高橋優の全国ホールツアー。東京公演2日目をレポート!
高橋優 | 2013.10.03
SEに合わせて打ち鳴らされる手拍子に包まれながらステージに登場したバンドメンバーたち。最後に現れた高橋優が両腕を広げて深々と一礼すると、待ちわびた人々の間から大きな歓声が上がった。そして、1曲目「スペアキー」がスタート。高橋が力強くアコースティックギターをストロークして先陣を切り、バンドメンバーたちが合流するや否や、一気に構築された奥行き深いアンサンブル。その美しい音色に包まれながら高橋はエモーショナルに歌声を響かせる。極上のサウンドを噛み締めつつ、観客は興奮を露わにして一斉に歓声を上げた。
「陽はまた昇る」と「駱駝」も演奏した後、最初のMC。「みなさんの沈黙を壊しに来ました! この旗をご覧ください」と高橋が指差した背景の大きな旗は『BREAK OUR SILENCE』というツアータイトルや巨大なメガホンをあしらったデザイン。「“ライブ”と言いながら、最早集会です(笑)。言えなかった想いや鬱憤を全部外に出していい集会です。この会場で指差して笑う人はいません。僕も全部を出し切ってやろうと思っているので、よろしく。歌ってくれるか渋谷? 全部出し切ろうぜ!」と煽り、再び演奏へと雪崩れ込んだ。「HITO-TO-HITO」を皮切りに、会場内の気温はますます上昇していく。スピード感溢れるロックンロールナンバー「人見知りベイベー」。高橋のブルースハープソロも交えつつ爽やかに盛り上げた「蝉」。《面倒臭ぇ!》というインパクトたっぷりのフレーズを観客も全力で歌った「ボーリング」。……高橋が先程のMCで呼びかけた願い通り、誰も彼もが感情を露わにして共に歌っていた。
自身の書いた歌詞の影響で姉の子供が変な言葉を覚えてしまい、さらには仕事関係の人々にも波紋を呼んでいるという近況を語った2回目のMC。「《永遠にやってこない「また今度」》にしないようにしましょう!と、昨日、関係者の方と握手をした時に言われまして……」と困惑気味の表情で告白すると、観客は大爆笑(※《永遠にやってこない「また今度」》は、「人見知りベイベー」の一節)。そして、そんな波紋を呼んでいる曲の1つである「足フェチ」がスタートした。アコースティックギターから叩き出されるダイナミックなビートが、人々の興奮をストレートに加速する。続いて、微笑ましいエピソードを添えたメンバー紹介も交えつつ演奏した「ジェネレーションY」。高橋とバンドメンバーたちの表情から仲の良さが伝わってくる。観客の心も大いに和ませたひと時となった。
ゆっくりと回転するミラーボールが放つ光の粒子に彩られながら、美しいメロディを響かせた「空気」。「アルバムのテーマを決めてから、人の強さとは何なのかを考える機会が増えました」と、曲作りの背景を語った後、想いをこめてじっくりと歌い上げた「CANDY」。バンドが一丸となり、壮大に高鳴っていく様がドラマチックだった「涙の温度」。……瑞々しいメロディとハーモニーに満ちた3曲が、聴き入る人々の瞳を潤ませる。そして、「これを書いている時に、“どういう歌い手になりたいか?”以前に、“どんな人間になりたいか?”という原点を見つめるに至りました。一緒に歌いたいんですが、まだ元気は残ってますか?」と呼びかけて煽り、「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」。パワフルに轟くバンドサウンドに刺激され、観客は夢中で大合唱した。
「秋田のなまはげは、“泣ぐ子はいねが”って言うんです。これは脅しの言葉に聞こえますけど、僕はある時、“泣いてる場合じゃない”っていう意味として受け止めたんです。今のご時勢、いろんなことが起こってて……そんな時、“泣ぐ子はいねが”って言葉を思い出します。笑えるってことは強さじゃないか?と。そんな気持ちを描きました」と語ってからスタートした「泣ぐ子はいねが」。客席は上手側・下手側の2チームに分けられ、歌声の大きさを競い合った。続いて「こどものうた」と「現実という名の怪物と戦う者たち」も立て続けに披露され、観客はますます大合唱しながら汗まみれとなる。そんな光景を眺めながら歌う高橋の表情は、実に嬉しそう。そして、「ビンビンに歌声が伝わってきました。めちゃくちゃカッコイイです、みなさん! 曲作りや他のことも大事ですけど、“繋がりを感じることが出来る”っていうことの方が大事です。日常に戻って寂しい気持ちになったり悲しい気持ちになった時は、今、繋がっていることを思い出して欲しいです。また会いましょう!」と呼びかけ、本編ラストに歌ったのは「同じ空の下」。高橋の歌声と観客の歌声が温かく融け合っていく……まさしく「繋がり」を強く噛み締めることが出来た曲であった。
激しい手拍子と歓声に応えて、ステージに戻ってきた高橋とバンドメンバーたち。「アンコール、ありがとうございます! 今日の渋谷は圧倒的。負けそうなくらい最高だ! 今日終わったら、おそらく脱け殻になる(笑)。人生最高の時間を過ごしてます。しばらく、頭の中、渋谷のことばっかりだ!」と叫んで始まったアンコール1曲目は、「頭ん中そればっかり」。ハジケまくったサウンドが最高に気持ちいい! その熱気を一層エスカレートさせたのが「花のように」。飛び跳ねながら盛り上がる観客の姿が眩しい。そして、「11月24日に人生初めての武道館でワンマンをやらせてもらいます。もう少し先だけど、そこでもみなさんと会いたいです。この繋がりが続いたらいいなと思います。また会いましょう。その前にもう1曲歌おうぜ!」と言い、ラストに披露したのは「福笑い」。曲が始まるや否や会場全体から起こった手拍子の力強さが尋常ではない。途中で高橋が客席にマイクを向けると、人々の大合唱は一際高鳴っていく。「辛いこと、嬉しいこと。いろんな日常があると思います。歌声を響かせる人生を歩んでいきましょう!」と呼びかけ、曲が幕切れた時、最大級の歓声がステージに向って届けられた。
全曲の演奏を終えるとバンドメンバーたちを改めて紹介し、「また会う時までお互いに頑張ろうぜ!」と言いながら手を振り、何度もお辞儀をした高橋。やがて、BGMの「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」に合わせて全力で歌いだした。そして、「また会おうぜ!」と叫び、ステージから去った彼を、観客の心のこもった拍手が見送る。とても清々しい熱気が漂うエンディングとなった。
【取材・文:田中 大】
リリース情報
お知らせ
高橋優2013日本武道館
【YOU CAN BREAK THE SILENCE IN BUDOKAN】
2013/11/24(日)日本武道館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。