9月19日は中秋の名月。この日、moumoonのライブ“FULL MOON LIVE SPECIAL 2013~中秋の名月~”が、中野サンプラザで行われた。実は会場につめかけた多くのファンのみならず、メンバーや関係者も特別な思いで、この日を迎えて いたに違いない。実は昨年も中秋の名月（昨年は9月30日だった）に、日比谷野外大音楽堂でのライブを予定していたのだが、運悪く台風の影響でラ イブを中止せざるをえなかったのである。今年は天候に恵まれ、moumoonとともに、楽しい夜が過ごせそうだ。

　ライブはYUKAが奏でるトイピアノの愛らしい伴奏と、MASAKI（＝柾昊佑）のアコースティックギターをフィーチャーした 「moonlight」でスタート。続く「Cinderella」もピアノがメインのしっとりしたナンバー。オーガンジー素材のフワリとした衣装が、彼女の柔らかい歌声を引き立て、前半からオーディエンスをグッと引き込んでいく。最初のMCで、YUKAは昨年中止になったライブについて触れ、「2年ぶりの開催でございますね！　去年は台風で中止になって、ホン トに悔しくて悔しくて――。今日はみんな、ここに集まってくれてありがとう！　楽しむ準備はできてるのかい？」と、無事にライブができていることを喜んだ。このあとのブロックでは、アップテンポの曲が並ぶ。それまで、 しっとりした楽曲を着席で楽しんでいた観客も「15doors」で、一気に立ち上がる。「looking for myself」ではNASAKIのエレキギターが入り、ステージは熱気を帯びてきた。

　中盤でプレイされた「mellow」や「don’t wanna be」「『Love iseverywhere』」など、躍動感のある曲達がライブのノリになじんできたのも、moumoonのパフォーマンスがパワーアップした要因だったのかも しれない。また、ステージのそこここに、サポートミュージシャンが掛け持ちする楽器や機材が置かれ、MCでYUKAが「今日はいろんなところに機 材があって、音を楽しも うって感じにしたい」と説明したように、ライブのアクセントになるような演出も多く仕込まれていた。後半への導入部には MASAKIによるアコースティックギターのソロコーナーがあり、そのしっとりした流れから「青い月とアンビバレンスな愛」へとつながっていく。 曲明けのMCではYUKAが「この曲をワンマンでやるのは久しぶり。昔は満月の夜、必ずやってました」と曲についての思い出を語る。インディーズ 時代、路上でライブをやっていた話にも触れたが、昔からのファンにとってはジンワリとくるエピソードだったかもしれない。会場が暖かい空気に包ま れる中、深い愛について穏やかに歌った「トモシビ」が演奏された。YUKAの透明感あるボーカルも心地いい。

　さて、このあとは後半戦。「Sunshine Girl」や「Chu Chu」など、おなじみのヒット曲が続々とプレイされ、観客のボルテージも急上昇。「DREAMER DREAMER」でも、さらにノリはヒートアップ。熱気に溢れる時簡が展開した。

　楽しい時間はあっという間、「次の曲で最後です」とYUKAが紹介したラスト曲は「We Go」だった。「一緒に歌って！」とYUKAに促され、場内には「ラララ……」のコーラスが響く。オーディエンスとmoumoonが一体となり、満ち足り たムードで本編が終了。メンバーはステージ前に一列に並んで一礼し、このままライブが終わってしまうのか……と思っていると、スタッフが手際よく 機材にシートをかけていく。“ステージに雨でも降らせるのか？”と思っていると、メンバーが再び所定の位置にスタンバイ。そして、何と新曲の 「Love before we die」を披露（この曲と同名のアルバムが来年1月29日に発売される）。次の展開もしっかり示してくれた。演出ではステージ両側から大量のシャボン玉が 飛び出し、ステージはドリーミーな空間に。シートの謎はシャボン玉から機材を守るためだったのだ。曲は彼ららしい80年代調ポップなロックサウン ドというべきか。曲が終わると場内は大きな拍手に包まれ、最後にステージに残ったYUKAとMASAKIのふたりは、再び一礼。満月のライブは無 事にお開きとなった。帰りは夜空に浮かぶ月を眺めつつ、余韻にひたりながら帰路についたファンも多かったことだろう。この日、受け止めた中秋の名 月のパワーが、moumoonをますます成長させてくれるのは間違いなさそうだ。

【取材・文：海江敦士】