これぞロックの魔法! ドレスコーズ、ツアーファイナル
ドレスコーズ | 2013.12.19
最高のロックンロールショーだった。
会場は心の底からドレスコーズの音を歌を求めているオーディエンスで埋めつくされていた。セカンドアルバム『バンド・デシネ』を引っ提げた全国ツアー〈More Pricks Than Kicks TOUR〉のファイナル公演、SHIBUYA AX。「どろぼう」から「ゴッホ」へといきなりアルバムからの新曲を披露し、「ロックンロール!」と叫ぶ志磨(Vo)にフロアーから数えきれないほどの拳が上がった。
そのパフォーマンスに魅きつけられると同時にドレスコーズの中毒性の高い楽曲が目の前で鳴らされることに興奮を覚えたライヴでもあった。甘酸っぱいメロディと切ない歌詞、丸山(G)のギターのフレーズのバランスが秀逸な「Zombie」では、じわじわと世界にひきこみ、後半にいくに従って山中(B)、菅(Dr)のリズム隊が熱さを増していく“これぞバンドサウンドの醍醐味!”的演奏を展開。ゴキゲンな8ビートのナンバーで煽ったかと思うと中盤では志磨が赤のアコギを持ち、ハープを吹いて歌った「フォークソングライン(ピーターパンと敗残兵)」や言葉とメロディの節々が沁みてくる「Silly Song,Million Lights」でじっくりと浸らせ、一転、「シネマ・シネマ・シネマ」ではハンドマイクに戻り、上手から下手へと動きまわりながら歌い、“僕は世間知らずのフレッド・アステアだ”と歌いながら往年の銀幕のスターのようにステップを踏んでジャンプ! メンバーのコーラスと視界が開けるようなサビのメロディが印象的な「We are」は一体になったフロアーが壮観だった。
ツアーに関わった人たちへの感謝の想いを述べ、「僕らの青春時代の終り、その先が真っ暗だなんて嘘っぱちだと思うんだ。ジジイになるなら死んだほうがマシだなんて嘘っぱちだと思うんだ。青春時代のその先の黄金時代を僕らはハーベストと呼ぶ」と宣言し、時代を飛び超える名曲「ハーベスト」へと移行した場面や、ドラムソロを披露した菅を紹介したあとで、「悲しみとダンスを踊ろう! ロックンロールは悲しみをちっとも忘れさせてなんてくれない。その代わり、ロックンロールはキミの悲しみとうまくダンスできるようにさせてくれたんだよ!」と叫び、「(This Is Not A) Sad Song」をキメた場面??。どれも脳裏に焼きついている。オールドスタイルなロックも、ドレスコーズの手にかかると輝きを取り戻し、この時代の中で生き生きと呼吸し始める。それは彼ら自身がその不思議な魔法にかかり、ロックンロールの幻想の中に在る“本当”を信じたからにほかならないと思った。秀れたエンターティナーでありながら、危うく衝動的な側面も持ち合わせている志磨のステージングは間違いなく見る人をドキドキさせる。ワクワクさせてくれる。
ライヴ後半、「トートロジー」で彼はいきなりオーディエンスの中に飛びこみ、支えるみんなの腕の中で上半身を起こして歌い、シャウトした後に身体を横たえてみせた。熱気が沸点に達した中、最後に贈られたナンバーはコール&レスポンスで盛り上がった「バンド・デシネ」。
アンコールに応え、「どうもありがとう!! もうちょっとやるよ」と再び、登場したときには、すっかり自らを解放しまくった男性ファンの声が飛びかい、子供も彼らに声援を送り、メンバーも笑顔。「Automatic Punk」では、ドラム台に上がった山中が菅と共にアグレッシブなビートで揺らせ、志磨も菅のシンバルを叩いて応戦。そんな中、一発入魂のギターをかき鳴らす丸山もかなりカッコよかった。メンバーを紹介した後は、「誰よりもクズの志磨遼平です! 生きててごめんね。クズによるクズのための最後の曲」と「Trash」を演奏! このカタルシス、1度、体験したら、ドレスコーズのとりこになること間違いなしだ。
【取材・文:山本弘子】
【撮影:松本時代】
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