BRAHMAN「Tour 1080°」、全ての感情を開放し“強さ”を体現したライブ!
BRAHMAN | 2014.07.05
場内に入って、目がギョッとした。何だ、このステージ・セットは? その感覚はあの時と同種のものだった。開演19時36分、ステージ背面のスクリーンに2013年6月に行われた360°ステージを用いた幕張メッセ公演のライヴ映像が流れ、「25 JUN 2014 」、「Tour 1080°」と文字が浮かび、今回のツアーが幕張メッセの続編であることを臭わせる。
舞台上には360°ステージでも使用した『超克』のジャケットを模した八角形のアートワークが上段、下段の二段形式に分けられ、その中間は滑り台のようになっている。ゆえに、今回は正面からアートワークがほぼ見える凝った作りだ。ただし、決して演奏しやすいステージではないだろう。
KOHKI(G)、MAKOTO(B)、RONZI(Dr)がそれぞれポジションに付き、最後にゆっくりTOSHI-LOW(Vo)が姿を見せ、囁くように「FOR ONE’S LIFE」を歌い始めた。とても静かな立ち上がりだ。会場をじっくり見定めるような落ち着きさえ感じる。
「弱い奴は強くなれ、悪い奴がいたら、オレのところに連れて来い。BRAHMAN始めます!」というMCに襟を正され、続いて「賽の河原」に突入した。早くも上段に移動し、髪を振り乱して弾くMAKOTOが視界に入り、バンドと観客の熱は高ぶる一方だ。TOSHI-LOWもマイクスタンドを握りしめ、左に右に激しく動いている。
静から動へ、リレー形式に紡ぐコーラスも映えたオムニバス盤『極東最前線3』収録曲の「汀に咲く」を挟み、躍動感抜群の「BASIS」に繋ぐと、自然発生的に大合唱が湧き起こった。
その後、ここで新曲を披露する。ミドルテンポの日本語詞による歌モノで、歪みなしのクリーントーンのギターが印象的だ。『超克』の楽曲とはまた一線を引く柔和な曲調に慰撫された。「再生」、「この手に」という歌詞もしっかり聴き取れ、スクリーンには透き通る青空が映され、そこにTOSHI-LOWの陰影が重なる演出にもグッと来た。
中盤の「鼎の問」、「露命」という『超克』収録曲も過去ナンバーとすっかり溶け合っていた。力が余ってマイクスタンドをグニャときれいに折り曲げてしまい、それを担いだまま歌に魂を込めるTOSHI-LOWの所作も相変わらずだ。
後半、武骨なハードコア曲「警醒」のド頭からTOSHI-LOWはダイブを決め、ステージに残されたメンバー3人がヴォーカル・パートを分け合って猪突猛進に攻め込む。見慣れた光景とはいえ、何度聴いても心の底から突き上げてくるものがある。フロア中央まで進み、観客に支えられて仁王立ち状態のTOSHI-LOWはそのまま「ANSER FOR…」を堂々と歌い上げた。
ここで長めのMCタイムだ。クダけた話題で笑いを誘う一方、「国と国じゃなく、個と個で俺は見てる。俺は3.11で本気を教わった!」とシリアスな言葉で観客の目を覚ます。それから「霹靂」、「虚空ヲ掴ム」へ移る流れも実に美しかった。カオティックなノイズが鼓膜を脅かし、ダダッ、ダダッというあの独特なリフが鳴ると、ラスト曲「初期衝動」をプレイした。引き締まったタイトな演奏から溢れ出る人間臭い歌詞と音色は彼らにしか生み出せない衝動満載だ。
そして、ビシッと合わせたように演奏を終えると、スッとステージから消え去った。もちろんアンコールはナシ、BRAHMANらしい潔さだ。すると、スクリーンには「2014」の文字が映され、それから逆回転するように1年ずつ遡り、年ごとのライヴ風景などが流れる。結成時の「1995」に辿り着くと、今度は「2015」までカウントされ、最後には仏教用語で永遠の未来を意味する「尽未来際」の4文字で締め括った。来年はバンド結成20周年を迎える。そこに向けて、何かしらのメッセージなのだろうか。詳細はわからない。
今回のツアー名「Tour 1080°」というネーミングもよく考えたら意味深だ。八角形の内角の和が1080°だから、ということ。これは筆者の勝手な推論だが、どこから見られてもいい360°ステージを体現し、次は内側を曝け出す、全開放するという意味が込められているのではないか。もっと言えば、目に見えない人の心や気持ちを感じてほしい。そんな願いが込められているではないだろうか。
今日聴いた新曲もそうだが、激情、不満、いらだちとは対極に位置するフィーリングに彩られていた。肌と肌をさりげなく重ね合わせてくる優しいアプローチだった。今年、来年、まだまだBRAHMANの成長は止まらない。それを痛感した一夜だった。
【取材・文:荒金良介】
【撮影:Tsukasa Miyoshi(Showcase)】
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リリース情報
[DVD]TOUR 相克 FINAL『超克 the OCTAGON』
2013年10月09日
トイズファクトリー
1. 初期衝動
2. 賽の河原
3. 今際の際
4. SPECULATION
5. JESUS WAS A CROSS MAKER
6. 遠国
7. THE VOID
8. BEYOND THE MOUNTAIN
9. DEEP
10. GREAT HELP
11. BASIS
12. SHADOW PLAY
13. 空谷の跫音
14. 鼎の問
15. ARRIVAL TIME
16. 俤
17. 露命
18. SEE OFF
19. GOIN’ DOWN
20. 最終章
21. ANSWER FOR...
22. 警醒
23. PLACEBO
24. 霹靂
25. 虚空ヲ掴ム
26. THE ONLY WAY
[DISC 2]
・TOUR 相克 FINAL「超克」the OCTAGON DOCUMENT
・TOUR 相克 MCハイライト(全公演)※予定
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お知らせ
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※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。