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今年も開催、音霊OTODAMA SEA STUDIO!!そのキックオフイベントを熱烈レポート!

音霊 OTODAMA SEA STUDIO | 2011.05.25

 2005年夏。神奈川県逗子で育ったキマグレンの2人が立ち上げた、海の家のライヴハウス「音霊OTODAMA SEA STUDIO」。ジャンルを問わず、良質なライヴを送りだし続けた。その音楽に対する2人のスタンスや、ロケーションの良さが話題になり、今や、すっかり夏の風物詩である。
 その風物詩が、本年も、あの砂浜に帰って来る。既に、6月24日を皮切りに、連続66日間のライヴが決定している中、一足早く前夜祭が開催された。

 5月4日。ゴールデンウィークのど真ん中。横浜BLITZ。観客で埋まったフロア。開演を待つ会場は、他のイベントやライヴと比べ、リラックスしたムード。老若男女、ファミリー、出演者の友人などといった客層もあるだろうが、海辺のライヴハウスがその歴史とともに育んできた、のんびりじっくり楽しもうという観客のスタンス、もっと言えてしまえば「音霊OTODAMA SEA STUDIO」の、ひとつの特徴が、開演前から漂っていたように思う。

 17時過ぎ。イベントがスタート。トップバッターを飾ったのは、大田区蒲田出身の3MC、シクラメン。ヒップホップやレゲトンがルーツだが、歌ものもあり、の3人組。掛け合い、ユニゾン、ハモリなどを絡め、5曲を披露。「これからどんどん素晴らしいアーティストが出てくるので、最後まで楽しんで!ありがとう!」と、フレンドリーなキャラクターで、ほっこりと会場をあたためた。

 お次に登場したのはTEE。広島出身。DJとともにステージに立った。ベレー帽、髭、ラップというスタイルに、まずは仰天。つっこみなんだかボケなんだかわからないけど、やっぱりボケなんだよねと思わせるような独特のMC、さらに瞬発力ある個性的なダンス(振付に近い)と、インパクトありすぎて目が離せない。サウンドも、アッパーなパーティーチューン、スパニッシュなレゲトン、メロウなバラードとカラフル。存在自体が、フリースタイルというようなライヴを披露し、観客のハートをわしづかみ。そのテンションにも、がっつりギアを入れてステージを後にした。

 ステージにドラムセットが運び込まれる。この日の前夜祭だけにあらず、フェスも含むすべてのイベントにおいて、ライヴとライヴの間の時間=“転換”と呼ばれる時間の作り方は、昨今のライヴシーンにおいては、外せないテーマだろう。以下に早くスムースにというのはもはや必須の前提で、その上に、どういう演出を重ねていくかが、イベントの個性&実力のみせどころだ。この日は、開演前の時間も含め、転換の時間は特徴あるBGMが流れていた。波の音をベースに、そこに音響系のサウンドを効果音として足したり、また波の音だけに戻ったりという、アンビエントミュージックというか、チルアウトというか。夏の夜明けや夕暮れ、人が少ない砂浜を思い出すようなサウンドと言えようか。聞けば、このBGMも、音霊スタッフによる手作り。しかも、波の音は、逗子海岸の波音を実際に録音して使ったというこだわりようであった。

 3番手は、The ROOTLESS。ドラム、ベース、ギター、ボーカルという構成の4ピースバンド。ソリッドで骨太なサウンドに、声量ある、伸びやかなボーカルが飛び乗る。1曲目から、観客から曲に合わせたクラップが起こった。2曲目、パート別のソロでは、バンドメンバーの安定したテクニックも披露。ギターソロでは、ギタリストが歯でソロを弾くなど、HR&MR王道を伺わせるパフォーマンスも。「みんなの暑さがめちゃめちゃ伝わってきます!」と、ダイナミックに4曲を披露した。

 続いて菅原紗由理。ドラム、ベース、ギター、キーボードに、女性コーラス2名、そしてボーカルの本人という構成。アップチューンの「It’‘ My Life」では、会場から沸き起こったクラップに、ハンドマイクを持ちながら、両手首でクラップをし、満面の笑顔でレスポンス。MCでは「音霊前夜祭に参加出来る事を本当に嬉しく思います」と挨拶した後「楽屋が男子ばかりなんで、そのパワーに負けないように私も思いっ切り楽しんで帰りたいと思います」と締めくくった。連ドラの挿入歌にもなったロマンチックなバラード「素直になれなくて」など、バラードやミディアムを中心に5曲をしっかりと響かせた。しかしながら、個人的に印象に残ったのは、中盤に披露された「Fly」。80年代ティストぷんぷんのデジタル・ロック・ディスコナンバー。このティストが、これからの彼女の活動に、どう出てくるのか、ちょっと興味あり。

 5番手は、九州男。BPM早め&派手めのトラックをバックにステージに登場。1曲目「try again」から高速ラップだ。フロア中でぐるぐると回る、色とりどりのタオル。カラフルなヘリコプター(観客がタオルをぶんぶんと回す様子を指す)は、観客のテンションをそのまま表していた。5曲をメドレー(というより、DJとの息もぴったりな、生ミックスといったほうがいいかも?)し、パーティー気分を一気に盛り上げた後、ちょいと浪曲のような節をつけて鮮やかに自己紹介。お見事!2年連続の前夜祭出演に感謝の気持ちを述べつつ、キマグレンとの親交についても触れ「感謝してます、いつも」と言葉をつないだ。ミディアムバラード「Brand New Days」など、アッパーなところはとことん楽しくアッパーに、聴かせるところはじっくりと聴かせるという、アーティストとしての魅力の両極をしっかりと体現したライヴを締めくくったのは「桜道」だった。

 短いライヴ中、震災後の2カ月未満の自分の葛藤を実際に言葉にした九州男。葛藤を経てステージに立っている理由を、こう述べていた。印象的だったので、最後に記しておこうー「あの時、どうしてライヴしなかったんだろうって思う自分がいると思う。そういう・・・・・・未来の自分にがっかりしたくない。だから俺は、いつも未来に向けて頑張ってる」

 準備が整い、ステージ上に、バンドメンバーが歩み出てくる。その最後、2人がステージのフロントにスタンバイした。客席から、ひときわ高い歓声と大きな拍手。あちこちから、メンバー2人の名前を呼ぶ声も聞こえてくる。
2011年、前夜祭のトリは、キマグレン。パーカッション、ギター2名、キーボード、そしてKUREIとISEKIという、いつものライヴとは違った編成。前夜祭スペシャル、アコースティックなアプローチでのライヴになるのか。冒頭から好奇心がそそられる。KUREIがイントロにのせ「今日は来てくれてありがとう」と叫ぶ。1曲目は「海岸中央通り」。
きらめくようなピアノのフレーズが、乱反射する海面の光を思わせる、ミディアム・アップチューン。「ここにいるみんなの声を聴かせてちょうだい」と、叫ぶ。観客の反応に「そんなんじゃ、夏、来ねーぞ!」と、キャラクターを生かした、笑顔のレスポンス。この声に、客席は、この日、いちばんの大きな声をステージに返した。♪ 海岸中央通り そこを抜けたら海 ♪ という歌詞に合わせて、観客が両手をステージに向けてスルーする。その手が描いた線の先には、本当に海が待っているような気がした。

 パーカッションのリズムでつなげて2曲目「ガンバレロボ」へ。カントリー調のギターも印象的な、サビでいきなり世界が広がる、彼らのメロディーのスケールを感じる、メリハリある1曲だ。客席も一緒になって歌っていた。2曲終わったところでMC。「どうも改めましてキマグレンです」とKUREI。観客の拍手を聞きながら、本年も「音霊OTODAMA SEA STUDIO」がオープンする事を告げる。客席から惜しみない拍手。MC中、BGMには、この日、ライヴ以外の間に、ずっと流れていたあの波の音――逗子海岸の波の音が。そして、音霊OTODAMA SEA STUDIOのインフォメーションを含むご挨拶代わりの最初のMCを、2人はこうまとめた。

 「このステージから海に飛び込んでもいいくらいの気持ちで!」とKUREI。続けて「飛び込んでもいいかい? 君達の心に!」とISEKI。観客から大歓声。しかしその大歓声を受けて続いたのは「と言っておきながら、まったく流れが違う曲なんですけど・・・・・(笑)」という言葉とともに、この曲であった。
「トコシエ」波の音に重なるロマンチックなピアノの調べ。ワンフレーズ。濃い青色に沈むステージ。上空から、1本の白いピンスポット。月夜の海辺のようだ。その中を、ISEKIの歌声だけが長く長く、遠く遠く響いていく。少しずつ楽器の音が重なっていく。徐々に変わっていく曲の表情。それはまるで、月夜に潮が徐々に満たされていくように、少しずつ深く、広く、ふくよかに。

 エンディングの♪LaLaLa・・・・・・♪ の繰り返しでは、会場中が大合唱になった。ISEKIがアコギをジャーンと鳴らして「リメンバー」。いつもよりもエスニックなフレイバーが強い、アコースティックバージョン。いつもの「リメンバー」がピーカンなら、この日の「リメンバー」は夜への期待を内包した夕暮れといった印象だろうか。しかしながら、両方ともしっかりと“太陽”が感じられるあたりは、この曲の持つポジティビィティ―の強さだろう。この強さ、間違いなくキマグレンの楽曲の強力な武器のひとつだ。KUREIが叫ぶ。「こっから盛り上がってまいります!行きますよ―!(観客から大歓声)それじゃあまだまだ春のままです。春が好きな人もいるでしょうが、やっぱり夏を」と、どんどん観客を煽っていく。あの夏の日、日本全国に溢れた、あのフレーズが聴こえてくる。
♪ハーイヤ、イエイエイエ・・・・・・♪
ステージと観客全員でのコール&レスポンス。キマグレンと言う名の音楽を通し、そこにいる全員で作りあげていくハッピネス。大ヒット曲「LIFE」へ。プリミティヴなパーカッションの音色が、観客の心を揺さぶっていく。脳裏に「異国。灼熱」というキーワードが浮かぶようなアレンジとパフォーマンス。ヒット曲だからこそわかる、この日のライヴのスペシャル感に、誰もが笑みをこぼす。あら、ステージの2人も、いい笑顔だ。夏の日差しの如く、まぶしかったですわ、もう、くらくらですわ、なんてな。

 「本当にみんな今日はありがとう。みんなの笑顔にいつもいつも支えられてます。本当にありがとう!」と、KUREIがこの日最後のMC。こう続けた。「みんながいて、俺らステージに立ってる、元気でいられる。この元気を俺らの形で表して行きたい、そうしてステージに立っていきたいと思っているんで、これからもキマグレン、よろしくお願いします。そういう思いをこめて、最後にこの曲を送ります」この言葉を受け、最後に披露されたのは「It’‘s my 勇気」。エンディングで「最後に夏に向けてジャンプするぞー!しゃがんで、しゃがんで!せーの、ジャンプ!」と、この日、会場にいた全員でジャンプして、前夜祭は幕を閉じた。
 ステージに最後に残ったのは、この日、フロアに入る私たちを迎えてくれた、逗子海岸の波の音。
 この波の音を、今度は、生で聴いてみたい。夏の海に響き渡る、たくさんのいろいろな音楽とともに。

【取材・文 伊藤 亜希】
【撮影・Rie Suwaki(MAXPHOTO)】

tag一覧 音霊 OTODAMA SEA STUDIO キマグレン シクラメン TEE The ROOTLESS 菅原紗由理 九州男

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セットリスト

シクラメン

  1. kamataッ子2
  2. はな
  3. 舞い桜
  4. ブンブン
  5. MUSIC

TEE

  1. TEE MUSIC
  2. Shaking Time
  3. 3度のメシより君が好き
  4. ベイビー・アイラブユー
  5. がんばれよ

The ROOTLESS

  1. エレファント
  2. リアル
  3. One day
  4. 変わりたいと、強く望め。それ以外は、いらない。

菅原紗由理

  1. キミに贈る歌
  2. It’s My Life
  3. Fly
  4. 素直になれなくて
  5. 君がいるから

九州男

  1. try again
  2. New Birthday
  3. Come In Now
  4. 9island医院
  5. ONE LIFE
  6. music♪
  7. Brand New Days
  8. 地球の歩き方
  9. 桜道

キマグレン

  1. 海岸中央通り
  2. ガンバレロボ
  3. トコシエ
  4. リメンバー
  5. LIFE
  6. IT’S MY 勇気

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