻ってから終わってる。それは時間が地続きで段々と遠くなってしまう印象ながら実はループしてるし、気づけば繰り返してる――それを自分的に現してたりするんです。
――なるほど。
はっとり:例えば想い出話をすれば、体は持っていけないけど、同じ想い出を持っていた者同士だったら戻れる時間ってあるじゃないですか。記憶だけはあの時間のあの場所に立てる。それに近いものを楽曲展開的にも表したくて。
――特に今回は「時」や「記憶」、「想い出」は重要なキーワードですもんね。
はっとり:漠然とした「青春」という二度と戻れない時間に対しての抗いです。今回の楽曲に関しては、時間の中で溶けていけば、その溶けてしまうことが真っ当なことなんだけど、でもその中には「忘れる」というどうしても避けられない哀しさも含まれてるわけで。できれば誰もが溶けないままでいたい――でもそれって物理的に不可能じゃないですか。記憶にはあっても肌で感じたものはその一瞬でしか存在しないわけで。
――そんななかでも私的なこの曲のポイントは、「溶ける」を歌いつつも次第に「解ける」へとシフトしていく流れでした。しかも様々な「とける(溶ける、融ける、解ける、説ける等々)」の解釈や想いが込められており、それが聴き手ごとの「とける」の解釈へと結びついていくフレキシブルなレトリックがあるという。
はっとり:若い頃、学生時代や青春時代ってある種、先が見えないものじゃないですか。いい意味でお先真っ暗で、その先が見えないほど逆に希望に溢れてると僕は信じてて。先が見えてるとそこに向かうしかないわけで。それを今回、僕は歌中で“謎”にしたんです。でも、その謎は解けないままでいい。そこに溶けないままでいたいといい気持ちを重ねてみたんです。
――まさに受け手ごとで解釈が違ってくるでしょうね。それがこの曲の面白いところで。
はっとり:聴く人によってどうとでも捉えてもらえる――その辺りは目指してますね。歳をとるごとにわからないことがわかってくるというか。濃さや深さも含めて。
――わかります。先ほどの“闇”や“謎”にしても、若い子はそれ自体がリアルで。我々世代的には、振り返った今、そこを抜けた実感としてのリアルさがありますもんね。
はっとり:答えを出すと謎が解けた気にはなりますが、それを振り返ったときにはどのみち後悔するんですよね。人生と後悔はセットということで(笑)。

――たしかに(笑)。
はっとり:それは「あれで良かったのかな?」というのもそうだし、答えを出して現状には満足していながらもどこかモヤモヤしたものが残っている、それもそう。自分はその決断をする直前がいちばん美しいと捉えていて。その謎多き十代、それはそれでものすごく美しい。そこにスポットを当ててみたんです。自分たちの中でも、この曲はこれまでと近いシチュエーションの曲ながら、また違った角度から表現できた曲になりました。
――「青春と一瞬」とも近いテーマながら、見事にすみ分けされており驚きました。
はっとり:当初はテーマも近いし難しいかも……と思いながら挑んでましたけど、作り終えた今では似て非なるものが出来たかなと。なかでも大サビの大転調。そこはいわゆる青春の直情的になるところや機微を上手く表せた自信があるので、その辺りも聴きどころですね。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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Digital Single「溶けない」

Digital Single「溶けない」

2020年07月24日

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01.溶けない

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