盟友と共鳴した一夜──THE BACK HORN「KYO-MEIライブ~シリウス~ & Hand In Hand」
THE BACK HORN | 2012.04.23
THE BACK HORNの「KYO-MEI」と、Nothing’s Carved in Stoneの「Hand In Hand」。盟友でもある両者が行なっているイベントの共同開催となった「KYO-MEIライブ~シリウス~ & Hand In Hand」が、東京・大阪の2カ所で開催された(大阪公演のタイトルは「Hand In Hand & KYO-MEIライブ?シリウス」)。生粋のライヴバンドとして圧倒的な支持を集める2組が、手を取り合い、共鳴する。想像しただけで、血湧き肉踊る対戦カードに、当日は多くのオーディエンス達が、会場であるSHIBUYA-AXに詰めかけた。
Nothing’s Carved in Stoneの熱狂的なアクトの後、会場の熱気が冷めきらぬうちに、メンバーがステージに登場。山田将司(Vo)の“こんばんは、THE BACK HORNです”という簡単な挨拶に、フロアから割れんばかりの大歓声が上がる。
1曲目は「雷電」。仄暗い明かりの中、念仏のように世の無情を歌う山田の声と、菅波栄純(Gt)が奏でる陰鬱で怪しいオリエンタルな雰囲気のギターが絡み合う。岡峰光舟(Ba)は、その音に身を委ねながら低弦をうねらせ、松田晋二(Dr)の踏むバスドラムは、闇に潜む怪物が脈を打つかのように響く。そして、その限界まで充填しきったエナジーを、客席に向かって一気に放つと、フロアにモッシュの嵐が吹き荒れた。続く「罠」では、オイコールが上がり、クラウドサーフをする者も現れる中、立て続けに「ひとつの光」を畳み掛け、序盤戦からピークへと登りつめる。
中盤では「クリオネ」を披露。先のインタビューでも話してくれていた通り、THE BAKCK HORNとして新しい扉を開いたような楽曲でもあるが、とても自然で、しっくり馴染んでいる。山田もアコースティックギターを弾き、心地よい風がフロアを吹き抜けた。「まだまだまだまだ盛り上がっていきましょう!!」そんな松田の煽りから、楽器隊が音を爆発させ、山田が咆哮した「真夜中のライオン」、そこから続く「コバルトブルー」、「刃」の3連発は、とにかく凄まじい熱量だった。
「生と死」という、人間の根源的なテーマを叫び、鳴らしてきた彼ら。そして、それに共鳴したオーディエンス達が繰り広げる轟音の宴。その様子を見ていて、ふと思った。これこそが“生きる”ということではないだろうか、と。己の想いを力の限り叫び上げ、ときにそれが他者と衝突することになろうとも、それでも手を取り、前に進んでいく。至極当たり前なことなのに、誰もが出来ずにいる行為。それが今、音楽という依り代を通して、目の前に広がっている。そんな理想郷を産み出す彼らのパフォーマンスに、何度も胸を熱くさせられた。
「何があるか分かんねぇ人生を超えていけるような音楽を、俺らはずっとやってきてるなって思ってて。みんないろんな想いで来てくれてると思うけど、楽しんでくれてる顔を見て、俺達もとても嬉しいです。どうもありがとう」
山田のMCの後に届けられたのは「世界中に花束を」。複雑に絡まり合った感情が、真っすぐに、そして包み込むように鳴らされる。その音に激しく心を揺さぶられると同時に、もっと広い会場で聴きたいと、心の底から思った。それぐらい大きくて、全てを抱きしめるような優しさが、この曲には溢れている。歌い終えた後、山田が何度も小さくうなづいたのが印象的だった。ラストは「シリウス」。震災という悲劇がもたらした苦悩や葛藤、そしてそこから再び立ち上がるために刻みつけた人間讃歌を高らかに叫び上げ、本編は終了した。
鳴り止まない拍手に導かれるように再び4人がステージに登場。アンコールでは、ハイハットを刻む音だけで、フロアから大歓声が上がるぐらいの鉄板ナンバー「無限の荒野」をぶちまける。ギターソロを弾く菅波を、山田が肩車してみせたりと、フロアもステージも全員とにかく暴れ倒し、大熱狂のままライヴの幕を降ろした。
そしてこの日、THE BACK HORNはニューアルバム『リヴスコール』をリリースすることを発表した。MCで松田が発言したことをピックアップすると、“生命の嵐”、“生命の讃歌”、そして“去年1年間ずっとみんなで蓄えていた想いを閉じ込めた”とのことだ。発売日は6月6日。その日がとても待ち遠しい。
【取材・文:山口哲生】
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リリース情報
セットリスト
- 雷電
- 罠
- 一つの光
- 汚れなき涙
- 桜雪
- クリオネ
- 真夜中のライオン
- コバルトブルー
- 刃
- 世界中に花束を
- シリウス
- 無限の荒野
お知らせ
KYO-MEIライブ
2012/05/21(月)柏PALOOZA
2012/05/24(木)高崎club FLEEZ
※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルHPをご覧ください。