SPYAIR、“MILLION”ツアーの最終日、渋谷公会堂をレポート!
SPYAIR | 2014.01.16
“ロックの殿堂”渋谷公会堂にサイレンが鳴り響く。緊急事態を告げる赤いライトが回転する。それ以上に目を引くのが、舞台狭しと作られたステージセットだ。シルバーの金属製の楕円形トラスを中心に、二重の楕円が取り巻く。そう、アルバム『MILLION』のジャケットにあった野外セットの“ミニ版”だ。ツアー前にメンバーは、椅子付きホールをフルに活かした使い方をすると言っていたが、まず目に飛び込んできた“ホール戦略”第一弾がこれだった。中心の楕円はスクリーンになっていて、SPYAIRのシンボルマークが炎に包まれている。さあ、SPYAIR初のホールツアー、ファイナルの始まりだ。
ライブのオープニングは単刀直入、いつも最新アルバムの1曲目と決まっている。ドラムのKENTAにスポットライトが当たり、「OVERLOAD」がスタート。ボーカルのIKE、ギターのUZ、ベースのMOMIKENは真っ黒なパーカーのフードを目深にかぶり、不気味なムードを漂わす。やる気満々のオーディエンスは右手を上げて♪Oh Oh Oh♪と歌い出す。楕円トラスに付いているライトがぐるぐる回って、会場をアオる。カッコいい。しかし、言わせてもらえば、このセットや演出は90年代のバンドがよくやっていたもの。しかし、このところほとんど使われていなかった手法なので、僕の目にもとても新鮮に映った。同時に、SPYAIRによく似合うと思った。もちろん今、SPYAIRを支持している人たちは、そんな昔の演出を知っているわけもなく、ただ一点、初めて観る「ライトに浮かび上がる楕円トラス」に映えるSPYAIRに、「カッコいい」のひと言を叫ぶだけ。それで、いいのだ!
「OVERLOAD」のエンディングで、3人はフードを脱ぐ。IKEが「ようこそ、SPYAIRのライブへ」とシャウトする。続いては「現状ディストラクション」だ。ダークなイメージの「OVERLOAD」が、SPYAIRのロック感を充分にまき散らした後だけに、そのままハードな世界に突入すると思っていた。それを見事に裏切って、ポップな「現状ディストラクション」を持ってきたことで、視界が急に開けたように感じた。ホールならではの、潔いアプローチだ。してみると、これがSPYAIRホール戦略第二弾だな。
もっと言えば、この日のライブが大成功を収めたのは、よく考えられた“セット リスト”に負うところが大きい。前半はポップなSPYAIR、中盤では聴かせるSPYAIR、そして終盤は生身でロックするSPYAIRという構成になっていて、とてもわかりやすい。それは舞台も客席も広いホールのライブでは、必要不可欠の要素だ。ライブハウスなら、メンバーの表情も含めて音楽を補うファクターがあるから、少々、アーティスト側が勝手なことをやってもオーディエンスは理解できる。が、広いホールではできるだけメッセージが伝わりやすい工夫をしなければ感情を共有できない。その代り、共有できたときの感動は広くて大きくなる。
「OVERLOAD」から「Naked」までの怒涛の6曲は、完璧と言ってよかった。特にKENTAのドラムの成長が、広いホールだからしっかり確認できた。満員のオーディエンスのノリを損なうことなく、ぐいぐい引っ張っていく。それを受けて、IKEが活き活きとアピールする。今のロックシーンに“ホールが似合うボーカリスト”は数えるほどしかいないが、IKEは間違いなくその一人だ。「Are You Champion? Yeah!! I’m Champion!!」ではレコーディングと同じく4人のチアガールがステージに登場して華を添える。が、あくまで主人公はSPYAIRだ。
中盤のハイライトは、アコースティック・セットの「My Friend」だった。UZは ギターのままだが、IKEがギターを持ち、MOMIKENがタンバリンを叩き、なんとKENTAがベースを弾く。そのKENTAが「おのおの、楽器を変えてやってみようってことで。でも、なんでUZはギターなの?」と聞くと、UZが「俺まで違う楽器をやると、皆さんに聴かせられないから(笑)。でも楽しそうだから、いつか他の楽器をやってみたいな。ツアーでずっとやってきて、みんなが中学生みたいな表情になる。最初の頃に比べたら、演奏がすごく伸びた」。4人全員が歌い、演奏する。「My Friend」に込められた気持ちをそのまま表わす、ナイスな企画だった。
終盤は前半とは対照的に、ミクスチャー・ロックのニュアンスが濃く、ロックバンドとしての正念場のセットリストだ。「Supersonic」ではUZが見事にラップを決める。だがコンピュータのサポートが無くなると、演奏が粗くなるシーンがあった。それでもギリギリ乗り切って進むSPYAIRの強い味方は、オーディエンスだ。4人の背中を押すように、会場は大騒ぎだ。もうひとつ、SPYAIRの強味は、曲のよさだ。丁寧なアルバム作りが、こうした大事な場面で威力を発揮する。
「サムライハート(Some Like It Hot!!)」が終わった後、UZが口を開いた。
「このツアーが始まる前に、大事なアルバムのツアーがホールでいいのかという違和感があった。でもライブをやる度に、ホールの素晴らしさをみんなに教えてもらった。やってよかったと思ってます。心が折れそうな時、今、俺たちが見てる景色を思い描いて乗り越えてきました」。
ツアーを締めくくるにふさわしい言葉に、会場から大きな拍手が起こる。ここからのSPYAIRが凄かった。「雨上がりに咲く花」のIKEは、この日いちばんの声で歌った。イントロをオーディエンスが歌った「虹」は、4人の気持ちが揃って、言葉がよく伝わってきた。ホールのSPYAIRで特筆されるべきは、彼らが“歌を伝えるバンド”だと言うこと。それが第四弾だった。
アンコールの新曲「JUST ONE LIFE」は、SPYAIRのそんな魅力をよく伝えていた。そして「SINGING」は、4人とオーディエンス全員の歌として最後を飾ったのだった。1年前の武道館ライブを、遥かに超える内容のライブだった。この成果は、この春に敢行されるZeppツアーに現われることだろう。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:石井亜希】
リリース情報
リリース情報
MILLION(初回限定盤A) [CD+DVD]
2013年08月07日
SMAR
1.OVERLOAD
2.Turning Point
3.現状ディストラクション
4.サクラミツツキ
5.Winding Road
6.Are You Champion? Yeah!! I’m Champion !!
7.STAND UP
8.Supersonic
9.雨上がりに咲く花
10.虹
11.16 And Life
ディスク:2
1.WENDY 〜It’s You〜(MUSIC VIDEO)
2.サクラミツツキ(MUSIC VIDEO)
3.虹(MUSIC VIDEO)
4.現状ディストラクション(MUSIC VIDEO)
5.OVERLOAD(LIVE)
6.ジャパニケーション(LIVE)
7.0 GAME(LIVE)
8.サクラミツツキ(LIVE)
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セットリスト
SPYAIR TOUR 2013 “MILLION”
2013.12.27@渋谷公会堂
- OVERLOAD
- 現状ディストラクション
- Last Moment
- WENDY 〜It’s You〜
- Are You Champion? Yeah!! I’m Champion !!
- Naked
- サクラミツツキ
- Winding Road
- LINK IT ALL
- 16 And Life
- My Friend(acoustic)
- 0 GAME
- Supersonic
- STAND UP
- Turning Point
- 感情ディスコード
- ジャパニケーション
- サムライハート(Some Like It Hot!!)
- 雨上がりに咲く花
- 虹
- JUST ONE LIFE
- SINGING
お知らせ
SPYAIR TOUR 2014
2014/05/03(土・祝)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
2014/05/06(火・祝)愛知県 Zepp Nagoya
2014/05/07(水)愛知県 Zepp Nagoya
2014/05/10(土)北海道 Zepp Sapporo
2014/05/12(月)宮城県 Rensa
2014/05/17(土)福岡県 Zepp Fukuoka
2014/05/18(日)大阪府 Zepp Namba
2014/05/20(火)広島県 広島CLUB QUATTRO
2014/05/25(日)東京都 Zepp Tokyo
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。