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今年で9周年を迎えた9mm Parabellum Bulletが、普段とは違う環境で敢行したライブをレポート!!

9mm Parabellum Bullet | 2013.03.18

 結成から9周年を迎えた2013年3月9日にファンへの感謝の気持ちを込めたサンキューライブの開催地に彼らが選んだのは、新宿歌舞伎町のド真ん中、昭和レトロな元グランドキャバレー。フカフカの絨毯、金華山風ソファにシャンデリアや金ラメ調のステージ背景もある非日常的な空間だ。過去にロックバンドのライブを観たことはあるが、9mmの爆音とアクティヴなライブスタイルを考えると、どんなライブになるのか想像しがたいがゆえに興奮も増す。しかも今回は年末イベント以来、約2ヶ月ぶりの久々のライブだ。前説では敢えて柵を設けず個々人で自由にライブを楽しんでもらいたい旨がアナウンスされると、興奮の中にも、彼らの心意気を汲んだ温かな拍手と歓声が。定刻ジャストに暗転、全員ジャケット着用のフォーマルモードで登場。おのおのジャム的に音を発するが、これ実は5thシングル収録のインストである。つまりしょっぱなから最新モード。立て続けに放たれた「Discommunication」で、楽器一音一音のクリアさに総毛立つ。周辺に配慮するというよりハコの空間に見合った音作りなのだと思うが、これがこの日、9mmの楽曲を構成するフレージングやサウンドを再発見させ、そのことが展開もリズムチェンジも多い彼らの曲がしかしなぜポップに聴こえるのか?の謎を開封した印象で、何よりの贅沢だったのだ。早々に結論めいたことを書いてしまったが、メンバー自身も音の分離の良さが気持ちいいのだろう。ファンもダイブやモッシュができなくても感情を各々爆発させている。4曲一気に畳み掛けると卓郎が口を開き「ユーストで観てる人にもわかるように昭和顔で」と笑わせ、本日のライブまでみっちりレコーディングに突入していた旨を伝え、初披露の新曲へ。このブロックで2曲演奏したのだが1曲は「ハートに火をつけて」にもニュアンスの近い2ビート、中村のベースはシンコペーションで入るユニークなアレンジ。フラメンコ的なクラップ、滝のエキゾなギターソロも耳に残る。もう一方はサビのみメジャーキーで、かつキャッチー。それでいて演奏の感触はどこか土着的で人間の本能を鼓舞する印象を持った。新しい。

 続く「どうにもとまらない」のカバーでは卓郎がハンドマイクで花道へ飛び出し前方のミニステージでファンを煽る。いい意味でベタなぐらい妖艶。ここまでボーカリストとしての華を見せつける彼の突き抜けっぷりが痛快だ。「白鳥の湖」のフレーズを挟む滝もまた痛快。歌詞に「歌舞伎町まで辿り着いたぜ!」とアドリブを交えた「Black Market Blues」にファンの歓喜もさらに増す。

「踊り子さんには触らないでくださいとかなんでしょ、花道は。ま、俺らも踊り子なんで触らないでください」と卓郎が笑いを誘う。続けて今年第一弾のシングル「Answer And Answer」を5/29にリリースすることを告知し、本日4曲目の新曲を披露。「はじまったんだ、なに言ってんだ」という思わず口ずさみ、自分を鼓舞したくなる9mm史上最も親しみやすいサビを持ちつつ、サウンドはダークでインダストリアル感さえあるというめくるめく展開は何度も聴いてみたくなる。早く音源を聴きたい!と思わせる求心力だ。「Finder」では滝のあのエロいフレーズがハコに似合いすぎかつ花道を歩きながら弾くその様子は単に楽しげというよりちょっとシュールですらある。後半にはジャジーな「キャンドルの灯を」がハコのムードにハマっているだけでなく、冒頭にも書いたアレンジの必然を音のクリアさで瞠目させ、「カモメ」では卓郎のボーカルが素の音響を通して胸にダイレクトに刺さる。楽器はノイズ成分を抑え、歌も普段以上に素のまま差し出されると、彼らの曲が持つエモーションの芯の部分が身体に入ってくるのだ。爆音とはまた違う新たな発見。と、同時に緻密に生でエディットするようなエフェクトの切り替えも研ぎ澄まされている。本当に贅沢な趣向だ。

 この日はサンキューしか言わないと宣言しつつ、何度も自然に出てしまう「ありがとう」に「また言っちまった」と笑う卓郎。今年も9mmの日である9/9に恒例の「カオスの百年」を横浜BLITZで開催することをアナウンス。最終ブロックはもはやライブのキラーチューンになった「ハートに火をつけて」が歌謡的なメロと時代も国も不明な民族音楽感でフロアを焚きつけ、抑制されていた低音のブーストが前面に出て、ちひろのツインペダルの圧も増す「新しい光」ではブルーのライティングが清冽で激しい9mmの世界はどんな場所でも変わらないことを思い知らせ、本編ラストの「Punishment」ではフロント3人全員が花道に飛び出したのだが、ギターを提げたまま天井からぶら下がりクルクル回り、抜き差しの間合いを獣のような目と凄まじい瞬発力でキメる滝は、普段の予定不調和な動き同様、やはり野生児そのものだった。

 バンドとしての華と曲の芯の部分と演奏の確かさと独自の強い歌謡性をより鮮明に炙り出した今回のライブ。貪欲に未体験の表現に手を伸ばす9mm Parabellum Bulletの音楽の力を信じる根本の姿勢を見た。

【取材・文:石角友香】
【撮影:橋本塁】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 9mm Parabellum Bullet

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リリース情報

Answer And Answer

Answer And Answer

2013年05月29日

EMIミュージックジャパン

[CD]
01, Answer And Answer
02, Snow Plants
03, Mr.Brainbuster
[DVD]
Live Movie & Document From"39-Thank You-LIVE" 13.03.09 At Fuurin Kaikan

このアルバムを購入

セットリスト

39 -Thank You- LIVE
2013.3.9@新宿・風林会館

  1. Mr. Brainbuster
  2. Discommunication
  3. Supernova
  4. The Revolutionary
  5. 新曲1
  6. 新曲2
  7. どうにもとまらない
  8. Black Market Blues
  9. Answer And Answer
  10. The Revenge of Surf Queen
  11. Finder
  12. Living Dying Message
  13. 砂の惑星
  14. キャンドルの灯を
  15. カモメ
  16. ハートに火をつけて
  17. Vampiregirl
  18. Beautiful Target
  19. 新しい光
  20. Punishment

お知らせ

■ライブ情報

9mm Parabellum Bullet Tour 桜前線ブッタ斬リ2013
2013/03/19(火)新潟LOTS
2013/03/23(土)福岡DRUM LOGOS
2013/03/24(日)福岡DRUM LOGOS
2013/03/26(火)広島CLUB QUATTRO
2013/03/28(木)高松OLIVE HALL
2013/04/02(火)Zepp Diver City
2013/04/03(水)Zepp Diver City
2013/04/07(日)札幌PENNY LANE 24
2013/04/08(月)札幌PENNY LANE 24
2013/04/11(木)仙台Rensa
2013/04/12(金)仙台Rensa
2013/04/16(火)Zepp Nagoya
2013/04/17(水)Zepp Namba

ARABAKI ROCK FEST.13
2013/04/28(日)宮城エコキャンプみちのく

HERE PRESENTS"GLAMOROUS STUDY:point10"
2013/05/09(木)渋谷O-WEST

TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2013
2013/05/25(土)新木場 若洲公園

9mm Parabellum Bullet presents
「カオスの百年 vol.9」

2013/09/09(月)横浜BLITZ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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