『Kitrist Ⅱ』に注ぎ込まれた音楽への探求心――そのすべてを紐解く!

ゆびィンタビュー | 2021.04.23

 コロナ禍に揺れた2020年だったが、Kitriのふたりはツアー中止などで空いた時間を有効に使い、カバーアルバム『Re:cover』を急遽リリースしたり、配信ライブに意欲的に取り組むなどしてきた。そのかたわら作り上げた2ndアルバム『Kitrist Ⅱ』は、申し分のないデビュー作といえた『Kitrist』からさらに“Kitriの世界”を拡張してみせた会心の一作。ふたりの話を聞きながら、その魅力をじっくりと紐解いていこう。


PROFILE

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Kitri


 姉のMonaと妹のHinaによるピアノ連弾ボーカルユニット。  クラシックをベースに持ちながら実験的な音楽を創造し独自の存在感を放つアーティストとして、2019年1月、日本コロムビア BETTER DAYSレーベルより1st EP「Primo」でメジャーデビュー。同月、初のワンマンツアー「キトリの音楽会♯1」を開催。7月には2nd EP「Secondo」を発表し「キトリの音楽会♯2」の全国ツアーを開催。
 2020年1月、1stアルバム『Kitrist』を発表。ツアーは延期となったが、その間「Lily」「人間プログラム」「赤い月」と、起伏に富んだ楽曲の3作連続配信やライブで観客を魅了してるカヴァー曲のアルバム『Re:cover』を制作。また「Kitriのきとりごとらじお」(FM大阪)のレギュラーDJを7月から務め、常に精力的に世の中へ発信し続けた。
 2度の延期を経たツアー「キトリの音楽会 #3 “木鳥と羊毛”」を2021年1~2月に満を持して開催。2月に先行シングル「未知階段」で新たな表現の扉を開け、4月に2ndアルバム『Kitrist Ⅱ』をリリース。同月、α-STATIONでのレギュラー番組「Kitristime」(キトリスタイム)もスタート。
 6月には、Kitri初となるBillboard Live 横浜と大阪でのライブを予定しており、「Kitri & The Bremenz Live」と題し、神谷洵平(Dr)、千葉広樹(Ba)、副田整歩(Sax)を迎えての初のバンド編成で実施予定。

  • 去年は春のツアーが延期になったのをはじめ、『Kitrist』リリース後の大事な時期に予定が狂ってしまって大変だったと思います。そんな中でも、6月には「Lily」、8月に「人間プログラム」、10月に「赤い月」と配信シングルを3曲リリースし、9月にはカバーアルバム『Re:cover』も配信しましたね。
  • Mona

    ツアーをするつもりで心構えをしていたんですけども、延期になってしまって、自宅にいる時間がすごく長かったので、ふたりで「今は曲を作るしかないね」と話して、そこからカバーアルバムだったり新しい曲だったり、できるものを制作していました。
  • 制作が思うようにいかないこともあったのでは?
  • Mona

    「人間プログラム」では大橋トリオさんがベース、神谷洵平さんがドラムを演奏してくださっているんですけど、自粛期間と重なったのでリモート作業になったんです。それぞれ別の場所でレコーディングをしたんですが、おふたりともすごくKitriの音楽をわかってくださっているので、安心して委ねることができました。
  • ついでに『Re:cover』のお話も伺いたいんですが、あれは最初から出す予定だったものですか?
  • Mona

    いえ、まったく想定していませんでした。去年の5月か6月あたりに、「何か今すぐにできるものはないかな」と考えて、新たに曲を作ってアルバムを作るのはちょっとカロリーが高くて難しいけれど、すでにある名曲のカバーだったらできるかもしれない、と思ってやりました。
  • 選曲はどのように?
  • Mona

    自分たちが歌いたい曲はもちろんなんですが、スタッフさんと共有しているカバー曲リストというのがあるんです。
  • Hina

    その中から「これが歌いたい」とか「これは歌えそう」という曲をアレンジしながら一緒に選んでいきました。
  • Mona

    Kitriとして再構築できそうだなと思った曲を選んでいった感じですね。わたしたちには例えば男性のような深い声は出せませんし、ロックなサウンドは持っていないんですけども、その“ない”ところをピアノで表現したら逆に面白みが出せるんじゃないかな、という可能性がある曲を選びました。
  • 「深夜高速」は以前からYouTubeで公開していましたし、「この道」「旅愁」「ペチカ」は『Primo』(2019年リリースのメジャーデビューEP)の店舗別購入特典でデモ音源が聴けましたが、新たに選んだ曲もありますよね。


  • Mona

    サカナクションさんの「シーラカンスと僕」は、実はそれなしでアルバムをリリースしようという話になっていたんですけども、リリース直前にYouTubeで配信ライブ(=「Kitriの独演会 #2~remote ver.~」)をやったときにアンコールで歌ったら、すごく反応をいただいたんです。「音源化してほしい」という声も多かったので、急遽入れることになりました。



  • 唱歌や民謡はお手のものというか、お似合い過ぎという感じですが……。
  • Mona

    どこかKitriに通じるというか、シンプルな歌の良さがすごく感じられるので、それを連弾とふたりのハーモニーで表現できたら、と思ってやってみました。
  • 一方で意外性のある曲もあって、例えば「Make-up Shadow」はすごく新鮮でした。
  • Mona

    これはスタッフさんに教えてもらいました。自分たちの父親世代の歌なので、それまで知らなかったんですが、色のある言葉というか、キラキラと光る魔法のような歌詞だなと思って、すごく好きになったのでカバーしてみたんです。
  • ひとの曲をカバーする際のKitri流の料理のし方を説明していただくとすると?
  • Mona

    原曲の変わらない魅力というものがあったとして、それをわたしたちが再現しようとするのではなくて、メロディだったり歌詞だったり、曲の芯になる部分を何度も繰り返し聴いて、素材まで還元してから組み立て直していくというか。違う角度から曲の魅力を発見できないかな、と考えながらやっています。
  • 『Re:cover』は僕も気に入りましたし、評判も良かったのでは?
  • Mona

    いい反応をもらえてうれしかったです。わたしたちもすごく手応えを感じたというか、Kitriの曲じゃなくてもKitriのカラーになるんだ、と思っていただけたというか、むしろカバーのほうがKitriのカラーがよくわかるというか。そういうところがすごく楽しかったですね。
  • 発見があったんですね。曲作りに反映されることもありそうです。
  • Hina

    そうですね。すごく勉強になりますし、自分もこういう歌詞を書いてみたいな、と思ったりもしますし、すごく学びのある作業だなと思いました。
  • いよいよ『Kitrist Ⅱ』のお話に入っていきます。おふたりの意図は追ってうかがうとして、聴いて変化を感じた部分が大きく2つあるんです。まずひとつは外部のアレンジャーとの共同作業が増えたことで、もうひとつがHinaさんの存在感が増してきたこと。
  • Hina

    (笑)。自分でも感じています。
  • ということは狙いどおり?
  • Hina

    は はい。狙いどおりです(笑)。ありがとうございます。
  • どうしてそうなってきたのか、というあたりからおうかがいできますか?
  • Hina

    1stアルバムのときは初めての作詞というところからのスタートだったので、必死で向き合っていて、1~2曲が精一杯でした。Kitriとして過ごしていくうちに徐々に自分も参加できるようになってきて、「こういう歌詞を書いてみたい」という思いが生まれてきたので、自然と自分が作詞した曲が増えたのかなと思いますね。
  • Mona

    それぞれの書く歌詞が違うので、わたしの理想は半分ずつぐらい書くことだったんです。そうすることでアルバムの世界観に広がりを持たせられるんじゃないかなと。
  • その理想に近いのが、今回でいうと「小さな決心」あたりですかね。
  • Mona

    あ、そうですね。「小さな決心」は1曲をふたりで作詞しました。どうなるかなと思いましたけど、1曲として成り立ったのでよかったです。
  • 前回のインタビューで冗談っぽく「Monaさんって案外、意地悪じゃないですか?」と言いましたが、批評性の高い歌詞を書く印象があるんです。物事の裏を見たりとか……。(参照記事:ゆびィンタビュー vol.20 Kitri https://music.fanplus.co.jp/special/202001147921a4a5f
  • Hina

    フフフフ。
  • また笑ってる(笑)。
  • Hina

    共感しました(笑)。
  • ちょっとした違和感を大事にするタイプじゃないですか。一方でHinaさんは物の見方が素直でポジティブですよね。「小さな決心」はそんなふたりの持ち味がすごく出ていて、1番から2番にかけて夜が明けるようなカタルシスがあります。
  • Mona

    たしかに。最初1番しかなくて、特に自分の歌詞の特徴とかも意識せずに書いたんですけれども、2番でHinaにバトンをパスしたら面白いんじゃないかな、わたしが書くのとは違う続きを作ってくれそうだな、と思ったんです。
  • Hina

    本当におっしゃるとおり、Monaは物事を客観視するタイプなんです。この曲でいうと、1番の歌詞はすごく苦しそうで、自信のなさが表れていたりしたので、わたしはこの主人公を救ってあげたいと思って2番を書きました。
  • お見事ですね。
  • Mona

    連携プレーです(笑)。
  • 外部のアレンジャーとのコラボが増えた点についてはいかがですか?
  • Mona

    アレンジャーさんに参加していただいて、ふたりだけでは作れない曲というのがたくさんあるんだなって気づいたんです。いろんな方のエッセンスというかアイデアを取り入れることで初めて生まれる曲があることを実感して、今回は思い切っていろんな曲でお願いしてみました。
  • そういう曲の筆頭が、磯部智さんがアレンジした「NEW ME」ですね。
  • Mona

    新しい作り方をした曲ですね。最初に4小節ぐらいのトラックを作ってもらって、それにピアノをつけてみて、そこにまた違う楽器をつけてもらって……というやりとりを繰り返して作っていきました。
  • ピアノも過去になくバックビートを強調したリフを奏でていて、ラテンというかハウスというか……。
  • Mona

    どうしてもクラシカルになるのが、悩みではないんですけど、Kitriの特徴だなと思っていたんです。あるときスタッフさんと、Kitriなりのダンスミュージックじゃないですけど、そういう曲ができたらいいね、という話になりまして。
  • Hina

    Monaはピアノで何回も挑戦してたんですけど、難しかったんです。
  • Mona

    そう、なかなかハネなくて。スタッフさんに「難しい」とお話ししたところ、超常現象というユニットをやっていらっしゃる磯部智さんがリズムトラックを作ってくださることになって、そうすると自然にピアノが変わって、初めてのフレーズが生まれました。
  • トラックに引き出されたんですね。
  • Mona

    はい、まさに。とても面白い経験でした。
  • Hina

    ハネないと悩んでいたピアノがリズムトラックに乗せることですごくハネたので、作る順番によっても音楽って変わるということを初めて知りました。
  • 「NEW ME」ではMonaさんが得意そうなノワール的な歌詞をHinaさんが書いているのも面白いです。
  • Mona

    もともとわたしもHinaもまわりの人も全員が「これはMonaが歌詞を書くんでしょ」って言っていたんですよ(笑)。でもHinaは1stアルバムを経て作詞に自信をつけてきた部分もあるので、こんなダンサブルなメロディにも面白い歌詞を書いてくれるんじゃないかな、と思ってお願いしました。
  • Hina

    いろんな主人公が思い浮かんだので、どれがこの曲にふさわしいのかすごく悩んで、5パターンの歌詞を書きました。そこからMonaがいいところをピックアップしてくれて、「ここはもうちょっとこういうふうにしたほうがいい」とかアドバイスをもらいながらブラッシュアップしていく中で、自分もしっくりくる形になりました。
  • リズムが新鮮というと「人間プログラム」もそうです。大橋トリオさんお得意のシャッフルですね。


  • Mona

    最初はジャジーなものを目指していて、わたしがピアノで作ったデモはゆったりとしたスウィングのリズムだったんです。それを大橋さんが──最終的には生演奏に差し替えましたが──打ち込みでアレンジしてくださったんですけど、倍のテンポでシャッフルになっていて、びっくりしました。後日、大橋さんにお会いしたときに「こうくると思ってなかったでしょ?」みたいにおっしゃられていましたけど(笑)、プロデューサーの方はわたしたちには想像もつかない引き出しを持っていらっしゃるんですよね。「あっ、こうきたか!」と思って、合わせてピアノのフレーズも変えていきました。
  • 「NEW ME」と同じく磯部智さんがアレンジに参加している「赤い月」のビートも、アフロビートというかカリプソというか、意外性がありました。


  • Mona

    一時期アストル・ピアソラにハマってすごく聴いていたので、情熱とか哀愁を表現できる曲ができないかなと思って作った曲なんです。どこかにラテンのエッセンスを取り入れたいなと思って。
  • Hina

    Monaは本当にピアソラにハマっていて、2019年のツアーでもわたしがコンサーティーナを弾いたんです。ピアソラがバンドネオンを弾いていたので、「これ、やってみたら?」と言われて。
  • Mona

    バンドネオンは「悪魔が発明した楽器」と言われていて、すごく難しいみたいなので、それよりは簡単かと思って(笑)。
  • Hina

    コンサーティーナも鍵盤じゃなくてボタンなので、どこに何の音があるのかわからない感じで難しかったです。
  • ピアソラってタンゴの中でもクラシカルで理知的な印象が強いんですが、Hinaさんは情熱や哀愁といった要素を抽出したんですね。
  • Mona

    物語性の強い舞台のような曲を、と思って書き始めたので、そこから華やかというか展開のある曲になっていったのかなと思います。最初はピアノとギターで静かにデモを作っていたんですけど、これもアレンジが入ることで大きく変わりました。
  • 個人的には、ピアソラから連想できるのはむしろ「未知階段」のザッ、ザッという硬質のリズムです。タンゴというより行進曲っぽいですけど。


  • Mona

    歩く速さを意識して作ったんです。テンポもそうですし、ストリングスの刻みとか、低音はリズムをキープして、高音は……。
  • Hina

    裏で?
  • Mona

    そう、裏拍で弾くみたいな掛け合いとか。前に進んでいく感じを音でも表現できたらいいなと思って作りました。
  • クラシックのトレーニングを受けてきたピアニストからよく聞くのが、ジャズやポップスではリズムをキープしなきゃいけないのが大変だと。
  • Mona

    そうですね。クラシックだとイヤモニでメトロノームを聴きながら弾くみたいなことはしないので、難しいです。ただ、ルバートじゃないですけども、一定のテンポの中でいかに歌えるか、という面白さに影響を受けたところもあるので、テンポをキープしながらどうやってはみ出していくか、みたいなところを考えています。
  • クラシックピアノにはオフビートを強調した弾き方自体がないですもんね。
  • Hina

    そうなんですよ。なのでこの曲も最初はリズムが難しすぎて全然弾けなくて、レコーディングでも大橋さんにご指導いただきながらやりました。歌とリズムが違うのが難しいんですけど、演奏しがいのある曲だと思います。
  • 網守将平さんのアレンジがすごくドラマチックで雄弁ですよね。
  • Mona

    クラシカルなイメージもありながら、いろんな展開が待ち受けていて、最初の部分からは想像できないような感じで終わる、面白い曲になったなと思います。網守さんにピアノと歌のデモをお送りして、それをアレンジして返してくださったんですけど、すごくKitriの音楽をわかってくださっていて、「そうそう、こういうアレンジがしたかったんです」と思いました(笑)。特に事前のやりとりもしなかったんですけど。
  • 一発回答でこれだったんですか?
  • Mona

    はい。方向性としては最初からこの感じでした。
  • Hina

    「これこれ!」ってなりました。
  • あうんの呼吸ですね。2番まではダークなイメージで、大サビから陽転するけども、最後はちょっと不穏だったりして。
  • Mona

    明るさものぞいているけど、この先はわからないよ、という(笑)。その判断は聴いてくださる方に委ねる感じですね。
  • 吉田まほさんが作られたMVもすばらしいです。吉田さんの『就活狂想曲』はMonaさんがこの曲を作るきっかけだったそうですが、いつごろ見たんですか?
  • Mona

    本当にたまたまYouTubeで発見したんです。発表が2012年なので、そこから数年以内だと思うんですけど、まだ自分も就活生になるかならないかぐらいの時期でした。結局、就活はしなかったんですけども(笑)、そのときのインパクトが忘れられなくて、2018年ごろに作りました。
  • 最後を<だから今日を 信じてみるよ>と締めるのに苦労したそうですね。1年以上かけて出てきた一節だったとか。
  • Mona

    そうなんです。最初の歌詞はたしか「ほら、思いどおりにはならないのが人生だよ」みたいな感じだったんですけど、自分たちの中で納得がいかなかったんです。やっぱりどこかに希望をもたせたかったので、ちょっと温めておこうということにして、何度も書き換えて、Hinaとも「これも違うね、これも違うね」って言っていたんですけど、「これならすっと入ってくるね」ということで、この歌詞に落ち着きました。
  • そういうときはHinaさんの楽観性が力を発揮しそうですけど……。
  • Hina

    この曲に関しては、Monaが何回も何回も練り直して苦しんでいたのを横で見ていたので、途中でわたしが入り込んでもなぁ……と思って、一緒に悩んでいました。
  • Mona

    最初に書いた歌詞で一度リリースが決まりそうになったんです。急いでスタッフさんに「いや、ちょっと待ってください」って言って、その「ちょっと」がだいぶ長くなってしまったんですけど(笑)、この歌詞をお見せしたところ、みなさん「いいじゃん」で一致して、ようやく2ndアルバムに入れることができました。
  • なるほど。明るくするために工夫した曲がもうひとつありましたよね。
  • Hina

    「青い春」かな?
  • Mona

    これは去年の春ぐらいに一度デモが出来上がっていたんですけども、もうちょっとメロディを変えて、新しい一歩を踏み出す人を後押しできるような華やかな感じにしたいなと思って、寝かしていたんです。最初にサビのメロディを変えたんですが、メロディを変えると歌詞も変わるので、歌詞も考え直していたら、出会いと別れというテーマなので最初<さよなら>にしていたのを、「全員が全員、別れのときに<さよなら>って言いたいわけじゃないかもしれない」と思い直して、<さよならより言いたい言葉がある>というフレーズが浮かびました。


  • ニュアンスが豊かになりましたね。この曲のサビって、Hinaさんが主旋律を歌っていますか?
  • Mona

    いえ、わたしなんですけど、歌い方をかなり変えているんです。
  • Hina

    この曲は歌のレコーディングにすごく時間がかかりました。特にMonaは。
  • Mona

    本来は裏声でしか出せない高さなので、デモは裏声で歌っていたんですけども、網守さんにご相談したら「楽器の音に埋もれていっちゃうね」と言われまして。説得力や切実さはどうやったら出るだろうと思って、何度も練習したり相談したりして、これまでの人生で出したことがない初めての音域に挑戦しました(笑)。1オクターブ上の#ファかな。かなり苦労しましたね。
  • Hina

    声が嗄れるほど練習していました。
  • じゃあ、ここはいつもとは違ってHinaさんが下でハモっているんですね。
  • Mona

    Hinaは合唱部でソプラノをやっていたんですけど、この曲ではサビでわたしのリードボーカルがそのまま突っ切りました。
  • お聞きしてよかったです。僕の手元の歌詞カードには「Hina主旋?」と書き込んで、その上から×をつけていました(笑)。
  • Mona

    でも、わからないかもしれない。
  • Hina

    いつもと違いますからね。
  • アレンジを入れた曲の新鮮味につい目がいきがちですが、さっき少し触れた「小さな決心」や「水とシンフォニア」など、ふたりだけで作った曲もますます世界観が研ぎ澄まされてきた感があります。
  • Mona

    Kitriはやっぱりクラシックに影響を受けてきた部分が大きいんですけれども、今回はその部分を色濃く出している曲が少ないな、と途中で気づいて作ったのが「水とシンフォニア」でした。実はこの曲ではピアノを連弾プラス1回重ねている箇所があるんです。なのでちょっと時間がかかったんですけど、連弾の面白さだったり、歌詞についても瑞々しさみたいなものを表現したいなと思って作りました。
  • これはHinaさんの作詞ですね。<リセット><新しい朝><光れ>など、言葉の選び方がHinaさんらしいです。
  • Hina

    クラシックの「朝」という曲(グリーグ『ペール・ギュント』組曲から)がメロディに織り込まれていたので、「朝」に描かれた砂漠で立ち尽くす主人公を思い浮かべて書いていたんですけど、コロナ禍で自粛期間に入ったとき、自分たちの立ち尽くしている状況が主人公と重なるなと思って、希望を込めて書き直したんです。
  • <未来よ光れ>。本当にそう思います。「パルテノン銀座通り」はたまのカバーですが、たまは以前から好きだったんですか?


  • Mona

    どこか闇のある、それでいてかわいかったり不気味だったりする唯一無二の世界観が好きだったんですけれど、この曲は知らなくて、スタッフさんに教えてもらいました。最初に聴いたときは「爽やかな曲かな?」と思ったんですが、実はすごく不思議な歌詞なんですよね。どこか切なくて、ひと言で表せない深みのある曲だなと、「Kitriアレンジで歌ったらどうなるんだろう」と思ってカバーさせていただきました。
  • 具体的にはどこが気に入りましたか?
  • Mona

    1回聴いただけでは情景が浮かばなかったというか、自分にはまったくない表現がすごく新鮮で、<よくみがいたスプーンにまがったままよくうつるように>というフレーズが唱えるように出てきて、ある日それが忘れられなくなり(笑)、「これ、カバーしたいです」と。
  • 原曲を知らない人が聴いたらオリジナルと思いそうなぐらい、しっくりきていると思いました。
  • Mona

    ありがとうございます。自分たちの曲ではないんですけれども、自然とKitriの声でも馴染むというか、届けられるような曲だなって思いました。
  • 「Lily」は自粛期間中に最初にリリースした曲ですが、この作詞がhinaさんだったことで、セカンドアルバムでの活躍を予感した記憶があります。


  • Hina

    Monaが書いたメロディを聴いて、印象派の絵画を見ているような気分になったんです。そういう情景に言葉を乗せるように歌詞を書けたらなって。イメージがすぐにパッと浮かんできたので、自然とすらすら書けた記憶があります。
  • Kitriは物語っぽい歌詞が多いですが、これはビジョンを言葉にした感じですね。
  • Hina

    そうですね。絵を見ているような曲もあったらいいなと思って書きました。
  • Mona

    悲しみを表現したいと思って、ある日ピアノに向かっていたらこの曲のイントロが出来たんですけど、その悲しみを浄化というか昇華できるような歌詞がいいなと思って、Hinaにたしか「遠くで白いカーテンが揺れていて、その向こうに会えない大切な人が透けて見えるような。そんなイメージを持って書ける?」みたいに聞いたんです。たぶん自分の中で想像をふくらませてくれて、絵画的な歌詞になったのかなと思います。
  • ふたりともそれぞれに才能豊かですばらしいですね。そんな姉妹がどんな育ち方をしてきたかを表したような曲がラストの「君のアルバム」だと思うんですが、これ、僕が親だったら間違いなく泣きますね。
  • Mona、Hina

    (笑)。
  • お父さまには聴かせましたか?
  • Mona

    聴いてくれました。
  • 泣いていませんでした?
  • Mona

    後ろを向いていたから、もしかしたら……(笑)。
  • どこの家庭にもあるような<小さな物語>を繊細に紐解いて丁寧に紡ぐとアートになる。これが才能というものだと思いましたが、作詞されたHinaさんどうですか?
  • Hina

    メロディをもらって、最初は普通に歌詞を書いていたんですけども、スタッフさんとも話すうちに、この曲でわたしたちの生まれたころからKitriになるまでの写真を使ってMVを作ったらどうか、というアイデアが生まれたんです。それは面白いと思って、家にたくさんある家族のアルバムの写真を見ながら歌詞を書き直していきました。写真を並べて見ていると「こんなことがあったなぁ」とか思い出してきて、すごく書きやすかったですね。楽しかったです。
  • メロディも歌声も優しくて温かいんですよね。歌もふたりのリレーで。
  • Mona

    姉妹のストーリーを描いているので、Hinaと順番につないでいくような形にしました。
  • お互いをとても大切に思っているのがよくわかって、しみじみと心が温まりました。<二人でいる限り/咲く花>とか、なかなか言えないですよ。
  • Hina

    Kitriになるまでのことを書いた歌詞なので、ふたりだからこそKitriになれたっていう意味があるんです。あと、<二人>と書いてはいますけど、わたしたちを支えてくれた大切な方たちのことを思い出しながら書きました。
  • <二人>にはご家族やお友達をはじめ、スタッフさんやファンの方など、みんな含まれているんですね。限定公開だった「羅針鳥」の網守さんリミックスもCD初収録で計11曲、すばらしい2ndアルバムだと思います。ジャケットもいいですね。
  • Mona

    今回もこれまでと同じく奥原しんこさんにお願いしたんですが、かわいさに不気味さもあって、アルバムの曲にマッチした絵を描いていただけたなと思います。ふたりがシンメトリーになっているんですよね。
  • 本来なら最初に聞くべきことを最後にお聞きするんですが(笑)、ふたりにとってこのアルバムのテーマは何だったんでしょうか。
  • Mona

    今までの自分たちの中のKitriのイメージを超えるというか、とらわれない自由さを色濃く出したいと思ったんです。連弾ユニットと言ってきましたけど、例えばギターから始まる曲があったり、リードボーカルとコーラスが入れ替わったり、いろんなアレンジをしていただいたり、制限をしないで曲を作ってもKitriの音楽になるということがわかったので、また新しい一歩を踏み出せるアルバムになったんじゃないかなと思います。
  • フォーマットが強力だからこそ、そこにこだわっていた部分もあると言っていましたものね。
  • Mona

    例えば「青い春」は1~2年前だったら作れなかったかもしれないポップさを持った曲だなと思っています。ダークさとポップさの幅が広がってきて、いろいろやってもふたりの声があればKitriなんじゃないかな、っていう風に思えるようになりました。
  • Hina

    これからもどんどん進化していきたいというか、新しい世界を自分自身も見に行きたいですし、新しい扉を開く音楽を作っていきたいと思います。
  • Kitriの今後がますます楽しみです。最後に「これだけは言っておかなくては」というようなことがありましたらお願いします。
  • Mona

    ライブ映像を収録したブルーレイディスクとの2枚組なんですけれども、初めてオーディオコメンタリーというのをやったんですよ。脱線したり、ライブの裏話をしたりと、ふたりでわいわい話しています。1stアルバム『Kitrist』よりもさらに楽しんでいただくにはどうすればいいか考えて、ブックレットにしてもコメンタリーにしても、いろんなところに仕掛けを入れ込みましたので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

【取材・文:高岡洋詞】

tag一覧 J-POP アルバム ゆびィンタビュー Kitri

リリース情報

Kitrist II

Kitrist II

2021年04月21日

BETTER DAYS

01.未知階段
02.人間プログラム
03.青い春
04.NEW ME
05.羅針鳥(S.A. Rework)
06.小さな決心
07.水とシンフォニア
08.赤い月
09.パルテノン銀座通り
10.Lily
11.君のアルバム

お知らせ

■配信リンク

『Kitrist Ⅱ
https://lnk.to/Kitrist2



■マイ検索ワード

Mona
3月 服装
制作とかしてると知らぬ間に季節が変わってることがあったり、「もうこんなに暖かいんだ。コートだと恥ずかしいのかな」とか、「マフラーしたらおかしいのかな」とかわからないときがあったので調べました。3月って冬から春に変わる時期だったりするので。調べてわかったことは、みなさんおしゃれだなと(笑)。結局は、1回玄関を出て自分で体感してから決めるのがいいなと思いました。

Hina
関西 展覧会 スケジュール
展覧会のスケジュールを知りたくて、行ける機会があったらいろいろ観に行きたいなと思って、定期的に調べています。自分が興味を引かれるものは絵画が多くて、今は大阪で開催している「ミケル・バルセロ展」に行きたいなと思っています。現代のピカソと言われている画家であり彫刻家でもある方なんです。歌詞を書くときに行き詰まると、曲からイメージできる絵画を思い浮かべて、それをボーッと眺めていると言葉が浮かんでくることがありますね。



■ライブ情報

Kitri Billboard Live 2021SS
「Kitri & The Bremenz Live」

06/13(日)ビルボードライブ横浜
06/20(日)ビルボードライブ大阪
※神谷洵平(Dr)、千葉広樹(Ba)、副田整歩(Sax)を迎えたKitri初となるバンド編成でのライブ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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