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バンド史上最長ツアーのセミファイナル、NHKホールをライヴレポ!

NICO Touches the Walls | 2013.01.09

 NICO Touches the Wallsにとって最長となる全国ツアー「TOUR 2012“ALGORHYTMIQUE”」の22本目、東京・NHKホール。この夜のステージで彼らは、際立ったアレンジセンスと卓越した演奏能力、そして、“音楽を通して、オーディエンスと直接つながっていきたい”という強い意志をはっきりと示していた。
 今回のツアーはアルバムなどのリリースに伴うものではなく、これまでの作品から幅広くピックアップし(毎回セットリストを変えていたという)、リアレンジされた楽曲もあるなど、かなり自由度の高い内容になっていた。そこで試されるのは、“演奏そのもの、歌そのものでどれだけ観客を惹きつけられるか?”というバンドとしての地力。そのハードルを高いレベルで超えてきたことは、オープニングナンバー「ビッグフット」が始まった瞬間からダイレクトに感じられた。演奏全体の安定度がグッと増したことで、ドラマティックなメロディの魅力がしっかりと伝わってきたのだ。「いこうぜ、東京!」という光村龍哉(Vo.)のMCとともに放たれたアッパーチューン「バイシクル」における心地よい疾走感も最高。このツアーを通して彼らは、楽曲のポテンシャルをさらに引き出すことに成功したようだ。
「踊ろうぜ!」(光村)という煽りに導かれた「カルーセル」も印象的だった。エレクトロ系のサウンドとリンクしながら、ダンサブルなビートを生み出す対馬祥太郎(Dr)、ライトハンド奏法でシンセ的なフレーズを繰り出す古村大介(G)、的確な演奏でバンドのボトムを支えつつ、オーディエンスと積極的にコミュニケーションを取る坂倉心悟(Ba)、そして、色気と激しさがせめぎ合うボーカルによって楽曲の世界観をイキイキと描く光村。個性と技量を併せ持ったメンバーが、それぞれのセンスを十分に活かしながら、唯一無二のバンドサウンドを生み出していく――本当にバンドらしいバンドだなと改めて実感させられた瞬間だった。
「リリースを伴うツアーではないので、選りすぐりの曲をお届けします!」という光村の堂々たるコメントを挟んだ後半は、インディーズ時代のミニアルバム『Walls Is Beginning』(‘06年)に収録されていた「行方」からスタート。もともと16ビートのギターカッティングを軸にした楽曲なのだが、この日はグッと抑制が効いたR&B?フリーソウル系のアレンジが施され、“大人のNICO Touches the Walls”をじっくり味わうことができた。また「ラッパと娘」も圧巻。笠置シヅ子の歌唱で知られる昭和の名曲を彼らは、濃密なグルーヴとヘビィな音像を伴うロックチューンへと変貌させていった。イントロでは光村、アウトロでは古村と坂倉がパーカッションを叩きまくるなど、意外性に富んだパフォーマンスも披露(照明や映像に頼り過ぎず、あくまでも演奏を軸にしているところが彼ららしい)、会場全体のテンションがじわじわと上がっていく。意表を突く選曲と振り切ったアレンジ、そして、豊かさを増したバンド・アンサンブル。「ラッパと娘」はこのツアーを象徴する1曲と言えるかもしれない。

 ツアータイトルの“ALGORHYTMIQUE”(“アルゴリズム”をもとにした造語)に合わせて制作されたという新曲「チェインリアクション」(古村、坂倉が作曲を手がけたアップチューン。まさに数学的に入り組んだアレンジが楽しい)からは、このバンドが持つ心地よい高揚感、ポップなエンターテインメント性が広がっていく。「世界でいちばんでっかい手拍子を聞かせてください!」という光村のシャウトから始まったヒットチューン「手をたたけ」、鋭利なグルーヴをたたえた古村のギターにリードされたロックンロール・ナンバー「THE BUNGY」。ロックバンドとしての魅力を最大限に放出しながら、観客とダイレクトにつながることで、音楽だけが持ち得る興奮へと導いていく。これこそがNICO Touches the Wallsの真骨頂なのだ。
 そして光村がオーディエンスに向かってゆっくりと語りかける。
「さっき“名曲たち”って大口叩いたけど、時間が経つと、流行も変わるし、“カッコいい、カッコ悪い”っていうのも変わっていくでしょ? でも、みんなの笑顔を見たり、拍手を聞いてると、いままでやってきたことは間違いじゃなかった、どの曲も本当にいい曲たちだって思えました。これからも1秒たりとも無駄にせず、いい音楽を作っていきたいです」

 このツアーの中で彼らは、これまでのキャリアを振り返り、自らの音楽性を改めて認識した。その経験はこれから生まれてくる音楽に対しても、さらに強い自信をもたらすことになるだろう。本編ラストの「夏の大三角形」を聴きながら、そのことを確認した。
 アンコールでは、12/19にリリースされたニューシングル「夢1号」(イントロのコーラスワークが美しい!)を披露。このバンドの現在地がはっきりと確認できた、きわめて意義深いライブだったと思う。

【取材・文:森 朋之】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル NICO Touches the Walls

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リリース情報

夢1号(初回盤)

夢1号(初回盤)

2012年12月19日

KRE

1. 夢1号
2. 決戦は金曜日
3. 風人 (bonus tracks)
4. バイシクル (bonus tracks)
5. 芽 (bonus tracks)

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セットリスト

「TOUR 2012“ALGORHYTMIQUE”」
2012.12.17 @ NHKホール

  1. ビックフット
  2. バイシクル
  3. 夕立マーチ
  4. カルーセル
  5. エトランジェ
  6. 業々
  7. バニーガールとダニーボーイ
  8. 風人
  9. Aurora(Prelude)
  10. 行方
  11. ラッパと娘
  12. マトリョーシカ
  13. チェインリアクション
  14. ホログラム
  15. 手をたたけ
  16. THE BUNGY
  17. 夏の大三角形
Encore
  1. 夢1号
  2. N極とN極

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