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逗子音霊での細美武士&ストレイテナー、アコースティックライブをレポート!

音霊 OTODAMA SEA STUDIO | 2012.09.25

 やはり通常のライブ会場とは違い、浜辺というシチュエーションや雰囲気的なところも手伝ってのことだろう。この逗子の音霊では、他のライブ会場では見られない、良い意味でのラフさがあり、それがアーティストの素や資質、ネイキッドさや本質みたいなものを垣間見せたりする。
この日の音霊での細美武士とストレイテナーによるアコースティックライブも、普段はなかなか見られないプレイスタイルに加え、それを最小の増幅システムを通し伝えることで、歌に込めた真意や楽曲本来の姿や良さ、また、間近で伝えられる、そのステージとフロアとの距離も手伝い、独特の共有感や一緒さを感じられた。加え、この日もこの場所ならではの嬉しいサプライズやハプニングが続発。MCの多さやカバー曲の披露、お客さんとのコミュニケーションを通して急遽曲順を変更したり、アーティスト同士の共演があったり、酔っぱらったり(笑)と、普段のライブではあまり見れない光景やシーンを幾つも見ることが出来た。

 オープニングアクトの長澤知之がステージを後にし、ちょっとの間をおき、まずは細美武士が機材のセッティングと出音確認のため、アコギを持ってステージに現れる。サウンドチェック代わりに、ELIC CLAPTONの「Tears in Heaven」のさわりを弾き、歌い始める。それがひと段落すると、自分用に用意していた、ボトル水とカップのテキーラ(!)を会場にも振舞い、そのままライヴが始まる雰囲気に。フロア前方の密度が上昇していく。「2013年の夏はあるか分かんねえだろ?なんで今日は楽しんで行こう」と細美。その姿はタンクトップにハーフパンツと、まったくラフな格好だ(笑)。そのまま先ほど歌い終えた長澤を再び呼び込み、BEATLESの「Let It Be」を2人で歌い始める。一番を細美、2番を長澤が歌い、サビは2人でのハーモニーを交えたツイン体制。細美の太く強い歌声と、長澤のハイトーンな歌声がコントラストとコンビネーションを見せる。
「ライヴが始まるまで、泳いだり、呑んだりと、夏を満喫させてもらった」と細美。続いては、BEN E KINGの「Stand By Me」をプレイする。夏の終わり、しかも夕暮れ時のこの時間にぴったりな同曲。”心細さも一緒にいれば大丈夫”の心強さが会場に満ちる。
この夏、the HIATUSにて数々のフェスを回り、ストイックなプレイをしてきた細美だが、この日はいつも以上に饒舌で、良い意味でラフ。いつも以上の親しみやすさと、身近感たっぷりのステージが展開されていく。
中盤では、ストレイテナーのホリエ、ナカヤマが呼び込まれ、3人で、ELLEGARDENの「金星」を始める。ホリエの歌い出しから同曲であることが判明すると、これまで以上の大驚声が会場中から上がり、ステージに向けて大合唱が起こる。
また、この日は、新曲や、震災以降、幾度となく被災地での復興を支援。歌を歌い続けてきた彼らしく、今も復興に向け息吹を上げ続けている東北地方に向け、「見知らぬ誰かが、遠くの地で、自分たちの為に何かをしてくれているのは、とても嬉しいこと。」と、会場/ステージが気持ちを重ねながら、復興への一つの大きな願いや祈りのごとく、ELLEGARDENの「Make A Wish」を歌う。そして、「あんたたちの今日の帰り道について歌った歌です。ラストはあんたたちの為に歌います」と、東北地方への支援の帰り道に浮かんだという「On Your Way home」が、この日の彼のステージのラストを飾った。

 続いて、この初夏にアコースティックアルバム『SOFT』を発表し、全国ツアーを行ってきたストレイテナーがステージに現れる。4人全員が椅子に座りながらのプレイスタイルに、ちょっとしたアダルティさを感じる。「夏が終わるね」とホリエ。そのまま1曲目「Phantasien」に入る。エレキベース、シンプルなドラムキット、アコギとエレキをバックに歌われた同曲。ギターの大山のマンドリン風の音色も手伝い、いきなり会場をここではないどこかへと誘う。大山もアコギに持ち替え、ノンストップで「Toneless Twilight」に突入すると、椅子に座りながらも、ベースの日向は、まるで立って演奏しているが如くプレイアクションも運指もアクティブさを見せる。
上述のアコースティックアルバム収録の曲が中心であったこの日。しかし、作品未収録の曲も織り交ぜられ、度に会場はそのいつもとは違った装いの楽曲に触れていく。この日プレイされた「YOU and I」も、アコギアルバムには未収録のナンバー。セカンドラインのリズムを取り入れられたアレンジにて常夏感たっぷり。ぐんぐん広がり、会場をぐいぐい高みへと誘う。
ナカヤマのきんきんに冷えたビール・ブレイクを挟み、この日のお客さんや会場の雰囲気に合わせ、次の「Farewell Dear Deadman」と、その次の「EVERGREEN」は、その場で急遽入れ替えられた。手拍子と会場を交えてのスキャットで楽曲を完成させていった「Farewell ?」と、躍動感たっぷりに、のびやかに歌が遠くまで届き、響いた「EVERGREEN」の流れが、ラストに向けての解放感を生み出していく。
そして、本編ラストは「Melodic Storm」。フロアも明るくなり、クリスピーなアコギに乗り、会場の気持ちと思いをそこに乗せ、サビでは会場も大合唱。演奏スタイルに関わらず、グルーヴと共有感、そして育まれてきた一体感はピークを迎える。

 アンコールでは、細美も交え、インディーズ時代からの人気曲であり、上述のアコースティックアルバムにも未収録の「ROCKSTEADY」がプレイされる。同曲を始める前に、細美は、ホリエを指し、「俺はこの前ライヴが一緒になった時に、打ち上げで、『俺は今度生まれ変わったら、ホリエアツシになりたい』って言ったら、この不器用な男が泣いてくれたんだよ」とエピソードを披露。この2人が音楽以外でも深いリスペクトでつながっていることを改めて実感させられる。これまで座ってプレイしていたメンバーたちも立って演奏された同曲。1番を細美、2番をホリエ、以降ツインボーカルで歌われ、会場交えての大合唱を生み出していった。

 この会場ならではの雰囲気と、アーティストの”たまにはハメをはずしたい”との思いが合致し、予定調和ではない名場面を幾度となく見せてくれた、この日。よくアーティストがステージで口にする「この日のライヴは、この日しかできない」を改めて実感させてもらった夜であった。

【取材・文:池田スカオ和宏】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 細美武士 ストレイテナー 長澤知之 音霊 OTODAMA SEA STUDIO

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セットリスト

細美武士×ストレイテナー
2012.8.28@音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2012

細美武士
  1. Let It Be  with 長澤知之
  2. Stand By Me
  3. Russians
  4. Superblock
  5. Deerhounds
  6. 金星  with ホリエアツシ&ナカヤマシンペイ
  7. 新曲
  8. Souls
  9. Make A Wish
  10. On Your Way home
ストレイテナー
  1. Phantasien
  2. Toneless Twilight
  3. Blue Sinks In Green
  4. YOU and I
  5. SIX DAY WONDER
  6. シンクロ
  7. Farewell Dear Deadman
  8. EVERGREEN
  9. MAGIC WORDS
  10. Melodic Storm
ENCORE
  1. Rocksteady with 細美武士

お知らせ

■ライブ情報

【細美武士】
PAUL WELLER JAPAN 2012
2012/10/23(火)Zepp DiverCity

The Afterglow Tour 2012
2012/11/12(月)札幌市民ホール
2012/11/15(木)福岡サンパレス
2012/11/18(日)名古屋センチュリーホール
2012/11/21(水)大阪オリックス劇場
2012/11/22(木)大阪オリックス劇場
2012/11/25(日)広島市文化交流会館
2012/11/29(木)仙台サンプラザホール
2012/12/02(日)新潟県民会館
2012/12/05(水)東京NHKホール
2012/12/06(木)東京NHKホール

COUNTDOWN JAPAN 12/13
12/28日(金)〜31日(月)幕張メッセ国際展示場1-8ホール、イベントホール
※出演日は後日発表

【ストレイテナー】
ASPARAGUS 10th ANNIVERSARY
2012/10/13(土)熊谷HEAVEN’S ROCK VJ-1

STRAIGHTENER presents 律響2012 in SPF
2012/11/3日(土)立教大学池袋キャンパス タッカーホール

BRAND NEW EVERYTHING TOUR
2012/11/08(木)大阪なんば Hatch
2012/11/10(土)名古屋クラブダイアモンドホール
2012/11/16(金)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2012/11/18(日)福岡DRUM LOGOS
2012/11/21(水)札幌ファクトリーホール
2012/11/23(金・祝)岩手 久慈UNITY
2012/11/25(日)いわきclub SONIC
2012/11/26(月)仙台Rensa

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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