“FUJIFABRIC ZEPP TOUR 2012 「Light Flight」”のファイナルとなったZepp DiverCity Tokyo。開演前からステージを覆っていた白い幕が、キラキラと眩い光を映し出すと、会場を埋め尽くしたオーディエンスがざわめきだす。そして、幕の向こう側にメンバーが登場し、そのまま「STAR」がスタート。映像と被って、まるでメンバーが宇宙の中で演奏しているみたい。さらに、2階からだと、オーディエンスの手も星のように白く輝いていて、素敵な演出になっていた。続く「徒然モノクローム」のイントロで幕がバサーっと落ちると、メンバーのバックにはLEDスクリーンが。今回のツアーは、彼らのミュージックビデオの多くを監督しているスミス氏の手掛けた映像を多用し、徹底して視覚的にも楽しめるようになっていたのだ。とは言え、バンドはそのテーマに引っ張られ過ぎることなく、アグレッシヴに躍動していく。「Splash!!」では、金澤がキーボードに登って「トーキーオー！」と絶叫！　山内も「トバしていくんで、よろしくお願いします！」と宣言した。

　金澤がキーボードを叩いても音が出ないアクションを見せながら「心で聴け！」と叫んだ「B.O.I.P」や、久々の披露となった「記念写真」、さらにはツアー中に作られたタイトル未定の新曲も飛び出すという、聴きどころ満載の展開。ライヴでどうなるんだろう？　と思っていた、「Light Flight」のカップリングに収録されていた変則ポップチューンの「JOY」も、スーパーサポートドラマーBOBOのパワーもあって、キッチリまとまって響いてきた。そして、渋く長いアウトロを響かせた「蒼い鳥」と畳み掛け、彼らの本領を発揮していく。

　やはり、ハイライトとなったのは、ツアータイトルにも掲げられた「Light Flight」だろう。山内のアカペラから演奏に入っていくと、スクリーンには都会の夜の風景が。今の彼らの、リアルな思いが伝わってくる。歌い終えた山内が、口を開いた。「この体制になって、初めてツアーを廻って、不安で不安で。でも、たくさんの人が来てくれて、やってよかったなって。そのツアーが終わってから作った曲です」――この曲が切なくも優しい理由が、わかった気がした。

　バンドの雰囲気は、相変わらずほのぼのとぶっ飛んでいて、加藤は「楽しいゼーップ！」と弾けて、山内と金澤にも言わせる。つられた山内は「まだまだ飛ばしていくゼーップ！」と叫び、「銀河」で絶頂へ。「流線形」では、フロアにオーディエンスが掲げたライトが光る。「Surfer King」では山内と加藤は向き合って演奏し、いちいち楽しそう。そして、イントロでOiコールまで起こった「夜明けのBEAT」で、本編を終えた。

　アンコールが湧き上がる中、金澤がトートバックを抱えて、一人でステージに登場。「ライヴは生き物なんだ」という名言を残しつつ、小芝居テイストな物販紹介を行っていく。ポップな楽曲や壮絶な演奏と、こういった器用になり切れない人柄が表れる場面とのギャップが、愛おしい。そして、メンバーが全員ステージに揃うと、山内が、2月6日にニューシングルがリリースされること、そして来春に初めてホールツアーを行うことを発表！　そして、その曲「Small World」を初披露した。とにかく、振り切って清々しい印象。これは、新たなキラーチューンに育っていくのではないだろうか。演奏を終えて山内が「いいでしょ？」と問い掛けると、「サイコー！」と声が飛ぶ。フジファブリックのオーディエンスは、いつも、フジファブリックが放つ表現を敏感にキャッチしようとしているように見えて、その関係性が素晴らしいと思う。そして、ハンドクラップに包まれた「Sugar!!」で、ライヴは大団円を迎えた。志村が残した名曲を背負いながら、様々な感情を乗り越えて、今、彼らは、何よりも楽しくフジファブリックを生きている。可能性を切り開きながら突き進むその姿に、期待しかできないと思った夜だった。

【取材・文：高橋美穂】
【撮影：河本悠貴】