１４８．９ｃｍと小柄なｍｉｗａが、本当に大きく見えた。
　３ｒｄアルバム「Delight」のリリースに伴う全国ツアー「miwa concert tour 2013“Delight”」、東京国際フォーラム　ホールＡ公演。これまでで最大規模となる今回のツアーで彼女は、シンガーソングライター／パフォーマーとして、さらにスケールアップしたステージを体現してみせた。

　ツアーのコンセプトは、オープニングナンバーの「Delight」によって明確に示されていた。エレクトロ系のテイストを取り入れたバンドサウンド（ｍｉｗａのギターはフライングＶ）、鮮やかな色彩に満ちたライティング、そして、前向きな意志をポップに描き出すボーカルがバランス良く配置されたステージングは、まさに“最新型のｍｉｗａ”。常に新しい音楽を模索し、そこに向かって真っすぐに突き進む――この曲からは、彼女の音楽に対する真摯な姿勢がしっかりと伝わってきた。

　さらにシャープなリフを軸にした「３２１」、アコギに持ち替えて披露されたポップチューン「Chasing　hearts」、「いちばん後ろの席まで行って会場を眺めていたら、開場時間が来ちゃって焦った」というMCを挟んで演奏された新曲「kiss you」、タイトル通り、超カラフルな映像とともに放たれた「カラ＊フル」など、バラエティに満ちた楽曲が続く。アルバム「Delight」のインタビューの際に彼女は「大阪城ホールのＦＭ８０２のイベント（４月２９日に行われた「ＦＭ８０２ SPECIAL LIVE REQUESTAGE11」）に出させてもらって「ヒカリへ」と「Delight」も歌ったんですけど、「新しい自分が始まってる」という感じがすごくあったので」とコメントしていたが、その手ごたえは今回のツアーのなかで、さらに確かなものになっているようだ。

　ライブ中盤、個人的にもっとも心に残ったのは、アコギのイントロから始まる「Napa」だった。素朴な手触りのメロディと離れて暮らしている“あなた”への切実な気持ちを綴った歌がひとつになったこの曲は、決して派手さはないが、彼女のボーカルの素晴らしさ、幅広い層のリスナーを魅了する歌心が確かに宿っていた。ｍｉｗａの音楽の中心にあるのはやはり、アコギと歌なのだ。

「次の曲は友達のために作ったんですけど、その子が今日、（会場に来てくれてます）」という言葉も印象的だった「My Best Friend」のあとは、“質問コーナー”とタイトルされたトーク。「サラサラ髪の秘訣は？」「好きなプロレス技は？」「新しいモノマネがあったら、やってください」といった観客からの質問に、ユーモアを交えながら楽しそうに答えるmiwa。こういう飾り気のない喋り、親しみやすいキャラクターもまた、彼女の大きな魅力だ。

　ライブ後半では、彼女の幅広い音楽性が感じられるシーンが続いた。ラップの要素を交えたボーカルによって、言葉のひとつひとつがしっかりと響き渡った「サヨナラ」、再びフライングＶを持ち、エッジの効いたリフとギターソロを放った「Sparrow」、凛とした強さをたたえた声によって“強くならなきゃ　言い聞かせてる”というフレーズを打ち鳴らす「don’ｔ cry anymore」、スクリーンに映し出されたキャラクターの振り付けに合わせ、オーディエンスがいっしょに踊った「ミラクル」。なかでも強烈だったのが、ハードロック・サウンドを全面に押し出した「LOUD！?憂鬱をぶっとばせ?」だった。本格的なライトハンド奏法を取り入れたイントロ（めちゃくちゃ正確!!）、ラウドなサウンドに埋もれることなく、気持ちよく突き抜けていくボーカル。こんなにも力強く、ロックな彼女の姿を見たのは、たぶん初めて。本当に底知れぬポテンシャルを持ったアーティストだと思う。

　本編のラストの「ぬくもり」前にmiwaは、観客に向かってゆっくりと語った。大学を卒業し、“音楽一本”になることに不安やプレッシャーを感じていたこと。でも、「Delight」というアルバムを作り上げ、このツアーを行ったことで、音楽をやれていることに大きな幸せを感じることができたこと。「ひとりでも大丈夫／あなたのぬくもりを思い出すよ」という力強いラインを堂々と歌い上げる姿は、今回のツアーが彼女にもたらしたもの――それはきっと、宝物のように大切で、貴重な経験だ――を雄弁に伝えていた。

　アンコールの最後にポジティブなムードを持ったポップチューン「春になったら」を歌い、会場全体に心地いい一体感を生み出したmiwa。豊かな才能を持ったシンガーソングライターが、新しい挑戦を重ねながら、自らの音楽を伸び伸びと成長させている。そんな素晴らしいストーリーをたっぷりと享受できる、本当に素敵なライブだった。

【取材・文：森 朋之】