前へ

次へ

どこにいても彼らを正面に感じられた、BRAHMAN、幕張メッセでの全包囲ライヴをレポ!

BRAHMAN | 2013.06.24

 ニューアルバム『超克』を引っさげて全国各地を回ったBRAHMANのツアー「相克」のファイナルが、同ツアー最大にして、自身の単独ライヴでも最大規模の幕張メッセ国際展示場にて行われた。
 『TOUR 相克 FINAL「超克」the OCTAGON』と題されたこの日は、そのサブタイトル、<OCTAGON=八角形>に表れているように、センターステージを配し、それを囲むようにオールスタンディングのエリアが内側を囲む4ブロックと、その外側を更に囲む8ブロック。そして、その全てを囲むように8枚の超巨大なスクリーンが壁に配されていた。
 かくいう私もこのような体験は初。何の予備知識も無かった分、次から次へと現れる現象に毎度心驚かされた。

 まず驚いたのはシンプルなステージ。まるで大会場での格闘技のリングのように、トラスが周りを囲み、各器材がいつものように配されている。センターステージとはいえ、360度回る仕組みもなさそうだ。設営されたライティングシステムも至ってシンプル。そのストイックさは、さながら彼らのライヴそのままだ。
 “これでは、見る場所によってかなりの不満が生じるのでは?”と思うも、開始早々にその懸念は吹き飛んだ。先ほどのスクリーンや、この日の為のリアリティ溢れるサウンドが、会場のどこで観ようが、彼らがまるで眼前で歌いプレイしているような臨場感で迫ってくる。そして、驚いたのは、その音の良さと音圧。タイトな音はタイトに、シャープな音はシャープに、そして、ヘビーな音やザックザックな音も、キチンとミッドもローも輪郭や立体さを保って襲い、飲み込んできた。あまり音に良い印象を持っていない同会場で、この音の良さと臨場感は驚きだった。

 今回のツアータイトルの「相克」とは、「相いれない二つのものが、互いに勝とうとして争うこと」という意味も持つ。そして、その<戦い>はオープニングから始まっていた。いつものSEが流れ出すと8枚の巨大スクリーンがいきなりその存在感を現す。タイトルロゴと「超克」の文字が背後から重責のようにのしかかってくる。
 ドラムのRONZIがライドでシャッフルを刻み、ベースのMAKOTOとギターのKOHKIが重厚な音壁を作り上げる。そこから入った1曲目の「初期衝動」から、会場とステージとの「超克合戦」の幕は切って落とされた。メンバー各人からリレーのように吐き出される歌声が力強い。己の初期衝動がグイグイと引きずり出され、足元から湧き上がってくるのが分かる。それはフロアも同じ。12ブロック全てからステージに向け、あらん限りのエネルギーが殴りかかってくる。それを歌やプレイ、パフォーマンスで倍々返しに浴びせ返していくステージの4人。ビジョンで折々アップされる各人のプレイスタイルとリアルな臨場感が半端ない。
 1曲目が終わると、ボーカルのTOSHI-LOWが叫ぶ。「対バンもいねぇ。それらを支える仲間もいねぇ。疲れた身体を隠す逃げ場所もねぇ。自分対己、勝つのはどっち。超克するのは俺達、BRAHMAN始めます」。
 更なる起爆。ここからは、「賽の河原」「今際の際」「JESUS WAS A CROSS MAKER」「遠国」等のニューアルバム『超克』からのナンバーが連放される。中でも、作品ではポップな印象を受けた「JESUS WAS A CROSS MAKER」の歌に込められた真意を新たに感じさせた激アレンジや、「俤」「露命」での更なるリアリティ溢れる感情移入は、作品以上の気迫や想いを感じ取ることが出来た。
 動かないステージの代わりに、フロントのメンバー3人が激しく、渾身の力を込めて、歌い、放つ。それを各方面から一斉にステージに向けて呼応している光景が新鮮だ。通例なら正面以外では若干ノリが弱くなるものだが、この日はそんなことはなかった。周りを取り囲む巨大スクリーンに映し出された彼らの勇姿や満身創痍に歌い、弾き、叩き、音を塊として放つ臨場感あふれる映像と、正面から各人に浴びせかけられるような音圧たっぷりのリアルな音が、どの箇所に居ても彼らを正面から感じさせた。それを受けとめ、更に倍返しのように、歌や呼応、クラウドサーフやモッシュで放ち返すオーディエンス。そのさまはまさに「激闘」と呼ぶにふさわしいものであった。

 また、スクリーンは、彼らの臨戦態勢を映すのみではなかった。「SPECULATION」での、スクリーンに流れ回った粒子の渦は巻き込むような感覚を生み、「遠国」では、リリック中の印象深いワードが現れ、胸を突き刺した。また、中盤の「鼎の問」では、原発に関する賛否のメッセージが、その現場や惨状と共に映し出され、「最終章」では、2011年3月11日に発生した東日本大震災直後の東北の惨状の映像の上、その歌に込められた真意が真摯なスタイルを以て伝えられ、各々の心に様々な想いを去来させた。
 そして中盤になると、スクリーンの上に設置されたライト群が存在を露わにしていく。8方から、ステージに当てられるスポットライトやレーザー、ムービングといったライティング類が助演を始め、会場の高揚度を引き上げていく。

 中でも圧巻だったのは、TOSHI-LOWが客席に飛び込み、クラウドの上に掲げられ歌われた「警醒」「PLACEBO」だった。フテネコの荒くれる映像と共に、何人ものオーディエンスとコブシを突き合わせながら、パワーの交歓のように歌った「警醒」、まるで呼びかけるように聴こえた「PLACEBO」は、同曲に心を同じくさせた者たちを一緒に力強く歌わせていた。
 そして、特に印象的だったのはTOSHI-LOWによる10分近くにも及ぶMCパート。「こんなにスクリーンがあんだから、2枚ぐらいはAKBの総選挙でも映した方がみんな喜ぶんじゃねぇの?」と笑って語り出し。赤字を気にせず、この会場で、この形式で、このシステムで、しかも2900円という破格の値段でやった想い。「”なんだ、ステージ回らねぇんじゃん”と思ったヤツもいるだろう。この値段で回るわけねぇんだ。お前ら(の方が)回れ!!」と、嬉しい激も飛び、合わせて、今回のツアーを振り返り、中でも、風邪の為に声が出なくなり、心で歌った際、そんな時に、ピンチの後にチャンスが来るなんてみんな言うけど、ピンチの後にくるのではなく、ピンチだからこそ、そこから打開したく、それが活路を見出し、チャンスへとつながっていくことに改めて気づいたことが告げられた際には、それは集まった多くの者にとってかけがえのない言葉になった。そして数日前、不慮の事故により機材車が大破したが、メンバーも機材も無事で、晴れてこの日を迎えられたことも初めて告げられ、その喜びやかけがえなさに、会場中から惜しみない拍手が、運命への感謝も込めて贈られた。

「勝ったのか、負けたのかは分からねぇ。だけど、100回負けても、101回立ち上がるのが俺達、BRAHMAN始めます!」と最後のMCでTOSHI-LOWは言った。
 今回のツアーで、BRAHMANは数多く戦った。中には、不本意で負け戦的な思いをした時があったかもしれない。しかしこの日、BRAHMANは、会場を制し、己を制し、自分たちをも制した。アルバム『超克』で与えられた、自身や聴き手への試練や課題は、このツアーを終えて、自身と対峙したもの全てに「超克」を与えた。会場を出る時、なんだか誇らしく、これまでにはなかったバイタリティに漲っている自分と出会えた。そう、これ! この気分こそが「超克」ではなかろうか!「超克」。素晴らしい言葉だ!!

【取材・文 池田スカオ和宏】
【撮影 Tsukasa Miyoshi(Showcase Management)】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル BRAHMAN

関連記事

リリース情報

超克 (初回盤)

超克 (初回盤)

2013年02月20日

トイズファクトリー

ディスク:1
1.初期衝動
2.賽の河原
3.今際の際
4.俤
5.露命
6.空谷の跫音
7.遠国
8.警醒
9.最終章
10.Jesus Was a Cross Maker
11.鼎の問
12.霹靂
13.虚空ヲ掴ム
ディスク:2
1. TONGFARR
2. THE ONLY WAY
3. SEE OFF
4. BEYOND THE MOUNTAIN
5. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
6. SPECULATION
7. 鼎の問
8. 露命
9. 警醒
10. ANSWER FOR…
11. 霹靂
12. 賽の河原
13. 初期衝動 (MV) (BONUS TRACKS)
14. 警醒 (MV) (BONUS TRACKS)

このアルバムを購入

セットリスト

TOUR 相克 FINAL「超克」the OCTAGON
2013.6.8@幕張メッセ国際展示場9〜11ホール

  1. 初期衝動
  2. 賽の河原
  3. 今際の際
  4. SPECULATION
  5. JESUS WAS A CROSS MAKER
  6. 遠国
  7. THE VOID
  8. BEYOND THE MOUNTAIN
  9. DEEP
  10. GREAT HELP
  11. BASIS
  12. SHADOW PLAY
  13. 空谷の跫音
  14. 鼎の問
  15. ARRIVAL TIME
  16. 露命
  17. SEE OFF
  18. GOIN’ DOWN
  19. 最終章
  20. ANSWER FOR...
  21. 警醒
  22. PLACEBO
  23. 霹靂
  24. 虚空ヲ掴ム
  25. THE ONLY WAY

お知らせ

■ライブ情報

OTOSATA
2013/06/29(土)長野県 茅野市民館

KESEN ROCK FESTIVAL’13
2013/07/13(土)岩手県気仙郡住田町 種山ヶ原イベント広場

NO MORE FUCKIN’ NUKES 2013
2013/07/14(日)渋谷AX

FUJI ROCK FESTIVAL ’13
2013/07/26(金)新潟県湯沢町苗場スキー場

WE MUST BE UNITED AS ONE vol.3
2013/08/10(土)新宿 ANTIKNOCK

WILD BUNCH FEST. 2013
2013/08/18(日)山口県 山口きらら博記念公園

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る