前へ

次へ

2人体制になったチャットモンチー。その最初のツアーはゲストを迎えた対バンツアー!

チャットモンチー | 2011.12.16

 高橋久美子脱退後、2人体制になったチャットモンチーとしては、初のツアー“チャットモンチーの求愛ツアー●”も、ここ東京でファイナル。チャットモンチーの敬愛するアーティストを迎えて対バン形式で行われるこの企画、これまでにEGO-WRAPPIN’、トクマルシューゴ(仙台)、COMEBACK MY DAUGHTERS、ハナレグミ(名古屋)、ASIAN KUNG-FU GENERATION、People In The Box(大阪)と、多彩な顔ぶれがチャットの求愛に応えてきたが、ファイナルも豪華。ゲストはねごとと矢野顕子だ。

 1階も2階も後ろの後ろまで人でぎゅうぎゅうに埋まったZepp Tokyo。前説の影アナが橋本絵莉子で、しかも彼女がしゃべるたびステージ中央に置かれたクリスマスツリー(この木は橋本絵莉子という設定)のイルミネーションがチカチカ点滅。おまけにクマの着ぐるみ(このクマは福岡晃子という設定)まで登場したりして、場内は開演前から熱気充満。
 そこへ本日のトップバッター、ねごとが登場すると、会場は一気に沸点へ。実際、4人の演奏はオーディエンスの心も会場もアッツアツにするカッコ良さに満ちていた。キーボードを弾きながら歌う蒼山幸子の歌は、ふわふわ浮遊感がありつつまっすぐで人なつっこい。一方、楽器陣は髪を振り乱して弾き、叩き、熱いグルーヴを生み出していく。ポップだけど、ただのポップじゃない。オルタナだけど、オルタナだけでもない。ポップとオルタナの融合具合が何とも絶妙で、オーディエンスをぐいぐい惹き込んでいく。「“フレッシュ”って言葉を人間で見た!みたいな」とは、後のMCで橋本絵莉子が言ってたねごと評だが、まさにフレッシュ。であると同時に、“私たちはこれ!”というブレない確信感も漲っていて、末恐ろしさを感じさせる瑞々しくも堂々たるアクトだった。

 続いての登場は矢野顕子。国内外を問わず数多くコラボし、ゆかりの深いアーティストも多い彼女らしく、1曲目はくるりの「ばらの花」、2曲目はTHE BOOMの「中央線」をカバー。また、5曲目の「Don’t Speculate」はレイ・ハラカミとのユニットyanokami最新アルバムの中の1曲。そして4曲目「ラーメン食べたい」6曲目の「ひとつだけ」は自身の代表曲、という盤石なセットリストだ。少女のような、それでいて母性を感じさせる、あっこちゃん節としか言いようがない柔らかで表情豊かな歌と、芸術的なピアノが1つになった1曲1曲は、素晴らしすぎて圧巻。かと思えば、MCはいい意味で曲世界の芸術性を庶民レベルに引き戻すオモシロさがあり、会場には曲に打たれた静寂と割れんばかりの拍手、そしてなごんだ笑い、という幸せなループが生まれた。

 そんな中、イントロでどよめきが起こったのは3曲目、チャットモンチーの「ツマサキ」をカバーした時だ。ちなみに矢野は、この曲が出た時から気に入って自分でアレンジ。それをこの日思い出してステージに臨んだそうで、「だから72%は即興です。今のバージョンは二度と聴けません」とみんなを笑わせていた。聴く側としては極上のクリスマスプレゼントを一足早く贈られた気分。どの曲も宝石のようにキラキラと輝いていて、うっとりするほど贅沢な時間だった。

 さて、トリはチャットモンチーである。2人になった彼女たちがどんなアクトを見せてくれるのか。もしかしたら期待以上に心配な気持ちを抱えていた人もいたかもしれない。が、結論から言うと、心配など全く無用だった。2人は新たな可能性の扉を力強くいくつも開けてみせてくれたのだ。
 とはいえ、1曲目の新曲からいきなり福岡晃子がドラムを叩いているのを目の当たりにした時は単純に驚いた。HPのトップ画面で福岡がドラムを叩いている写真を目にはしていたものの、まさか1曲目からとは!
 その後も福岡がドラム、橋本がギター、はたまた4曲目の新曲では橋本がベース、福岡は左手でスネアを叩きながら右手でキーボードを操るという離れ業も。さらには「ふたりのビッグショー」と自ら称したアンコールでは、ねごとと矢野顕子の曲をアコースティックでカバーしたのだが、その矢野顕子のカバー「ひとつだけ」では、なんとiPadでリズムループを流すというITなアレンジも展開。そして最後は本日のゲスト2組に加え、この数ヶ月間、福岡のドラムの師匠だったというdetroit7の山口美代子も呼び込み、全員で「シャングリラ」を熱演。最高にハッピーな光景が広がった。

 2人になったチャットモンチーのステージ。そこには、2人になった不自由さはなく、2人でできることは何でもやろう!という前向きさと自由さがあり、とても力強かった。何より、2人が放った音は、曲は、どれも純粋に良くて、胸を撃ち抜かれた。
 この先、いつかまた運命の出会いが待っているかもしれないし、あるいは、ステージにサポートを入れる時もあるかもしれない。先のことはわからないけれど、この日わかった確かなことは、2人のチャットモンチーは今、前以上に多くの可能性を秘めながらすでに大きく前へ進み始めている、ということだ。

 2012年は2月1日を皮切りに初の3週連続リリースも決定しているチャットモンチー。新たなスタートを切り、何かしでかしてくれそうな彼女たちに、より注目していきたい。そういえば福岡晃子もMCで明るくこう宣言していた。
「来年は私たち、花火を打ち上げる気満々ですから!」


※本文中「●」は「ハートマーク」

【 取材・文:赤木まみ 】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル チャットモンチー ねごと 矢野顕子

関連記事

リリース情報

鳴るほど(DVD)

鳴るほど(DVD)

2011年12月15日

KRE

01.桜前線
02.レディナビゲーション
03.シャングリラ
04.少年のジャンプ
05.謹賀新年
06.バースデーケーキの上を歩いて帰った
07.草原に立つ二本の木のように
08.青春の一番札所
09.Boyfriend
10.バスロマンス
11.涙の行方
12.染まるよ
13.真夜中遊園地
14.Last Love Letter
15.拳銃
16.余韻
17.ここだけの話
18.風吹けば恋
19.ハナノユメ

このアルバムを購入

セットリスト

ねごと
  1. インストゥルメンタル
  2. 透き通る衝動
  3. ループ
  4. 七夕
  5. week…end
  6. カロン
  7. メルシールー
矢野顕子
  1. ばらの花
  2. 中央線
  3. ツマサキ
  4. ラーメンたべたい
  5. Don’t Speculate
  6. ひとつだけ
チャットモンチー
  1. 新曲
  2. 新曲
  3. 東京ハチミツオーケストラ
  4. 新曲
  5. 世界が終わる夜に
  6. バスロマンス
  7. 新曲
  8. ENCORE
  9. ふわりのこと
  10. ひとつだけ
  11. シャングリラ(with 矢野顕子&ねごと)

お知らせ

■ライブ情報

rockin’on presents「COUNTDOWN JAPAN 11/12」
2011/12/29 幕張メッセ国際展示場1~8ホール、イベントホール
ひっちゃかめっちゃか ~きゃりーぱみゅぱみゅ19才スペシャル~
2012/01/29 渋谷WWW

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください

トップに戻る