都内有数の大ホールで”成熟したロック表現”を堪能させてくれた、ASIAN KUNG-FU GENERATION
ASIAN KUNG-FU GENERATION | 2012.12.26
都内でも有数の大ホール“東京国際フォーラム ホールA”は、ステージの間口が広く、天井も高い非常に整然とした会場で、果たしてそこで観るアジカンのライブはどんな様子になるのか想像しにくかった。だが、実際に体験してみた結論は「アジカンにフォーラムはよく似合う!!」。このホールの良さを充分に活かしたライブは、傑作アルバム『マジックディスク』からさらにステップアップした最新アルバム『ランドマーク』にある“成熟したロック表現”をたっぷり堪能させてくれたのだった。
ステージはいたってシンプル。シンプルどころか、ステージ背後のカーテンは取り払われ、コンクリートの壁がむき出しになっている。舞台には楽器やアンプが並んでいるだけで、なんの装飾もない。 わずかに天井から透明な細い管状のものが数十本吊り下げられているだけだ。
そこに登場したのは、後藤正文(vo&g)、喜多健介(g&vo)、 山田貴洋(b&vo)、伊地知潔(dr)の 他に、サポートのパーカッション、女性コーラス、ギター&キーボードの合計7人。喜多の弾くアコースティック・ギターから「Loser」が始まった。
「Loser」 はBeckの名曲を日本語訳したカバーで、わかりやすく言えばアジカン版「負け犬2012」。今の時代の日本に生きる普通の人々の“負け犬っぷり”=“政治や企業の欺瞞” を描く。ちょうどいい重さのファンキーなビートに乗って、後藤がポエム・リーディングのニュアンスを加えてラップし、歌う。それは後藤が手に入れた新しい語り口で、アジカンの最新のバラッド=叙事詩を説得力をもって伝えてくれたのだった。U2やREMにも通じるイマジネーションに富んだオープニングに、アジカンのバンドとしての成熟を感じて嬉しくなった。
続く「All right part2」は、後藤が「ロックンロールは“オーライ”って叫ぶためにある」と言っていたとおり、一緒に歌うとハッピーな気持ちになるロック・アンセムだ。CDではチャットモンチーの橋本絵莉子をゲストボーカルに迎えていたが、このライブではそのパートをバックコーラスの岩崎愛が担当。アジカンのサウンドに明るい色彩を与える。それは「All right part2」に限ったことではなく、この日のライブ全体にあった祝祭感に、岩崎は大きく貢献していた。
圧巻だったのは7曲目「大洋航路」から10曲目「君という花」にかけての流れだった。当然、このツアーでは『ランドマーク』からの曲がメインになるのだが、「大洋航路」は『ランドマーク』から、8曲目「ブルートレイン」は3rdアルバム『ファンクラブ』から、9曲目「Re:Re」は2nd『ソルファ』、「君という花」は1st『君繋ファイブエム』からと、セットリストはストレートに時代をさかのぼる。最新のアジカンが初期ナンバーを演奏すると、よけいに彼らの“今”が見えてくる。それぞれの曲が、発表当時とは異なった表情を見せる。初期には切迫していたグルーヴが、今はゆったり身体を揺らせてくれたりして、伝わり方が深く力強くなっていることが如実にわかる。だから「君という花」でオーディエンスが♪ラッセーラッセ♪と叫んだとき、それはまるでバンドと自分たちの成長を共に祝福し合っているように感じられたのだった。
「物販の隣で、自立支援プロジェクトのミサンガを売ってます。三陸の津波で被災したお母さんたちが、仮設住宅で作ったものです。もしよければ買うことで支援になるのでよろしく。あと、僕が作ってる新聞“THE FUTURE TIMES”も置いてあるので、持って帰ってね。『それでは、また明日』!」と後藤がこの日、初めて曲のタイトルをコールすると、客席から大きな拍手が起こった。
中盤は『ファンクラブ』の名曲「センスレス」をはさんで『ランドマーク』のナンバーが次々に演奏される。
「前のツアーが震災で中断されて、このフォーラムも中止になりました。その後、ミュージシャンはどこで音楽をやったらいいのか悩んだり、「やっても届きゃしねーよ」って言われたり。その頃、アジカンのメンバーはメチャクチャ仲が悪かったんだけど、スタジオに入ったら仲直りして、1年半かけてアルバムを作りました。そのツアーに来てくれて、みんな、どうもありがとう。年末の選挙では政権を取るとか取らないとか言ってるけど、仮設住宅にはまだ16万人が暮らしている。黙ってるわけにはいかない。三陸鉄道を観たときに感じたことを書いた歌を今から歌います」と後藤が「レイールロード」を歌い始める。最終盤は天井から下がっていた透明チューブがスペックを全開にして、ステージ上方に美しい模様を描き出した。演奏のスケール感といい、照明を含めた演出といい、アジカンの成熟に見合ったパフォーマンスが、フォーラムによく似合うと感じた瞬間だった。
アンコールはまさに2012年 のアジカンのフィナーレを飾るにふさわしいセットリスト。ダブル・アンコールではナイス・サポートの岩崎が、自身のオリジナル「東京LIFE」を歌って華を添える。ラストは「タフな時代だけど、それでも何度でも上を向こう」という後藤の言葉そのままのマーチング・ロック「今を生きて」で幕を閉じた。
このツアー中に台湾公演も大成功を収めたアジカンは、自分たちの掲げる“フェアなロック”をアジアにも広める決意だ。2013年の快進撃も期待したい。
【取材・文:平山雄一】
そして、このレポを書いた当サイトのメインライターで音楽評論家 の平山雄一氏の第二音楽評論集『弱虫のロック論 -GOOD CRITIC-』(角川書店・刊)の発売を記念して、氏と親交のある奥田民生とASIAN KUNG-FU GENERATIONが出演するイベントが決定!!
詳細はこちら。→「弱虫のロック論 -GOOD CRITIC-」(http://music.emtg.jp/pickUp/201212019285bce84)
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リリース情報
セットリスト
Tour 2012「ランドマーク」
2012.12.14@東京国際フォーラム ホールA
- Loser
- All right part2
- N2
- 1.2.3.4.5.6. Baby
- AとZ
- 新世紀のラブソング
- 大洋航路
- ブルートレイン
- Re:Re:
- 君という花
- それでは、また明日
- アフターダーク
- ラストダンスは悲しみを乗せて
- 1980
- マシンガンと形容詞
- センスレス
- レールロード
- ノーネーム
- 踵で愛を打ち鳴らせ
- バイシクルレース
- マーチングバンド
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