藤巻亮太の初ソロシングル「光をあつめて」は、再び音楽に向き合うきっかけをくれた曲
藤巻亮太 | 2012.02.24
2010年、レミオロメンが結成10周年を迎えた年に、いろいろと自分たちを見つめ返したと語る藤巻亮太。そんな彼は2012年2月29日に「光をあつめて」でソロとしての一歩を踏み出す。ソロとしての道を選んだそこには、いったいどんな想いが存在するのだろう?
2012年2月1日にバンドの活動休止を発表する2日前に行なわれたこのインタビューで、彼は飾ることのない心からの言葉で応えてくれた。
- EMTG:まず、今回のシングル「光をあつめて」を、ソロとして届けようと思った気持ちを聞かせてもらってもいいですか?
- 藤巻:はい。まず、2010年でレミオロメンが10周年を迎え11年目に向かったとき、“本当にこのままでいいのかな?”という話をバンド内でしたんです。自分たちが築いてきた音楽のやりかたみたいなフォーマットを、一度解体してみるのもいいんじゃないかっていう話になったんです。予定調和になってしまっているんじゃないか……とか、自分たちひとりひとりが音楽にどう向き合っていくべきか……とか、10年を迎えた今だからこそ、見つめ直せることがあるんじゃないかって。本当にいろんな話をしたんです。そういうミーティングを何度も何度も重ねた中で、僕は、それぞれが音楽に対する挑戦をしていくのもいいんじゃないかなという意見を出したんです。自分自身としては、レミオロメン時代にやってこれなかったような音楽とか、すごくいい曲なんだけど、レミオロメンではないんじゃないかっていう曲とかを、ソロでなら出来るんじゃないかなと思ったんです。新たな挑戦という意味でのソロという発想だったというか。去年1年かけて、だんだんとソロとして歌ってみようと決意していった感じです。それまでは本当に悩んでいたんですよ。
- EMTG:じゃぁ、ミーティングは去年1年かけて行なわれていた感じだったんですね。すごく時間をかけて。
- 藤巻:そう。1月くらいからずっと。そんな中、3月11日に東日本大震災が起こり、より音楽というモノが果たせる役割りみたいなことを自分の中ですごく深く考えるようになって。自分の中で見つめ直しているうちに、だんだん何を作ったらいいのか解らなくなってきてしまったんです。そこで少し立ち止まってしまったというか。何も手につかなくなって、何も考えられなくなってしまって。そんな想いとはまた別なところで、4月に被災地の石巻に行って、炊き出しに参加させてもらったんです。本当に、純粋に炊き出しのお手伝いで行っただけだったんですけど、もしかしたら、求められるのであれば歌いたいと思ってアコギを車に積んでいったんです。女川の避難所に子供用のおもちゃを持って行った時にそこで、“1曲歌って下さい”って言ってくれた方がいて、歌わせてもらったんです。そのとき、音楽が必要とされたという事実が、自分の中ですごく嬉しくて、心の中に大きく残ったんです。その経験から、“もういちど、また曲を作っていこう”と思えたんですよね。そこから、初めて出来た曲が、この「光をあつめて」だったんです。
- EMTG:一歩、進めたんですね。そこで。
- 藤巻:そうなんです。それまで必死で答えを出そうと思って悩んで、もがいていたんですけど、焦って白黒つけなくてもいいんだ、今すぐ答えを出す必要はないのかもしれないって思えたんです。まずは少しずつでもいいから、一歩ずつ前に進んでいこうって。この曲の1行目で書いた、【答えは出ないけど歌は続いていく】っていう歌詞が書けたとき、気持ちがすごく楽になれたんです。すぐに答えは出ないかもしれないけど、一番大切なのは、まず一歩進むことなんだって。そう思えて、また曲を作っていこうって思えたんです。
- EMTG:この曲は藤巻くんにとって、すごく意味のある大切な1曲となったんですね。
- 藤巻:そう。音楽をもう一度やろうと思わせてくれたきっかけをくれた曲なんです。だからこそ、この曲を1stシングルとして出したかったんです。
- EMTG:なるほど。音楽性で言うと、カップリングの「ひとりぼっち」とはまったく違うテンポ感のモノですよね。
- 藤巻:そうなんですよ。さっき言ったレミオロメンでは出せなくてお蔵入りになっていたザラッとした感じや、ゴリッとした感じの曲で、ソロで出していこうとしている音楽性の一面とは、また違ったベクトルにある1曲ですね、「光をあつめて」は。特別というか。
- EMTG:「光をあつめて」的な楽曲も今後は?
- 藤巻:作っていけるんじゃないかなと思ってますね。この曲を作れたからこそ、また曲を作れたというとこもありますし、実際にこういう感じの曲も何曲か生まれてきたりもしているので。
- EMTG:それぞれ3人が経験したことを、レミオロメンに持ち帰れたら、って思っていたりしますか?
- 藤巻:僕たちはそんなに器用な人間じゃないから、そういう口約束をしてぬるっと戻る感じは良くないと思っていて。約束はしていないんだけど、でもやっぱり想いとしてはみんなレミオロメンを大切に思っているからね。もしもまた戻れることがあるのなら、そのときはきっと僕たちが3人集まる意味がそこに生まれてると思うから、そういう未来があるのなら、3人にとってもすごく幸せなことだと思うし。応援して下さったファンの皆さんにとっても、意味のあることでないと、簡単に戻ってきちゃいけないなと思っているんです。約束はしてないけど、3人それぞれが自分たちにとっての音楽を見つめ直せる時間が大事なモノになっていくと思うから、その先を経て一緒に音楽を出来るなら、それはそれですごく楽しみな気がしてますね。
- EMTG:誠実ですね、藤巻くん。今のお話を聞いて、だからこそ、こういう歌詞や曲が書けるんだろうなって思いました。「光をあつめて」は、無責任な優しさや励ましじゃない、本当に感じている言葉を感じますからね。
- 藤巻:うん。震災のことだけを思って書いた歌詞ではないんですけど、やっぱりそこで感じたことが大きかったのは事実で。音楽でお腹をいっぱいにさせてあげることも出来ないし、音楽で寒さをしのいで温めてあげることも出来ないですからね。出来るとしたら、一瞬だけど、心の一部を軽くしてあげられたり、忘れさせてあげられたり、楽しませて発散させてあげられることかなって。そういう可能性に気づけたからこそ、音楽を再開しようと思えたんですよね。でも、一歩踏み出したんだけど、踏み出しながらもいろいろと考えている最中で。
- EMTG:そんな迷いも含め、充分過ぎるほど伝わってきてますから。
- 藤巻:「光をあつめて」も、ソロ曲として作った曲ではなかったんだけど、こうやって届けることになって。でも、もう一度音楽に向き合えることが出来た曲であったことは間違いないから。この先、ソロでアルバムを作った時にに、ソロとしての音楽性とかそういうのは、初めて見えてくるのかなって思ってますね。
- EMTG:「光をあつめて」は、ピアノの音色も印象的な1曲ですが、音へのこだわりは?
- 藤巻:出来るだけ音数を少なくして、シンプルにしたいと思って作りましたね。
- EMTG;バンドサウンドとはまた違う意味で?
- 藤巻:そう。だけど、おもいっきりバンドサウンドなんですけどね(笑)。
- EMTG:たしかに(笑)。ギターがあってベースがあってドラムがあったら、もうバンドサウンドになっちゃいますからね(笑)。けど、今お話してくれたようなマインドの違いは、同じバンドサウンドの中でも感じますから。
- 藤巻:そうですね、またバンドとして同じメンバーで意識やサウンド面を高めあっていくというマインドともまた違いますからね。今回「光をあつめて」では、ピアノを小林武史さん、ドラムをあらきゆうこさん、ベースをキタダマキさんに弾いてもらって、ギターは自分で弾いたんですが、歌詞が伝わるすごく素晴しい景色になったと思ってますね。ソロでやろうという思いで作った曲ではなかったから、イメージがあった訳ではなかったんだけど、結果すごく理想の1曲に仕上がりました。ソロの音楽性ってとこで言ったら「ひとりぼっち」とかの方が強いかな。「ひとりぼっち」は、また違うミュージシャンにお願いして、ベースは自分で弾いたんですけど、きっとこの曲をレミオロメンでやろうとしたら、もうちょっとトリートメントしていたような気がするから。この曲では、トリートメントしすぎずに、ゴツゴツした部分をちゃんと残せてる気がするんですよね。
- EMTG:そうですね、すごく解ります。歌詞もすごく良かったです。何気ない日常が切り取られていて、そこでの気持ちの動きがすごく人間ぽくて。
- 藤巻:ありがとうございます。自分の弱さとどう向き合うかってところがソロでもあると思うので。
- EMTG:“ひとりぼっちが嫌だから浮気心がちょっと芽生えて、メールでも送ってみようかな”って思うけど、“君の顔が浮かんでやめにした”部分とかね(笑)。
- 藤巻:そう(笑)。ある意味ソロらしい一角かなって思いますね。模索中ですが(笑)。
- EMTG:こういうのいいです。
- 藤巻:あははは。ありがとうございます。
- EMTG:“ひとりぼっちが嫌なのにひとりぼっちにさせてしまう”っていう歌詞もすごくジーンときて。寂しかった1日をあったかく感じた曲でした。
- 藤巻:ありがとうございます!
- EMTG:3曲目には「キャッチ&ボール」のライヴヴァージョンが収録されていますが。
- 藤巻:この曲もまさに過渡期の曲なので、自分に言い聞かせてるような、自分を駆り立ててるような1曲だなと思います。こんな曲も作ってるよ、って思ってもらえたら嬉しいです。「光をあつめて」が書けたからこそ生まれた1曲でもあったので、そんな僕の中の気持ちの揺れ具合も含め、ぜひ、聴いてもらえたらなと思います。
【 取材・文:武市尚子 】
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