NICO Touches the Walls、地元・千葉で凱旋ライブを敢行!
NICO Touches the Walls | 2012.04.03
間違いなく、NICO Touches the Wallsのキャリアのなかでもっとも素晴らしいライブだったと思う。
アルバム『HUMANIA』を中心にした全国ツアーの追加公演”Ground of HUMANIA”。そのセミファイナルとなる幕張メッセ・イベントホール公演で彼らは、自らの魅力と才能を過去最高とも言えるスケールで描き出してみせた。
オープニングは「HUMANIA」の1曲目に収録されていた「Heim」。まずはステージ中央の光村龍哉(V&G)に照明が当てられ、ノスタルジックな雰囲気をたたえたメロディが広がる。そこに古村大介(G)、坂倉心悟(Ba)、対馬祥太郎(Dr)が演奏に加わり、心地よさと奥深さを共存させたバンド・アンサンブルが立ち上がっていく。ツアー本編(僕が見たのは2/3のZEPP TOKYO)に比べても、バンドのスケール感は明らかにアップしているようだ。さらに鋭いギターリフを軸にした「衝突」、「NICO Touches the Walls、千葉に帰ってきました!(←坂倉以外の3人は千葉出身)大暴れする準備は出来てますか!?」というMCとともに繰り出されたへビィロック・チューン「業々」、観客の大合唱によって、大きな会場のなかに暖かい一体感が生まれた「友情讃歌」が披露される。ジャンルを超越した楽曲、卓越した演奏能力、”ここにいるすべての人を楽しませたい”という強い思いに満ちたパフォーマンス。このバンドの特徴がギュッと詰った構成によって、観客のテンションもグイグイ上がっていく。
ライブ中盤でも4人は、カラフルな音楽性をたっぷり見せつけた。特に印象に残ったのは、やはり「HUMANIA」に収録された「恋をしよう」。洗練されたコード・プロセッションとソウルミュージックにも通じるリズム・アレンジを併せ持つこの曲は、このバンドの表現の幅をもっとも端的に示していると言っていいだろう。また、ビッグバンド・ジャズのエッセンスを取り入れた「極東ID」も絶品。これほどまでに芳醇なグルーヴをステージで奏でられるロックバンドは、(少なくても20代のバンドとしては)本当に稀だと思う。
「ツアー本編とは違うセットリスト、趣向でやってます!」「ここに立ってるだけで、胸がいっぱい。(会場の)大きさというよりも、地元に帰ってきた!という嬉しさのほうが強いですね」(光村)という何だか可愛らしい(?)MCを挟んでライブは後半に突入、4人のメンバーはさらに肉体性を強めたパフォーマンスを体現していく。巨大なミラーボールの光が反射し、会場全体が巨大なクラブへと変貌した「カルーセル」(ディスコティックなリズムの上で踊りまくる、古村のギター・プレイがカッコいい!)、爆発力と疾走感が倍増されたロックンロール・ナンバー「THE BUNGY」が放たれ、オーディエンスの興奮も頂点へ。また、「俺らなりの夏のラブソングです!」と紹介された新曲「夏の大三角形」(「カルピスウォーター」CMソング)もしっかりとインパクトを残した。先鋭的なロックサウンドと誰もが楽しめるポップ感覚をナチュラルに結びつけたこの曲はきっと、この先のNICOにとっても大きな意味を持つことになるだろう。さらに「ここから空気を変えて、ゴリッと攻めていきます!」という光村の煽りとともに、「妄想隊員A」「Broken Youth」「バイシクル」というアグレッシブなアップチューンを叩き込み、本編は終了。汗だくの観客たちが、これ以上ないほどステキな笑顔をしていて、こちらまで胸が熱くなる。
アンコールでも、この夜だけの特別な仕掛けが用意されていた。まずは観客5000人の拍手を録音(この音源は後々、楽曲のなかで使用するらしい)すると、会場後方の入り口から突然、管楽器を持った8名の女子(地元・千葉の拓殖大学紅陵高等学校の吹奏楽部のみなさん)といっしょにメンバーが登場。マーチング・バンド風に行進しながらステージに上がり、軽やかなブラス・セクションとともに「手をたたけ」が披露される。この日、この場所でしか体感できない演出にオーディエンスも大興奮!メンバーもめちゃくちゃ嬉しそうだ。
「日本を代表するバンドと言われるように、俺らの時代が来るようにがんばります」という光村の宣言とともに演奏された、ラストの「demon(is there?)もズッシリと心に響いた。すべての力を振り絞り、全身全霊で自分たちの音楽を生み出す--そのあまりにも生々しい姿勢こそが、このバンドの本質なのかもしれない。必死の形相で演奏を続けるメンバーを見て、そんなことを思った。
「ありがとうございました!」という生声でこの特別なライブを締めくくった4人。その表情からは”いまやれることは、すべてやり切った”という充実感が伝わってきた。自らの存在そのものを刻み込んだ楽曲を、直接的なコミュニケーションとともにオーディエンスに届ける--きわめて真っ当なスタイルを貫きながら、NICO Touches the Wallsはロックバンドとして確実に成長を続けている。そのことをはっきりと確信したライブだった。
【取材・文:森 朋之】
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リリース情報
セットリスト
- Heim
- 衝突
- 業々
- 友情讃歌
- ホログラム
- 泥んこドビー
- Endless roll
- 波
- 恋をしよう
- 極東ID
- トマト
- カルーセル
- THE BUNGY
- 夏の大三角形
- 妄想隊員A
- Broken Youth
- バイシクル
- 手をたたけ
- demon(is there?)