前へ

次へ

魂を震わせ、癒す歌声――安藤裕子、圧巻の渋谷公会堂ツアーファイナル!

安藤裕子 | 2013.12.11

 ボーカリストとして表現者として、安藤裕子のポテンシャルの高さを見せつけらたライヴだった。
 デビュー10年目の節目の年にリリースされたアルバム『グッド・バイ』をひっさげ全国5箇所で行なわれた“安藤裕子 Live 2013 HELLO&goodbye”ツアーファイナルが渋谷公会堂で行なわれた。

 客電が落ちていよいよショーの始まり。オーディエンスがライトに照らされたステージを見つめる中、アクアブルーのドレスを着た安藤は何とバンドのメンバーを従えて、客席を練り歩くように登場! いきなりのサプライズに沸く中、笑顔で手を振り、ステージに上がっての第1声は「うぃーっす!」で、みんなも「うぃーっす!」と返す。意表を付いたドリフターズ的展開だ。

「こんにちは。安藤裕子です。いつもはすぐに歌うんですけど、緊張しぃで、シリアスな空気になりがちなので、渋谷公会堂はドリフの聖地ということで工夫をしてやってみました。でも、内蔵が飛び出しそうです」とかなり興奮した様子。「がんばります。聴いてください!」。そう言って歌い始めたのはデビュー・シングル「サリー」だった。マイクに向かうと、スイッチが切り替わったような堂々とした歌いっぷり。続けて新作から、はじけたナンバー「完全無欠の空と嘘」。月日を飛び越える10年目ならではのセットリストだ。

 そして、再び、思いがけない試み。MCで「声優の豊崎愛生(安藤が楽曲提供)のライブに行ったときにファンがいっせいにペンライトを振る一体感のある光景に感動して、自分もグッズでペンライトを作りたいと言ったものの、ツアーには間に合わなかった」と話し、「今日はエアーペンライトしてみない? 会場の元気な方は立ち上がってください!」と提案。もちろん、こんなお茶目なリクエストに客席がノらないわけもなく、「絵になるお話」は、みんながペンライトを持っているつもりで右手を振るという光景が繰り広げられた。
 続いて披露された「ローリー」ではイントロのキーボードのアクセント音に合わせて安藤が、おどけたポージング。バンドサウンドを全面に押し出したアプローチの中、気ままでガーリーな魅力をまき散らす。

 いったい、彼女はいくつの顔を持っているのだろう。そんな多面性に釘づけになったステージでもあった。特に圧巻だったのは赤く染まる照明の中、アルバムとは異なるヘヴィで深遠なアプローチで響かせた「いらいらいらい」から、エキゾティックで幻想的な「貘砂漠」へと移行する中盤の流れ。歌のドラマの中にぐいぐいと観客をひきずりこむ安藤の歌は息をのむような迫力と説得力があった。

 その熱をクールダウンさせるかのように椅子に座って、「アイドルから妖怪へ、という構成のもと曲を構築してみました」と笑わせ、話題は学生時代から飽きっぽかった自分が唯一、続けられた音楽のことについて語った。改めて感謝の気持ちを述べ、「みなさんもうまくいかないこともあると思いますが、ふふふっと思うことを大切に生きてくださいね」と、アコースティックギターをバックにしっとりした歌を聴かせ、「Aloha’ Oe アロハオエ」では波がよせては返すような穏やかな声を届けた。
 後半は再び、スタンディングで温度をあげていき、本編ラストは「聖者の行進」。音の洪水に身を投げ出すかのように動き、歌い、叫ぶ姿はまぶしいほどの生命力にあふれていた。演奏が続く中、一礼して去っていく安藤に拍手と歓声が降り注ぐ。

 アンコールではツアーTシャツとスカイブルーのスカートに着替えた安藤がグッズとバックメンバーを紹介。12月19日に六本木のEX THEATER ROPPONGIでプレミアムアコースティックライヴが行なわれることも告知された。そして、歌われたのは鍵盤とボーカルのみで始まった日本人の琴線にダイレクトに触れる壮大なスケールの「グッド・バイ」と、全てのベクトルを解放に向かわせるエネルギー爆発の「サイハテ」。惜しみない賞賛の声が鳴り止まない中、完全燃焼してフラフラになりながら、素に戻った安藤はシャイな笑顔になってメンバーと手をつないで挨拶。歌に身を捧げているボーカリストの凄みと温かさ、繊細さ、そのすべてに感動した。

【取材・文:山本弘子】
【撮影:Taku Fujii】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 安藤裕子

関連記事

リリース情報

グッド・バイ

グッド・バイ

2013年10月02日

cutting edge

1. ようこそここへ
2. 完全無欠の空と嘘
3. ローリー
4. ここに臨む丘
5. サイハテ
6. いらいらいらい
7. 貘砂漠
8. 愛の季節
9. Aloha ’Oe アロハオエ
10. グッド・バイ

このアルバムを購入

セットリスト

安藤裕子Live 2013 HELLO & goodbye
2013.11.24@渋谷公会堂

  1. サリー
  2. 完全無欠の空と嘘
  3. 絵になるお話
  4. ローリー
  5. ここに臨む丘
  6. 美しい人
  7. いらいらいらい
  8. 貘砂漠
  9. 悲しみにこんにちは
  10. 六月十三日、強い雨。
  11. Aloha‘Oe アロハオエ
  12. ようこそここへ
  13. 愛の季節
  14. 隣人に光が差すとき
  15. 聖者の行進
Encore
  1. グッド・バイ
  2. サイハテ

お知らせ

■ライブ情報

安藤裕子 Premium Acoustic Live
"聖者の行進"

2013/12/19(木)EX THEATER ROPPONGI

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る