Dragon Ash、幾つもの障害を乗り越え実現した初の武道館ライブをレポート!
Dragon Ash | 2014.06.17
Dragon Ashがデビュー18年目にして初めて武道館ライブを行なうと聞いたら、「そうなの?」と驚く人がいるかもしれない。ミリオンセラー・アルバムを持ち、フェスでも人気を集めるこのバンドは、当然武道館ライブを成功させるチャンスが幾度もあった。しかしKjは「ファンの顔の見える距離でのライブ」にこだわった。同時に、椅子のないフロアでオーディエンスが自由に楽しむライブを第一に考えていた。
このバンドの良さは、ファンとの濃密なコミュニケーションだ。それはデビュー以来、一貫して変わらない。そのためには、武道館は広すぎ、椅子を取り払えないという障害がある。その後、武道館のアリーナは椅子なしでライブができるようになったが、Kjは頑として譲らなかった。
では何故、今回の武道館ライブが実現したのだろうか。一つには、先ほど書いた“椅子なしアリーナ”が可能になったこと。そしてもう一つの理由は、KenKenがサポートに加わった、新たな気持ちでのライブツアーのファイナルだったからだ。もちろんそこには、支え続けてくれたファンへの感謝も込められている。
だから今日僕は、そんなDragon Ashの“初武道館”を見届けに来た。いや、僕なんかよりファンの方が、それをずっと待ち望んでいたに違いない。
ステージを覆っていた紗幕が切って落とされ、「The Show Must Go On」から始まったライブ。Kjが最初のMCで 「いつもどおり、やろうじゃないか!」と叫んだのは、18年目にして初めて武道館のステージに立ったDragon Ashだけが吐ける言葉だった。それを察知して、オールスタンディングのフロアを埋めたファンも、スタンド席のオーディエンスも、1曲目にしてアンコールに匹敵する盛り上がりを見せる。“The Show Must Go On”=「それでもショーは止められない」の看板に偽りなし。これからも続いていくDragon Ashの旅への決意を、このタイミングで世に問うライブになると直感した。自分たちのライブを“ショー”と呼んだとき、Kjの脳裏には武道館のイメージがすでにあったのかもしれない。だから会場をレーザーが縦横無尽に走ったとき、このショーを心から楽しめばいいと思った。
バンドと会場のマッチングには、まったく違和感がない。やはり今までやらなかったのが不思議に思える。それでも“初”の高揚感は、バンドにもオーディエンスにも確実にあって、隠し切れない歓びがそこここに溢れ出して、微笑ましくなる。
気が付けば、周りのオーディエンスのほとんどが歌っている。そういえば今年は、“初武道館”の当たり年だ。クリープハイプも[Alexandros]も、つい先日、バンドのキャリア初の武道館ライブを敢行した。それぞれの特徴が出たライブになったのだが、オーディエンスがバンドと一緒に歌うシーンは、正直それほど多くなかった。シングル曲やライブ定番曲はみんな歌うものの、アルバム曲の歌詞を憶えている人は、それほど多くなかったように思う。ところがDragon Ashファンは、ほとんどの曲をバンドと共に歌う。「Run to the Sun」や「Life goes on」などの歌モノの名曲のシンガロングは、見事だった。また、ライブ活動を中心に据えるどのミクスチャー・バンドとも違う一体感がここにあった。
それでもKjは途中で確かめる。「武道館でやることが俺たちにとっていいのか悪いのか、お前らにとっていいことかわからないけど、ケガしないで、1年でいちばん楽しかった日になれば、やる意味があると思うんだ」。どんなに盛り上がっていても、バンドの基本姿勢である“ステージとオーディエンスとの距離”に関して、注意を怠らない。
いちばんの盛り上がりは、アルバム『THE FACES』のハイライトである「The Live feat.KenKen」だった。「こうやって来てくれるみんなと、コイツがいなかったら、今のDragon Ashはない。ベース、KenKen!」と紹介された男は、IKUZONEが急逝してからずっとベースを務めてきた。この「The Live」は作詞・作曲にKenKenが 加わった“今のDragon Ashの曲。激しいリズムと痛烈なリリックが、武道館を揺らす。
YALLA FAMILYの3人が加わった「Still Goin’ On feat.50Caliber,Haku the Anubiz,WEZ from YALLA FAMILY」でヒートアップしたり、「百合の咲く場所で」ではアリーナにサークルが出現してモッシュが始まったり。“いつもどおりのライブ”が繰り広げられる。いつもと違うとすれば、広い武道館だからこそ、大きなサークルが生まれたり、それを上のスタンド席から眺め下ろしたり、さらにはモッシュピットから見上げると、壁のようにそそり立つ客席の様子が見えたり。自分と一緒に楽しんでいる人の多さが、歓びを倍化するという大会場ならではのマジックが起こったのだった。
そうしたステージと客席のエネルギーの循環をスムーズにしていたのは、終始踊りまくっていたDRI-VとATSUSHIのパフォーマンスであり、ラウドなサウンドにエッジーな色彩を付けていたのはHIROKIのギターだった。
終盤の「ROCK BAND」では、12編成のストリングスと、SATOSHI、KO-JI ZERO THREEが登場。音楽的な膨らみと、友情の厚さがステージに充実を呼ぶ。
アンコールではDJのBOTSの誕生日を祝うシーンが用意されていた。BOTSは 突然の祝福に少し照れながらも、手にIKUZONEの写真を掲げる。そう、この初めて武道館に立ったのは“8人のDragon Ash”だった。
あらゆる角度から“Dragon Ashの武道館”の是非を検討した末のライブだった。それは彼らが、仲間とファンを大事に思うからこその慎重さであり、ロックを大切にするからこその大胆さだった。その姿勢は最後の「Curtain Call」まで貫かれた。
すべてが終わって、「Dragon Ashに武道館は似合うな」と思っていたら、ドラムの桜井誠が去り際に言った。「また絶対やるから」。
今まで観たどのバンドの“初武道館”とも異なる感動で、この日の幕が降ろされた。
【取材・文:平山 雄一】
【撮影:橋本 塁 (SOUND SHOOTER)】
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リリース情報
THE FACES【初回限定盤】 [CD+DVD]
2014年01月15日
ビクターエンタテインメント
2. The Show Must Go On
3. Trigger
4. Run to the Sun
5. Neverland
6. Today’s the Day
7. Here I Am
8. Blow Your Mind
9. Still Goin’ On feat.50Caliber,Haku the Anubiz,WEZ from YALLA FAMILY
10. Golden Life
11. Walk with Dreams
12. The Live feat.KenKen
13. Lily
14. Curtain Call
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セットリスト
THE SHOW MUST GO ON
2014.5.31@日本武道館
- The Show Must Go On
- Trigger
- Run to the Sun
- For divers area
- Life goes on
- Neverland
- Today’s the Day
- Walk with Dreams
- Here I am
- Blow Your Mind
- The Live
- Still Goin’On
- Golden Life
- 繋がりSUNSET
- 百合の咲く場所で
- FANTASISTA
- 静かな日々の階段を
- ROCK BAND
- Lily
- DANCE WITH APPS
- 天使ノロック
- AMBITIOUS
お知らせ
MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2014
2014/06/21(土)沖縄県・宮古島コースタルリゾートヒララ
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OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL Vol.5
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ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014
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RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014
2014年08/16(土)北海道 石狩湾新港 樽川ふ頭横野外特設ステージ
WILD BUNCH FEST. 2014
2014/08/23(土)山口県・山口きらら博記念公園
MONSTER baSH 2014
2014/08/24(日)香川県・国営讃岐まんのう公園
MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!! 13+14
2014/10/04(土)、05(日)沖縄県・読谷村 ヨミタンリゾート沖縄 特設会場
※いずれか1日
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。