レビュー
miwa | 2015.11.04
miwa
「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」
“バラードのmiwa”は、軽くて明るいエネルギーを歌で伝えることに集中している
miwaの新曲がバラードと聞いて、楽しみにしていた。
持ち前の“真っ直ぐな声”でリスナーを魅了してきたmiwaだが、彼女の歌の守備範囲は驚くほど広い。ストレートなポップスから、トラックを駆使したダンス・ミュージック、あるいはアコギ1本での洋楽カバーまで、その引き出しの多さに感心させられてきた。今年の夏、ライジングサンで僕はmiwaと並んでRIZEのエキサイティングなライブを見ていたのだが、そのときの彼女の真剣な表情にはロックバンドをも呑み込んでしまいそうな迫力があった。miwaは5年間のキャリアの中で、着実に豊かな音楽を育ててきたのだ。
「あなたがここにいて抱きしめることができるなら」には、“目いっぱい歌わないmiwa”がいる。Aメロはもちろん、サビになっても声を張らない。しかしその声は、エネルギーに満ち溢れている。
力を入れていないのにエネルギーを感じるなんて、と不思議に思う人がいるかもしれない。だがワンコーラス目の“未来”の“ら”や、“来ても”の“き”の明るさを聴けばわかる。特にこのシングルは母音が“イ”の場合にmiwaの魅力が爆発しているように感じる。たとえば“美しい色”の“シイイ”の部分は本当にきれいだ。イが3個も続く難所を、miwaは軽々と歌ってみせる。そう、今回の“バラードのmiwa”は、軽くて明るいエネルギーを歌で伝えることに集中している。
この歌は産婦人科医のドラマ『コウノドリ』の主題歌になっている。miwaはこの曲で“母性”を歌おうとしているのではないと思う。新しい命の誕生を助ける者たちへの讃歌のように聴こえる。それはmiwaが今回この作品を作り、歌うことで手に入れた、独自のポジションだ。
miwaは女性シンガーとして、オンリーワンの存在を目指す。このトライにぜひ耳を傾けて欲しい。
【文:平山雄一】
リリース情報
あなたがここにいて抱きしめることができるなら(初回生産限定盤)[CD+DVD]
発売日: 2015年11月11日
価格: ¥ 1,500(本体)+税
レーベル: ソニー・ミュージックレコーズ
収録曲
[CD]
1. あなたがここにいて抱きしめることができるなら
2. B.O.Y
3. 始まりは終わりじゃない ~ON MY WAY ver.~
4. あなたがここにいて抱きしめることができるなら ~instrumentnal~
[DVD]
「夜空。feat.ハジ→」ビデオクリップ+メイキング