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BRAHMANと共に歩み、切り拓いてきた仲間たちと20年を振り返った~尽未来祭~

BRAHMAN | 2015.11.30

 BRAHMANのライヴ最終曲「THE SAME」が終わりに近づく頃、TOSHI-LOW(Vo)は同じ言葉を連呼している。最初は爆音に埋もれて、何を言ってるのか判別できない。「コードー!」、「こうどう!」、「行動!」、ああ、行動と言っているのか。この日、最初で最後のMC導入部にも観る者を引き付ける仕掛けを巡らす。未開のジャングルを突っ走る剛毅な振る舞いと、針穴に糸を通す繊細なアプローチは、彼らにとってコインの裏表のように一体なのだ。

 今年結成20年を迎えたBRAHMANが幕張メッセで2日間に渡り、「尽未来際~尽未来祭~」を開催した。ここでは初日をレポートしたい。一番手は「結成17年目なのに、まさかの下っ端」とキヨサク(Vo/B)が苦笑いしながらMCしていたMONGOL800が務める。「BRAHMAN、20周年おめでとうー!」の言葉を皮切りに「あなたに」をプレイ。いきなり幕張に大合唱の輪を作り上げ、ほかに「小さな恋のうた」と名曲も漏れなく披露。「BRAHMANさんを見倣って、中指を立てていきたい」と言うと、「MONSTER GOVERNMENT」、沖縄の語り部が少なくなったから、それを歌にしたという「himeyuri~ひめゆりの詩~」のメッセージ性は深く胸に刺さった。

 次はメンバー揃ってBRAHMANのTシャツを着たSCAFULL KINGがステージに立つ。「Save You Love」から歯切れの良いスカパンクで、一気にフロアは狂熱のパーティーと化していく。メンバーも言っていたが、01年以降はコンスタントに活動していないものの、ここぞという大舞台でガッツリ盛り上げる手腕はさすがの一言。もっと言うなら、FISHBONEの薫陶を受けた彼らの音楽スタイルは今なおフレッシュな輝きを失っていない。なんと来年(2016年)には9年ぶりにツアーも行うそうだ。

 そして、NARI(Sax/SCAFULL KING)などゲスト奏者を迎え、BACK DROP BOMBの出番が来た。バンド名を冠した初期の代表曲で始まり、白川貴善(Vo)、小島真史(Vo)のツイン・ヴォーカルは豪快に言葉を吐き出し、抜けのいいホーンの音色と肉弾のごときヘヴィな演奏のコントラストも実に鮮やか。ヒップホップ、パンク、スカ、レゲエをシームレスに往来しながら、うねりを上げるグルーヴ感は最高だ。「(BACK DROP BOMBは)去年20周年を迎えて、これを超えると楽。BRAHMANも50、60歳とやってほしい」と白川は激励し、初期の名曲「Bad News Come」で締める辺りにもシビれた。

 SEIKI(G)のスラッシーなリフとTAKE-SHIT(B)のバキバキのスラップベースで空気を一変させたのはCOCOBAT。その重厚な演奏にHIDEKIの野太いヴォーカルが乗り、男臭いサウンドを叩き付けてくる。前のめりのヘヴィネスで攻めてくる「COCOBAT CRUNCH」、強靭なバネのごときリズムを放つ「CAN’T WAKE UP」と連打し、トドメにMVにも出演した格闘家・佐藤ルミナ本人登場で「TSUKIOOKAMI」を披露。

 起伏豊かな新曲までプレイし、磯部正文(Vo/G)&平林一哉(Vo/G)コンビで真摯な歌声を高らかに響かせたHUSKING BEE。BRAHMAN20年の道、自分たちの中でこの曲が当てはまりそうと告げ、「一道のイデア」を解き放つ。ハスキンは今年結成21年で、途中いろいろあったと磯部は感慨深げに振り返りながら、「欠けボタンの浜」、「WALK」とタイプの違うハスキン節満載の楽曲で場を盛り上げた。

 正午に始まったイベントも折り返し地点を回り、COKEHEAD HIPSTERSが登場。KOMATSU(Vo)のキック&ジャンプを繰り広げる独自のステージング同様、フットワークの軽い縦横無尽のミクスチャーをここでも大爆発。BRAHMANは過去に自分たちと同レーベルに所属し、録音直前にギターが抜け、TOSHI-LOWがギターを兼任していた時代を回想する場面もあった。それからHIROTH(Dr)を迎えた新体制で来年に新音源を出すことも告げ、「CONCRETE JUNGLE」、NARIとSHIO-40(Tp)のホーン隊を従えて「COME ON EILEEN」と定評のあるカヴァーでも沸かせた。

 それから気迫のこもった荒ぶるハードコアで幕張を切り裂いたのはSLANG。上半身裸で楽器と一体化したKIYO(G)の渾身のギタープレイを含め、岩をも貫く強靭なバンド・サウンドを放出し続ける。ラスト曲「何もしないお前に何がわかる 何もしないお前の何が変わる」は、何度も聴いても頭をブン殴られるような衝撃を覚える。

 その余韻が残るまま、遂にここでHi-STANDARDの3人が姿を見せた。「BRAHMAN20周年、同じことを続けるのは凄い。ハイスタはできなかったからね」と切々と語る難波章浩(Vo/B)のMCは印象的だった。ライヴは「DEAR MY FRIEND」からとんでもない盛り上がりで、ロマンチックなベースで始まる「MY HEART FEELS SO FREE」、観客総出でジャンプした「SUMMER OF LOVE」も炸裂し、会場は笑顔が咲き誇る一方だ。中盤には難波、横山健(G/Vo)は背中を向けて、2人でお尻をフリフリするファニーな仕草も見せる。その後も恒岡章(Dr)の手数の多いビートに引き込まれる「TELL ME SOMETHING,HAPPY NEWS」、横山の爽やかなコーラスも聴き所の「My First Kiss」、「Stay Gold」と続き、幕張を熱く焦がす。来年は新曲を持って現れたいという嬉しい報告もあった。

 さあ、次はタイムテーブル通りなら、BRAHMANの予定だ。しかし、いきなり「謝らせてください」という謝罪コメントと共にステージにいるのは大高ジャッキー(Vo/G)ではないか。ギリギリまで出るか出ないか迷ったそうだが、SUPER STUPIDがなんと約16年ぶりに登場。「大恥をかきに来ました」と市川昌之(B/Vo)は言っていたが、これはもう感涙モノだった。筆者も90年代に観ていた一人なので興奮は収まらない。現COKEHEAD HIPSTERSの佐藤浩(Dr)を含むこの3人がライヴをしていることさえ、夢でも見ているような感覚だった。曲中に市川とジャッキーが顔を突き合わせ、お互いの表情を見ながら弾くシーンにもグッと来た。

 幕張がざわざわする中、ようやくBRAHMANのお目見えだ。バンドを始めた頃のドレッドヘアでTOSHI-LOW(Vo)が最後に姿を見せると、このバンドで始めて作った曲「TONGFARR」で幕を開けた。民族調のクセのあるメロディが会場いっぱいに広がる。BRAHMANは最初からBRAHMANだったと言わんばかりだ。ライヴは20年の歩みを封印した2枚組音源『尽未来際』の「THE EARLY 10 YEARS」を完全再現した形で、パンク、スカ、ハードコアと様々な音楽ジャンルのエッセンスを取り込み、それらを己の型に落とし込んだ楽曲の数々は観客の熱を吸い上げ、さらに野獣性を増幅させる。かと思えば、繊細なKOHKI(G)のギターフレーズをイントロに配した「THAT’S ALL」、TOSHI-LOWの表情豊かな声音から一気に沸点へと駆け上がっていく「THERE’S NO SHORTER WAY IN THIS LIFE」のスリリングな曲展開にも背筋がゾクゾクした。途中でマイク・スタンドを折り曲げる場面もありながら、全21曲を組曲のようにノンストップで突っ走るBRAHMANスタイルを貫徹する。もう、圧巻だった。全曲やり終え、冒頭でも触れた通り、行動と連呼した意味をTOSHI-LOW自らのMCで紡ぐ。

 行動だけが現実だった。自分たちが信じてきた時代や音楽はすげえ良かったという主旨を語り、最後に感謝の言葉を告げる。そこには20年間、前進し続けた彼らにしか見ることができない絶景が見えていたに違いない。BRAHMANによる20年の行動記録、その断片を凝縮した壮大にして濃厚な一日だった。

【取材・文:荒金良介】

tag一覧 ライブ イベント 男性ボーカル BRAHMAN

リリース情報

尽未来際(初回限定盤 B)[2CD / 2DVD]

尽未来際(初回限定盤 B)[2CD / 2DVD]

2015年08月12日

トイズファクトリー

CD1 <THE EARLY 10 YEARS> (全21曲)
CD2 <THE LAST 10 YEARS> (全21曲)
DVD1 BRAHMAN 20年名場面集(約90分)
DVD2 CLIPS (全19本)

お知らせ

■ライブ情報

POWER STOCK 2015 in ZEPP SAPPORO
2015/12/06(日)ZEPP SAPPORO
w/ 怒髪天/ dustbox/ HAWAIIAN6/ Hi-STANDARD/ locofrank/ SLANG/SAND/RAZORS EDGE/ IdolPunch

The 35th Anniversary LONDON NITE X’mas Special 2015
2015/12/19(土)恵比寿 LIQUID ROOM
w/ LEARNERS / THE MAN / SHERBETS / ZOOT16 / and more...

T.W.I.M BOMB NIGHT vol.19 [2015 Final]
2015/12/29(火)名古屋 DIAMOND HALL
w/ the HIATUS / ASPARAGUS / OVER ARM THROW / a Soulles Pain / And Protector

CROSSFAITH XENO WORLD TOUR 2016:JAPAN
2016/02/10(水)名古屋 DIAMONDHALL
w/ CROSSFAITH

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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