ドレスコーズ初の全国ツアー、その序盤、東京ワンマンの模様を緊急レポ!
ドレスコーズ | 2013.01.31
ようやくドレスコーズの現時点での全貌が見えたライヴであった。とは言え、その全貌は、「これがドレスコーズです」と、全体像がボカンと提示されたものではけっしてなく、彼らが見せた一つ一つの側面をオーディエンスが拾い、各人の中で合わせ、組み立て、完成させていく類のもの。「これもドレスコーズ」「あれもドレスコーズ」と、違ったタイプの楽曲が、ライヴを追う毎に1編1編放たれては、その場面場面が我々を誘い、惹き込み、ノラせ、呼応させ、浸らせ、佇まさせた。
関東近郊では、横須賀の極めて小さなライヴハウスで行ったものの、彼らがこの東京でワンマンライヴを行うのは、これが初。これまではCD購入者特典の招待ライヴやフェス、イベントを中心に出演し、短い時間の中で、幾つもの<彼ららしい断片>を、集まったオーディエンスたちに明示してきた。“そんな彼らの全貌が、今回は見れるかも…”。そんな嬉々とした気持ちを胸に、みんな集まったのだろう。会場のO-WESTは立錐の余地もないほどの超満員であった。
昨年末にリリースされた、待望の1stアルバム『the dresscodes』を引っ提げ行われた今回の『the dresscodes TOUR 1954』。1月23日の京都を皮切りに、全国11箇所を3月の上旬まで回り、このO-WESTは、そのツアー2日目であった。
探り探りだった反面、良い意味での小慣れてなさや荒削りさが感じられた、この日のライヴ。加え、各人のライヴでの役割や実際のプレイヤビリティが、作品以上に伝わってきたのは嬉しい収穫であった。そう、以前からボーカルの志磨が事ある毎に口にしていた、<バンドのいちメンバー><自分もバンドの中では1/4>、その辺りが明確に、この日は展開された。
メインに会場を惹きつけ、ノラせ、コブシを上げさせていたのは、やはり勢いのあるナンバーたちであった。「Lolita」では、ギターの丸山康太のソリッドなカッティングとベースの山中治雄の躍動的なベースライン、暴発さとタイトさが魅力のドラマー菅大智から叩き出される8ビートによって、ライヴを更に走り出させ、「リリー・アン」では疾走感を、そして、作品で見せたツインギター性もギター1本で見事に表現していた「ベルエポックマン」では、ラストに向けてグングンと会場を高みへと連れていき、彼らの始動にぴったりの、<ロックバンド・ドレスコーズ>を魅せつけた「Trash」が放たれると、フロア前方は、これまでにないほどの密度の高さを見せた。反面、「もっとうるさい曲でも演るかい」との志磨の短いMCの後、プレイされた「Automatic Punk」では、彼らのアヴァンギャルドさが炸裂。丸山のギターはフィードバックを起こし、山中が硬質なベースをキープしていく中、時折り菅が千手観音の如き、ストーミーなドラミングを用い、津波のような激しさがフロアを襲撃。会場はなす術もなく、その放たれる音塊に浸っている場面も印象的であった。
そんな中、やはり光っていたのは、志磨のボーカリゼーションであった。時にアグレッシヴに、時にアンニュイに、時にクールに、時にロックボーカリスト然と、次から次へと放たれるタイプの違う曲たちに、曲毎に歌声を変えながらも、どれもドレスコーズのボーカル然として一本筋の通った表現せしめていたのは、やはり特筆すべきところだろう。
また、この日は、これまでイベント等ではあまり披露されなかったナンバーも耳を惹いた。1stシングル「Trash」のカップリング曲「TANGO,JAJ」「パラードの犬」といったナンバーは、極めて作品性の高い楽曲だったのだが、例えば「「TANGO,JAJ」であれば、不穏でデカダンス、フレンチなラ・ボエームさがよりデフォルメされて伝えられたし、「パラードの犬」も、原曲にあった、たゆたうように穏やかだけど、その秘めた狂気のようなものが、作品以上にメリハリを持って表現された。
彼らはまだデビューからシングル、アルバムを1枚づつしかリリースしていない。当然持ち歌は今のところそれほど無い。そんな中、今後の彼らを感じさせるように、2曲の新曲が発表された。「あのさ、新曲演ってもいい?」との唐突のサプライズに会場が驚喜する中、中盤にプレイされた、志磨もギターを持ち鳴らされたナンバーは、悲しみを湛えながら、アウトロに向かいブワッと光景を広げていき、また、「今年は色々とやるよ。手始めに新曲を作ってみました」との嬉しい公約の後、放たれたナンバーは、これまでに見られなかったポップさに満ちていたりと、それぞれが今後の彼らの幅やバリエーションを楽しみにさせてくれた。
このツアーは、3月8日の日本青年館をゴールに、これからも各地を回り、都度、<現時点のドレスコーズの全貌>がみなさんに披露されていくことだろう。もしお近くに彼らが来たら、是非その放たれる1編1編を体感し、拾い上げ、自分の中の<ドレスコーズ像>を作り上げていって欲しい。まっ、次の作品でまたそれをぶち壊されてしまうのかもしれないけど(笑)。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:松本時代】
リリース情報
お知らせ
「the dresscodes TOUR 1954」
2013/02/02(土)広島ナミキジャンクション
2013/02/03(日)福岡DRUM Be-1
2013/02/09(土)仙台darwin
2013/02/10(日)新潟CLUB RIVERST
2013/02/16(土)梅田QUATTRO
2013/02/17(日)高松DIME
2013/02/22(金)名古屋QUATTRO
2013/03/08(金)日本青年館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。