ドレスコーズ、初の全国ツアーを敢行! そのファイナルの模様をレポ!
ドレスコーズ | 2013.04.01
ドレスコーズが初のツアー『the dresscodes TOUR "1954"』のファイナルを3月8日に日本青年館で迎えた。
私は、このツアーの序盤、2日目に当たる同じ東京でのライヴも観ることが出来た(http://music.emtg.jp/liveReport/2013010199706964d)。その際の彼らは、少々荒削りながら、既にしっかりとした4人組のロックバンド然とした佇まいを満員の会場に誇示していた。そしてその後も彼らは、全国各地を周り続け、多くのステージを、一緒に経たことで、演奏面以外で得たものも多かったのだろう。この日本青年館での彼らは、あのツアー初旬時よりも数倍も大きな会場やステージ、キャパシティにも関わらず、バンドの結束はより固まり、各音や各楽曲は、それぞれの個性を擁し我々を曲毎の歌世界へと惹き込んでくれた。それはまさしく、押しも押されぬ<4人組のロックバンド>へと成長した彼らを魅せつけた90分であった。
Nicoの「All Tomorrow’s Parties」のSEが会場に鳴り響く。嬌声を上げる者、声援を送る者、固唾を飲んで登場を待つ者…。見回すと、客席からステージに向けて送られるアティテュードも様々だ。ここからもドレスコーズの音楽性の自由度と感受の幅広さが見て取れる。
そんな中、メンバーがステージにスタンバイ。ギターの丸山康太の放つフィードバックの中、1曲目の「誰も知らない」が現れる。1曲目にしてステージから孤高さが漂う。呪術のように歌うボーカルの志磨遼平。下から照らされるライトも手伝い、より不穏さが強調されていく。繰り返されるピーキーさの中、菅大智のストームのようなドラミングが時折り不意に会場を襲う。成す術もなく、受け止めるだけの会場。グイグイ惹き込まれていくのが分かる。続いて、イントロの丸山のギターカッティングが鳴り響くと同時に、先程まで音塊に飲まれていた会場がグンと意思を取り戻していく。次の「Lolita」に入ると、場面がパッと変わるように、ライヴが転がり始める。放たれる疾走感のあるサウンドとソリッドな8ビートがたまらない。続く「リリー・アン」でも、弾丸列車を更に加速するかのように、ライヴに勢いが加わっていく。
"完全に温まった!"、と思うもつかの間。その後の曲間では、沈黙が会場を支配し、"次に何が飛び出してくるか?"に神経を研ぎ澄まし待っているかのような、ひっそりとした緊張感が会場を包む。ここからはフレンチポップmeetsフリージャズといった趣きの「Tango,JAJ」、ウッドベース的音色の山中治雄のベースが楽曲を引っ張る、ジャジ―な雰囲気を擁した4ビートを交えた「Puritan Dub」と、ちょっと趣味性の高い、ラ・ボエーム的な世界観が会場を包んでいく。
「新曲やるよ」と告げ、披露された「Zombies」は、哀しみを帯びた、ウェットなナンバーだった。志磨もギターを弾きながら歌い、ラストに向けての抑えられない堰を切ったかのような気持ちが曲と共に溢れ出していく。
中盤では、彼らのポップな面もお目見えし出す。「ストレンジピクチャー」では、ドラムの菅、山中のリズム隊に合わせて、会場も手拍子を呼び込み、続く「レモンツリー」では、カウパンク?カントリーなノリが会場に牧歌的な雰囲気を引き連れてくる。
ここまででちょっと気がついたことがあった。お客さんが彼らの緊張感や音楽性、インプロビゼーションやアヴァンギャルド性たっぷりのプレイに気押され、どう乗って良いのか、若干戸惑っている程を見せていたのだ。楽曲の中では、その音塊に成す術もなく漂っている様相を見せ、曲間でもシーンと次の曲を待っている。決してライヴに不満があったり、楽しくないわけではない。しかし、<何かが来るのをじっと待っている>、そんな印象を受けた。その後のブロックは、ますます彼らの孤高性と高いプレイヤビリティを魅せつけるものであった。緊張感と緊迫感、そしてそれを打ち破る怒涛性とストーミーな雰囲気に、会場の高揚感も左右前後に振り回わされた「Automatic Punk」は、彼らの<凄さ>や<凄まじさ>が表れた最たる例だったと言える。
しかし、私を含む多くの人が思ったに違いない。"ここで、もう少しお互いの気持ちが同化出来る場面が欲しい!"と。その糸口が訪れたのは、本編終盤であった。「SUPER ENFANT TERRIBLE」が終わり、次の「(This Is Not A) Sad Song」に入る際のMCで、志磨はこう語った。「ぼくらはドレスコーズ。誰にも似てない孤高のロックンロールバンド。ひとりぼっちのドレスコーズ。そして、僕たちにとってもそっくりな君たち。君たちは僕たちにとってもよく似ている。僕たちは、まだ誰も知らない道を行くけど、僕らに似た君。ひとりぼっちは寂しいかい?誰にも支持されないのは寂しいかい?だけど、それは寂しいことじゃない。僕らはずっとここに居るから」。凄い起爆力のある言葉だった。それを示すかのように、この言葉以降、放たれた「(This Is Not A) Sad Song」からは、明らかに会場の雰囲気が変わった。どこかステージと客席とに在った近寄りがたい隔たりが壊れていくのを見た。ステージが客席に寄り添っていき、客席がステージに寄り添っていく瞬間だった。嬉しかった。分かり合えた気がした。一気にステージと会場とが抱き合うかのように、そこからラストまでは、本当にあっという間であった。その「(This Is Not A) Sad Song」では、タイトル通り、<それはけっして悲しいことではないから>を共に立証するかのように、会場中が一緒に歌い、ステージに向けコブシを挙げた。続くライヴのラストに向け更に会場を加速させていった、誇り高く気高く鳴り響いた「ベルエポックマン」、そして、彼らの出発地点とも言える「Trash」のイントロが鳴り出した瞬間、場内は驚喜。これまで以上に会場中が呼応し、ボーカルの志磨のキメフレーズに合わせみんなが応える。特に一呼吸置いて放たれた「♪派手にとどめをさしてくれ?♪」のフレーズは、会場中の代弁をバンドが引き受け、全身で会場に<想い>を返す名場面だったと言えよう。そう、それはまるで、<人は気の持ちようで何度でも生まれ変われるから、大丈夫だよ>と歌われているように響いた。
アンコールに入っても、先ほど培われた信頼感と一体感は失われることはなかった。
「僕ら初めてのツアーがここで終わる。全国回っていいツアーだったよ。みんなありがとう。新曲演るよ。この青年館に捧げます」の言葉の後、放たれたのは、フレンチロックンポップとも称せる新曲「Teddy Boy」。こちらも初見の時よりもぐっと楽曲として確立せしめており、それは既にほぼ完成型を迎えていた。そして、再び起承転結、そして起とも言うべく「1954」が、満場の会場に放たれる。と、同時に再び孤高性が会場を覆っていく。しかし、この孤高性は先ほどのものとは多少違ったもの。明らかに信頼感や安心感が違うのだ。昇華していくような音楽性の中、ステージの白色ライトの光量も徐々に上がって行き、会場中がぬくもりと光を取り戻していく。メンバーの残したフィードバック音の中、「どうもありがとう。またね東京」との言葉を残し、他のメンバーを追い、ステージを去ろうとする志磨。とその時、持っていたギターをステージに向かって一撃させた。それは初期衝動ややるせなさをブツけるというよりは、"何かをここに残してやったぜ!"との意の込もった、打ち付ける楔(くさび)のようにも見えた。
この日、この会場で、ドレスコーズは大きな何かを残した。その証のように、その打ち付けた後の後ろ姿は、ある種の征服感や支配感が漂っていた。このステージで打ち付けられた楔は、これからも各地各箇所で、聴く者、観る者に忘れられない心への引っかき傷を残していくことだろう。もしかしたら、それは一生消えない傷になるのかもしれない。"今日彼らが残した心の引っかき傷は、まだまだ当分、消えそうもないな…"そんなことを思いながら、私も帰路についた。
【取材・文 : 池田スカオ和宏】
リリース情報
セットリスト
「the dresscodes TOUR "1954"」
2013.3.8 @ 日本青年館
- 01. 誰も知らない
- 02. Lolita
- 03. リリー・アン
- 04. Tango,JAJ
- 05. Puritan Dub
- 06. Zombies
- 07. パラードの犬
- 08. ストレンジピクチャー
- 09. レモンツリー
- 10. Automatic Punk
- 11. SUPER ENFANT TERRIBLE
- 12. (This Is Not A) Sad Song
- 13. ベルエポックマン
- 14. Trash ENCORE
- 15. Teddy Boy
- 16. 1954
お知らせ
ARABAKI ROCK FEST.13
2013/04/27(土)みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
にぶんのいち 2・3’S ツアー『のりぴーと大島ちゃん』KOBEスペシャル!
2013/05/02(木)神戸チキンジョージ
※志磨遼平単独出演
SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2013 in 東京
2013/05/03(金・祝)日比谷野外大音楽堂
TOWER RECORDS presents "MAVERICK KITCHEN VOL.5"
2013/05/04(土)LIQUIDROOM
『FM802 presents Rockin’Radio! -OSAKAJOH YAON-』supported by SPACE SHOWER TV
2013/06/02日(日)大阪城音楽堂(野音・雨天決行&荒天中止)
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。