リミックスされた「ビオトープ -生物生育空間-」が流れる中、ステージ上に登場した古舘佑太郎（Vo＆G）、藤井清也（G＆Cho）、小林亮平（B＆Cho）、藤川雄太（Dr＆Cho）。各々の準備が完了し、1曲目「春のサリー?神社に寄ろう?」がスタートした。活き活きと躍動するバンドサウンドを体感しながら、観客は身体を揺らして踊る。曲が終わり、「今日はこの4人で伝説を残しに来たんだ！」と力強く宣言した古舘。その言葉を合図に雪崩れ込んだ「ディタラトゥエンティ」をきっかけに、場内の気温は急上昇！　全力でビートを刻み、時には咆えるように歌い、爆音を轟かせるバンドの熱量が凄まじい。「SAD GIRL」「Hey My Sister」「床には君のカーディガン」「China」「パエリア」……曲が披露される毎に観客はますます興奮を露わにして飛び跳ねる。序盤からメンバーたちの並々ならぬ気迫が伝わってきた。

「今日から小林が復活しました（体調不良により3月から休養していた）。俺たちのバンドは、かれこれ5、6年。初めてのつまづきでした。笑いでごまかしてる場合じゃなくなってきて……10代の頃の気持ちがよみがえりました。だから今日は全力でやることにしました。全力で聴いて欲しいです」、古舘が心境を伝え、新曲「こんな夜は」。狂おしいメロディをじっくりと噛み締めた観客。続いて「夏の夜」と「雨降りのベイサイド」、瑞々しいメロディが際立つ2曲を披露した後、MCタイム。メンバーたちがプロデュースしたオリジナルグッズの紹介（休業中だった小林はグッズデザインに参加できなかったので、その代わりとして小林の顔がデザインされたステッカーが、この日の来場者全員にプレゼントされた）、藤川の渋谷での目撃情報が異常に多いという伝説（古舘がTVの天気予報を観ていた時のこと。映し出された渋谷駅前スクランブル交差点の風景の中に藤川の姿を発見して仰天！　……というエピソードなどが語られた）を交えた4人の賑やかなやり取りを経てライブは後半戦へ。誰もが経験するカップルのプロセスを描いたという新曲「アンデスの街で」。観客と歌声をじっくり交わし合いつつ柔らかなメロディを奏でた「何処かの土地に」。そして、「チンギスハンとヘップバーン」によって再び熱いテンションに包まれた場内。イントロが始まるや否や、観客が腕を掲げて飛び跳ね始めた。その熱気をさらに加速したのが「狭斜の街」と新曲「HOT HOT HOT!」。この時点で場内の誰も彼もが汗だくとなっていた。

「まだ行けるか？」と古舘が煽り、汗を拭う間もなく始まった「サリンジャー」が、一層の熱気で会場全体を染め上げる。スリリングに駆け抜けた「仏教ソング」。圧倒的な大合唱、タテノリ、「台湾?！」という一斉のコールを巻き起こした「オールド台湾」……連発されたこの3曲で生まれた昂揚感は、とにかく桁外れであった。そして、「飛ばし過ぎて最後の曲。最後も景気良くやりたいです」と古舘が言い、トランペット奏者・ぽんたろーをゲストに招いて本編ラストに披露したのは「不景気脱出大作戦」。開放的なサウンドが、観客の明るい手拍子を誘った。

　鳴り止まない拍手と歓声に応えてアンコールへ。「不景気脱出大作戦」のインストが流れ、ステージに戻ってきたメンバーたち。なんとシングル『床には君のカーディガン』のシークレットトラックがスタートした。「4人の恥ずかしい話をするから」と古舘が言い、「不景気脱出大作戦」のインストをBGMにしながらメンバー各々の切ないエピソードが順番に告白されていく。観客の笑い声が絶えない和やかなひと時となった。

「今日は長いことありがとうございます。今回のツアーは、亮平が復活。また一歩を踏み出すツアーになってます。俺たちは“何かやろうぜ”って始めたバンド。衝動だけでやってた。でも、どんどん頭が固くなってて……。今日のライブは、また一からやれてます。では、最後にみんなと歌いたくて、この曲を選びました」と古舘が語り、演奏が始まったのは「愛しておくれ」。「一緒に歌ってくれ！　もっと!!」と、マイクを観客の方に向けて何度も煽り、会場全体に歌声の輪が広がる。藤井、小林、藤川も、実に気持ち良さそうに歌っている。爽やかな一体感に満ちたエンディングであった。

【取材・文：田中 大】
【撮影：古溪一道】