藤井フミヤ、ツアー連載最終回! 5年ぶりに復活した日本武道館カウントダウン
藤井フミヤ | 2014.01.08
5年ぶりにフミヤと武道館で年越しだ。
夜の10時、続々とファンが詰めかける。物販ブースには、まだ長い列が続いている。武道館に入ると、360度、ぎっしり埋まっている。ステージは黒で統一されたシンプルな作り。センターには客席の半ばまで、花道が突き出ている。
暗転になると、武道館はオーディエンスそれぞれが持ったサイリウムの光の海になる。自分たちが作り出した光景を見て感動したオーディエンスのため息が聞こえる。と、センターにピンスポットが当たり、尚之が開演を告げるサックスを思い切り鳴らした。大歓声が上がる。いよいよ30周年スペシャルカウントダウンライブの始まりだ。
オープニングは尚之がリードしてインストの「FINAL LAP」。FINAL LAPとは、周回する競技の最後の一周のこと。そう、今夜はアニバーサリーイヤー前半戦の最後を飾るライブなのだ。バンドのメンバーは演奏しながら次第にテンションを上げていく。それが最高点に達したとき、ステージ中央にいきなりフミヤが浮かび上がった。どこから現われたのだろう? ライブ演出の基本ではあるが、こうまで鮮やかにキメられると、抵抗できずに非日常の世界に連れ去られる。まったく“年忘れ”という言葉にふさわしいオープニングだ。
歌い始めたのは「I Love You,SAYONARA」。13年後半のツアー“青春”と同じ幕開けだ。イントロで先陣を切る尚之のサックスが響くと、オーディエンスは改めてこれから始まるライブへの期待を、歓声という形で表わす。フミヤはダークスーツに身を包み、胸のポケットから 真っ白なチーフをのぞかせている。そんなフォーマルなコスチュームに合わせるように、くるりと回るアクションもどこか丁寧で、気の引き締まる思いがする。
滑り出しは、屋敷豪太のドラムがいい。豪太はいつも素晴らしいプレイを聴かせてくれるが、武道館という特別な場所ではなおのこと彼のグルーヴが映えるのだ。
「イェー、ようこそ、カウントダウンライブへ。2013年から14年に変わる一瞬をみなさんとともに過ごせて嬉しく思います。一生思い出に残るようなライブにします。今年は30周年てことで、懐かしい歌をいっぱい歌ってます。(体をくるっと回して)360度、ありがとう。皆さんのパワーが伝われば、俺、すぐ調子に乗ります。今日はこのメンバーで(観客に手を差し伸べて)お送りします。けっこういいメンバーを揃えてみました」と、再び観客を指し示すと、場内から楽しい笑い声が起こったのだった。
花道の先端にセットされたミニステージまで歩き進んで、バンド時代の大ヒット「WANDERER」を歌う。マイクスタンドを頭上でくるくる回すアクションが、堂に入っている。“青春”ツアーでは久しぶりにバンドっぽいステージングを味わったが、フミヤは間違いなくこの国を代表するロックボーカルだ。同じく「ONE NIGHT GIGOLO」も派手なアクション満載で、つくづく武道館が似合うロックボーカルだと再認識して嬉しくなった。
「オリンピックが決まったね。俺、生きてるかなぁ」とフミヤが言うと、客席から嬉しいブーイングが起こる。「開会式、見たいもんね。予約しよ。こうなったら、どんなコネでも使うぞぉ!」。笑いと拍手が起こる。「突然の武道館だから、ちょっとワケがわかんね」と嬉しそうにフミヤ。やはりフミヤにとって武道館は特別な場所なので、嬉しさ半分、緊張半分は本音なのだろう。そのフレッシュさが、この夜のフミヤを輝かせている。
ゆったりしたグルーヴの「Blue Moon Stone」と「ミセスマーメイド」が、大人のロックボーカル、フミヤの魅力をたっぷり味あわせてくれる。天井に吊られたトラスから細いケーブルに付けられたライトが降りてきて、フミヤの歌を彩る。最新式のライティングでこうした演出も見逃せない。
「まあ、座って下さい。5年ぶりのカウントダウン。ここんところ、ずっと家で紅白見てましたけど、ここに帰ってきちゃいました」。シートに座った観客から拍手が起こる。「ここでまたカウントダウンができるなんて、感無量です。ここの屋根のてっぺんについてる“タマネギ”にみんなのパワーを集めて、後半は武道館を浮かせます!」とひとり弾き語りで「Another Orion」。
「あっちこっち向かなきゃいけない…武道館だなぁ。“青春”ツアーはチェッカーズの曲を歌ったんだけど、若い頃作った曲だから疲れますね(笑)。俺には青春が二つあって、 一つは東京に出てきてからの青春。もう一つは久留米。いろんなことを思い出しながら歌います」と、ギターに石成正人が加わって「時のK-City」を。これは“K-City”= 久留米への思いがベイスになっているナンバーで、しみじみ聴かせたのだった。
「解散ライブはここ、武道館でやった。その後、どうしようかと思っていたときに、気軽に引き受けた仕事で、ファンのみんなに向けて書いた曲が代表曲になってしまいました。たぶん、俺の“出棺”のときに流れる(笑)」と「TRUE LOVE」。 すっかりフミヤのペースでライブが進むうちに、カウントダウンが近づいてくる。
「あと8分ある。もう1曲やろうかな…いやいや、メンバー紹介しよう」と、さすがベテランの時間配分。
「2013年は大変お世話になりました。30年間、歌えたのは、みなさんのお陰です。来年はソロ20周年をやります。いろんなこと、あったね。でも嫌なことは全部水に流そう。来年いいこと絶対あるから。だって、ここに来てるんだもん」。いい感じで100秒前からデジタル表示が点灯して、ラスト10秒 は、武道館が浮き上がるほどの大歓声だ。
「ハッピー・ニューイヤー!!」と叫んで「君が代」を歌い出す。天井の日の丸にスポットライトが当たる。
「ありがとう、カモーン!」。いよいよ新年ライブの始まりだ。「Count up ’00s」 から、立て続けにアッパーチューンが並ぶ。「きっと、いい年にしようぜ!」。一体どこにこのスタミナが残っているのだろうと思うほど、ステージも客席も盛り上がる。「おまえが嫌いだ」まで、一気にたたみ込んだのだった。
アンコールで現われたフミヤは、白とブルーのコスチューム。「大きい声でのアンコール、ありがとうございます。明けちゃいましたね。今年は嫌なこともあるかもしれないけど、絶対いいことあるって。だってみんなで武道館で年越ししたんだから、いいこと起きたら、俺のことを思い出すように(笑)。解散ライブでは、チケット買えなかった人たちが周りにいっぱいいた。そしたら“武道館さん”が扉を開けてくれて、外の人にも音がよく聴こえるようにしてくれました。粋なこと、するよね。そのときのアンコールの1曲目に歌った歌をやります」。
「Long Road」は作曲家・藤井尚之の代表曲。尚之独特の伸びのあるメロディが、武道館に広がっていく。
ビールで新年の乾杯をした後、最後は、フミヤのカウントダウン恒例の「紙飛行機」。武道館全員がめいめい折った紙飛行機をスタンバイすると、フミヤやバンドメンバーも準備万端。僕の近くの車椅子に乗った人も、嬉しそうに飛行機を手に持っている。「ここからは飲酒演奏でお送りします」。歌の最中に武道館の空間に無数の紙飛行機が舞う。5年前と変わらぬ感動が溢れ出す。
♪年の始めの ためしとて?♪と「一月一日」をロックバージョンで歌って、ライブは終わった。
しかし終わっても、オーディエンスの声が鳴り止まない。すると、もう一度、フミヤがステージに現われた。最後の最後は「7つの海の地球儀」。そしてフミヤは、いつものように「また遊ぼうぜ!」とそこにいた一 人一人に告げて去っていった。
すべてが終わったステージの袖で、スタッフが無事にライブが終わった余韻の中でハイタッチ すると、それを見ていたオーディエンス全員が、なんと「バンザイ!」を繰り返す。その瞬間、ライブの枠を飛び出して、最高の年越しになったのだ。そして、2014年のフミヤの最高のスタートになったのだった。
今年は1993年「TRUE LOVE」でのソロデビュー以降の20年に焦点を当てたアニバーサリーイヤー後半戦へと突入していく。藤井フミヤを取り巻く状況は30周年&20周年のダブルアニバーサリーイヤーを祝う熱気にまだまだ包まれている。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:鎌田ひでこ】
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セットリスト
藤井フミヤ 30周年
スペシャルカウントダウンライブ
2013.12.31@日本武道館
- FINAL LAP
- I Love you, SAYONARA
- Jim & Janeの伝説
- Cherie
- WANDERER
- Room
- ONE NIGHT GIGOLO
- 素直にI’m Sorry
- Blue Moon Stone
- ミセスマーメイド
- NANA
- Another Orion
- 時のK-City
- TRUE LOVE
- Friends and Dream
- NEXT GENERATION
- 夜明けのブレス
- Count up ’00s
- Standing on the Rainbow
- TOY BOX
- REVOLUTION 2007
- HEART IS GUN ~ピストルを手に入れた夜~
- おまえが嫌いだ
- Long Road
- 紙飛行機
- 七つの海の地球儀
お知らせ
藤井フミヤ 30TH ANNIVERSARY TOUR
vol.1 青春
2013/09/21(土)神奈川 パシフィコ横浜 国立大ホール
2013/09/22(日)神奈川 パシフィコ横浜 国立大ホール
2013/09/26(木)大阪 岸和田市立浪切ホール
2013/09/28(土)香川 サンポートホール高松
2013/09/29(日)広島 広島アステールプラザ
2013/10/04(金)福岡 石橋文化ホール
2013/10/06(日)埼玉 狭山市市民会館
2013/10/11(金)秋田 大仙市大曲市民会館
2013/10/12(土)宮城 東京エレクトロンホール宮城
2013/10/14(月・祝)栃木 佐野市文化会館
2013/10/19(土)滋賀 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール
2013/10/20(日)兵庫 神戸国際会館 こくさいホール
2013/10/23(水)埼玉 三郷市文化会館
2013/10/26(土)長野 塩尻市レザンホール
2013/10/27(日)静岡 静岡市清水文化会館 マリナート・大ホール
2013/10/31(木)東京 渋谷公会堂
2013/11/01(金)三重 三県総合文化センター
2013/11/03(日・祝)新潟 柏崎市文化会館アルフォーレ
2013/11/04(月・休)石川 本多の森ホール
2013/11/09(土)神奈川 伊勢原市民文化会館
2013/11/10(日)東京 中野サンプラザ
2013/11/16(土)兵庫 姫路市文化センター
2013/11/17(日)熊本 市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)
2013/11/23(土・祝)大阪 オリックス劇場
2013/11/24(日)大阪 オリックス劇場
2013/11/30(土)奈良 なら100年会館
2013/12/01(日)愛知 名古屋国際会議場 センチュリーホール
2013/12/05(木)山梨 コラニー文化ホール
2013/12/07(土)千葉 市川市文化会館
2013/12/08(日)千葉 市川市文化会館
2013/12/14(土)大阪 フェスティバルホール
2013/12/15(日)大阪 フェスティバルホール
2013/12/19(木)大阪 堺市民会館
2013/12/21(土)鹿児島 宝山ホール(県文化センター)
2013/12/22(日)福岡 福岡サンパレス
藤井フミヤ 30周年
スペシャルカウントダウンライブ
2013/12/31(火)日本武道館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。