レビュー
Kylee | 2012.06.13
「CRAZY FOR YOU」のヒットもあり、Kyleeに対して、<元気でパワフルな歌声で、勢いと疾走感溢れるアメリカンなロックが似合うシンガー>というイメージを、お持ちの方もおられるのではないだろうか? もちろん、それも彼女の大きな魅力の一つではある。しかし、実はそれは彼女の魅力の一表面でしかない。実際に彼女のライヴを体感したり、アルバムを1枚聴いていただければ、納得していただけると思うのだが、本来の彼女は、かなりの歌の表現力と豊かな歌表情を付けられる実力を持つシンガーだ。
それを訝しがる方々は是非一度、まずはこのシングルから聴いて欲しい。この作品には、彼女のアンリミテッドな歌唱力のポテンシャルと、奥深い表現力が2曲に渡り詰まっている。
現在、映画『シグナル?月曜日のルカ?』の主題歌にも起用されているM-1「未来」は、彼女の歌の表情と奥深い表現力に驚かされるナンバー。ミッドテンポでどっしりとしたサウンドの上、次へと力強く踏み出す一歩についてを、時に力強く、時に伸びやかに、時にしっとりと、折々最大の感情移入を交え歌われている。聴き進めていく毎に、段々と大きく、そして眩しい光に包まれていくような鷹揚も特徴的だ。加え、これまで必ず交えられていた英語詞も今回は全く出て来ておらず、全編が日本語詞というのも、この楽曲ならではの新境地を感じる。
そして、M-2「FEEL」は、今年3月の来日ライヴでも披露され、会場を一体化させたナンバー。聴く者を元気にさせる、そのパワフルな歌声には、勢いと生命力、そしてブライトなバイタリティを感じる。
「未来」にて、伸びやかに、力強く歌われている印象的なフレーズ「限界なんて決めたくないんだ」が、まさに彼女の今後の成長と歌表現の伸長を表しているように響く今作。
そう、Kyleeの歌唱の豊かさを、この一枚を通じ、是非感じて欲しい。<彼女に限界なんて無い>と、きっと一緒に思ってもらえることだろう。
【文:池田スカオ和宏】