高橋優、初の日本武道館。歌声と笑顔の結晶となったライブの模様をレポート。
高橋優 | 2013.12.05
「一緒に歌おうぜ武道館!」、高橋が観客に呼びかけてスタートした1曲目「ボーリング」。手にしたアコースティックギターをストロークして歌い始めると、会場全体が一気に熱く沸き立つ。2ndヴァースからはバンドメンバーたちの演奏も合流し、ますますエモーショナルに響き渡っていった。そして、観客も《あぁ面倒臭ぇ!》という印象的なフレーズを共に歌う。素晴らしい一体感がみるみる内に生まれたオープニングとなった。
「陽はまた昇る」と「こどものうた」が人々の力強い手拍子を誘った後、最初のインターバル。「今年の5月からライブハウスツアー、7月からホールツアー、その合間にアルバムをリリース。ずっとやってきて、そして今日です。あなたはこの武道館で沈黙をブッ壊すことができる。それを証明しに来ました。心に抱えていることを全部解き放っていい集会をずっとやってきました。でも、今日は集会どころじゃない。大集会でございます。一緒に声を張り上げたいのですが、張り上げてくれるか? 一緒に大声を張り上げようぜ!」と煽り、雪崩れ込んだ「HITO-TO-HITO」の盛り上がりが凄まじい。「花のように」「蝉」「ほんとのきもち」も披露されて、武道館全体が一層心地よい昂揚感に包まれていった。
各人のキャラクターが窺われるエピソードを交えたバンドメンバー紹介の後、再びMC。「小さい時から地元・秋田出身の有名人を見ると応援したくなるんです。それで秋田出身の人を応援する曲を作ったけどボツになりました(笑)」という説明を経て「テレビを見ながら」。アルバム『BREAK MY SILENCE』の初回限定盤特典『ボツ曲大全集?』に収録されていた曲だ。これが演奏されるというのはかなりレア。ハジケたパンク風のアレンジで演奏され、観客は大盛り上がりであった。続いて、ライブで披露するのは久しぶりだという3曲「サンドイッチ」「靴紐」「8月6日」。イントロが奏でられる度に歓声が上がり、人々は耳を傾けながら身体を静かに揺らす。素朴な趣きの曲たちだが、こめられた想いが豊かな情景描写を伴って迫ってきた。
「次に歌うのは、“強さってどういうことだろう?”と考えて書いた曲です。ツアーで歌いながらその疑問は変化して、“小さい頃より強くなれているとしたら、その強さとは何なんだろう?”ということを思うようになりました。誰かを笑わせたり……俗に言う“優しさ”を強さと呼ぶのかな?と考えるようになりました」という言葉を添えて「CANDY」。そして、柔らかなピアノ伴奏を軸にしたバンドサウンドをバックに歌い上げた「少年であれ」。胸に瑞々しく沁みる2曲がさらに披露され、人々の間に穏やかな感動の輪が広がり続ける。演奏が終わる度に、心のこもった拍手がステージに向って届けられていた。
「沈黙をぶっ壊していこうと思ったきっかけの曲です。一緒に歌いたいんですよ。一緒に歌ってくれますか? 一番うるさい武道館にしてやろうぜ!」と煽って突入した「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」。頭上でクラップしながら飛び跳ね、大合唱する観客の熱気が会場全体に溢れ返っていく。続いて「泣ぐ子はいねが」。「嫌だったこと、災いを祓って祝福が訪れるよう、歌ってくれるか武道館?」と呼びかけ、《泣ぐ子はいねが!?》という歌のフレーズを皆と練習した後にスタートした。メガネをかけたなまはげのイラストが描かれた幟を高橋は手にしながらステージの隅々までを巡り、アリーナ、1階席、2階席……あらゆるエリアの観客を巻き込み続ける。武道館全体が人々の《泣ぐ子はいねが!?》という力強い声で満たされていった。
観客の手拍子も加わり、心地よいグルーヴが生まれた「頭ん中そればっかり」。客席に向って発射された銀テープが人々の興奮を加速し、すさまじい熱気を巻き起こした「現実という名の怪物と戦う者たち」。全力でアコースティックギターをストロークし、歌声を響かせる高橋の姿が雄々しかった「素晴らしき日常」……エネルギッシュなナンバーを次々披露した後、汗を拭った高橋。「みなさんの歌声がめちゃめちゃステージまで聞こえてきました。歌声を聴きながら、“みなさんと繋がってるんだな”と何度も何度も実感させて頂きました。ミュージシャンとしてじゃなくて、1人の人間として一生懸けてこの繋がりを大事にしていきたいと思います。また僕の方から何度も会いに行って歌を届けようと思います」と語り、本編ラストに歌ったのは「同じ空の下」。高橋の歌とギター、バンドの演奏、観客の歌声と手拍子……あらゆる音が温かく共鳴し合っているのを感じた。
アンコールを求める声に応えてステージに戻ってきた高橋とバンドメンバーたち。まず演奏されたのは来年公開される映画『東京難民』のために書き下ろした曲、このライブで初披露となった「旅人」。続いて「友へ」。観客の歌声も加わり、会場内が一層清々しいムードに包まれていった。そして、「本当にどうもありがとうございました。胸がいっぱいで、歌ってる最中も何度も熱いものがこみ上げました。では、“笑顔でいっぱいの日々を歩いていけますように”という願いをこめてもう1曲」と言い、スタートしたのは「福笑い」。会場の隅々までを見渡しながら歌う高橋の表情が実に幸せそうだった。曲の途中でマイクを客席側に向けると、《きっとこの世界の共通言語は?》と歌う人々の声が美しく木霊する。「また会いましょう。高橋優でした!」と観客に呼びかけて曲が幕切れると、最大級の拍手と歓声がステージに向って届けられた。
エンディングSE「(Where’s)THE SILENT MAJORITY?」が流れ、その音に合わせて観客は手拍子。高橋は客席の各エリアへ向かって何度も手を振り、深々とお辞儀をした後、マイクを手にして歌い始める。観客も大合唱。ライブ本編に負けないくらいの熱量の歌声が響き渡っていった。SEがエンディングを迎えると高橋はステージから去り、これにて終演……かと思いきや、観客の歓声は全く収まる気配がない。するとなんと高橋がステージに戻ってきた! 「終電大丈夫? 飛行機大丈夫? じゃあもう1曲歌ってくか。絶対に原点を忘れちゃいけないという想いをこめて。もし知ってたら一緒に歌ってください」と我々に呼びかけ、届けてくれたのは「駱駝」。2009年にインディーズでリリースされた初の全国流通盤『僕らの平成ロックンロール』の収録曲だ。ファンの間で非常に人気の高いこの曲が突然飛び出し、客席全体が沸いた。全力でアコースティックギターをストロークし、響かせる高橋の歌声が実に生々しい。自身が作った音楽を通じてたくさんの人と出会い、想いを分かち合えることへの喜びがまざまざと伝わってきた。繰り返される《僕らは笑おうぜ》というフレーズは《また会えるその日まで もし会えたら歌おうぜ》《そしてまた一緒に笑おうぜ》という観客へのメッセージへと転じ、やがて迎えたエンディングはとても美しかった。まさしく「感無量」と表現するのがふさわしい心の震えを、あの場にいた全ての人が噛み締めたに違いない。
【取材・文:田中 大】
リリース情報
お知らせ
WOWOWにて武道館公演ライブ映像が2014年2月に放送決定!
WOWOWで高橋優2013日本武道館【YOU CAN BREAK THE SILENCE IN BUDOKAN】の模様が、2月に放送決定。初の日本武道館公演をWOWOWで独占放送!
詳しくはコチラ
http://www.wowow.co.jp/takahashiyu
※最新情報はWOWOWオンライン他を随時ご確認ください。
※番組編成や内容は予告なく変更される場合がありますので、ご了承ください。
■ライブ情報
unBORDE Xmas PARTY 2013
2013/12/23(月・祝)EX THEATER ROPPONGI
COUNTDOWN JAPAN 13/14
2013/12/28(土)幕張メッセ国際展示場1?8ホール
VIVA LA ROCK
2014/05/03(土)・4(日)・5(月・祝) さいたまスーパーアリーナ
※出演日未定
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。