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ゆずのハーモニーが“1+1=2じゃなくて”“1+1=∞”であることを証明した横浜アリーナ公演

ゆず | 2011.07.28

 関東地方に梅雨明け宣言がされた7月9日の横浜アリーナ、“YUZU ARENA TOUR 2011 2-NI-”の6本目。オープニングナンバーの「慈愛への旅路」に“あの日 止まったままの時計の針が もう一度 動き出した”というフレーズがあるのだが、その言葉どおり、東日本大震災以降、踏み出せなかった一歩を刻んでいくパワーを与えてくれる前向きで力強いライヴとなった。

 本来ならば、このツアーは3月26日からスタートするはずだったのだが、東日本大震災を受けて、セットを簡素化し、使用電力を削減して、ふたりだけの弾き語りのパートを大幅に導入して、“2-NI-×FUTARI”というタイトルのツアーに変更という経緯があった。路上出身であり、臨機応変にプレイするという点でも突出している彼らだからこそ、柔軟に対応していくことが出来たのだろう。そして今回のツアー。
“2-NI-×FUTARI”で培ったゆずとバンドとスタッフとの結束力と経験とを生かして、そして当初から構想していたステージを実現するんだという情熱を胸に抱いて、彼らは集中力あふれる見事なステージを展開した。おそらくこのツアーを敢行すること自体がすでに大きなメッセージでもあったのではないだろうか。

 自粛モードではなくて、全開モードで、表現したいことをとことん追求していくライヴ。ステージの両サイドには巨大な白いオブジェが設置されていたのだが、これはアルバム・ジャケットのアートワークを担当した現代美術家、名和晃平によるもの。音楽、セット、照明、映像などが一体となって、最新アルバム『2-NI-』の世界観を立体的に表現していくライヴという名の空間アート。と言っても、難解だったり、現実離れしていたりするわけではない。今、届けたい歌を歌っていくんだという彼らの思い、メッセージが詰まった熱くて温かい空間としても成立していたのだ。

 北川と岩沢の声が重なった瞬間のミラクルは、彼らがこれまで積み重ねてきたものがあるからこそだろう。深みがあって、包容力を備えたハーモニーに聴き惚れた。彼らとバンド、2 match humansとの連携も見事だった。伸びやかな歌声とダイナミックな演奏が気持ちいい「マイライフ」、北川のエレキギター、岩沢のハープを効果的にフィーチャーして、スリリングに展開していく「1か8」、フォーキーな魅力が伝わってくる「代官山リフレイン」などなど、音楽的も多彩で起伏に富んだステージ。でも軸はまったくブレていない。以前からある曲も違和感なく『2-NI-』の曲と混ざり合っている。

“アリーナのほぼ中心で愛を叫ぶ!”という観客とのやりとりのコーナーに続いての「友達の唄」では会場内が温かな空気で包まれた。最新アルバム『2-NI-』は人と人との繋がり、様々な一対一の関係を音楽で表現した作品なのだが、考えてみると、友達も一対一の関係である。続いての「背中」は親子の関係を歌った歌。ここでの北川の素朴な歌声も染みてきた。ステージが幕でおおわれて、そこに白い光の映像が映し出されての「from」では、岩沢の清冽な歌声と白色の光の映像とが見事にマッチしていた。

 感動や熱狂だけでなく、驚きや笑いをもたらしてくれるという点もゆずのライヴの魅力のひとつ。横浜在住の大工ふたりによるパンクバンドという設定のThe feversのアグレッシヴな演奏では観客もタオルを回しながら、盛り上がっていた。「第九のベンさん」では北川が倒れ込んで、客席からの“ガッテン・コール”で復活するという演出もあった。笑わせながらも、しっかり前向きなメッセージが伝わってくるところが素晴らしい。「シシカバブー」や「夏色」ではほとんどお祭りのようなエネルギーが渦巻いていた。
梅雨明け宣言があったこの日、止まっていた時間を動かして、彼らが夏を連れてきたかのようだった。なおこの「夏色」では北川が天使の輪をつけて歌う場面もあった。「サブリーダー!」と北川が岩沢を紹介して、岩沢が北川を「エンジェル!」と紹介すると、客席からはたくさんの歓声と笑い声。天使からパンクロッカーまで、“芸”の幅も広い。

 この日、「彼方」、「陽はまた昇る」「虹」「栄光の架橋」などなど、希望の歌、勇気づける歌、元気づける歌がたくさん歌われた。そしてまた、人と人とが繋がっていくことの尊さ、かけがえのなさが伝わってくる歌もたくさん披露された。本編最後の「HAMO」の“1+1=2じゃなくて”というフレーズも象徴的だった。アンコール最後の「Hey和」ではステージの中央に白いオブジェが出現した。左右のオブジェが融合してひとつになっていくことを示唆した演出。このオブジェにたくさんの灯りが灯され、さらには会場内にも観客によるペンライトの灯りが灯されて、それらの光とゆずの音楽とが一体となって、明日へと向かっていく道を照らしていくようだった。たくさんの思いがこの歌によって、繋がっていたのは間違いないだろう。この風景が、そしてゆずのハーモニーが“1+1=∞”であることを見事に証明していた。

【 取材・文:長谷川誠 】
【 撮影 森崎純子 】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ゆず

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リリース情報

2-NI-

2-NI-

2011年02月16日

セーニャ・アンド・カンパニー

ディスク:1
1. Overture 2-NI-
2. HAMO
3. 桜会 (Album Version)
4. from
5. 彼方
6. 蜃気楼
7. 慈愛への旅路 (Album Mix)
8. 1か8
9. 代官山リフレイン
10. Interlude~The fevers ある日の風景~
11. 第九のベンさん
12. マイライフ
13. Interlude~影法師~
14. 背中
15. Hey和 (Album Version)
ディスク:2
1. DOCUMENT FILMS 2 -NI-の世界

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セットリスト

  1. 慈愛への旅路
  2. マイライフ
  3. 1か8
  4. 代官山リフレイン
  5. 友達の唄
  6. 背中
  7. 桜会
  8. from
  9. 彼方
  10. 蜃気楼
  11. The fevers 仕込みのテーマ
  12. チューリップ(The fevers)
  13. 第九のベンさん(The fevers)
  14. The fevers 撤収のテーマ
  15. 逢いたい
  16. シシカバブー
  17. 夏色
  18. 陽はまた昇る
  19. Overtune 2-NI- HAMO
  20. Encore1
  21. 栄光の架橋
  22. Encore2
  23. 夢の地図
  24. Encore3
  25. Hey和

INFORMATION

■ライブ情報

♪ゆず東北ツアー2011 2-NI-×FUTARI
◆開始日:2011年8月3日(水)~

※ツアーの詳細はオフィシャルサイトをご確認下さい

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