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ハルカトミユキ、初のワンマンツアー最終日をレポート!

ハルカトミユキ | 2014.02.18

 首都圏に45年ぶりとなる記録的な大雪が降った日に、ハルカトミユキは、彼女達が“雪山の山小屋のよう”と称した、渋谷クラブクアトロでのワンマンツアー「青写真を描く」の最終公演を敢行した。

 開演の予定時間が近付くと、鍵盤を叩き付けるように鳴らされる不協和音に、心音のようなベースが重なり、場内が少しずつ暗くなっていく。と、同時に、ハルカトミユキのライブ特有の張りつめた緊張感で空気が満たされていく。やがて、背面からのスポットライトが1つ点灯し、真紅のノースリーブワンピースに身を包んだハルカがアコギを抱えてマイクの前に立ち、2つめのライトとともにシャツにパンツルックのミユキが、ハルカの透んだ歌声に波紋を投げかけるように音をあてていく。インディーズ時代の1st E.P.に収録されていた「絶望ごっこ」がはじまりのうた。虚無と激昂の間で揺れながら、徐々に激昂に針が振り切れていく。続く「マネキン」では、ハルカは台に乗って轟音ギターをかき鳴らし、ミユキはステージ前方で飛び跳ねながら踊り、観客のクラップを誘っていた。パッと聴きはキャッチーなのだが、ラストのサビの前でミユキが居心地の悪いフレーズを鳴らし、美を乱調のなかに隠していくこのあたりのふたりの音のやりとりとバランス感覚が独特で、アグレッシヴなロックナンバー「mosaic」でのコーラスワークを含め、前回の新代田FEVERよりもバンドが作り出すグルーブが会場全体にまわっているからこその、いい意味で違和感のある、でも、心地のよいサウンドスケープを生み出していたように思う。

 ハルカが「絶望じゃなく希望のうたです」と紹介して歌った「ドライアイス」から「未成年」と、インディーズ時代からの名曲を続けたあと、ハルカは珍しく長めのMCをとった。
「今日はいったい、いくつの約束や、楽しみにしていた気持ちが無駄になったのでしょうか。ライブだけじゃなく、会いたい人との約束がなくなった人もいるでしょう。今日は雪ですが、そういうことは、いろんな日常に起きてるはずです。約束したり、期待したり。それが、当たり前に叶うこことじゃないんだなと実感しました。私は待つことが嫌いです。約束しても、来ないんじゃないか。二度と会えないんじゃないかと考えてしまいます……」。訥々と語ったあと、弾き語りで歌った「長い待ち合わせ」は、おそらく、この日、チケットをとったのに、会場まで来れなかった200人のお客さんに向けて歌われたものだろう。会場は埋まっていたのだが、それでも、来たいのに来れなかった人たちの悲しみや悔しさ、絶望にも似た諦めを感じずにはいられなかった。

 「すぐに『分かるよ』という人を私は信じません」という言葉に続けて歌った「POOL」では、ハーモニーの美しさとバンドによる見事なアンサンブルを響かせ、客席に「笑ってもいいよ」と告げたポップロック「伝言ゲーム」とモータウン調の「Hate you」では、ミユキがユニークなダンスを見せ、客席を盛り上げていく。ポップなナンバーを続けたと思った途端、ミユキはサンプラーで音を作りながら、7拍子のインストナンバーでストレンジな世界観を作り上げ、怒涛の後半線へと突入していく。

 一緒に青写真を描きたいという気持ちを素直に歌った、彼女たち流のラブソング「シアノタイプ」から、観客はパンクのノリでヒートアップ。音は、よりサイケデリックに、よりカオティックに塗り固められていく。エッジーなロックに呪文のようなポエトリーリーディングをのせた「プラスチック・メトロ」のあと、「ふたりでバンドを組んだ頃にアコースティックでやってた曲をバンドでやりたいと思います」と語り、未発表の「青い夜更け」を披露した。既存の曲にはないファルセットが印象的で、演奏が止まった瞬間に、息を飲む感動があった。

 最後に、ハルカが「今日は、比喩ではなく、命をかけて来てくれたと思うので、魂をこめて応えたいと思います」と語り、「一緒に未来を描きましょう。負けないでいましょう。」と最後のメッセージを呟くと、狂いたいのに狂えない、儚くも強い想いを込めた「Vanilla」をエモーショナルに歌い上げた。ラストのサビで会場中が眩い光に照らされた。ハルカは、「私は誰のことも信じてなくて、みんな敵だと思ってて。表現者は、みんな、考えることをやめて、同じことばかり歌ってるし……。なにも信じられないと思って歌ってきたけど、こんなたくさんの人が私たちの歌を聴いてくれている。これなら未来を信じてもいいなと思いました」と語っていたが、ハルカトミユキの未来は、彼女たちが想像している以上に強い光で、聴き手の心の奥底に潜む暗闇を照らすだろうと確信したステージだった。

【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:Junichi Ohmuro】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル ハルカトミユキ

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リリース情報

シアノタイプ

シアノタイプ

2013年11月06日

SMAR

1. 消しゴム
2. マネキン
3. ドライアイス
4. mosaic
5. Hate you
6. シアノタイプ
7. 7nonsense
8. 振り出しに戻る
9. 伝言ゲーム
10. 長い待ち合わせ
11. ナイフ
12. Vanilla

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セットリスト

ワンマンツアー『青写真を描く』
2014.2.8@渋谷CLUB QUATTRO

  1. 絶望ごっこ
  2. マネキン
  3. mosaic
  4. ドライアイス
  5. 未成年
  6. 長い待ち合わせ
  7. POOL
  8. 伝言ゲーム
  9. Hate you
  10. 7nonsense
  11. シアノタイプ
  12. ニュートンの林檎
  13. 振り出しに戻る
  14. プラスチック・メトロ
  15. 青い夜更け(未発表曲)
  16. ナイフ
  17. Vanilla

お知らせ

■ライブ情報

rockin’on presents JAPAN’S NEXT vol.2
2014/03/16(日)TSUTAYA O-WEST

Yuya Tsuji Presents ETERNAL ROCK CITY.2014
2014/04/05(土)・06(日)歌舞伎町エリアの複数会場

ARABAKI ROCK FEST.14
2014/04/26(土)・27(日)みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

VIVA LA ROCK
2014/05/05(月・祝)さいたまスーパーアリーナ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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