歌唱力と感情表現豊かな歌声で会場を魅了した、Kyleeのツアーファイナル
Kylee | 2012.04.06
明朗快活で健康的なキャラクターと、パワフルさからしっとりとした面まで、その曲毎に感情移入たっぷりな歌声で多くの人を魅了している、新世代のポップアイコン、Kylee(カイリー)。アメリカ在住の17歳女子高生シンガーだ。弱冠11歳でNBA公式戦の国歌独唱を務め、15歳の時にはSUMMER SONICのステージに立った彼女。昨秋発売のシングル「CRAZY FOR YOU」がスマッシュヒットを記録。11月には待望の1stアルバム『17』を発売し、大好評を博した。そんな彼女初のジャパンツアーのファイナルが渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて行われた。
3月19日の名古屋を皮切りに、福岡、大阪と回ってきた彼女。本格的なバンドをバックにしながらも、けっしてそこに歌が埋もれず、各曲に込められた同世代の女の子の気持ちを、時にパワフルに、時にしっとりと、その伸びやかでバイタリティ溢れる歌声で伝え、会場と気持ちを、この日も共有し続けた。かくいう私も、詰めかけた満員のオーディエンスと共に終始、彼女の歌う各曲のシチュエーションとも言える、17歳の頃へと引き戻されていった。
彼女の1stアルバム『17』は、非常に優れた作品であった。メロディック、ハードロック、ミディアムバラード、活力溢れるナンバー等々、さまざまなタイプのアメリカン・ロックを中心としたサウンドに、17歳ならではの気持ちを、シチュエーションに伝えていたその作品内容は、曲毎の雰囲気にキチンと沿い、各曲に込められた感情がしっかりと表現されたものだった。それが、この日のライヴでは、どのように歌唱され、どんな表情やアクションを交え観る者に伝えられるのだろう?そんな期待を胸に会場へと足を運んだ。
この日のバックバンドは全て、Kyleeとは気心の知れたメンバーたち。男性キーボード、女性ベーシスト、男性ギター、女性ドラマーといった男女混合のアメリカ人たちであった。その彼らがまずはステージに登場。ミディアムでどっしりとしたインストナンバーをプレイし始める。そんな中、青のキャミソールに白いバルーンスカート、白いブーツ姿のKyleeが元気良くステージに現れると、会場の雰囲気が一気に明るく華やぐ。オープニングの挨拶は「Come on! Join us!」。そのエナジーあふれる一言と、こぼれんばかりの笑顔が、会場全体に活力を与える。1曲目は、ドライヴ感溢れる「IT’S YOU」。いきなり彼女の活発な歌声が会場にバイタリティを呼び込む。バックに負けるどころか、合わさることで更に一緒にグングンと歌世界を広げていく彼女の歌声。サビの伸びやかでストレートになるところでは、爽快さが場内に満ち、一体感が育まれていく。次の「My Best Friend」に入ると、更なる疾走感とダイナミズムが会場の空気に加わる。楽曲に合わせるように、彼女のアクションもアクティブになっていく。同曲ではウィスパーも披露。ストレートさだけではない、歌の幅をしっかりと見せてくれる。
「みんな元気ですか?今日はみなさんがCDで聴いたことのある曲だけでなく、まだ誰も聴いたことのない曲もお送りします」とKylee。
会場を交え、歌のフレーズに合わせた軽いフリのレクチャーの後、新曲「FEEL」が披露される。彼女のフリに合わせ、力強く腕を伸ばすオーディエンス。それが決まった時の嬉しそうな彼女の表情も印象的であった。そして、ダーク気味な表情とミステリアスな歌声が会場を惹きつけた「UNNOTICED」、歌に宿したパワフルさと、陰りのある表情からそれを振り払うかのような表情への変化も特徴的だった「Just Go」と、英語詞ナンバー2連発を経て、その切なさに満ちたつのる思いを感情移入たっぷりに伝えた「Everlasting」等が、観る者各々を歌のシチュエーションへと誘っていく。
ここでステージ中央に椅子が用意され、彼女のアコギによる「Yours Truly」の弾き語りが始まる。親友と仲直りをするために初めて作曲したという同曲が、会場をしっとりと包む。続く「キミがいるから」も聴く者の胸を締めつけるナンバー。溢れ出る愛しい思いを、マイクを持たない方の手でも伝えるがごとく、気持ちを込めたジェスチャーが繰り返される。そして一変、「VACANCY」「Over U」のロック色の極めて強い2曲が会場にパワフルさを引き戻す。この歌では、Kyleeの激しくアグレッシヴな面が全開。会場のライティングと共に彼女のエモ―ショナルさがフロアを襲う。また、ミディアムバラードの新曲「未来」では、さらに感情移入たっぷりに、その歌声を会場に響かせ、それに連鎖されるように、我々も各々の今とこれからに思いを馳せていく。
ここからは後半戦。ラストに向け、明るく、いかにもアメリカンライクなロックナンバーが立て続けに歌われる。どこまでも進んでいけそうな気持ちにさせてくれた「ONE STEP」、歌の光景が頭の中にパーッと広がっていった「BRAND NEW WAVE feat. Orianthi」、疾走感たっぷりのサウンドの上、その伸びやかな歌声を会場中に響かせた「missing」が、”どこまでも行くわよ!!”といった彼女の表情と共に会場にラストスパートをかける。そしてラストの「CRAZY FOR YOU」では、ライヴならではの臨場感とダイナミズムが、その伸びやかな歌声と共に炸裂。この上ない開放感と爽快感が溢れ出す。サビではフロアも交えての大合唱。会場中の気持ちを一つにまとめあげていく。満足そうな表情と笑顔を残し、彼女はステージを去った。
アンコールは2曲。一番新しく作ったという「Because I Love You」では、彼女の歌の真骨頂とも言える、ソウルフルさとパワフルな歌声が会場を魅了する。彼女の全身で歌を伝えるかのような感情移入たっぷりの歌唱に会場中が聴き入る。そして、ラストはダンサブルで上昇感溢れる「NEVER GIVE UP!」。サビの大合唱が、ステージ/会場を交え、楽曲を一緒に作り上げていく。最後に天に拳を突き上げるようなポーズをとった彼女。その姿は、”やり終えた”満足さと達成感に溢れていた。
「アメリカに住んでるので、頻繁には来られないけど、また日本でライブします!」と力強く約束してくれた彼女。これから彼女はどんな女性シンガーに成長していくのだろう?その確かな歌唱力と感情表現豊かな歌声の今後の更なる伸びしろと、自身の現在に近いシチュエーションや思いで作られ、歌われた歌たちが、齢を重ねていくたびに、どう変化していくのか?に、ライヴが終わり、17歳からふっと現状に引き戻された私は思いを巡らせていた。
【取材・文:池田スカオ和宏】
リリース情報
17
2011年11月23日
DefSTAR RECORDS
1. IT’S YOU
2. CRAZY FOR YOU
3. NEVER GIVE UP!
4. BRAND NEW WAVE feat.Orianthi
5. Give me a chance to say
6. MUSIC
7. キミがいるから
8. ONE STEP
9. missing
10. UNNOTICED
11. Everlasting
12. Yours Truly
ディスク:2
1. キミがいるから [MUSIC VIDEO]
2. missing [MUSIC VIDEO]
3. IT’S YOU [MUSIC VIDEO]
4. Everlasting [MUSIC VIDEO]
5. NEVER GIVE UP! [MUSIC VIDEO]
6. CRAZY FOR YOU [MUSIC VIDEO]
7. BRAND NEW WAVE feat.Orianthi [MUSIC VIDEO]
このアルバムを購入
セットリスト
- IT’S YOU
- My Best Friend
- FEEL
- UNNOTICED
- Just Go
- Everlasting
- Yours Truly
- キミがいるから
- VACANCY
- Over U
- 未来
- ONE STEP
- BRAND NEW WAVE feat. Orianthi
- missing
- CRAZY FOR YOU
- Because I Love You
- NEVER GIVE UP!