スペースシャワー主催の野外ライブイベント「SWEET LOVE SHOWER」。ロックのみならず、話題のミュージシャンやタイムリーなアーティストたちの出演で、他のミュージック・フェスティバルに比べ、多彩で幅広い音楽性が魅力のフェスだ。そんな同フェスが今年も例年同様、「山中湖交流プラザ きらら」にて行われた。 残念ながら今年も天候にはあまり恵まれなかったが、それが故のドラマや物語が生まれたのも事実。最後まで拝むことのできなかった霊峰富士の姿を、それぞれのステージの背景に感じながら、各アーティスト、自身の音楽性や特性を思う存分放ち合った。

　続いては、2日目の9/2の模様から。

　開演前までの激しい雨も、2日のLAKESIDE STAGEトップを飾った、andymoriがプレイを始める頃には、ひととき上がる。かつての演奏スタイルであった、下手(しもて)横向きにセットされたドラムのフォーメーションにて挑んだこの日の彼ら。エモーショナルにアグレッシブに歌が響いた「ベンガルトラとウィスキー」、会場中に大合唱を呼び込んだ「革命」、ベトナム旅行の際にタクシーの運ちゃんにボラれた怒りを曲にぶつけた（笑）、「MONEY MONEY MONEY」を立て続けにプレイ。ラスト3曲では、ニューアルバムにも参加していたトランペットのファンファン(くるり)もゲストで参加。各曲に更なるブレイブ感を与えていたのも印象的であった。

「究極ノ生命体ニ、カカッテキナサイ！」とのギター&ボーカルのジャンケン・ジョニーの煽り文句で、超満員のMt.FUJI STAGEに更なる盛り上がりを寄与した、MAN WITH A MISSION。「前日ハ海デノライブダッタケド、今日ハ山。ヤハリ狼ハ山ノ方ガ似合ウ」との言葉と共に、無数のクラウドサーフを生んだ「distance」、有無を言わせない盛り上がりを見せた「Smells Like Teen Spirit」等、時に踊らせ、時に乗らせ、終始ノリノリで盛り上がりのステージを展開した。

　LAKESIDE STAGEの2番手に登場した藤巻亮太。この山梨は彼の生まれ故郷だ。「自分に挑戦するためにソロになった」と、ライブ開始直後に語っていた通り、レミオロメンの曲は一切演らず。まだ未発表の曲が多かったながらも、その歌声とソングライティングセンスで、どんどん会場を魅了していく。上昇感とダンサブルさが広い会場に心地よく響いた「ハロー流星群」、残念ながら歌内容通りにはいかなかったが、観る者の心に青空を思い浮かばせた「指先」、ラストは「ソロになって、最もライブでやりたかった曲だった」という「月食」が、彼の伸びやかな歌声と共に会場に広がっていった。

「ロック界の奇行師アルカラ」は、このMt.FUJI STAGEでも、その奇行師ぶりを存分に発揮してくれた。いや、加えて奇才ぶりも。ノリの良い楽曲にキャッチーな歌とメロディ、そして、ボーカル＆ギターの稲村の人を惹きつけるMCは、この日も冴えわたっていた。ストップ＆ゴーにてだるまさんが転んだ方式で開始された「踊れやフリーダ」等、今回も飛び道具が満載。終始会場を和やかながら、キリリとシメるライブで楽しませてくれた。そして、通例オープニングに歌われていた「リンダリンダ」に代わり、この日は、「翼をください」が、稲村アカペラによって、この山中湖にて高らかに歌われた。

「今日は全然時間がないから、やり切って帰るから、最後までついてきて下さい」との序盤のボーカルのTAKAのMC通り、短い時間ながら濃厚にして代表曲のオンパレードを繰り広げた、LAKESIDE STAGE でのONE OK ROCK。ダンサブルで上昇感のある「Re:make」、大らかに広がっていく楽曲にて、分厚い雲の向こうに想いを馳せさせた「C.h.a.o.s.m.y.t.h.」、「何かを始めることに躊躇している人々のキッカケになれば」との言葉の後に歌われた、ミディアムバラードの「The Beginning」、会場全員を一度しゃがませ、改めてジャンプさせることで更なる起爆を起こした「Let’s take it someday」等をプレイ。会場を多いに盛り上げた。

　これまで以上に、老若男女、幅広い人々がステージに注目。一際ステージ前方に人々が密集する。続いてLAKESIDE STAGEには、みなさんお待ちかねの山下達郎が登場した。3人の男女コーラスとツインキーボードにバンド編成という大所帯を従え、LAKESIDE STAGEのステージに現れた彼。まずはウォーミングアップがてら「LOVELAND ISLAND」のインスト&コーラス部分のみを披露。そして、爽やかな山下のギターカッティングから「SPARKLE」に入っていく。夏のスプラッシュ感溢れる同曲の登場に、場内も更に盛り上がる。山下がMC。「若い人ばかりで恥ずかしいです。学祭で学生バンドの中に、先生たちのバンドが紛れたようだ」と照れ隠し。その実、CD作品同様のクオリティながら、作品以上の臨場感とライヴならではのアドリブやアレンジを各楽曲に加えていく。「僕らの夏の夢」では、「山中湖湖畔」や「雨だって」と、歌詞を替えて歌うサービス。間では、「お祭りなので、特別にこの人を」と、妻であり、シンガーである、竹内まりやが呼込まれ、「家に帰ろう(マイ・スイート・ホーム)」、「元気を出して」が歌われる。この素晴らしいサプライズには会場も驚喜。湧きに湧く。「ちょっと得した気分だったでしょ?」とは、まりやが去っていった際の山下の一言。その後もギターソロのリレーションを堪能させてくれた、ポリティカルなナンバー「俺の空」や、「BOMBER」では、バックバンド各人の技術の高さを各々のソロやアドリブ、演奏の掛け合い等で披露。ラストは、再びまりやも加わり、「アトムの子供」、そして一拍置いた後に、イントロが流れ出した際に、会場を沸点に達しさせた「RIDE ON TIME」で締め。と思いきや、特別にもう一曲。みなさん待ってましたの「さよなら夏の日」が歌われ、大満足の70分のステージを終えた。

　夕暮れ時の涼しくなった時間、LAKESIDE STAGEにはPerfumeの3人が現れる。予定時刻より20分ほど待たされ、ジラされてスタートした分、会場の"待ってました!!"の盛り上がりは相当なもの。シンクロするヴォーギングがクールだった「Spending aii my time」、インカムからハンドマイクへと換え、よりダンスに躍動さを加えた「Spring of life」、「この日の為に、気持ち良くなるように、他のフェスでは演らずにとっておいた」のMCの後、披露された「マカロニ」。お客さんの掛け合いやコール＆レスポンスを交えコーナーを完成させていった「夏の扉」「survival dAnce」「Ultra Soul」の美味しい所抽出カバーを挟み、ダンスと情熱を会場に振りまいた「FAKE IT」。ラスト2曲は、ライヴでの盛り上がりジャンプソング「チョコレイト・ディスコ」「ポリリズム」の黄金ナンバーも飛び出し、会場のホット度を更に引き上げていった。

　この日のMt.FUJI STAGEのトリ、チャットモンチーが現れると、ステージ前方の密度もぐっと高くなる。終始、"この２人だけで、どれだけ広げられるか?""3人時より音数を寂しく感じさせないか?"に挑戦しているかのような、今年に入ってからの彼女たちのステージは、この日も目まぐるしく、さまざまなメゾッドを楽曲を通し披露してくれた。まずはボーカル&ギターの橋本のエレピの弾き語りから驚かされた「新曲」から始まったこの日。ドラムの福岡のフロアタムに重きを置いたドラミングが生命力たっぷりな「きらききらひかれ」、橋本がハーモニーカも兼用した「ハテナ」、ギターをループステーションに任せ、振り付きで会場と共に歌った「満月に吠えろ」、ドラムとキーボードを入れ替えプレイされた「染まるよ」、奥田民生プロデュース＆楽曲提供の「コンビニエンスハネムーン」、そして、ラスト2曲は、会場の大合唱を生んだ「東京ハチミツオーケストラ」、ダイナミックに楽曲が夜空に広がっていった「恋愛スピリッツ」と、3人時代の曲を、あえて2人ならではのメゾッドとして、新たな息吹を持って披露してくれた。

　そして、 このSWEET LOVE SHOWERの大トリを務めたのが、LAKESIDE STAGEの難波章浩-AKIHIRO NAMBA-。残念ながら彼の登場時は、これまで以上に激しい雨に見舞われたのだったが、逆にこれがドラマティックさと感動を生んでいった。「カントリーロード」のパンキッシュなカバーから開始された、この日。彼のソロ作品からのナンバーや他のカバー曲を立続けにプレイ。激しい雨の中、それをものともせず懸命にプレイする姿や、それに呼応するように、身体から湯気を出し、一緒に歌い、盛り上がるオーディエンスたちも印象的であった。加え、アンコールでは、Hi-STANDARDのナンバーも飛び出し、会場は驚喜。これまたハイスタ時代にもカバーしていた「カリフォルニアドリーミング」で締められ。彼らのステージの背後には、”また来年も来てね”と、誘っているかのように無数の花火が打ち上げられた。

【取材・文 : 池田スカオ和宏】

【撮影 : SLSオフィシャルカメラマン　釘野孝宏、古溪一道、SUSIE、広川智基、渡邉 一生（50音順）】

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