藤井フミヤ期間限定連載6回目。東京近郊3公演で見えてきた新境地をレポ!
藤井フミヤ | 2012.12.07
9月上旬。札幌公演からスタートした、藤井フミヤの全国ツアー「Fumiya Fujii Concert Tour 2012 Life is Beautiful」。11月に入り、終盤戦に差し掛かろうとしている中、立て続けに東京近郊の3公演を観た。
ツアーがスタートし2カ月が経過した後半、しかも短期間で集中的にライヴを観た中でも、3日間の違い、その変化が顕著にわかった。つまりそれだけ、今ツアーのライヴはフィジカルだったということだろう。
ミディアムやバラードが中心という構成ながら、フィジカルに日々変化をしていくライヴになっている秘密は、藤井フミヤの新たな試みによるパフォーマンスにあったと思う。
本ツアーで、彼は、新しいパフォーマンスにチャレンジしている。それが、パントマイムだ。本人曰く「ツアー開始直前、ゲネプロの当日に思いついた」というこのパフォーマンスは、ライヴの中で、大切な役割を担っている。そのひとつが、歌詞の一部、キーワードを自分の体で表現していくことだ。
例えば、ある曲で ♪ 線路沿いにコスモスが揺れ ♪という歌詞が出てくる。藤井フミヤは歌いながら“線路”という言葉に合わせて、手でス―ッと空中に線を引く。その後“コスモス”に合わせ、片手で空中にパッと花を咲かせる。藤井フミヤは、会場にいるすべての人が自分に注目している中、己の体を使い、観客の意識を曲に向けたのだ。これまでも、同様のパフォーマンスを見せる事はあったが、勢いで出てきたパターンで、今思えば(というか、今ツアーと比較してみれば)歌詞を体現するまでには至らなかったように思う。
この新たなパフォーマンスは、ライヴを重ねるにつれ、どんどん精度を増していき、戸田公演では、観客を視覚から楽曲の世界に引き込むまでになった。
正直、そのクオリティーの高さに驚いた。2カ月の間に、ここまでエンターテインメントとして、オリジナリティーに昇華してくるとは、まったく想像していなかったからだ。しかし、驚きはまだ続いた。
かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホールのライヴでは、同じフレーズの中に、パフォーマンスでさらに多くの情報を入れ込んできたのだ。
“線路沿い”という言葉では、空中に手で線を引いた後、その手で列車を見送るようなジェスチャー。その後、パッと片手で花を作った後、足元からゆらゆらと揺れて見せた。片手でも、上半身でもなく、足元から揺れて見せたのは、その方が見た目で風に揺れる花をイメージできると判断したからだろう。
この“勘の良さと再現力”は、デビュー以降、藤井フミヤのライヴ・パフォーマンスの魅力の土壌になっているものだが、そこから今回のツアー中に、新たな芽が萌芽したと言えるのではないか。この芽が、今後、どんな花を咲かせ、ライヴに色を添えていくのか楽しみだ。
さて。パフォーマンスというポイントで言うならば、秦野公演で、こんな場面があった。中盤。メンバー紹介でのひとこま。ドラムスの屋敷豪太を“グラウンド・ビートを作りだした人”と紹介すると、その流れで、グラウンド・ビートを披露することに。他のバンドメンバーも、すぐビートにライドオンし、即興で楽曲を演奏。そのグル―ヴに「うわぁ、懐かしい。Soul II Soul、やっぱかっこいいね」と、軽く飛び乗り、アドリヴで踊り出したのが藤井フミヤ。滑らかなステップを見せ、会場を盛り上げた。この一連のパフォーマンスから、会場のモードがシフトチェンジしていく。その雰囲気を感じたのか、フミヤは笑顔で、こう言葉をつないだ。
「あぁ、いいね。良かった。いろんな事を思い出した。こっからは、俺らだけじゃなくて、みんなが頼り……」
観客から「任してください!」の声がかかる。その声を受けて「頼むよ?、頼んだぞ?」とフミヤ。ライブは後半戦へ。観客が一斉に立ち上がる。フミヤのクラップに合わせて、会場中でコケティッシュなアップチューンのリズムが鳴り響いた。
この“瞬発力&身体能力”も、藤井フミヤのライヴでは欠かせない、名物になっているパフォーマンスだが、歌そのものというより、ビート感やメロディの起伏を体現しているスタイルだと思う。今後、どういう形に変化し、ライヴに組み込まれて行くのか興味深い。
セットリストや曲調だけでなく、パフォーマンスでもライヴでの“めりはり”を見出した藤井フミヤ。
歌うこと、歌を伝えることにポイントをおいた本ツアーにおいて、新たな体現方法が産まれてきた事実は、藤井フミヤだからこそと言えるのではあるまいか。
自ら決めた本筋の中に表れた新たな本領。
さあ、これからも、どんどんいろんな本領、発揮してもらいましょ。
【取材・文・構成:伊藤亜希】
※次回はツアーファイナル、オーチャードホール公演をネタばれありでレポートします。お楽しみに!
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リリース情報
Winter String(初回盤)
2012年10月31日
SMAR
1. Another Orion (Strings Orchestra ver.)
2. 透明人間
3. Endless Snow (Still Snowing Mix)
4. Snow Crystal (Chamber Orchestra ver.)
5. 彼女のタンバリン
6. へそまがりSweetHeart
7. 終わらないでクリスマスイブ (GOTA Re-Mix)
ディスク:2 (DVD)
"Life is Beautiful"Premium Live
supported by Billboard Live Tokyo
1. TRUE LOVE
2. 突然に完全な空前の一目惚れ
3. なんかいいこと
4. 今、君に言っておこう
5. Another Orion
6. わらの犬
7. 点線
8. 愚か者の詩
9. Life is Beautiful
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リリース情報
お知らせ
Fumiya Fujii Concert tour 2012 「Life is Beautiful」
2012/09/09(日)札幌市教育文化会館大ホール
2012/09/13(木)瀬戸市文化センター
2012/09/15(土)びわ湖ホール・大ホール
2012/09/16(日)熊本市民会館
2012/09/21(金)渋谷公会堂
2012/09/22(土・祝)渋谷公会堂
2012/09/29(土)オリックス劇場
2012/09/30(日)オリックス劇場
2012/10/03(水)六カ所村文化交流プラザ スワニー[追加公演]
2012/10/05(金)黒磯文化会館
2012/10/06(土)仙台イズミティ21
2012/10/08(月・祝)中標津町総合文化会館しるべっとホール
2012/10/10(水)音更町文化センター
2012/10/13(土)大宮ソニックシティ・大ホール
2012/10/14(日)大宮ソニックシティ・大ホール
2012/10/18(木)たつの市総合文化会館赤とんぼ文化ホール
2012/10/20(土)サンポートホール高松・大ホール
2012/10/27(土)紀南文化会館
2012/10/28(日)堺市民会館[追加公演]
2012/10/31(水)大阪国際会議場メインホール
2012/11/01(木)三島市民文化会館
2012/11/03(土・祝) 越前市文化センター
2012/11/04(日)加古川市民会館大ホール
2012/11/08(木)戸田市文化会館[追加公演]
2012/11/10(土)神戸国際会館こくさいホール
2012/11/11(日)守山市民ホール
2012/11/14(水)かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホール
2012/11/17(土)渋川市民会館
2012/11/18(日)秦野市文化会館
2012/11/21(水)東金文化会館 大ホール
2012/11/23(金・祝)名古屋国際会議場センチュリーホール
2012/11/25(日)結城市民文化センターアクロス
2012/12/01(土)新潟県民会館
2012/12/02(日)須坂市文化会館メセナホール
2012/12/06(木)Bunkamuraオーチャードホール
2012/12/07(金)Bunkamuraオーチャードホール
Fumiya Fujii Special Live 2012 Winter String
2012/12/15(土)神奈川県立県民ホール 大ホール
2012/12/16(日)大阪国際会議場メインホール
2012/12/21(金)Bunkamuraオーチャードホール[追加公演]
2012/12/23(日)広島アステールプラザ・大ホール
2012/12/24(月・祝)福岡サンパレス
2012/12/28(金)大阪国際会議場メインホール
2012/12/30(日)東京国際フォーラムホールA
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。