前作『No Night Land』では、見事に構築されたサウンド・ワンダーランドを表現し、クォリティーの高さを見せつけたmoumoon。それ以降、彼らに対する認識を新た にした人が多かったのではないだろうか。そのソフトなグループ名から、優しくかわいらしいサウンドをイメージする人も多かったかもしれない。もちろん、そのふんわりした持ち味も彼らの確たる個性であるが、ここ最近はエッジを利かせたクールさや、たくましさを兼ね備えた曲も制作。それが1月30日にリリースした最新アルバム『Pain Killer』で開花したように思う。まさに期待通り――いや、それ以上の聴き応えだった。
　タイトルの『Pain Killer』には“鎮痛剤”の意味もあるが、アルバム全体に漂うのは日常感じる不安や葛藤を包み込むようなメッセージだ。究極の癒しボイスの持ち主、 YUKAの歌声と、柾昊佑が作り出す振り幅のある楽曲達には、励まされたり癒されたり。この起伏に満ちたサウンドアプローチは、先にリリース された3枚のシングル曲でも顕著だった。たとえば、アルバムでは1曲目を飾っている「DREAMER DREAMER」はエッジの利いたギターがフィーチャーされていたし、「儚火」ではしっとりとした叙情的な歌を聴かせ、「『Love is everywhere』」では80’sのエレポップ・テイストを取り入れたり……などなど。これだけタイプの違う曲をすべてmoumoonサウンドにまと めあげてしまうトラックメイキングとYUKAのボーカルセンスはさすが。
　さらに、映画「リトル・マエストラ」の主題歌でもおなじみの力強くも壮大 なバラード「うつくしい人」も秀逸な仕上がりで必聴だ。ちなみに【CD+2DVD】のバージョンには、スタジオライブやライブヒストリーのDVD も2枚収録されているので、彼らをより深く知りたい人にはオススメ。CDオンリーでも、長く聴ける1枚になるのは確実。ちなみに、3月からはライ ブツアーもスタートするとのこと。実際のライブでアルバムの曲達を浴びるのは、非常に気持ちよさそうだ。そう考えると、ついmoumoonの存在 自体が“Pain Killer”なのかも……と思えてくる。ひとまわり成長した彼らの音楽には、かなりのリカバリー効果があるに違いない。

【文：海江敦士】